リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

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第三話 始まりは学校から

 町に帰ってきて一か月くらいがたち入学式。

 学校はもちろん私立聖祥大学付属小学校。

 原作と関わりあいにならないと決めたらこれだよ。

 まあ、中学校になったら男女別になるらしいし、六年間のがまん……といいたいところだが、巻き込まれそうな事件は小学生時代に集中してんだよなぁ。

 とにかく、同じクラスにならないように祈っておこう。

 

 

 

 

 

 人生は、うまくいかない。

 教室の前、壇上に立つのは高町なのは。

 

「よろしくおねがいします」

 

 ありきたりな自己紹介を終え、魔王は席に座る。

 これは、かなりまずい。

 なぜ同じクラスにならないようにと祈ったら同じクラスになるんだ。

 これはあれか、神は俺を見放したか。

 内心焦りまくりの俺。

 こういう場合はほかのことを考えるべきだ。

 たとえば俺の自己紹介。

 

「倉本龍一です!趣味はどぷっ」

「ときゅぎはまみゅ」

「あばばばばば」

 

 ……黒歴史は、早々に忘れるとしよう。

 だが、このおかげで周りからは受けた。

 うむ、ここから輝かしい一歩を歩みだせるはず。

 ……そう信じなけりゃ俺はやりきれない……

 

「はーい、じゃあさっそく席替えしようか」

 

 いつの間にか自己紹介は終わり席替えなんてことになってたらしい。

 くじ引きタイプのもので、ひもを引いてついている紙の番号が席らしい。

 この瞬間、俺は来たと思った。

 だいたい運というのは悪いことは連続で起きるものではなく、どこかで救済が入るものだ。

 クラス替えの時点で運が悪かった俺に死角はない。

 順番が回ってき、俺は意気揚々とくじを引く。

 

 さあ、俺の強運を見せてやるぜ!

 

 

 

 

「よろしくね」

「いやd……ハイワカリマシタ」

 

 自信過剰は身を滅ぼす。

 今日という日は教訓の塊だ。

 ここまで俺に後悔をさせてくれるなんてな。

 泣きっ面に蜂っていうレベルじゃない、泣きっ面に魔王様だ。

 窓の席を取った時は、確かに勝ったと思った。

 だが、魔王が俺の席の隣を取ったとき、それは地獄にも等しい席位置となってしまった。

 

「人生とは、ままならぬものよの」

「……」

「……」

 

 魔王様にめちゃくちゃみられている。

 なんだこれ、蛇ににらまれた蛙もどきだよ。

 とりあえず俺は、こちらを見ている魔王様に愛想笑いを浮かべ真意を探る。

 

「えっと、なんでしょう」

「……なのはと、あったことある?」

 

 何を言っているのでしょう、この魔王は。

 俺が魔王と会った?

 ねーよ。というかあったらおれ既に死亡フラグ立ってるんじゃね。

 そもそも、ここ一年この街にはいなかったし、あったことがあるはずがない。

 俺は「気のせいだよ」とかえし、会話を終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここで家の話をしておこう。

 親戚は近くにいるが、実際はあまり俺を相手にしない。

 というのも、一週間毎日来ていた親せきは、俺の生活に感銘を漏らし「うちにもこんな良くできた息子が欲しいわ」といったのち、徐々にうちに来る日にちが減っていった。

 つまるところ、放っておいても問題ないと判断したらしい。

 俺自身、あまり気にしなくていいよと言っていたので来なくなるのに一役買い、ほぼ一人暮らしになったといえる現状。

 小学生で一人暮らしなんて、この街で俺一人だけだろうと少し調子に乗ってたりするのである。

 

 そしてこの日は久しぶりに親戚が来る日。

 俺はこまめにやっている掃除を念入りに行い、ある程度ごはんの準備をしておく。

 家事を怠っていないという姿勢を見せないと、いったいいつ一人暮らしが辞めさせられるか分かったものではないからだ。

 

「お邪魔するわね」

 

 ちょうどよく親戚が来たようだ。

 俺は玄関まで迎えに行き、買ってきてもらった土産をもらう。

 実年齢からするとかなり子供っぽくて恥ずかしいが、これもすべて周りの目を欺くため。

 転生していると知られると、何があるか分かったものじゃないからな。

 ……べ、別にケーキがおいしいからってわけじゃないからな!勘違いすんなよ!

 

「龍一君は、翠屋のシュークリームが好きね」

 

 狙い通り、子供っぽく見られている。

 ……う、うるさいな、シュークリーム好きで悪いか。

 というか俺は何に突っ込んでいるんだ。

 こほん、言い訳はとにかく、ここのシュークリームはどこか懐かしい味がする。

 といっても、こんな一口食べたら忘れられなくなりそうなこの味は、かつて食べたものには当てはまらず、自分自身何が懐かしいのか分からないのである。

 しかし、確かに懐かしい感じはし、なんだかんだいって結局のところおいしければいいやという結論に達し、食べるというのが毎回の事になっている。

 今回も例にもれず、同じように思考した後食べることになったのであった。

 

 ほんと、何が懐かしいんだろうな。

 


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