リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

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第六十九話 受験ばりのテスト

 期末テストの時期になった。

 少し思い出話になるが、少しだけ語ろう。

 

 この学校に入学して驚いたことはテストだ。

 まあ、詳しく言えばお利口さんな子供がとても多いところも驚いたが、それもテストですぐに吹っ飛んだ。

 問題は内容。明らかにこの学年にしては難しいものが多かったのだ。

 とはいえ、前世ですでに大学卒業している俺にとってかかれば難しいものではなかったが、実際一個ケアレスミスをしてから難易度の高さに驚かされた。

 しかし、真に驚かされたのはそんなテストで満点や九割とってる奴。主にアリサだ。

 あいつはおかしい。全教科満点とか頭ぶっ飛んでる。しかも当然とか言いやがった。これはやる気なくす。

 そんなことがあってから、俺はあまり真面目にテストを受けることはなくなった。まあ、あまり本気出しすぎるとアリサみたいに目立ってしまうことを恐れてのことだが。

 

 さて、少々語ってしまったが、実際のテストの様子を明かしてみよう。

 

 

 

 

「龍一、テスト勉強はしたの?」

 

 フェイトから珍しく声をかけてくる。

 この時期になると、一部のだめっこ以外みんな受験生のようにカリカリしてたりするから、あまり一人ぽつんといられない気持ちはわかる。

 そして俺自身、テストのときに大手振って逃げたりすることもできないので、おとなしく受け答えをするしかない。

 ……なんか、それを狙われてる気がしてきたぞ。

 

「いやー、それがドリルを探してたりするうちに昔の漫画を見つけちゃってね」

「読みふけってたの?」

「久しぶりに読むと面白いよ」

 

 フェイトは薄く笑ってくれた。

 これが魔王だと呆れ、すずかだと苦笑、アリサだと叱咤がくるので、こういうことは一番フェイトが話しやすかったりする。

 

「それで大丈夫なの?」

「いいかフェイト、テストとは普段授業をきちんと聞いていればそれなりの点数がとれるもんだ」

「でも龍一は授業もあまり真面目に受けてないよね」

 

 たしかに、ここ最近は小学校の授業も退屈なだけなので、授業中に鶴とか折ってたりしていた。まあ、算数の授業なんてどこも大体同じことしかしないから、聞いていなくても大丈夫だけど。

 

「はっはっは。そういうフェイトはどうなの?」

「私はやることはやったから」

 

 ちらりと魔王の方を尻目に見て言ってきた。

 そこには国語辞典片手に漢字の書き取りをする魔王の姿が。

 

「ああ、あれはダメなパターンだね」

「算数と理科は大丈夫なんだけどね」

 

 そこまで話したところでチャイムの音が鳴る。

 フェイトは急いで席に着き、それから少したってテストが開始される。

 教科内容は国語。おそらく魔王は死んだだろう。

 

(さて、今回は全部ラッキーセブンを目指してみようかな)

 

 最近のテストの楽しみは、テストの点数を縛ってみることである。

 前は全部ぞろ目。その前は返ってくるテスト順に点数を徐々に上げていく。その前は全部八十代。そんな感じでテストの点を左右してみるのである。

 さて、その際に困るのが三角がないテストである。一点二点の左右ができないのはなかなかつらいものがある。

 

 さて、今回も成功するか……

 

 

 

 

 テスト返却日。

 この日も合格発表の受験生かのようにクラスの雰囲気はピリピリしていた。

 

 そんな空気が終わったのはすべてのテストが返ってきてから。何人か机に突っ伏しているものもちらほら見つける。

 

「すずか、どうだった?」

「えへへ、よかったよ」

「フェイトちゃんは?」

「うん、満足」

 

 なぜか俺の席に集まって会話を始める女子四人。逃げ道はもちろん防がれていた。

 とりあえず逃げられない以上、今まさに人の机の中に手を突っ込んでいる人に突っ込みを入れる。

 

「……で、なんでアリサは俺のテストを引っ張り出そうとしてるんですかねえ」

「あら、見せてくれてもいいじゃない」

 

 アリサのばつが一つもないテストを見せびらかしながら言ってくる。

 なんだそれは自慢か。

 このままだとずっと見せびらかしてきそうなので、俺はしぶしぶ机の中から答案用紙を引っ張り出す。

 

「しょうがない……はい」

 

 実際、今回はかなり惜しいところまで行った。

 一つを除いて縛り通りになったが、まさか国語の別解にあたるとは思わず正解してしまった。実は三角目指してたのに。

 それで出たのが八十点。本当今回は惜しかった。

 

「あら、あまり高くないわね」

 

 おいアリサ、それは俺に何を期待していたんだ。

 心の中でそう悪態をつきつつ、俺のテストをまじまじと眺めるアリサ+女子三人を見る。

 

「あ、これ私間違ってたんだよ」

 

 すずかが国語の答えを指さす。

 その問題は俺が間違えて正解してしまったところ。ついでにと思い、すずかのテストを見させてもらう。

 

「……なるほど、こう書けばよかったのか」

「私の間違えている回答じゃ、参考にはならないよ」

 

 間違えているとすずかはいったものの、内容は三角で俺の求めていた答えだった。どうやら、余計な言葉をつけたしていたのが正解の原因らしい。

 とりあえず満足した俺はすずかにテストを返す。

 そこでアリサもちょうど見終えたのか、テストを返してくれた。

 

「大したことなかったでしょ?」

「……あんた、次のテスト本気で来なさい」

「……へ?」

 

 急に言われたことに意味が分からず呆然とする。だが、そんな俺の様子にお構いもなくアリサはびしっと俺に指をさし、宣言した。

 

「次のテスト、総合得点で勝負よ!」

「やだよ」

「あんたの家を調べあげるわよ」

 

 断ったらまさかの脅迫だった。

 とりあえず、その場はほどほどに手を抜こうと心の中で思いつつ了承することにした。

 

 

「ううん……わたし、理数だけなの」

「私も得意なの理数だから気にしなくていいよ」

「日本人なのにフェイトちゃんに国語で負けたけど……」

「だ、大丈夫、そういうときもあるよ」

 

 なんか魔王も落ち込んでた気がするが、からまれるのは嫌なので放っておくことにした。

 


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