東方桃玉魔 〜ピンクの悪魔が跳ねる時、幻想郷は恐怖に慄く〜 作:糖分99%
わかってます。下手であることは。
でもこれでほんわかとした空気が伝わればなー、と思います。
『挿絵が邪魔! 余計!』という方は感想欄にてお伝えください。
『自分の方が上手く描けるわ!』という方は描いていただけると嬉しいです。描いていただいたものと入れ替えて投稿しようと思います。
……画力がほしい。
「カービィ、その姿は……?」
「道化……か? 竜巻といい、白狼天狗といい、コロコロと姿を変える面妖な奴よ。」
「あはは、なかなかユニークな奴じゃないか。褒めてつかわすー。」
姿の変わったカービィに、三者三様の反応をする神達。
しかしカービィは、それに構わず突貫する。
無謀な行動に見えるだろうか。
否。それは確かな勝率に従っての行動。
行く手を阻むように、御柱がカービィめがけて飛来する。
だが、その御柱は空を切った。
残されたのは、小さな台。
中心が伸縮性のある布でできた台。
そう、トランポリン。
どういう原理が、瞬時にそれを召喚し、見上げるまでの高度まで飛び上がったのだ。
しかし神奈子は焦らない。
その程度で焦るようでは、神なぞやってられない。
飛び上がったカービィめがけ、御柱を次から次へと殺到させる。
それは、雛も相殺するのがやっとだったほどの連続攻撃。
常人では目で捉えることすら不能な、超速の連続攻撃。
これを捉えるものは、すでに常人の域にいない、人外達の所業だ。
だが、受けるカービィはその域にいる者であった。
何の踏み場もない空中。
そこで舞うように、踊るように、鋭角的な軌道を描きながら避けて行くではないか。
それを目撃した神奈子は少し目を見開き、そして不敵に笑う。
まさに強者に相応しい、そんな笑み。
「その格好は伊達ではないということか。面白い。だが、こう釘付けにされては手出しもできまい! 諏訪子!」
「あいよ!」
諏訪子への号令とともに、諏訪子が鉄の輪をカービィへ殺到させる。
「っ! カービィ!」
「おっと、そうはさせないよ。」
「く……」
カービィの元へ駆けつけようとした雛は、ミジャグジが妨害する。
ここでついに、二人は完全に分断された。
ビンのようなものを取り出し、炎を纏わせ、投げて鉄の輪を撃ち落として行くが、キリがない。
巨大な風船を膨らませ、その破裂する衝撃で御柱の軌道をずらしても、連発できないので対応力に欠ける。
雛も相手はミジャグジだけになったものの、手負いの彼女は十分に戦えず、押されがちになっている。
両者じり貧の状況下、ついに決定打が出る。
「あんたら、いい加減にしなさいよ!」
上空からの怒声。
そして降り注ぐお札。
余裕のある神奈子と諏訪子は簡単に回避に成功した。
しかし、その二人によってその場に釘付けにされていた二人は別だ。
予想外の角度からの攻撃により、カービィも雛も直撃してしまう。
「かはっ……!」
「ぶいっ!」
体力を削られていた雛は地に伏し、カービィは道化の帽子を失い、吹き飛ばされる。
札による攻撃を行ったものは、両者の中間に立つ。
その札に見覚えのないものはここにはいない。
そう、博麗の巫女、博麗霊夢。
彼女は両者を睨みながら、まだ口の聞ける方……神奈子と諏訪子に問いかける。
「なんで弾幕ごっこしてないのよ。」
「え? 神奈子がやれって言ったから。」
「幻想郷の危機だぞ? そのようなぬるい手で解決できるようなものじゃない。」
「それでもルールは……」
「そのルールを作ったモノの許可が下りたなら?」
「……下りたの?」
「いや。だが奴のことだ。確実に許可を下ろしてくれる。何せ私のこの行動は幻想郷を愛している故。なら、私よりも愛の深い奴なら、確実に私に同意する。」
霊夢は口を閉じる。
確かに、神奈子の言うことはごもっともだ。
とはいえ、なんの躊躇いもなしに排除とは、いかがなものか。
確かに、私は人妖と化した里の人間を滅ぼすのに躊躇はない。
ただそれは幻想郷のルールに目に見えて違反しているからだ。
確かに大結界が突破されたのは驚愕したし、脅威とみなすのもわかるが、別に外から中へ入ってくるのは何も問題ない。外から物や人が今でも時々迷い込んでくるのだから。
