東方桃玉魔 〜ピンクの悪魔が跳ねる時、幻想郷は恐怖に慄く〜 作:糖分99%
マホロア除くラスボスの集合体が消滅し、ラスボスという重要な存在が消滅したことにより、カービィシリーズのシナリオのほとんどが成り立たなくなり、消滅しました。つまり、外の世界でほとんどのカービィタイトルが発売されなかったことになります。残ったのは初代カービィとカービィWiiくらいでしょう。
するも、カービィWiiは今までの設定があってこそ成り立つシナリオ(主にハルカンドラ)で、他のシリーズに出て来た夢の泉やノヴァが消滅してしまった以上、このシナリオも成り立たなくなってしまいます。残ったのは初代カービィですが、果たしてこれだけでカービィ達が虚構の世界で意思を持つほどの信仰心(人気)を今までずっと得られたかは微妙なところです。何度もタイトルを重ねてきて深みが出てきたからこそ、飽きられることもなく人気を勝ち取ってきた、いわばブランドですからね。
目指すは最良のエンディング。
決して、単なるゲームクリアではない。
より多くのものが救われるエンディングを。
目指すのは、それだけだ。
その方法は、すでに決まっている。
厄が濛々と立ち込める。
マルクソウルの回避能力を大きく下げる為に必要な一手。
これ自体に変更はない。
ただし、これから先、マルクソウルを殺すようなことはあってはならない。
殺してしまえば、さっきと同じ結末が待っている。
だから別の手段を取る必要がある。
殺さずに無力化する方法……即ち、封印。
「カービィ、一つ話を聞いてくれ」
「うぃ?」
「夢想封印で“消滅”させるな。夢想封印の本来の力、“封印”を行うんだ。」
「ぽよ?」
「不思議そうな顔をしているな。だが、それが大切なんだ。……すまんが私は巫術に関してはさっぱりだ。カービィ、お前を乗せて飛ぶことしかできん。……頼むぞ!」
「ぽよっ!」
魔理沙はユニットを展開し、弾幕を発生させる。
マルクソウルの足止めだ。
下からも弾幕が展開される。
これはレミリアとフラン、咲夜、橙のものだろう。
しかし、まだ火力不足だ。
だがここで、ようやく援軍が到着する。
「遅れた! すまんな!」
「ごめーん、用意に時間かかっちゃった」
「守矢神社、東風谷早苗。推して参ります!」
「遅いわよ、全く!」
遅れて飛んできたのは守矢神社の面々。
いや、それだけではない。彼らが引き連れてきた河童と天狗の軍勢もまた、マルクソウルを包囲していた。
これで、あの時いた者達は全員揃ったことになる。
ここからだ。ここからが本番だ。
天狗達と河童達は加勢する形で弾幕を張り、今度こそ完璧な包囲網を作り上げる。
そしてジリジリと範囲を狭めて行く。
まさに追い込み漁。
追い込んだ先にあるものはなにか?
そこにあるのは魔法陣。
パチュリーが用意した封印のための魔法陣。
それだけではない。紫、藍、神奈子、諏訪子、早苗、霊夢、マホロア、タランザ、そしてカービィ。封印ができる力を持った者達だ。
そして、その時は来た。
「今だ! 行け!」
戦局を見守っていたメタナイトの怒号がとぶ。
そして魔法陣は光り輝き、何本もの魔法の鎖が出現する。
鎖はマルクソウルに絡みつき、ギチギチと締め上げる。
だが、これだけでは終わらない。
紫が、藍が、妖術による封印を行う。
神奈子が、諏訪子が、神力によって封印を行う。
早苗が、霊夢が、霊力によって封印を行う。
無数に張られた結界が、無数に並べられた御柱が、無数に回る鉄の輪が、無数に浮かべられた陰陽玉が、マルクソウルの力を、狂気を、魂を、封じ込めんとする。
その“存在”を残したままに。
「押し切れぇぇぇぇぇ!!」
「『夢想封印』!!」
そして、スターロッドから光が放たれる。
紅白の星が、マルクソウルを包み込む。
マルクソウルを包む光の籠。
存在そのものを包み込まんと、力そのものを封じ込めんと、光は収束する。
しかし、一つ忘れていないだろうか?
