リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺 作:500MB
戦艦アースラ。
数日たった今、なんの書き記す事もないほど原作通りに向かっていた……はずだった。
行方不明者。
この件においては誰もが決定を決めたと思っていたが、だれかが一つの可能性を言ったのだ。
もしかすると、元凶であるプレシア・テスタロッサが転移の魔法でも使ったのではないかと。
そうであれば、プレシアの目的であるジュエルシードはもうほとんどがそのプレシアの手元にあるはずなのだ。
そうであれば、奴の目的であるアルハザードという失われた……まあ、なんでも願いがかなうところに行くという目的が果たされてしまうかもしれない。
そのことに気付いたリンディは、今決断を迫られていた。
プレシアの願いがかなうとき、同時にこの次元が犠牲になるかもしれない。
ぶっちゃけ、最後まで粘るか(自分たちにとって)安全を選んで自分の故郷の次元へ帰るかである。
彼女はなんとかならないかと考えていた。
このまま見捨てることは出来ない、だけど、これ以上自分たちにできることがあるのかと。
そんな時、通信が入った。
相手は――プレシア。
「ふーん。お母さんがアルハザードをね」
『そうそう。こっちは死んじゃってるし、止めようもなくて』
「困るよね、自分中心に考えちゃうの」
『わたしのためというのはわかるんだけどね、やり方が無茶苦茶で』
こんにちは、今アリシアという機械と話しています。
形は鎌で、農具かと最初は思ったけど違ったようだ。
なんでも、デバイスとかいうものでこれを使えば魔法なるものが使えるらしいのです。
……正直混乱中。
ちなみに、彼女に関してだけど、だいぶ前にとある実験の犠牲者になったらしくて、本体は死んだけどリニスとかいう人に思考をよみがえらせてもらい、本体とつながらせてもらったらしい。
その際に、自分の母親プレシア・テスタロッサが危険なことをしているのだと知って、止める方法を今まで考えていた、と言っていた。
あとどうでもいいけどお兄ちゃんと呼ばれている。兄が欲しかったから、みたいなこと言っていた。
「というか、見ているように言うんだね」
『思考はお母さんの近くにある体と繋がっているから』
「生きてんの?」
『死んでる』
わけわからん。
まあ、魔法の中に念話とかあるらしいから、その類なのだろうと納得する。
『ところでお兄ちゃん、お兄ちゃんはフェイトにあったことある?』
「フェイト?」
フェイトと言えば、リリカルの世界ではフェイト・T・ハラオウンが思いつく。
そういえば、さっき数日前にこの部屋の前を通っていた二人組の一人がフェイトとか呼ばれてたな。
「いや、会ってない」
『そうなんだ……』
見た目が分からないから、もしかするとすれ違ったりとかしているかもしれない。
そこで、ここを歩き回って誰にも会ってないことに気が付く。
「そういえば、ここにきて結構部屋を回っているけど、誰もみかけないな」
『わたしが誰もいないところを選んで通っているからね』
疑問が一発で解消された。
「ところで会話に付き合っているけど、早く脱出方法教えてくれない?」
『ちょっと待ってよ。その前にやってほしいことがあるから』
「やってほしいこととな」
会った時からこう言っているけど、内容はさっぱり教えてもらえない。
ちなみに、最初はどこからかしゃべっているのか分からなかったり、初対面の人ということでガクブルしていたけど、数日間こうしているので流石になれた。
『確認しておくけど、ジュエルシードは持っているよね』
「これのことだろ? 六個全部あるよ」
ここに飛ばされたときにもきちんと持っていた石。
詳しくこれのことを聞いた今じゃ、持つのすら怖い。
アリシアの話によると、封印されているから大丈夫だとか言っていたけど、それでも心配俺ビビり。
それが通じたのか、アリシアは
『じゃあ、それをとりあえずわたしに頂戴』
「どうやって?」
『ええと、そこにおいて』
「よしきた」
六個固まるように置く。
石は鎌の中心あたりに埋め込まれている宝石に吸い込まれるようにして消えた。
「うえっ!?」
『なに驚いているの?』
「え、いや、魔法ってすごいな……と思って」
そこまで行ったところで、突然あわただしくなったような気がした。
そういうのも、外でばたばたと今まで静かだったのに音がしたからだ。
『よし、でるよ』
「え? どゆこと」
『行く途中で説明するから。行くよ』
「行くってどこに……」
『お母さんのもとに!』
ここは時の庭園。
プレシアは捕まらない少年にいら立たせていた。
その結果、彼女はせめて時空管理局のアースラにあるジュエルシードを取ろうと模索した。
それは、逆探知され今はその時の庭園に攻め込まれる事態となっている。
結局のところ、彼女は焦り過ぎた。
(どうしてこうなった?)
彼女は考える、どこで計算が狂ったのかと。どこで間違えたのかと。
自分の行っていることが間違いだとわかっている。そう簡単にうまくいくはずがないことも。そして、目的が達成できるのかどうかすら怪しいことも。
だけど、あきらめない。あきらめればここで終わってしまうから。
「アリシア……お母さん、頑張るからね」
生きていないその体に向かって話しかけるプレシア。
その姿は、外から見れば狂人にも見える。
そんなことは本人も百は承知。
それだけ、アリシアは彼女の支えだったのだ。
失敗した作戦は戻せない。
この時の庭園に乗り込んできた時空管理局がここに来る前に、ジュエルシードを使い次元震を起こそうとする。
もともと科学者だった彼女からすれば、手元にあるジュエル・シードの量は十分とは思えない。
それでも、しなければならなかった。
自分の命を捨ててでも。
『そこまでだよ、お母さん』
娘の声がした。
あの人造生命体を作成するプロジェクトで作ったクローンであるフェイトではない。
本物の、実の娘アリシアの声。
そんなはずはないと思う。
証拠に、目の前にアリシアの体がある。
ならばなんだというのか。
プレシアは振り返る。
そこにいたのは、転移で連れてきたはずの少年の姿だった。