二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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今回から日常編。
イチャコラを書いてなかったせいで、イチャコラの質が落ちてしまった。これでは、砂糖を吐かせられない。

では、第九十二話をどうぞ


第九十三話 色々と長い一日

Side鏡夜

 

「ふあ~あ。今日もまあ、良い天気だこと」

 

萃香と会ってから幾日かが過ぎた。

 

あの日から萃香と会ってはいない。なんか、天界に向かうんだとか。……ま、それはそれとして、萃香からは色々と懐かしい話しが聞けた。俺がいなくなってからの四天王の動向とか、鬼神母神が今何してるのかとか……本当、懐かしい話ばっかだったな。

 

そうそう、萃香以外の四天王、今地下に潜ってるらしい。なんでも、俺以降の人間が鬼との真っ向勝負をしなかったらしく、卑怯な手ばかり使うんで隠居したんだとか。……明日か明後日辺り、殴り込みかけてやろう。

 

「おは、よう……ござい……ます」

 

「おはようって、わお」

 

庭に出て朝日を浴びて色々と思い出してたら、咲夜ちゃんが挨拶してきてくれたんだが、咲夜ちゃん、顔が真っ赤です。

 

なんか足取りもおぼつかないし……もしかして、風邪とかひいてるんじゃないの?

 

「咲夜ちゃん、大丈夫?」

 

「大丈……ぶです」

 

答えてはくれるが、フラフラして今にも倒れそうなんだけど。

 

「ちょっと、ごめんね」

 

片手で自分の額に手を当て、もう片方の手で咲夜ちゃんの額を触る。……熱。完全に熱出てんじゃん。

 

「咲夜ちゃん、どうやら具合悪いようだから、今日はもう寝てなさい」

 

「いえ……大丈夫、です」

 

いや、明らかに大丈夫じゃないよ。しょうがない、ここは強制的に寝かせます。

 

「キャッ」

 

「はい、もう強制です。今日は寝てなさい」

 

脚を払い飛ばしてお姫様だっこする。全く、こんなになるまで無理するなんて。

 

お姫様だっこして、少し抵抗でもするかと思ったが、咲夜ちゃんはすぐに目を瞑って眠ってしまった。……病気になってるから、病院に連れてかなきゃまずいよな。俺自身で薬が作れればいいんだが、流石に薬の知識はないから作れないんだよな。

 

「医者って、いたっけ?」

 

寝ている咲夜ちゃんを部屋へ運びつつ、幻想郷にいる医者を思い出すが……該当者がいない。

 

「おはよう、鏡夜……って、どうしたの?」

 

「ああ、おはよう美鈴。実は、咲夜ちゃんが熱出してね」

 

「熱?」

 

咲夜ちゃんを部屋に運んでいる途中、偶然美鈴と出会った。いつもは外で会うのに、紅魔館の中にいるなんて珍しい。

 

「そう、熱。美鈴、医者を知らないか?」

 

「医者……ね」

 

考え込む美鈴。誰か、医者の宛でもいるのかな? ……美鈴って、なんか薬草とかで薬作れそうな気がするんだけど。無理か。

 

「一人心当たりがあるわ」

 

「そうか。なら、咲夜ちゃんを連れてってくれないか? 俺は紅魔館の仕事があるし、あとで見舞いに行くよ」

 

「分かったわ。後は私に任せて」

 

お姫様だっこしていた咲夜ちゃんの額に軽くキスしてから、美鈴に預ける。咲夜ちゃんを背中におんぶした美鈴は窓から飛び出すと、そのままどっかに行ってしまった。……何故、窓から出ていく。

 

 

 

「よし、これで終わりっと」

 

午前の仕事を全て終わらせ、昼食もとった俺は一人で庭に出ていた。

 

午後の予定は特に入ってはいない。なので、咲夜ちゃんの所にお見舞いでも行こうかと思っている。

 

美鈴が言うのには、そこまでたいした病気でもなく、明日になれば回復するらしい。咲夜ちゃんからも、心配はいらないから見舞いはいいと言われているが……行かないと咲夜ちゃん寂しがるだろうな。

 

「鏡夜」

 

「おや、パチュリー様。どうしましたか?」

 

庭で午後の予定を組み立てていると、いつもは図書館で本を読んで魔法の研究をしているパチュリー様が現れた。

 

珍しいな。日光はお肌に悪いとか言っていつもは図書館から出てこないのに。

 

「暇だから、久々に出てきたのよ。……それで、鏡夜はこんな所でなにしてるの?」

 

「午後の予定を考えてまして」

 

「そう……」

 

俺が答えると、パチュリー様は考え込んでしまった。なにか午後の予定でも思い出したのか?

