リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

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第十九話 仲介というムリゲー再び

 学校、なんか言い合いをしているアリサと魔王がいた。

 関係ないと思い俺は見なかったことにして本を読む。

 と、思ったら月村が俺の前に来た。

 

「倉本君、二人を止めてあげて!」

 

 焦った感じで言ってくれる。

 確かに二人の空気はかつてないほど悪く、このままだと仲違いをしそうだ。

 前にアリサと月村のけんかの仲裁をしたときは、俺の逃走で終わった。

 あの後どうして仲良くなったかはわからないので、俺に任せるのは間違いなんじゃないかと思う。

 だけど、月村の表情もただ事ではなさそうで、これを放っておくのはさすがにはばかられた。

 なので、俺はいうがままに仲裁に入ろうとする。

 

「あのー、喧嘩は良くないと思うな」

「倉本うるさい」

「入ってこないで」

「すいませんでした」

 

 すごすごと月村のもとに戻る。

 

「無理でした」

「あきらめるの早いよ!」

 

 うお、月村に初めてつっこまれた。

 どうやら、俺の予想以上に大変なことになっているようだ。

 あまり魔王にかかわりたくはないけど、月村がここまで言うのならしょうがない。

 俺は再び二人のそばに近寄る。

 

「アリサ・バニングス、高町なのは、直ちに喧嘩をやめなさい。あなたたちは包囲されている」

「何言ってんのよ馬鹿。じゃましないで」

「うるさいよ倉本君」

「はい」

 

 またしても月村の元に戻る。

 

「口出す隙もないや」

「もう!」

 

 おお、月村がほのかに怒るとこはじめてみた。

 ……しょうがない、もう少し考えてみるか。

 

「よし月村、いろいろ試してみよう」

「試す?」

 

 TAKE1

 月村が二人のもとに向かう。

 

「二人とも、喧嘩をやめて!」

「すずかちゃんには関係ないよ」

「そうよ、すずかは黙ってて」

 

 予想通り追い返される月村。

 そこで俺が出てくる。

 

「すずか、いいんだ、やらせておけ」

「で、でも」

「あいつらは、今青春の一歩を歩んでいるんだ。これをこえて、あの二人は成長する」

「……そうだね」

 

 さあ、こうやって寸劇をすればバカバカしくなるはず。期待して、二人を見る。

 

「そもそもアリサちゃんが――」

「なのはだって――」

 

 ……思いっきり無視された。

 ちなみにすずかと呼んだのは作戦に必要なだけだ。

 

 TAKE2

 今度は、無理やりこっちを向くように考えてみた。

 俺は二人の間に入ってこういう。

 

「さあ、殴りたいなら俺を殴れ!」

 

 アリサのパンチがみぞに入りました。

 

 TAKE3

 きっとイライラしているだろうからと言ってみたが、止まらないところを見るとどうやら違うようだ。

 痛がっている俺に近づいた月村に耳打ちして、次に作戦を始める。

 耳打ちをされた月村は顔を赤くしながらも二人に近づく。

 消え入りそうな声で、ポツリとつぶやく。

 

「倉本君と……つきあう……ことになりま…………」

 

 あまりに小さな声にどうやら聞こえなかったようで、二人は気にせず喧嘩を続ける。

 ポツリポツリと言うが、余計に声が小さくなっていく。

 我慢ならなくなり、俺は再び間に入り叫んだ。

 

「月村をもらっちゃってもいいか!?」

 

 反応はない。

 もうやけっぱちだ。このまま長引かせたくない。

 

「げへへへ、じゃあ月村はもらっていくぜ」

 

 月村の肩を抱く。

 心境としては、もうどうにでもなーれ。

 

 瞬間、殴られた。

 今度はアリサだけじゃなく、魔王にも。

 

「大丈夫!? すずか?」

「すずかちゃん、平気?」

「あ、うん」

 

 殴り飛ばした俺を無視して月村に駆け寄る。

 月村はそんな俺をちらちらとこちらを見て心配してくれていた。

 その視線を追うように、アリサと魔王は俺を見る。

 

「何見てんのよ、色情魔」

「そんなことする人とは思わなかったの」

 

 あれ、俺完全に悪い人扱い?

 喧嘩を始めたこいつらが悪いだろうに、なぜか俺をごみを見る目で見てくる。

 もちろんこういう場合、することは決まっている。

 

 俺は逃げだした。

 

 

 

 

 倉本君が逃げ出した。

 なんだか、いつもの事になってきている気がする。

 アリサちゃんとなのはちゃんはそれを見送り、わたしに視線を向けてくれる

 

「すずか、心配させてごめん」

「すずかちゃん、喧嘩しちゃってごめんね」

「そ、それはいいの。でも、倉本君の事は……」

「わかってるわよ」

「倉本君がわざとやっているわけないの」

 

 すぐにそう返事をしてくれる二人。

 決して疑ってるような顔ではないことは、わたしでも見てわかる。

 どうやら、倉本君のしたことはしっかりわかっていたらしい。

 そのままアリサちゃんとなのはちゃんは向かい合う。

 

「なのはもごめんね、無理に聞き出そうとして」

「ううん。話してあげられないのは同じだから……」

 

 喧嘩の原因はなのはちゃんがなにか悩み続けていたこと。

 それがアリサちゃんには気に入らなかった。

 だから二人は喧嘩になった。

 

「でもなのは、一人じゃ抱えきれないと思ったらすぐに話して。絶対……絶対に力になるから」

「ありがとう、アリサちゃん」

 

 仲直りはここで終わる。

 なのはは戻ってこない倉本君を追って(多分逆効果)、アリサちゃんはここに残った。

 残ったアリサちゃんはわたしに小さく告げる。

 

「あたしはね、力になれないことが悔しいの」

 

 それはわたしも同じ気持ちだった。

 なのはちゃんは溜めこもうとする性格だ。だからたぶん自分で解決をしようとする。

 アリサちゃんの気持ちはわかる。

 アリサちゃんがああやって言わなければ、もしかしたらわたしが言っていたかもしれない。

 

「実は前に倉本に相談したことがあったのよ」

「倉本君に?」

「あいつは待てっていってくれた。親友ならきっといつか相談してくれるって」

 

 倉本君なら確かにそういいそうだ。

 そしてアリサちゃんは顔をうつむかせ暗い声で言う。

 

「あたしは、信じきれなかった。親友、失格なのかな」

「そんなことない!」

 

 気がついたら私は声を出していた。

 アリサちゃんの結論はわたしでも間違いだってわかるから。だから、自虐ともとれるその言葉を訂正させる。

 

「それは違うよアリサちゃん。それは、心配だからこそ出た言葉でしょ。それなのに親友失格なんて、間違ってる」

 

 倉本君はそういうつもりで言ったんじゃない。

 実際は分からないけど、きっと倉本君はいつものように接した方がいいから言った言葉なんだと思う。

 悩んでいる暗い気持ちをなくすような、そんな友達として接した方がいいから。

 だから、倉本君はそういった。

 わたしはアリサちゃんにそう伝える。決して間違った行為じゃないと。

 

 アリサちゃんはやっぱり少し悩んだけど、きわめて明るく言った。

 

「だったら、なのはがいつでも悩み事を打ち明けられるように、あたしたちはしっかりするようにしましょ。ねえ、すずか」

「うん。それがいいよ」

 

 わたしたちの絆はそう簡単に壊れない。

 それは、わたしたちだけで作ったものじゃないから。倉本君が固めてくれたものだから。だから、そう簡単にこの絆は壊れない。

 

 きっと、三人とも同じ気持ちだよね。

 


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