大結界だってすでに直っている。
やはり、独善的だ。
こいつの欠点はそれだ。
とはいえ、今ここでカービィ見逃したら色々と面倒なことになるだろう。
愚痴愚痴文句言われた挙句、弾幕ごっこで決めよう、なんて言われるのは御免被りたい。
なら、一応封印だけして動きを抑えるだけはしておくか。
後のことはあいつに相談という形で。
霊夢は面倒ごとを避けるため、腹を決める。
元々そういう性格なので、当然の選択だろう。
そして、倒れている雛とカービィの方へ振り向く。
そしてそこで、霊夢は目を見開く。
倒れ臥す雛。その前で、小さな手を広げ、健気にも庇おうとするカービィがいた。
その体には、霊夢の札によって傷ができている。
霊夢は躊躇った。
本当に、カービィを一時的とはいえ封印する必要はあるのかと。
いや、本当に一時的だ。
これはカービィを保護するという役目もある。
そう葛藤している時。
「カービィ! これを食えっ!」
上空から声が飛んできた。
その主は、魔理沙。
凄まじい速さで突っ込みながら、スカートの中を弄っている。
そして、あるものを引っ張り出す。
それは、ブリキ製の車のおもちゃ。
魔理沙には蒐集癖がある。
そうして集めたものを、スカートの中に入れ込む癖がある。
そして時々、スカートの中にものを入れたことを忘れる事もある。
そのブリキ製の車のおもちゃも、どこかで拾い、そしてそのまま忘れ去られたもの。
それを、カービィめがけて投げつけた。
カービィはそれに気がつくと、嬉々として吸い込む。
そして、先程と同じように光が集まる。
そして晴れた時には、やはり見た目が変わっていた。
赤いキャップ。それを前後ろ逆にして被っていたのだ。
「よし、予想通りだぜ!」
「ちょっと! 何やってるのよ魔理沙!」
「それはこっちの台詞だぜ! お前、カービィを封印しようとしただろ!」
「その方が丸く収まるのよ!」
「はぁ!? カービィはすでに丸いだろ!」
「そういう事じゃないわよ! それに手足があるからまんまるじゃないでしょ!」
一体二人は何を言い合っているのか。
その間に、カービィは驚くべき変身を遂げる。
何とその身を桃色のタイヤに変化させたのだ。
キュルキュルとその場に留まり、回転する。
そして十分にタメ終わった途端。
それは弾かれるように飛び出した。
土を跳ね飛ばし、爆音とともに爆走するその様は、猪の如く。
「おっと!」
それをいち早く察したのは、離れて傍観していた諏訪子。
一歩引いて見ていたからこそ、早く気付くことができたのだ。
口を開くミジャグジ。
そして爆走するカービィを飲み込んだ。
「でもご安心! 消化する前には吐き出す……よ?」
勝利宣言しようとした諏訪子。しかし、違和感に気がつき口をつぐむ。
身悶えしているのだ。石の大蛇であるミジャグジの化身が。
そして、その悶えが大きくなった時。
ゴシャア!!
牙をへし折り、舌を擦り切り、内部を削りながら、勢いよく何かが吐き出される。
それは、なおも回転を続けるタイヤのカービィ。
地に伏すミジャグジを尻目に、カービィは更に加速する。
そして諏訪子の腹に、思いっきり突き刺さる。
「ぐぅええ!!」
「諏訪子!? くっそ!」
諏訪子を轢き倒したカービィは、神奈子の追撃をかわしながらなおも爆走を続ける。
そして神社の角で、華麗なドリフトを決める。
向かう先は、神社裏だろうか。
「逃げる気か? 諏訪子、追うぞ!」
「うぅ、これじゃ轢き蛙……もう許さん!」
神奈子は諏訪子を助け起こし、そして二人してカービィを追う。
それに気がついた霊夢と魔理沙はようやく不毛な言い合いをやめ、慌ててその後を追う。
神社の角を曲がり、神社裏にたどり着いた時。
カービィはそこで逃げも隠れもせず、待ち構えていた。
しかも、すでにタイヤの変化も解き、帽子もどこかへやった、素の状態で。
ただ一つ。ただ一つだけ、先程と違うものがあった。
その手には、白い流線型の物体が握られていたのだ。
魔理沙、あなた本当に鋭い……
なんかここでの魔理沙は冴えまくりですね。
……あれ、誰かを忘れている気が……