少女と錬金術と異世界と   作:蜂蜜れもん

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前回書いていた作品がちょっと問題があったので削除して別の作品を書きました。
前作は一話しか投稿してないし一時間しか掲載してないから、今作を処女作とします。
…良いよね?
「フィリスのアトリエ」と「このすば」のクロスオーバーをお楽しみください^_^

*一話は最後の方しかこのすば要素が出ません。あしからずご注意をm(__)m


一話 錬金術失敗⁉︎

ここは、岩に囲まれた街、エルトナ。

ライゼンベルグで錬金術公認試験に合格したフィリスは、現在は故郷であるエルトナに戻り、日夜錬金術を行なっていた。

 

「これとこれを混ぜてー、そしてここにこの素材を入れてーっと♪」

 

上機嫌で釜をぐるぐる回すフィリス。

彼女は現在、彼女の先生である錬金術士のソフィーが作ったテントの再現に尽力していた。

 

そのテントの名は『アトリエテント』。

 

持ち運び簡単で、組み立て簡単なもので、一見可愛らしい普通のテントなのだが、非常に凄いアイテムなのだ。

見た目は人一人が入る程度の大きさなのだが、中に入ると、外見には見合わない広さの部屋が三部屋ほどあるのだ。

そこには錬金釜もあり、いつでもどこでもアトリエとして利用する事が可能だ。

 

現在もフィリスはエルトナにこのテントを張り、今はその中で錬金術を行なっている最中だ。

細かい事はハッキリと分かっていないが、空間を捻じ曲げるなんて、そんな芸当が出来るとしたら、ソフィーから教えてもらった錬金術でのみ。

そう思いフィリスはなんどもテントの作成に挑戦しているのだが。

 

「え?何この色?というか何この匂い⁉︎あぁぁぁぁどうしよう⁉︎もしかして、また失敗⁉︎」

 

フィリスが気を取り乱した次の瞬間、釜から爆煙が発生した。

 

「ケホッケホッ…、うぅぅぅまたやっちゃったぁ。リア姉に叱られるかなぁ…」

 

そう言って落ち込むフィリス。

リア姉というのはフィリスの姉で、フィリスがエルトナを出て旅をしていた一年間を共に過ごしてきた心強い味方、リアーネの事である。

今でもフィリスがエルトナの外に出て採取に出かける時も、一緒に行って魔物などからフィリスを守っている。

容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群と三泊揃った美人な姉であるが、実はリアーネはフィリスの実の姉ではない。

彼女は幼い頃に故郷を魔物に襲われ、彼女の両親も行方不明となった。

そんな中フィリスの両親であるミストルート夫妻がリアーネを引き取ったのである。

しかしフィリスとリアーネは実の姉妹のように仲が良く、特にリアーネなんて、

 

「フィリスちゃん大丈夫⁉︎凄い音が聞こえたけどどこか怪我とかしてない⁉︎すぐに病院に連れて行くから待ってて‼︎お姉ちゃん、フィリスちゃんを担いで行くから‼︎あ、担架の方が良いかしら?」

 

重度のシスコンであり、フィリスにゾッコンである。

 

「り、リア姉⁉︎だだ、大丈夫だよ。ちょっと失敗しちゃっただけだから」

 

突然の姉の登場に動揺を隠せないフィリス。

何を隠そうフィリスが錬金術を失敗して僅か五秒後の出来事である。

 

「本当に大丈夫なの?もしフィリスちゃんの身に何かあったら、私…うっ…うっ…」

 

「ちょ、リア姉、泣かないでよぉ…。私は全然元気だからさ。ね?」

 

必死に姉をなだめる妹。

これではどっちが姉だかわからなくなってしまう。

 

「そう?なら良いけど…。それにしてもまたこんなに部屋を散らかしちゃって。今片付けるわね」

 

「い、いいよそんな。さすがに悪いって」

 

「だぁめ。ほっといたらフィリスちゃん、絶対掃除しないでまた錬金術始めちゃうじゃない」

 

「さすがに今回こそは自分で片付けるよ…」

 