 

「なら、少し時間を頂戴」

 

「いいですよ」

 

咲夜ちゃんのお見舞いに行きたかったが、お願いされてしまえば断るわけにはいかない。あとで、絶対に行くから咲夜ちゃんよ、待っててくれ。

 

笑顔でパチュリー様に答えると、あちらも笑顔になり、イスとテーブルがある日陰へと移動していく。

 

「それで、何をするのですか?」

 

パチュリー様の向かいに座り、話しかけると、なんかムスッとした表情で見られた。……どうして?

 

「ねえ、鏡夜」

 

「どうしました?」

 

「隣が寂しい」

 

……ああ、なるほど、そういうことね。

 

一瞬で意図を読み取り、パチュリー様の隣に座る。すると、パチュリー様がニコッと笑い、俺の肩に頭を預けてくる。

 

「パチュリー様」

 

「久しぶりね、こうして鏡夜と二人っきりでゆっくりとした時間を過ごすのは」

 

「……そうですね」

 

そういえば、最近パチュリー様と過ごす時間があまりなかったな。パチュリー様は魔法の研究で忙しかったし、俺は俺で色々と周りを鍛えたりしてたから……本当、こんな二人でゆったりとしたのは久々だ。

 

「ねえ、鏡夜」

 

「なんでしょうか?」

 

「私、ちょっと眠くなってきちゃった。連日の徹夜が、今きてるみたいなの……」

 

「そうですか、なら、このままお眠りください。パチュリー様が起きるまでは、お供しますよ」

 

「ありがとう、鏡夜……ふわ~」

 

そう言って、パチュリー様は瞼を閉じて眠ってしまった。スヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。余程、疲れが溜まっていたんだろうな。

 

「ゆっくりとおやすみ、パチュリー」

 

一度寝ているパチュリーにキスし、優しく頭を撫でてあげる。すると、嬉しそうに微笑んだ。

 

良い夢を、パチュリー。

 

 

 

「鏡夜、何してるの?」

 

「静かに、小悪魔」

 

パチュリーの頭を肩から膝に変えて膝枕しながら最近慧音から借りた竹取物語なるものを借りて読んでいると、後ろから小悪魔に声をかけられた。

 

「どうしてって……なるほどね」

 

状況を察した小悪魔は俺の隣に椅子を持ってきて座ると、俺が持っていた本を覗いてきた。

 

「何読んでるの?」

 

「竹取物語って本」

 

これ、一応最後まで読んでみたが面白いね。

 

「なにそれ?」

 

「これはね……」

 

絶世の美人がある場所にいた。その美人に惚れた五人はその美人に求婚するが、無理難題を押し付けられ、結局無理難題を解くことはできずにふられてしまう。そして、そんな美人の噂を聞いた帝はその美人に求婚する。

 

だが、実は美人は月の住人であり、そこからの迎えが来るという事で帝からの求婚を断ってしまう。最終的に、美人は月の住人に連れて行かれ帝と美人は結ばれなかった。

 

ここで話は終わるかと思ったが、実はまだ続きが有る。月の住民に連れて行かれた美人だったが、月へ帰る途中、月へと帰りたくなかった美人とその従者は月の住人に反逆しこの地に残ったらしい。

 

月の住人は勿論そんな事をする二人を許すことはなく、追っ手をけしかけ二人を連れ戻そうとした。だが、そこで登場したある男によって月の住人の思惑は阻止される。

 

