リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

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第二十八話 魔法特訓

 夏休みに入った。

 一年前ははやての家に入り浸ってたなーと懐かしく思う。

 それも一か月半くらい前に終わったことだ。

 

『やっぱり寂しそうな顔してる』

 

 すっかり同居人と化したアリシアが余計な口出しをしてくる。

 図星ではあるけど、それは認めたくない。

 一応俺にもプライドはある。

 

『今から行っても多分受け入れてくれるよ?』

「ばかいえ、今更どういう風に会えばいいんだ」

 

 よりにもよって誕生日の日から行かなくなったからな。

 

『そりゃあれでしょ、お土産もってって「旅行に行ってました」で』

「一か月半も旅行かよ」

 

 外国に行ったとでもいえばいいのだろうか。

 だが悲しいことに未成年だけで外国には渡れない。だってパスポートないし。

 

『じゃあ、甲子園を目指してたとか』

「帰宅部なのにか」

 

 昔は放課後はやての家に直行だったから、俺が何もやってないことバレバレだろ。

 

『じゃあ、友達料金をもらってなかったとか』

「どんだけ鬼畜なんだよ俺」

 

 むしろ払いたいくらいである。

 

「もうこの会話終わり」

『えー』

 

 いくつか案は出しても、有効なものはない。

 どのみち、行く気はないけれど。

 

 

 このとき龍一自身は思い至っていないが、実際のところヴォルケンリッターが敵意を持っているので、今更行けば龍一がどうなるかわかったものではない。

 

 

「そんなことより、この夏休みちょっと山籠もりするぞ」

『へ?』

「自然にもまれれば、きっと俺の魔力の扱いはうまくなるだろう」

 

 自信満々にそういって見せる。

 ぶっちゃけ根拠はないけど。それに山籠もりといっても本気で山で生活をする気もない。

 

『魔力って、魔法の練習をするの?』

「そのつもりだけど」

 

 意外そうにアリシアは言ったが、何かおかしいところはあっただろうか。

 

『魔法、嫌いだと思ってたのに』

「え?」

『だって、お母さんとの時かなり難色を示してたよね』

 

 そういわれてみればそうではある。

 ただ、俺はその時別にもう一つだけ思っていたところがあった。

 

「正直、こういうことになっている以上、逃げる術でももってないとだめだと思ったんだ」

『ああ、そういうこと』

 

 どうやら納得していただけたようだ。

 ただその納得の仕方は呆れも交じっていたが。

 

「というわけで、バインド、ブースト、配置型を主に練習しようと思っている」

『完全に逃げ腰だね』

 

 当たり前だ。

 

 

 

 

 さっそく山に来た。

 まずは、アリシアに頼んで結界を……

 

「……なあ、結界ってばれる?」

『時空管理局に? 普通にすれば多分ばれるよ』

 

 いきなり詰んだ。

 しかし、何とかして特訓はしたい。

 

「なんとかして感知されないようにできないのか?」

『うーん……いくつか何もない結界をしかけていけば、無視されるかも』

「一斉捜査の可能性は?」

『むしろ警備を厳重にされて、結界作った瞬間に捕縛だと思うよ』

 

 それってダメじゃん。

 いっそ結界なしでするか?

 でも、無しでするとアリシア母の時みたいに大惨事になるかも……

 

『魔力反応を限りなく薄くすればもしかしたら……』

「限りなく薄くする?」

『バインドとかの練習なら、結界の強度は関係ないし』

「なるほど、とりあえず作ってみるか」

『いつでも逃げれるように準備しておくね』

 

 アリシアの準備が済んでから結界を作る。

 もちろん、ハッキングの準備。

 結界を作るときは、なるべくばれないように薄く狭く。

 三メートルくらいの正方形くらいの結界を完成させて、アリシアに状況を聞く。

 

『ん。大丈夫、魔力感知する機械をちょっとハックしたら全く反応しなかったよ』

「ばれたら犯罪者になりそうだな」

 

 アリシアが言うには、そのまますればどうやっても見つかるらしい。

 あとは人力で見つけようとしない限りは大丈夫と言われた。

 

「それじゃあ、練習を始めるか」

 

 とはいえ、三メートルではブーストは出来ない。

 とりあえずバインドの練習をすることにした。

 

「鎖と縄、どっちがいいと思う?」

『見た目ならどっちでもいいけど、鎖の方が力入りそうじゃない?』

 

 バインドにかかわらず、自分の力の込め方で魔法は見た目関係なしに強くも弱くもなるらしいので、なるべく力を込められる方がいいとアリシア談。

 

「どっちもやってみるか」

『そうしてみれば?』

 

 その辺の小枝にバインドをかけて、適当な魔力弾で攻撃する。

 両方を試してみてつぶやく。

 

「……縄の見た目の方が強いな」

『アニメの観すぎじゃない?』

 

 最近アリシアもアニメを見始めて談義が出来るようになった。

 どうやら、その中では鎖の方が壊される機会が多いらしい。

 しかし、縄で巻きつけるときに女だったらエロいよなとか思ったのは秘密。

 男というのは単純な生き物だと思う。

 

「アリシア、どうすれば壊されないものを作れると思う?」

『二重三重にするとか……いっそ魔力を封じるとか』

「できんの?」

『お母さんのデータベースからすると可能』

 

 だそうで、いろいろと試してみた。主にアリシアにかけて。

 

「ほら、魔力で壊してみてよ」

『デバイスに壊せ!? 無理だよ!』

「アリシアのお母さんと戦うとき魔法撃ってたじゃん」

『使用者の魔力を使って魔法撃ったんだよ。一人じゃ無理だって』

 

 そういわれたらしょうがない。

 とりあえず鎌の柄の方を持つ。

 

 パキッ

 

 あっさりと音を立てて壊れた。

 

『……練習だね』

「だな」

 

 的確にバインドを狙って誘導弾放ったアリシアもすごい、とは言えなかった。

 

 

 

 

 気が付くと夜になっていた。

 

『これくらいで終わりにしよ』

「なんか疲れた……」

 

 疲れているわけじゃないのになんか気怠い。

 アリシア母の時は圧倒的な魔力だったせいか、気怠くなるのが早く感じる。

 一日中バインドを使って強度確認していただけなのにな。

 

『お兄ちゃんすごいね。今日一日でここまで強くするなんて』

「データを改ざんするだけで強くなるならそっち選ぶよ」

 

 強度が上がったのは、俺の魔力の使い方がうまくなったわけではなく、テンプレ的データとして入っていたバインドを改ざんしただけ。

 魔法なんて、幾らかの計算式とかそんなんでできてるから、そこを変えればてっとり早く強くなるんだと。

 転生前は遊ぶ友達もいなくてPCいじるのが日課だったから、こういう改造は得意だったりする。とはいえ、いろいろな情報を持っているアリシアがいなければ無理だっただろうが。

 まあ、小学生にできる芸当ではないことは確かだ。

 

『お兄ちゃん、本当に小学生のフリをするつもりある?』

 

 同じことを考えたらしい。

 


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