そう、フィリスはここ最近テントの作成に『何度』も挑み『また』今日も失敗して、今まさに最近と同じやりとりを『再び』リアーネと繰り広げていたのである。

しかしさすがに今回も掃除をリアーネに頼むのは気がひけるのか、フィリスは自分で掃除することを申し出た。

しかしそうは言ってもリアーネがフィリスを手伝わないなんて事はなく、やはり今回もリアーネに掃除をさせる結果となってしまった。

二人して部屋の掃除を始めること十五分、フィリスはふとあるものを見つけた。

 

「これ、ソフィー先生の手帳?」

 

錬金術で使用する材料の下にその手帳は埋まっていた。

 

「フィリスちゃん、どうかしたの?」

 

「あ、うん。ソフィー先生の手帳?らしきものを見つけたんだけど。こんなの前からあったかなぁ?」

 

初めて見るものに興味津々なフィリスにリアーネは答えた。

 

「ソフィーさんからこのテントをもらった時からあったわよ」

 

「え⁉︎そうなの⁉︎全然気付かなかった…」

 

_______もっと早く気づいてたら良かったなぁ。

 

フィリスは密かにそう思った。

と言うのもこの手帳には錬金術の基礎から応用まで事細かに書かれており、またフィリスの知っているアイテムのレシピから、フィリスの知らないアイテムのレシピまで書き込まれていた。

 

「凄いこれ…ソフィー先生ってこんな物まで作ってたんだ。ん?これって…」

 

「どうしたの?フィリスちゃん。何かあったの?」

 

「凄いよリア姉!この手帳にこのアトリエテントの作り方まで載ってるんだよ!」

 

これまでフィリスが幾度となく挑戦しては失敗してきたアトリエテントの作り方までその手帳には載っていた。

 

「いいの?フィリスちゃん。勝手にソフィー先生の手帳を見ても」

 

「大丈夫だよきっと。見られたくないものなら、この手帳を残して私にテントをくれたりしないだろうしね」

 

ようするに、ソフィーがフィリスにアトリエテントを渡した時点で、その中の物までフィリスにあげた事になるわけで。

そこに残された手帳は既にフィリスに所有権があり。

何よりもその手帳の余白にはこう記述されていた。

 

『フィリスちゃんへ。これを読んで公認試験に合格できるよう頑張ってね』_______と。

 

つまりこれは、エルトナから旅立つ事を許された時のフィリスに対して贈った、ソフィーからのプレゼントでもあるのだ。

むしろ今までそれをガン無視してきたことの方が失礼というものだろう。

手帳に記載されているソフィーからフィリスへのエールを読むとともに、我が妹の注意力散漫を嘆き膝からくずおれるリアーネ。

そんなリアーネをよそにフィリスは、部屋の片付けもままならないまま、再び錬金術を始めようと準備し始める。

 

「えーと、材料はコレとコレと…それからコレもだね!あとは…あれ、素材が足りないや」

 

手帳を見ながら手際よく材料を運ぶフィリスであったが、残念なことに素材が一つ足りなかった。

足りない素材というのは日食の日にしか咲かないとも、暗いところでしか育たないとも言われる、様々な噂が絶えないなんとも不思議な花、『ドンケルハイト』の事である。

 

「ドンケルハイトかぁ…。まだ見た事すらないんだよねぇ」

 

ドンケルハイトは非常に希少な材料であり、通常は中々お目にかかれない代物である。

だが現在フィリスが作ろうとしているテントの為には必要なわけで。

 

「よし、ドンケルハイトを探しに旅に出よう!」

 

その結論に至るのにほとんど時間は要しなかった。

 

「え?今から行くの?」

 

「当然だよリア姉。思い立ったが…えぇと、何だったけ?ま、まぁとにかく私はドンケルハイトを探しに行くから!リア姉も一緒に来る?」

 

今から行くと言い放ったフィリスに少し困惑したリアーネはだが、いつどんな時だろうとフィリスと共にいる事を望むリアーネにとって、一緒に来るかという質問は愚問でしかなかった。

