リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

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第四話 喧嘩の仲裁はムリゲー

 隣の席で魔王様が話しかけてくる。

 ここで無視するのはボッチへの第一歩なので受け答えはする……が、精神的にすごいきつい。

 原作は良く知らないが、少なくともこいつとかかわれば、少なからず何か被害が及ぶ。

 そうならないためには仲よくしないのが一番だ。

 だがそんな俺の考えを裏切るかのように……

 

「ねえ、倉本くん」

「なんすか?」

「倉本君はこの問題分かる?」

「分からないっす」

「そうなんだ……でも、といてるよね?」

「適当だから、あっている保証はないっす」

「それでもいいから教えて?」

「いy……はいっす」

 

 という感じによく話しかけてきやがる。

 なんで俺が後輩風に話さなきゃならないんだ。

 席が隣なのあきらか狙ってるだろ。まじで。

 というか、こいつ休憩時間中に話しかけても来る。

 たとえば……

 

「倉本君、今日占いの結果が良かったんだよ」

「あっそう」

「倉本君、占いには興味ないの?」

(俺はお前に興味がないんだけど)

 

 そんな感じにかなり繰り返された日常に、流石の俺も限界を感じ、あることを決心する。

 

 休憩時間。

 いつものように話しかけてくる魔王に俺は席を立つ。

 不思議そうに見る魔王。

 その視線にかまわず俺は教室から出ていき、廊下を突っ走る。

 そう、決心をしたこと、それは逃走。

 

 

 

 

 ここは校庭の一部、簡単に説明をすれば端のほうのあまり人が来ないところだ。

 魔王が追いかけてくる気はしないけど、もしかしたらということもある。

 俺は身を隠し、完全に振り切る準備をした。

 気分は蛇の男。きっと通信機でもあれば「もしもし、大佐か」とか言っていたかもしれん。

 さあ、あの魔王は俺を見つけられるか!

 

 隠れること十分。

 誰もここに来ない。

 流石俺が睨んだ場所だけある、この便所飯歴五年の俺がな。

 しかし、あまりにもさみしすぎる。

 まさかここまでここに誰も来ないとは思わなかった。

 休憩時間だぜ、昼休憩だぜ。

 誰も来ないとか……この学校はインドア派でもそろっているのか。

 

「ちょっとみせてよ」

「や、やめてよ、アリサちゃん」

 

 おっと、女の子二人が来たようだ。

 ふう、あともう少しでインドア派学校だと勘違いするところだった。

 しかし、なんだか雰囲気が悪い。

 不仲っていうか、なんか喧嘩一歩手前というか、雲行きが怪しいっていうか。

 ここで、俺に天啓がくる。

 

 ここでかっこよく登場すれば、どっちかは友達になってくれるんじゃないかと。

 

 そうだ、そうしよう、そうと決まればさっさと行動。

 

「こここ、こら、喧嘩はいけないよ?」

 

 よし、少しどもるだけでちゃんと言えた。

 女の子二人は狙い通りこちらをむく。

 

「なによ、この子がこれを貸してくれないからよ」

 

 金髪の女の子がもう一人の女の子の頭を指す。

 そこにはカチューシャがつけられており、これだろうと俺はあたりを付けた。

 

「ほ、本当?」

 

 実をいうと、気が強い女の子は嫌いだ。

 自分の主張をどうしても通そうとするからだ。

 精神年齢でいえば、俺のほうが圧倒的に高い。

 だけど、それすらあまりあるようなその強い言い方と目つき。

 今だって「嘘だと思うの」といっているような強い睨み付け方に、俺はこれ以上反論できるはずもない。

 

「ちょ、ちょっとくらいはいいんじゃないかなー」

 

 そういって、女の子のカチューシャを取った。

 強いものが弱いものを制す、自然の法則だからだ。

 しかしそんなことをされれば、取られた方の女の子はもちろんショックを受ける。

 涙を目にためていく女の子。

 それでも泣かず必死に返してという姿は、俺に罪悪感を抱かせ自分が悪いことをしているのだという自覚がどんどん実感させられていく。

 もう返そう。

 そう考えた瞬間、奥に信じられないものが見えた。

 

 魔王。

 そう、高町なのはだ。

 

 その姿は完全に怒っており、恐ろしい気配をまとわりつかせて一直線にこちらへ向かってきている。

 恐ろしさに、俺はカチューシャを手近にいた金髪の女の子に渡し、逃走をはかった。

 

 その姿を見た人はこう語る。

 まるで、エイリアンから逃げているかのような顔だったと。

 

 

 

 

 ちなみに次の日、隣の高町なのはは俺に話しかけてくることはなくなった。

 だが、その隣にはしっかりとあの時の女の子二人がついており、俺と違ってあの二人と友達になることが成功したのだとわかる。

 この時、なんだかもの悲しい気持ちになったのは関係ないことだ。

 

 

 

 

 

 私、高町なのははとある男の子を探していた。

 その男の子は隣の席に座る子であり、どこか懐かしい雰囲気のする男の子。

 そして、その懐かしさはなんなのか、一つ思い当ったような気がするのだ。

 

 一年前、公園で別れた男の子。

 

 お父さんが仕事で倒れ、病院に運ばれて一家が大変になったとき。

 家族のみんなはお店が忙しくなり、一人になる時間が増えていったあのとき。

 男の子は、そんな一人ぼっちでさみしい時を過ごしていた私を救ってくれた。

 結局名前はわからないまま去って行ったため、名前で確認が出来ない。

 それに、その男の子は遠いところに行ったはず。

 そう思っていたから、その子ではないと思っていた。

 そのことをお母さんに話すと「本人に聞いてみれば」と言われた。

 だからそれを確認するため、私はあの男の子を追っているのだ。

 

 だけど、見つけた時その男の子は最低なことをしていた。

 同じクラスの月村ちゃんを泣かせていたのだ。

 その瞬間、あの男の子と過去の男の子は結び付かなくなり違うと確信をし、その三人に近づいた。

 その段階で男の子には逃げられたものの、困っていた女の子二人はその場に残った。

 

「あの男の子に何かされていたの?」

 

 カチューシャを取っているところはちゃんと見ていた、でも、月村ちゃんは首を横に振って違うと示してくれた。

 だけど金髪の女の子……アリサちゃんは難しい顔をして、月村ちゃんにむけて頭を下げた。

 

「無理やり言って、ごめんなさい」

 

 月村ちゃんはそれに驚き、私もアリサちゃんが何で謝るのか分からず驚く。

 でも月村ちゃんは、それに優しい顔で「いいよ」と答え、仲直りのしるしと片手を差し出して握手を求めた。

 もちろんそれにアリサちゃんはこたえ、二人は握手をしたのだった。

 

 

 そのあと、私たちは意気投合をして仲良くなったのは別の話。

 


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