リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

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第二十話 知らぬ間に進む世界

 こんにちは、倉本龍一です。

 さっそくですが、今海を漂流しております。

 その原因を説明しましょう。

 

 

 

 

 数時間前。

 テンションを高くした父親は、何を思ったのか突如こんなことを言い出した。

 

「釣りに出かけようぜ息子よ」

「ええー」

「釣りはいいぞ。元気のいい生命の海から跳ねる魚。そして、それと釣竿一本で勝負するこの気持ち」

「はいはい、行くからそのへんにしといてね」

 

 そうして、いつの間にか買っていた釣竿を取り出して近くの海へ出かける。

 その際沖の方がいいのが釣れるという本当か嘘かわからない噂を信じて、父親はボートをレンタルして俺を沖につれだそうとした。

 嫌な予感がするので俺は拒否したのだが、大物を釣りたい父親はそれを却下しボートに乗り込む。

 そして、いざ出発というときに父親はトイレへ行った。

 面倒と思いつつ俺はボートの上で寝転がったのだ。

 

 ……ちゃんと、見てなかったのが悪かったのだろう。

 ボートをつないでいたロープが解けるのに気付いたのは、沖に流されてしばらくたってからだった。

 

 

 

 というわけで、回想終わり。

 父親が携帯を持って行ってなかったため俺の携帯で救助を呼び、救助を待っていた俺は割とのんびりとしていた。

 まだ春の日差しなのでそんなに熱くなく、海も涼しいので結構快適だ。

 さすがにずっとここにいるわけにはいかないだろうが、焦ってもしょうがない。

 というか、何も起こってほしくはなかった。

 気付いたのはボーっと空を見ていた時だった。

 空で戦う少女たち。そう、リリカルの原作キャラを見てしまう。

 まさか海に流されてみることになるとは思わなかった。

 徐々に荒れていく海をボートにしがみついてなんとか耐える俺。この辺で割高のボートを借りていた父に感謝をした。

 安い船だととっくに沈没していただろう。

 

 そうして、荒れた海が戻ってきたころ、俺はボートの近くに流されていた六個の玉を見つけた。

 拾い上げ、確かこれはと前に見た時の事を思い出す。

 

 あ、これ、金髪少女と猫耳女性の持っていたものだ。

 そして、その二人は上空にいて……俺は何かに当たった。

 

 

 

 

 目が覚めると見知らぬ部屋。

 

「急展開過ぎるだろ! なんだよこれ!?」

 

 正直訳が分からなかった。

 簡単にまとめると

 釣りに行く→流される→海上の決戦みたいなのを見る→変な部屋に来た。

 うん。わけわかんないね。

 予想では、魔法かなんかで転移されたんだと思うけど、なんで巻き込まれたのか理由が分からない。

 そこで、いまだ持っていた玉を見る。

 ……まさかこれのせい?

 とりあえず、じっとしておくのも怖いので、動き回ることにした。

 

 少し離れた時、「逃げたなあの小僧!」という恐ろしげな女の人の声が聞こえた。

 聞かなかったことにした。

 

 

 

 

 戦艦のアースラ。

 今まで出番がなかったため、軽く説明をしておく。

 彼らは次元世界というさまざまな次元にある世界を守る人たちだ。

 本日戦艦の乗組員は、海に集まっているジュエルシードというロストロギア……簡単に説明すれば、主人公が見つけた石ころはとっても危険なもので、それは人のどんな危険な願いであろうと叶えるものだった……を一気に集めようとした。

 そんなことはこの乗組員の敵、フェイト……主人公と会った金髪の少女……も分かったもので、海上で戦闘を行うこととなっていた。

 

 しかし、両者にとって予想外の事が起こった。

 

 戦闘の途中、一般人が結界の中に入っているのを見つけたのだ。

 本来なら結界の中に人が入ることはない。

 だけど、その常識を破って一般人が入り込んでいたのだ。

 こうなってしまえば、アースラの乗組員も黙っていられない。

 艦長のリンディ・ハラオウンは急いでその一般人を助けに入ろうとした。

 しかし、戦闘は激化していて下手に止めに入ることは出来ない。

 ジュエルシードの封印が完了したとき、突入をしようとリンディは指示をし、その時を待った。

 そしてジュエルシードの封印が終わり突入を試みた時、一般人はジュエルシードを掴み、どこかに転移をされた。

 誰もが反応できず、また、予想もできなかった。

 残されたのは、海上に残る少年少女だけだった。

 

 

 そんなことがあって、艦内は大忙しだった。

 

「リンディさん! 一般人がいたって本当ですか!?」

 

 高町なのはは念話で一般人の存在を聞いて、艦内に飛び込むようにして入っていった。

 リンディはそれを迎え入れ、首を縦に振った。

 また、この乗組員はほかにもミスを犯している。

 一般人の存在をよく監視していなかったことだ。

 つまり、どんな人物か一切わからず、その場合助けることは不可能に等しい。

 それはそうだ。誰かわからない人物を助けるなんて、大都市に紛れ込んだごく普通の特定の大人を見つけることに等しい。

 そんなわけで、アースラの乗組員たちはそれぞれこの先の事を考えているのである。

 

 その後決まった方針としては、一般人を見捨てる方向になったが……

 

 

 

 

 俺だよ龍一だよ。

 今はなんかよく分からないところを歩き回っているんだ。

 分かっていることはまったくなし。俺はいったい何をやっているんだろうね。

 本当釣りの時点で止めときゃよかったって思う。

 いくつか部屋を回ってみたけど、なんか機械が置いてあったり普通の部屋っぽかったり、ここがどんな場所かよけいにわからなくさせるものだった。

 つまるところ、迷っているといってもいい。

 歩き始めてかれこれ一時間は軽く過ぎてるよ。

 どうすればいんだろうね、本当に。

 

「~~」

「~~」

 

 はっ、どこかで声が聞こえた。

 これは素早くどこかに隠れなければ。

 そう考え、ちょうど真横にあった部屋に入る。

 他に隠れる場所もないので、ここに隠れるしかなかったのだ。

 

「アルフ、お母さん、何を怒っていたんだろうね……」

「あいつのあれはいつものことさ」

「ううん、なんだか、いつもより怒っている感じがした」

「フェイトがそういうのなら、そうなのかもね」

 

 二人の足音が遠のく。

 もしかしたら、ここで住んでいる人かもしれない。

 そう思って扉を開こうと手にかけた時、離れてきたのか小さく声が聞こえた。

 

「怒らせている本人が出てきたらどうなると思う?」

「腹に風穴があくんじゃないのかい?」

「そこまではし……するかも」

 

 そこで、俺は出ていくのをやめた。

 しかしここは袋小路。逃げ場はない。というか、いまだに場所も判明していない。

 

(どうするか……)

 

 今までの話を総合すると、ここはとてもでかい家で何故か連れ去らわれた。

 女の人がここの主人で、先ほどお母さんと言っていたが、実は独り身。

 その女の人はなぜか俺をさらって何かをしようとしているらしい。多分。

 そんなわけで、現状を考えてみると、逃げられないというわけだ。

 

 ……ふむ。

 

「これ、本当に逃げだせんの?」

 

 扉の前で俺はそう結論をだした時だった。

 

『逃がしてあげようか』

「え?」

 

 部屋の奥から声がした。

 そこに視線を向けても何もない。

 気のせい……そう割り切ることは出来そうもない。

 声が、また聞こえてきたから。

 

『ここから脱出したいんでしょ? 手伝ってあげるよ』

 

 俺はその声の正体に気になったが、今は正体を暴くことが先決ではないことを思い出し、首を縦に振った。

 


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