 

「えぇ、当然フィリスちゃんについて行くわ。またお姉ちゃんが守ってあげるわね」

 

そう言うやリアーネはすぐに旅支度を始める。

フィリスはその様子を嬉しそうに眺め、すぐに自分も旅支度を始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

フィリスとリアーネがドンケルハイトを求めて旅に出てからはや一ヶ月。

フルスハイムの見聞院で情報収集を試みるも何ら収穫がなかった彼女たちは、今まで行ったことのない採取地に足を運びまくっていた。

しかしその全てが徒労に終わっている。

ドンケルハイトは未だに見つかっていないのだ。

 

「はぁ…、全然見つからないね、ドンケルハイト」

 

気づけばフィリスの口癖になったその文言は、フィリスの心に重くのしかかっていた。

 

「元気出して、フィリスちゃん。今日はここで情報収集をしましょう?」

 

彼女たちは現在、ライゼンベルグの宿屋にいた。

ライゼンベルグには錬金術公認試験を受けに来て以来、初めての訪問となる。

公認試験を受けに来ていた時は、居ても立ってもいられない程緊張してあまり浮かない顔をしていたフィリスだったが、今回の訪問でも別の意味で浮かない顔をしていた。

 

「うーん…、そうだね。とりあえず見聞院に行こうか」

 

しかしいつまでも頭を抱えていても何も始まらないので、リアーネと共にフィリスは見聞院に行くことに。

宿屋を出て歩くこと約十分。

見聞院に到着したフィリスを待っていたのはアンネリースだった。

 

「あら?いらっしゃい、フィリスさん。どうされたのですか?もしかして新しい情報を提供しに来てくださったのですか?」

 

そう言って優雅に一礼するアンネリース。

アンネリースとは見聞院の筆頭司書を務める女性である。

非常に高い地位の人物であり、本人も真面目な性格をしている。

が、とてつもないドジっ子であり、とんでもないトラブルを起こすこともしばしば。

そんな彼女が務める見聞院は、多くの本が収集されており誰でも様々な情報を得ることができる。

それだけでなく冒険者からマップ情報やモンスター情報などの提供も募っており、たくさんの情報を提供してくれた者には報酬を出している為、ほぼ全ての情報が見聞院に集まるようになっている。

 

「アンネさん、お久しぶりです!アンネさんこそライゼンベルグにいらしてたんですね」

 

アンネリースは筆頭司書という立場上、各地に点在している見聞院を行ったり来たりしている。

因みにフィリスが見聞院で初めてアンネリースに出会った場所はフルスハイムの見聞院である。

 

「えぇ、そうなんですよ。以前まではヴァイスラークの見聞院に居たのですが、最近こちらに来たんです」

 

ヴァイスラークとは見聞院の総本山と言われる場所である。

当初の予定ではヴァイスラークの見聞院で調べる予定だったのだが、様々な採取地を巡りながら進んでいるうちに、ヴァイスラークへ行く道を素通りしてしまったため、ライゼンベルグへ寄ることになったのだ。

 

「それで、今日はどんなご用件なんですか?」

 

「あぁ…えっと、私たち、今ドンケルハイトを探しているんですけど。何か情報が入って居ないかなって思って」

 

「ドンケルハイトですか…、残念ながら特に情報は入ってきていないですね」

 

「そうですか…」

 

アンネリースの言葉に肩を落とすフィリス。

ヴァイスラークにはその情報量で負けるとはいえ、見聞院には『ほぼ全ての情報が集まる』ようになっている。

そこに情報が入っていないとなると、それはドンケルハイトを諦めるに足る事実なのである。

 

「お力になれなくてすいません」

 

「あ、いえいえ!アンネさんが気に病むことじゃありませんよ」

 

共に肩をすくめるアンネリースに対し若干の罪悪感を感じるフィリス。

軽い会釈を交わして見聞院を後にするフィリスとリアーネ。

フィリスが気を落としながら宿までの道を歩いていると。

 

「さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい‼︎世にも奇妙な幻の花、ドンケルハイトが手に入ったよぉ‼︎」