男は美人と従者の前に立つと、月の民と何かを話し始める。そして、次の瞬間、月の民が持っていた筒から何かが男に向かって飛んでいく。しかし、なにかが飛んだ先にはもう既に男の姿はなく、次に男が現れたのは、刀と筒を持った状態で月の住民の腕を斬っている姿だった。

 

そのまま、男は目にも止まらぬ速さで月の住人を切り倒すと、美人と従者と何かを話したあと男は立ち去り、美人と従者はどこかへ消えてしまったらしい。

 

そこで話は終わる。結局、美人と従者はどうなったのか、男は何者だったのか気になるものだが、物語とはこういう感じで終わるもんだろう。

 

「って、感じの話なんだが……小悪魔?」

 

「ふえ? うん、聞いてるよ」

 

話に夢中になっていたら、小悪魔がうつらうつらと首を揺らしていた。度々ガクッと体が崩れそうになっているし、大丈夫か? ……大丈夫じゃないか。

 

パチュリーが寝不足なんだから、その従者である小悪魔も眠いだろう。

 

「小悪魔、眠い?」

 

「う、ううん。別に、眠くなんて……ふああ~」

 

大きなあくび一つ。完全に眠いんじゃん。まったく、無理して。

 

「ほれ」

 

「わぷ! どうしたの?」

 

片手で頭を胸元に抱き寄せてやると、胸元から離れた小悪魔は上目遣いで俺を見てくる。はぁ、本当、魔法の研究をしてる時はこの二人はキリッとしてるのに、こういう普通の時は甘えたがりの瞳で見てくるのだろうか。……ま、俺は甘えられて嬉しいがな。

 

「眠いんだろ? ゆっくり休め。反対の膝はパチュリーが眠っているから無理だが、もう片方ぐらいはかせる」

 

上目遣いで見てくる小悪魔の唇にそっとキスしてやってから言ってやると、小悪魔は一瞬キョトンとした表情をしたあと、顔を真っ赤にした。

 

「きょ、鏡夜! 不意打ちは卑怯だよ! やるなら前もって言ってよ!」

 

「そうか。するぞ」

 

「え、ちょっ! うむ!?」

 

言っててからやってくれと言われたので、言われた通りに言ってからもう一度キスしてやる。

 

最初はワタワタと慌てた小悪魔だが、数秒もすると俺の後頭部を両手で押さえて舌を入れてくる。

 

小悪魔め、また舌使いが上手くなったな。流石、小さいけども悪魔だな。だが、俺も負けんぞ。

 

「ん、あ……鏡、夜」

 

徐々にエスカレートし始め、小悪魔が色っぽい声を上げ始める。

 

「はい、おしまい」

 

「んあ、鏡夜~」

 

もうこれ以上は一線を超えてしまうので、唇を離す。

 

「だ~め。それ以上はまだな」

 

「ちぇ~」

 

唇を尖らせる小悪魔だが、それはまだダメ。だって、まだレミリアとフランとやってないからな。

 

「ほーら、もう寝ろ」

 

頭を強引に膝へと持っていき、小悪魔を膝枕する。

 

「わきゅ! もう!」

 

むっと頬を膨らませる小悪魔だが、ダメなものはダメだ。

 

これ以上せがまれても困るので、優しく頭を撫でて速く寝るようにしむける。すると、俺の願いが通じたのか、元から寝不足もあったせいかは知らないが、小悪魔は小さく欠伸をして目を擦った。

 

「あ~あ、もう少し鏡夜と話したかったのに……」

 

「話なんかいつでも出来るだろ」

 

「そうだね……ねえ、鏡夜」

 

「どうした?」

 

「起こすときは、キスしてね?」

 

「……期待しとけ」

 

「うん」

 

微笑みを浮かべた小悪魔は、目を瞑ると小さな寝息を立てて眠ってしまった。

 

起こすときはキスしてね……か。なんとまあ、大胆なお願いだこと。……起こすときは、パチュリーにもした方がいいのか? ま、サプライズとしてしとくか。

 

二人を見てみれば、どちらも小さな寝息を立てて眠っている。

 

「……何があろうと守るからな」

 




絶世の美少女を助けたのは誰なんですかね。

誤字、アドバイス、感想、お待ちしております。

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