リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺   作:500MB

11 / 100
第十一話 邂逅そして友達

 十一月。

 久しぶりに図書館へ来た。

 というのも、はやての家にあった本をほとんど読んでしまったからだった。

 そうはいっても、読めない本はいくつかあったが。

 はやてはまだ借りている本があるからパスと言っている。

 はやてが行くときは付添いに来いとか言うくせに……

 気を取り直して本を探す。

 

「あれ?倉本君?」

 

 ……月村と目が合った。

 

「ず、偶然だにぇ」

 

 やばい、少し噛んだ。

 月村は噛んだところを少しも気にせず、近くへ寄ってきた。

 俺はすぐさま他の二人を確認し、いないことを確認する。

 

「何きょろきょろしているの?」

 

 月村はもう目の前にいた。

 足音も立てずにここまですばやく近づいてくるとは……人間じゃないな!

 

「……なんて」

「え?」

「あ、いや、なんでもない」

 

 どうやら少し声に出ていたようだ。

 根暗にひとりごとが合わさると大変なことになってしまう、気をつけねば。

 

「つきみゅらしゃ……月村さんはどうして図書館に?」

「本を見に来たの」

「図書館だしそれもそうだね。あはは」

 

 地雷ばっかりというか、話題を失敗しているような気がする。

 図書館なんだから、本を見に来た以外あるわけないじゃん!

 あー、な、何か空気を和らげる話題を……

 

「そういえば、いつもいるあの二人は?」

「ずっと一緒にいるわけじゃないよ。それに、今日は休みの日だから」

「そそ、それもそうだね、あはは」

 

 当たり前だろ俺。

 はやての基準で考えるものじゃないぞ、まじで。

 これ以上の恥は避けねばならん。

 よし、次こそ!

 

「月村さんって暇なんだね」

「え?それは……えっと」

 

 あばばばばば。

 俺基準で考えてるんじゃないよ俺!?

 ほら、月村が予想以上の困惑顔で俺を見ている。

 ここから巻き返すには……!

 

「ふふ、倉本君って面白いね」

「え?そ、そう?」

 

 いきなり好評価をもらった。

 さっきのセリフのどこが好評価だったんだ、一体。

 

「だって、考えていること顔に出てるよ。ふふ、百面相みたい」

 

 褒めてるんだよね、それ。

 いや、やっぱほめてないだろう。

 

「ほら、また」

「表情読むの勘弁してください」

 

 ポーカーフェイスが出来たらいいんだけどな。

 

 

 

 

 月村と二人でいろいろ本を見てまわることにした。

 月村も結構図書館へ通っているのか、ある程度の本棚の位置を覚えているみたいで、好きそうなジャンルの本棚が近くにあるとそっちへむかう。

 俺は新刊がいろいろ出ているのを見て、好みの本は一通り見ていたりした。

 

 思い思いに図書館を回り、時間を見るともう暗くなっていた。

 

「月村さんの教えてくれた文庫も面白かったよ」

「倉本君も、私が今まで知らなかった本を教えてくれたり、ありがとう」

 

 二人そろっていくつか借りる本を選んでカウンターへ向かい、本を借りる。

 図書館から外へ出ると、もう空はオレンジ色に染めていた。

 

「そういえば、こうして二人で話すのも久しぶりだよね」

「そうだっけ?」

 

 思い返してみれば、俺にかかわってくるのは魔王だけで、ほかの二人は遠くから見ているだけだった。

 だから月村と二人で話したのは、そう……実に一年前の事ではないだろうか。

 

 月村との和解。

 それは確かに俺の人生にプラスを与えた出来事。

 

「確かに、そうだね」

「あのときは急に逃げてごめんね。……って、もう遅いか」

 

 そう言って微笑む月村。

 鼓動が、高鳴る。

 

(って、何またときめいているんだ!?)

 

 呼吸を整えて、今感じたことを自分の中で整える。

 ときめいたといっても、自分が優しくされたことがあまりなかったからこそ、この笑顔にやられただけ。

 しかし、そうと分かっていても心を落ち着けなければならない。そうしなくちゃ、今の月村の顔を正常に見ることが出来そうにないから。

 

「どうかしたの?」

「ううん、なんでもないよ」

「そう?」

「うん。でも、一年前の事をよく覚えていたよね」

「……倉本君とは、仲良くなれそうだったから」

 

 何の打算もなしに言っているだろう言葉。

 もしかしたら、二人目の友達になれるかもしれない、そんな思いが俺を奮い立たせる。

 前回は間違えた。

 だけど、今回はきっと大丈夫。

 意を決して、月村に話しかける。

 

「月村さん。友達に、なってくれないかな?」

 

 月村はすぐにその答えを返す。

 

「うん。よろしく、倉本君」

 

 月村が俺の表情を読み取れるのならば、その言葉は俺にとって最上の喜びであることが分かるだろう。

 それは何もおかしなことじゃなくて、俺にとって当たり前で。

 

「ねえ倉本君。今回は逃げずにちゃんと言うね」

「逃げずに……?」

「忘れたの? あの時言った言葉」

 

 あの時言った言葉、それは確か……

 

「一緒に遊ぼう」

 一緒に遊ぼう……だったはず。

 

 

 

 

 すずかの日記

 十一月○日

 今日は図書館へ行った。

 そこでクラスメートの倉本くんとあいました。

 クラスメートの倉本くんはいろいろな本をしっていて、おどろきました。

 かえりみち、倉本くんとなかよくなって友だちになりました。

 くらくなってくるのもきにせず夜おそくまで遊んでいたらお姉ちゃんたちがむかえにきてくれました。

 おこられたけど、倉本くんは私のせいじゃないって言ってくれてうれしかったです。

 

 でも、本当はお姉ちゃんが本気でおこっていなかったの、しってた。

 私はあまり友だちがいないから、倉本くんと遊んでいたのには、じつはよろこんでいた。

 だからお姉ちゃんは倉本くんにこう言ったんだ。

「今度は、うちにきなさい」って。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。