 

それはどこからか聞こえた客寄せの声。

 

「え、ドンケルハイト⁉︎どこ⁉︎どこからこの声が聞こえてるの⁉︎」

 

「フィリスちゃん、あそこよ!」

 

振り返るとリアーネが指差した方向に、行商人が一人いた。

 

「幻のドンケルハイトだよ!さぁさぁ見てってくれ‼︎」

 

行商人の男は手を叩き集客をしていた。

彼の言葉に興味を持った街の人々が段々と集まってくる。

 

「買います買います‼︎私買います‼︎」

 

「あ、ちょっと!フィリスちゃん⁉︎」

 

せっかくのチャンスを奪われまいと叫びながら行商人の元に駆けつけるフィリス。

人混みを掻き分け行商人の目の前へとたどり着く。

 

「おや、いらっしゃいお嬢さん。もしかしてドンケルハイトを買うのかい?」

 

「は、はい!是非ください!」

 

「在庫は5個あるけど一体いくつ買うんだい?」

 

「全部ください‼︎」

 

「ちょ、フィリスちゃん⁉︎」

 

妹の後先考えない行動に驚愕するリアーネ。

 

_______せめて値段くらい聞いてから考えて欲しい、と。

 

しかしそんな姉の想い虚しく、フィリスは在庫全てを買おうとする。

 

「じゃあ一個2500コールの、五個12500コールね」

 

「はい!…ってえぇ⁉︎高すぎますよ⁉︎」

 

言わんこっちゃないと、こめかみを抑えるリアーネ。

フィリスも予想外の値段に慌てていた。

 

「そりゃそうさ。なんてったって幻の花だからね。早々手に入らないよ。」

 

「うぅ…ですよね。じゃあ一個だけでお願いします…」

 

本当は今後のことも考えて五個位は欲しいところだったのだが、今は妥協するしかない。

そう考えたフィリスに、「だが」と新たなる選択肢を行商人は与えてきた。

 

「だがまぁお嬢さん結構可愛いし、五個買うってんなら半額にまけてもいいぜ」

 

五個中二個は無料でも構わないと、さらにもう一つ半額で売ってやると。

神のように慈悲深いその言葉にフィリスはひどく感銘を受けた。

 

「五個ください!」

 

「フィリスちゃん!考え直して!」

 

姉の嘆きを完全スルーしてお金を取り出すフィリス。

半額とはいえアレだけの金を支払うとなると今日は宿を取ることが出来なくなってしまう。

しかしこうなったフィリスは止められないことをリアーネは既に知っていた。

 

「はい、毎度!」

 

行商人のその一言で周囲の野次馬から拍手が送られた。

嬉しそうにドンケルハイトを眺めるフィリス。

満足そうにその場を後にする行商人。

面白そうにフィリスを眺める野次馬。

そんな中リアーネだけが悲しみに暮れていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

宿が取れなくなったため仕方なく街中の空きスペースにアトリエテントをたてたフィリスは、早速錬金術に取り掛かろうとしていた。

 

「ドンケルハイトも揃ったことだし、これでようやくアトリエテントも作れるね。それじゃあ早速始めようっと♪」

 

上機嫌で釜に材料を入れていくフィリス。

そんなフィリスをリアーネはじっと見つめる。

いくらドンケルハイトが必要だったからとはいえ、流石にあの買い物はお金の無駄遣いというもの。

その事を咎めようと少しは考えたリアーネだったが。

 

「フィリスちゃん、ずっと頑張っていたものね…」

 

リアーネは今までフィリスが熱心に努力していた事を知っていた。

その努力はなにもドンケルハイトを探す旅だけの事ではない。

エルトナでアトリエテントを作るためにずっと試行錯誤を続けていたことも含めての努力、いや、アトリエテントに限らずフィリスが初めて錬金術に触れたその日から、フィリスはずっと努力し続けていた。

ただ何故か一介の行商人が手にしていたドンケルハイトを、ここ最近の努力を水の泡にするかの如くお金の力で解決しただけのこと。

そう、たったそれだけのことである。

 

