リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

9 / 100
第九話 追うもの追われるもの

 二年生になる。

 相変わらず、魔王を中心とした三人組は同じクラスだ。

 それは俺も同じであったが。

 

 原作をまとめた結果、俺がおぼえていることは殆どなかったといってもいいだろう。

 まず、最初の事件の始まりが分からない。

 そこでフェイトなるものと争ったりするらしいが、いつになるのかは全く分からない。

 もしかしたら、明日にでも事件が始まるのかもしれない。

 それに気づいたとき、俺は毎日におびえるようになった。

 

 つまり結果を言えば、魔王から逃げる頻度は多くなった。

 

 本人には悪いと思うが、それがいつもの事になってきた。

 

「倉本君!」

「やべっ」

 

「あきないわね、あの二人」

「あはは……」

 

 というか、なぜこいつは追いかけてくる。

 

 

 

 

 私、アリサ・バニングスは少し困った親友がいる。

 

「アリサちゃん、なんで逃げるんだろうね」

 

 高町なのは、それが困った親友の名前だ。

 約半年前はあの倉本という男子にあまり良い感情を持っていなかったはず。

 それが、冬休みが終わって学校に来てみると、その男子に話しかけているというのだ。

 その男子は驚いたのか、その日から話しかけられた瞬間逃げ出すようにもなったし。

 何が言いたいのかというとだ、この親友の目的が分からなくなってきた。

 

「なのは、なんであの男子を追っているの?」

 

 クラスも離れなかったことから、またあの二人は追いかけっこを続けるのだろう、

 そうなれば私たちにもいくらか被害があるはずだ。

 それなら、理由くらい聞いてもいいでしょ?

 

「あの男子って……倉本君の事?」

「そう。少し前はあんなに追おうとしなかったでしょ」

「それは、すずかちゃんを泣かせてたから」

「私としては、もっと根本的なところからあると思ってるんだけど」

 

 なのはは少し驚いた顔をした。

 だとすると、私の予想も外れじゃないってことね。

 

「ほら、言ってみなさいよ」

 

 困ったような顔で「うーん」と悩むなのは。

 理由はあるけど、言おうかどうしようか考えてるって顔だ。

 少し待った後、なのはは答えてくれた。

 

「小さいころね、友達になってくれた男の子がいたの」

「友達になってくれた男の子?」

 

 なのははこれでもはっきりと感情を口に出す子だ。

 まるで友達がいなかったかの言い方、もしかしたらと考える。

 

「その頃の私は、お父さんが怪我をして、家族みんな大忙しになって、でも邪魔をしちゃいけないから、私は見ているだけだった」

 

 それは、逆に言えば家族と関わっていなかったということ。

 

「公園に行って、何もする気なくて、ずっと砂場で一人遊んでいた」

 

 家に居づらい、そう思ってなのはは外を出掛けたのだろう。

 ……もしくはわがままを言ってしまいそうになるから。

 

「そこで、一人の男の子と会ったの。その男の子は、私と一緒に遊ぼうって言ってくれた」

 

 なのはは、その言葉に救われたのだろう。

 私の場合、親は私を大切にしてくれたけど、友達はまったくいなかった。

 だから、なのはの気持ちはわかるし、あの男の気持ちも……

 

「ああ!違う違う!」

「アリサちゃん?」

「あ、いや、なんでもないわ」

「う、うん。……そしてその男の子なんだけどね、二年前結局名前も聞かずに遠くに行っちゃったから、どうしているのかもわからないんだ」

「それで、あの男子の何の関係があるの?」

「にゃはは。……気のせいかもしれない、でももしかしたら、倉本君があの時の男の子なのかなって」

 

 なのはは懐かしそうに目を細める。

 普通に考えれば遠いところ(多分外国)にいった友達が、一年くらいで帰ってこられるとは思えない。

 私みたいによく外国へ行くのであれば旅行などで納得はいくが、なのはの言い方では、まるでお別れのような感じだった。

 親の仕事の都合で外国に引っ越し、それだろう。

 

「……一年で帰ってこれるとは思えないわね」

「アリサちゃんも、そう思う?」

 

 寂しそうな顔。

 なのはにとって、その男の子はとても大切な友達なんだってことがうかがえる。

 

「なのはの好きにしたらいいと思うわ。悪いことなんて、一つもないのだから」

「アリサちゃん……」

「ほら、すずかも話に入りたそうな顔をしてるわよ」

「え?そ、そんなことないよ」

 

 なのはがどうしようと、私たちの絆にひびが入ることはない。

 私は、そう思っているから。

 

 

 

 

「はやて、ストーカーを追い払う方法はないか?」

「龍一にストーカー?ギャグを言うならもうちょい面白いのを頼むで」

 

 家に帰ってはやてに言うが、ギャグ扱いされてしまった。

 

「いやいや、それが本当の事でね」

「あっはっは。ほら、笑ってやったで、だからその悲しいギャグはやめい」

「ギャグじゃないって!」

 

 結局、どうしてもギャグ扱いにされてしまった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。