リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

26 / 100
第二十六話 終わりは始まりの合図

 再び学校に登校するようになって三日後、アリシアから情報が入った。

 

『お母さん、あの後転移で時空管理局に行ったみたい』

「時空管理局?」

 

 初めて聞く単語を聞き返す。

 どこかで聞いたことあるような気がするけど、どこだったかな……

 

『時空管理局っていうのは、とある時空で作られた、管理世界を取り締まる警察署のようなものだよ』

「ふうん、まあ、魔法なんて言う摩訶不思議現象をボンボンいろんなものを打ちまくるやつがいたら、そりゃそういうのもできるよな」

 

 納得はできる。

 しかし、魔王ほど取り締まらなきゃいけないやつはいないんじゃないか? あいつ、魔法を好き勝手撃ちまくってんだろ。

 

『そのとき、わたしの妹でもあるフェイトに高町なのはっていう現地人も一緒に転移したらしいよ』

「へー、フェイトになのは……へ?」

『聞こえなかった?』

「あ、いやいや、そういうわけじゃないから」

 

 フェイトになのは、リリカルなのはを飾る二人でもある。

 そいつらといっしょ? ってか、アリシアは何て言った?

 ――わたしの妹でもある

 

「ば、馬鹿な!!?」

『わっ、な、何?』

 

 まさかまさか、あいつらにかかわらなかったのに、いつの間にかかかわっている?

 良く考えてみれば、アリシア・テスタロッサのテスタロッサってフェイトの苗字……

 

 なんで気付かなかったんだ。

 

『よく分からないけど、続き言うね。お母さんは重要参考人、フェイトも同じかな』

「え? よく分からない場所崩壊させてたのに?」

『うーん、罪状を詳しく調べてみたら、局に対して故意に邪魔をしたのではないかっていうのに対して、お母さんは知らなかったんじゃないかっていうのが濃厚のようだよ』

「その辺よく分かんないから、適当に流して」

『簡単に言うと、庭園崩壊はお母さんのものだし、ジュエルシードの大半が行方不明、お母さんが持っているものは管理局に献上したことにより、悪いことをした証拠がないんだよね』

「つまり?」

『お母さんの証言で変わることになるね。罪もいろいろ』

 

 何とも言えない気持ちになる。喜ぶべきなのか、どうなのか。

 だって、これで無罪なんてことになったら、うちに押しかけてくる可能性が上がってしまう。

 なんとか、有罪になってくれないかな……

 

『あ、待って、情報が更新された』

「え?」

『お母さんがジュエルシードを収集しようとしたことを認めて、少なくとも有罪にはなるらしい』

 

 っっっっしゃあああああ!!

 これでアリシア母が来る可能性はゼロになった!

 フェイトは普通に出てくるだろうが、関わらなければいい。

 なんだ、簡単じゃないか。

 ふう、さっきは焦って損をしたぜ。

 

『なんでも、フェイトの罪を全部肩代わりしたかららしいね。お母さん、母親らしいことしたんだ』

 

 ま、まあ、原作でも自由の身だしな。問題はない。

 

『お母さんも、証拠がないから幽閉ってことはなさそうだけど』

 

 牢獄じゃないのかよぉおおおおおお!

 と、そこで、一つ不思議なことが出来る。

 

「その情報、どこからとってるんだ?」

『え? 管理局にハッキング』

「場所特定される!」

『大丈夫だよ。そんなへましてないから』

 

 自信満々にいうけど、それが逆に不安だったりする。

 こういう場合はえてして失敗したりするからな。

 

 ピンポーン

 

 ……え? 家のチャイムが鳴った?

 

「ちょちょちょ、ちょお」

『あれ? そんなはずは……』

「居留守使う? 使おうか?」

『公務執行妨害……』

 

 恐ろしいことをつぶやきやがる。

 俺は恐る恐る玄関に立ち、思い切って扉を開ける。

 

「息子よ。突然だが、帰ることになった」

「とっとと帰れ」

 

 父は泣いた。

 

 

 

 

 両親は仕事の急な都合で外国に帰ることになった。

 そうはいっても、俺がいなくなって無理矢理伸ばした休暇なので、どのみち帰ることになっただろうけどというのが親の談だ。

 これからは再び悠々自適な生活がおくれるというわけでもあるな。

 

『押入れ生活とはおさらばだね』

「え? いや、見つかったら嫌だし押入れだぞ」

『ガーン』

 

 いつどこかで見られるかわかったもんじゃないからな。

 

 

 

 

 別れ、それは誰にも出会いと等しく訪れるもの。

 この臨海公園で、その別れを経験している者がいた。

 

「じゃあね、フェイトちゃん」

 

 自分のリボンをわたし、再び会うことを約束した少女はお互いに別れを告げる。

 しかし、そこで一人の少女は疑問に思う。

 

「……いつもつけてるリボンと色が違うね」

 

 フェイトは出会ってからいつもつけていたリボンと違うことに疑問を覚えた。

 それに対し、なのははすまなさそうに説明する。

 

「いつもつけているのは、昔の友達からもらったものだからあげられないの」

「もしかして、今のわたし達みたいに?」

「同じようで違うかな。あの子とは、いまだ連絡がつかないから……」

「なのはちゃん……」

 

 フェイトは悲しそうななのはの表情に何も言えなくなった。

 だから、せめてものかわりに肩を抱いて耳元に告げる。

 

「わたしは帰ってくるよ。きっと」

「フェイトちゃん……うん」

 

 彼女たちはわかれる。

 再会の約束をして。

 

 フェイトは思い出す。

 ここで起こった出来事を思い出のようにして。

 

(お母さんが元の優しいお母さんに戻ってよかった。でも、結局誰があのバインドをしたんだろ)

 

 虚数空間に消えゆく庭園で再開したプレシアはなぜかバインドで縛られてあった。

 かなり強力なもので、解除も難しく、解除するのに一日使った挙句自然消滅という結果になった。

 そのバインドから出力先を読み取ろうにも、それすら無理。

 プレシア本人からも、逃げようとしたところで突然縛られたといって正体不明のまま。

 そんなことがあり、虚数空間が発生したのも、プレシアがやったことも、ジュエルシード事件も実はすべてその謎の人物が犯人ではないのではないかということになっている。

 フェイトとしては、そんな風になって母の罪が軽くなって喜ぶ半面、少し悪い気もした。だって、母がしようとしたことは本気だったから。

 

(なのはちゃんにもお世話になったな)

 

 次に思い返すのは友達となった少女の事。

 ジュエルシードを集める段階でいろんな場所で取り合いをして、最後には一対一をして見事に負けたこと。

 どれも、大変で辛い時期ではあったけど、どれも大切なことで、こうして出会えたのは本当に奇跡だと思う。

 

 そして、最後に思い出すのはとある男の子。

 

(突然怒られて、驚いたよ)

 

 ジュエルシードを渡せと言ってアルフが襲い掛かったら、買い物を落として怒られ、その後料理をふるまってもらったこと。

 とても面白い子で、初めてまた会いたいという感情が湧いたこと。

 どれも、短い出来事のはずなのに昨日のように鮮明に思い出せる。

 

(あの子の名前、聞くの忘れてたな)

 

 それがフェイトにとって問題だったが、実のところ家の位置はバルディッシュに覚えてもらっていた。

 それがあるから、フェイトは再び会えることを疑ってなかった。

 

(とりあえず、帰ってこなきゃね)

 

 自分はこの先どうなるかわからないけど、絶対にここに帰ってこよう。

 フェイトはそう心に決めた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。