「やっぱり後でお説教ね…」

 

自慢の妹が錬金を成功させた暁にはいっぱい褒めて、しっかり叱ろうと。

リアーネがそう決意した時のことである。

 

「え?何この色?こんな色初めて…」

 

それはフィリスが発した一言。

その一言を合図に段々と釜の中の色が変色していき。

 

「もしかしてこれ、失敗?それとも成功なの?…って何か変な匂いしてきた⁉︎」

 

その釜のなかの反応は、今までフィリスが失敗してきた時のような反応であった。

突然中身が煮えたぎるかのようにグツグツとしだし、よく分からない色へと変色し、鼻をつくような匂いを放つそれは、だが。

 

「今までの時と違う…」

 

今まで錬金術を何度か失敗してきたフィリスだったが、今回の反応は起きている現象こそ同じだが、今まで見たことの無い色や匂いを放っていた。

 

_______何か嫌な予感がする。

 

フィリスもリアーネも直感的にそう思った。

錬金術が失敗する時は大抵最後には爆発するものだ。

となると今までの反応と違う今回は、もしかすると爆発の威力が高いのかもしれない。

そう考えたリアーネは咄嗟に動き出した。

 

「フィリスちゃん逃げて‼︎」

 

未だ釜の中の反応を呆然と眺めるフィリスを避難させるべく、リアーネはフィリスの側へと近づく。

リアーネがフィリスへと手を伸ばした次の瞬間。

 

ボォォォォォォォォォォン‼︎

 

フィリスとリアーネは爆煙に包まれてしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

プラフタと共にライゼンベルグの街中を歩いていたソフィーは、ふと見知ったものを見つけた。

 

「あ!ねぇねぇ見てよプラフタ!これ、フィリスちゃんのアトリエテントだよね?」

 

「おや、そのようですね。フィリスもまたライゼンベルグに来ていたのですか」

 

フィリスが来ている事を知り、共に喜ぶ二人。

ソフィーはアトリエテントの扉をノックした。

 

「フィ〜リスちゃ〜ん!遊びに来たよ〜!」

 

中へと呼びかけるソフィー。

しかしその声に対する返事は一向にかえって来なかった。

 

「もしかして留守なのかな?」

 

首をかしげるソフィー。

そんな中ふとプラフタがある事に気付く。

 

「見てくださいソフィー!扉の隙間から煙が出ています!」

 

「っ⁉︎フィリスちゃん⁉︎」

 

異変に気付いた二人はすぐに扉を開けて中に入った。

中は異臭を放つ煙に覆われ、床には錬金術で使用する道具や材料などが散乱しており。

 

「誰も…いない?」

 

誰一人としてそこにはいなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

気がつくと、そこは緑広がる草原の中だった。

 

「ここは…?っ⁉︎フィリスちゃん‼︎大丈夫⁉︎」

 

目が覚めたリアーネはすぐ側で倒れ伏しているフィリスを見るや否や、血相を変え呼びかけた。

 

「……んん、あれ、リア姉?ていうかココどこ?」

 

頭を抑えながらゆっくりと体を起こすフィリス。

それを見てリアーネは、安堵の表情を浮かべた。

 

「良かった、目が覚めて…。怪我とかは無い?痛い所は?」

 

「うーん、私は多分大丈夫。リア姉は?」

 

「私も特に異常はないわ」

 

とりあえず二人とも無事なようだ。

 

「それにしても、ここは一体どこなのかしら?私たち、さっきまでテントの中に居たわよね?」

 

「えっと…確かアトリエテントを作ろうとして、でもそれが失敗して、爆発して、知らない土地にいて…。リア姉これどういうこと?」

 

「私がフィリスちゃんにそれ聞いたんだけどね…」

 

肩をすくめるリアーネは、ふと付近にあるものに気付いた。

「これは…ドンケルハイト?………っ⁉︎何これ⁉︎」

 

リアーネが見たのはドンケルハイト、いやドンケルハイトが『砕けた』ものだった。

 

