リリカルでマジカル。そんな中に入りたくない俺 作:500MB
事故った。
他に特にいうことがないほどあっさりと事故を起こした。
しかし、なぜか意識がある。
最初はこれが死ぬことだとも思ったが、いかんせん何か違和感があってしょうがない。
俺はいまだあけてない眼を開ける。
そこに見えたのは――
「はーい、元気な赤ちゃんですよー」
……は?
そうして、俺は第二の人生を歩むことになったのである。
―三年後―
俺はいつものように公園の砂場で一人山を作っていた。
これも、すべては転生によるものだ。
精神が成熟している俺にとって、その辺の子供と付き合うのは骨が折れるもので、一緒に遊ぶ子がいないのもそのせいだったりする。
……べ、別にコミュ障だからってわけじゃないんだからな!
それと、もう一つ重要なことがあった。
ここ、あのリリカルでマジカルな世界だった。
そう、詳しくは知らないが、あの魔王様やらなんやらが出てくるあれだ。
俺はそれに気づいたとき心に決めた。
原作の奴らには絶対に会わないようにしよう、と。
そんなこんなで数年。
ここで話を戻すが、俺は困ったことになっていた。
そう、このままでは前世と同じようにボッチのまま生きていくようになるのではないかと。
正直、リリカルとかどうでもよくて、最近そっちのほうが恐ろしくなってきた。
それに気づいた俺は、ここ数日間ずっと公園の砂場で山を作っていた。
親は最近とても忙しいみたいだし、家にいるのが暇ということもある。
そうして一人山を作っていたら、誰か俺に話しかけてくれる心優しいやつでも現れないかという期待だってある。
しかし、現実は非常なもので、まったくそんな人が現れようとしない。
俺は愕然とした。
この街にはコミュ障しかいないのだろうかと。
「…………」
ちなみに、現状もう一つ思うことがあった。
「…………」
隣に、同じことを考えている奴がいる。
俺と同じように毎日一人で砂場で遊んでいる女の子。
雰囲気も暗いし、砂場で一人遊びなんて根暗すぎてだれも話しかけないだろ。
そんなことも分かっていなさそうな女の子に、それを伝えてやりたい。
……ん?だれだ、そのお前もだろ的なツッコミを入れた奴。
まあいい。
とにかく俺は、今日こそこの女の子にそれを伝えたいと思っている。
ついでに、友達になれたらいいなぁと……
「…………」
そんなことを考えて早三日。
そろそろ決める時が来たのかもしれない。
女の子の瞳が日を追うごとに弱弱しくなっているような気がしたのだ。
これはまずい。
こういうのは、ほうっておいたら友達なんていいやという思考に埋もれていってしまう。
その結果、外に出ることも少なくなり、人との対話も避け、最悪この公園にも来なくなってしまうかもしれない。
行動に移さねば、せっかく同じ境遇(ぼっち)ということで仲良くなれそうな条件が揃っているのに、いなくなってしまう。
そんな焦燥に駆られ、俺はとうとう決心をして話しかける。
「あ、あのあの、ききき君、いつみょっ!」
ああ、だめだ、噛みまくってる、いきなり最悪だ。
ほらみろ、女の子はこっちを見てぽっかりと口を開けて呆然としている。
これはもうボッチ生活を続けるしかないのかもしれない……
「……ふふっ」
「……え?」
「ふふ、はは、あはははは」
な、なんだこれ、もしや俺は開けてはならない何かを開けてしまったのか?
女の子は俺を見て笑ってるし、これは何だかわからないことになっている。
こうなりゃ、俺も笑ってやる。
「あはははははは!」
「ははははははは!」
数分後。
笑い疲れて女の子は息を整えていた。
整え終わり、女の子はこちらをまっすぐと見つめてきた。
「それで、なに?」
瞳に力は宿っており、しっかりと言葉もつむいでくれた。
どうやら、友人はいるべきだという思考が戻ったのだろう。
もしかしたら、初めての友達ができるかもしれない。
「いつも一人でここにいるからさ、一緒に遊ぼうって」
「あそぶ?」
「うん。ほら、友達いない同士でさ」
「友達、いないの?」
「うん!」
なんか元気にとんでもないことをこたえてしまったような気がしたが、勢いに乗っている俺は止まらない。
今止まったら確実にどもるだろうからだ。
「だから、一緒に遊ぼう!」
「……うん!」
そうして、その日から俺とその子は一緒に遊ぶ関係となった。