封じ込め……つまりは生け捕りの難しさを。
丸腰の人間をナイフで刺し殺すのは、相手の力量が同じ以下なら抵抗されてもナイフという武器がある限り簡単である。
だが、丸腰の人間をチェーンで雁字搦めにしろと言われたら?
丸腰の人間を檻に閉じ込めろと言われたら?
力量が同じならば、それは至難を極めるだろう。取っ組み合いを制した上で、チェーンを巻きつける、もしくは檻に押し込むという動作をしなくてはならない。それが一体どれだけ難しいか。
封印とて同じことだ。
封印とは抵抗する力という力を縛り付け無力化しなくてはならない。
それはレーザーで射殺すよりも遥かに難易度が高い。
「ギギィィィイイイイイイイイイイ!!」
「まずい、弾かれる!」
「あと、ちょっとなのに!」
その光の籠を押し退けんと、マルクソウルは抵抗する。
ミシリ、ミシリとヒビが入る。
また、失敗するのか?
また、時間を巻き戻せるのか?
ヒビが一層強くなった。
その時だった。あいつが現れたのは。
「最強のあたい、見参!」
現れたのは、マルクソウルの憑依が解けた後、気絶していたはずのチルノであった。
何をしに来たのか。そう問いただしたいが、そんな余裕はない。
それを良いことに、チルノはその掌をマルクソウルに向ける。
「なんか知らないけど、あいつを閉じ込めれば良いんだね! いっくよ、あたいの恨み、受けてみろ! 凍符『パーフェクトフリーズ』!」
そして、マルクソウルの表面が凍りつく。
凍るという現象は、エネルギーが奪われ、液体が個体へと変化する現象である。
つまりそれは、力を奪った、とも言い得る。
それが、後押しとなったのだろう。
「ギィアアアあああああああぁぁぁ…………」
最後の叫びは、力を封じられるとともに力なく消えていった。
訪れるのは静寂。
しかし、その静寂も長くは保たれない。
ふつふつと湧き上がる、熱いもの。
それは、勝利の興奮。
「ぃやったぁああああ!!」
「ぉおおおおおおおおおお!!」
「勝ったぞ、勝ったぞ〜!」
あちこちから上がる勝鬨の声。
皆勝利に酔いしれ、隣の者と抱き合う。
そんな中メタナイトは空を見上げた。
「……おや、世界の崩壊が……止まった?」
空間に入った亀裂。
それら全てが、もともと無かったかのように消えていた。
「これは……一体……?」
藍も不思議そうに空を見上げる。
だが、メタナイトは視線を感じて振り返る。
しかしそこには何もいなかった。
居なかったからこそ、察した。
「ああ、なるほど。貴女も中々お人好しなようだ」
「どういう事だ?」
「何、こちらの事だ、八雲殿。さて……幻想郷には勝利の後に行う素晴らしい文化があると聞くが?」
「ああ、成る程な。紫様、いかがいたしましょう?」
「良いんじゃなくて? ……最後くらい、仲良くいたいものね」
「同感だ」
メタナイト、藍、そして紫は勝利に酔う幻想郷を眺めた。
そこにあるのは、どんな絶景すら霞むも美しい光景が広がって居た。
●○●○●
「ああ、疲れた疲れた」
「ご主人様、中々無茶しますね」
「たまには、女神様っぽい事しても良いんじゃない?」
「ご主人様は女神様は女神様でも地獄の女神様ですけどね」
「はいはい。それじゃ、私は疲れたから暫く眠るわ。後はよろしく」
「はーい」
「うふふ。せっかく未来を私が掴ませてあげたんだから……有意義に生きてほしいわね」