「あぁ⁉︎それドンケルハイト⁉︎ボロボロに砕けてる‼︎…ん?砕ける?」

 

通常、花が砕けるなんてことはないが、それは誰がどう見ても砕けたものであった。

そう、ドンケルハイトの外装の下には木片が見えていた。

 

「これ、もしかして偽物?私たち、木彫りのドンケルハイトを買わされたの⁉︎」

 

ドンケルハイトと思っていたそれは、木を彫って塗装しただけの木造であった。

リアーネは悔しそうな表情を浮かべる。

 

「……そういう事だったのね」

 

フィリスの嘆きを聞いて全てが腑に落ちたリアーネ。

誰も目撃などしておらず、見聞院にすら情報が全く届いていなかったドンケルハイト。

そんな幻の花を一介の行商人が手にしている事自体異常な事であったのだ。

またそれ程希少なものであるにも関わらず、行商人の男はアッサリと半額にすると言った。

それは何もサービスなどではなく、それだけで充分過ぎるくらい稼げるからであり。

むしろ最初に高い値で商品をちらつかせ、相手が高いからと諦めた所で半額と言う、それだけでつい買いたくなるように仕向けていたのだ。

また、フィリスがドンケルハイトを買った後、野次馬が沢山いて儲けるチャンスだったにも関わらず、行商人がすぐにその場を立ち去ったのは、フィリス達から逃げるためだったのだろう。

 

「まんまと嵌められたわね…。いくらドンケルハイトを探していたとはいえ、もっと慎重になるべきだったわ…」

 

苛立ちを隠せないリアーネ。

そんなリアーネを申し訳なさそうにフィリスは見つめていた。

 

「リア姉…ごめんなさい‼︎私が不用心だったせいで…」

 

今にも泣きそうな顔で頭を下げるフィリス。

だがリアーネはそんなフィリスの頭を優しく撫でる。

 

「たしかにもっと慎重になるべきだったけれども、止められなかった私にも責任はあるわ。それに、一番悪いのはあの行商人よ…」

 

リアーネがそう言ってフィリスをなだめていたその時。

 

ドンッ!

近くで地鳴りがした。

その音を聞いて振り向いた二人の前にいたのは。

 

「カエル?え、なんか大きいような…?こここ、コッチ来てる⁉︎リ、リア姉!なんか近づいて来てるんだけど⁉︎」

 

それは見た目はカエルそのものだが、その大きさはゆうに三メートルを超えていた。

 

「に、逃げるわよ!フィリスちゃん‼︎」

 

心地よい風が吹く草原に、二人の少女の悲鳴がこだました。

 

 

この見知らぬ土地で、彼女達の不思議な旅は再び幕をあげるのだった。




フィリス…フィリスのアトリエの主人公。かわいい錬金術士

リアーネ…フィリスの義姉。美人でシスコンな狩人

ソフィー…ソフィーのアトリエの主人公で、フィリスの錬金術の先生。ソフィーのアトリエはフィリスのアトリエの前作

プラフタ…ソフィーの友達であり錬金術の師匠でもある。こいつに関しては掘り返すと長くなるので詳細略で

ミストルート夫妻…フィリスの両親

エルトナ…岩石をくり抜いて地中に作られた街。フィリスの故郷

フルスハイム…港町てきなとこ。綺麗な街

ライゼンベルグ…錬金術公認試験の開催場所。壁に囲まれている

ヴァイスラーク…山にある町。見聞院の総本山

見聞院…図書館みたいな施設。大体の情報はここに集まる

練金釜…錬金術の際に用いる釜。中に材料を入れてグルグルーっとやるとバァァンとアイテムが出来る(何言ってんだ俺)

ドンケルハイト…幻の花。ゲームでは特定の場所で普通に入手可。値は張るが実際に店でも売ってたりする

アトリエテント…フィリスがソフィーから貰ったテント。錬金術で空間を捻じ曲げることにより、外見以上の広さを誇る。もう訳わからん。ゲームでは作成不可

その他わからない語句があれば感想欄に書いてください。
後書きに追記します

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