リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

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第七十話 後に残す宿題

 春休み。特にこれといったことがあったわけではない。珍しいといってもいいほどの平和だった。

 なんやかんやと新たに増えた三人の性格を把握しつつも、仲良くしつつ(個人的感覚)それなりに楽しく過ごしていた。

 

 そうして思い出す。

 

 忘れていた新学期。

 実は宿題とかやってなかったりするが、まあ学校でやればいいやと思い直して寝たのが昨日のこと。

 

「……いや、これ終わんねーよ」

 

 みれば一冊丸々やってこいという夏休みレベルの冊子に、いろいろ教科書の問題も入っている。ついでにワークのようなものもあるし、読書感想文まである。どう考えても小学生春休みの量ではなかった。しかも内容も結構めんどくさい。

 

「……見せてもらうより計算した方が早い……が、いかんせん量が多い」

『どうかしたの?』

「アリシア、俺今日学校休むわ」

『ちょ』

 

 全部忘れたとか言ったら多分教室内で目立つことにもなるだろうし、これが一番いいだろうという考えの事だった。

 ……始業式に休む方が目立つのに気付くのは一日の終わりの事だった。

 

 

 

 

「というわけで、三人には手伝って……あ、やっぱりシュテルだけでいいです」

 

 シュテルはなんか手伝ってくれそうな気がしたが、二人についてはすぐ考え直した。

 

「む、手伝う気など毛頭なかったが、そういわれると腹が立つぞ」

「ボクも手伝ってみたーい」

「いや、むしろお前らに手伝わせる気はない」

 

 王様はともかく、レヴィにさせたら大変なことになりそうだ。しかし、そんな思いとは逆に不満を表に出す二人。

 シュテル以外役に立たないだろうと思い、早めに見限ったのがどうやら気に入らないようだ。

 しかし、何とかして宿題を手伝うのをあきらめてもらわねば、絶対に足を引っ張ってくる……そうだ!

 

「ほら、あれだよ、ニートはやっぱり職務を果たすためにニートでいてもらわなくては」

「誰がニートだ誰が!!」

「にーとって何?」

 

 王様からはキレられ、レヴィはそんなことも知らないとばかりに聞き返された。

 説得は失敗したらしい。なぜだ。

 

(そりゃそうだよ)

(アリシア!? 心を読んできたな!)

 

 

 

 

 そうして始まる宿題。

 シュテルには国語、王様には算数を割り当てた。レヴィは足を引っ張ることが確定なので、早々に諦めてもらうために眠くなる読書感想文の読書を渡した。これで飽きてくれることを望む。

 

「……アリシア」

『なに?』

「飽きた」

『早いよ!』

 

 いざ宿題をすると思うと、めんどくささの方が先に出る。時間に追われると、やる気の出る人と遊んじゃう人とで二極端になる気がする。俺はもちろん後者の方だ。

 

「アリシアが代わりに書いてよ。俺が答えを言うから」

『デバイスに頼むならふつう逆だよね!』

「浮遊させる魔法を使って……!」

『そんなに管理局にばれたいの?』

 

 そう言われればそうだった。

 というより、管理局はいつになったら元の世界に戻るんだよ。ニートの集団か何かかあそこ。

 

「愚痴ってもしょうがないか……」

 

 あきらめて宿題に手を付ける。

 そこらの小学生がする問題より難しい内容だが、精神年齢三十歳越えには簡単な問題。

 時間こそかからないが、それが余計に怠惰に感じてしまう。

 

「んー、なんでもいいから何か話しながらするか」

「何かとはなんですか?」

 

 俺の発言に反応するシュテル。

 他二人は反応がめんどくさいのか集中しているのかわからないが、まったく興味を示さない。

 いや、よく見ればレヴィはもう寝てる。あまりにも早い出来事だった。

 

「たとえば……クラスの女の子から逃げる方法とか?」

「くらすというものがどういう物か存じませんが、龍一がヘタレという事だけは分かりました」

「なんだと、一瞬で俺の本質を理解してきただと」

『いや、前々からばれてたよ』

 

 どうやら周知の事実だったようだ。

 いやしかし、どこかばれるようなシーンなんてあったか? むしろカッコよく助けに行ったくらいなのに。

 

『カッコよく……? ちょっと頭大丈夫?』

「ひどくないかな! というか心読むな!」

 

 さっきから心の中よんでくるのどうやってんだ。俺の心の中は公開してないぞ。

 ……そういやアリシアはハッキングが得意だったな。

 ん? これって使えるんじゃないか。

 

「アリシア、その心の中を読む能力を使えれば魔王から逃げるのも簡単になるんじゃないの?」

『さすがに女の子の心の中を覗くのはどうかと思うよ』

「それってやってはいけないことではないですか?」

「我もその発言にはドン引きなんだが」

『そもそも、お兄ちゃんが分かりやすいだけで、心の中読んでるわけじゃないから』

 

 無視を決め込んでいた王様にまで言われるとは思わなかった。いやまあ、当然といえば当然ではあるんだけれども。

 

 これ以上いう事もなくなり、この後は黙々と宿題をやり始めた。

 ……結局途中で飽きて、シュテルが五割終わらせたのはさすがに申し訳なく思った。ちなみに王様が三割。

 

 

 

 

 終わった後ソファでゆっくりしていると、王様に肩を叩かれた。もちろん肩パンである。

 結構な強さだったので割と痛い。

 

「丸太坊、貴様我よりやっていなかったな?」

「え? な、何のことでございましょ」

「ふん、いいおる。我をうまく乗せたのも作戦というわけか」

 

 何言ってんだろう、単純にめんどくさかっただけなのに。理由づけで納得したいのだろうか。

 そう思ったのもあり放っておいたが、部屋から出ようとしたあたりでキレた王様に全治二日くらいのパンチがきたのは後の話。

 


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