二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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今回からは、あの子が主人公です。本来の主人公である鏡夜くんはあまり出ません。そこの所をご了承ください。

では、第八十二話をどうぞ


萃夢想
第八十二話 疑惑の宴会


Sideカロ

 

「じゃあ、カロ、美鈴、行ってくるわね」

 

「行ってくるね」

 

「カロ、美鈴、任せたぞ」

 

「よろしくお願いします」

 

夏に入るか入らないかの微妙な季節。外に出ての宴会には丁度いいけど。

 

そんな季節のある日。紅魔館の主であるレミリア・スカレートと妹のフランドール・スカーレット。後、執事の鏡夜とメイドの咲夜が博麗神社でやる宴会に行ってしまった。

 

私も本当は行きたいけど仕方ないよね、門番だし。

 

でも、今回の宴会はおかしいんだよね。なんてたって、今回の宴会で三度目……いや、もしかしたらもっとやってるかな?

 

まあ、取り敢えず、それ位連続で宴会をやってるんだよ。

 

おかしいと思わない? だって、前までは月一位でやってたんだよ? 

 

それが、今は連続で三回。しかも、誰もこれに対して、疑問を持ってないし……これって、私がおかしいのかな?

 

……ま、明日にでも鏡夜に聞いてみるかな。鏡夜なら、さすがに気づいているだろうからね。

 

 

 

「美鈴~ちょっと鏡夜の所行ってくるね~」

 

「分かった、行ってらっしゃい」

 

そんな訳で次の日。私は門番の仕事を一時的に美鈴に任せて、鏡夜の所へ向かった。

 

どこかな~? 鏡夜の事だから、館の掃除とかしてると思うんだけど、見当たらないな。

 

なんでこう、探してる時に見つけられなくて、探してない時に見つかるんだろう? レミリアお嬢様が運命でも操ってるんだろうか……いや、無いな。

 

「あれ? カロさん。どうしたのですか?」

 

「やっほ~咲夜~」

 

鏡夜を探していると、窓ふきをしている咲夜に出会った。

 

丁度いいや、咲夜にも、今回の宴会の事について聞いてみよう。

 

「ねえ咲夜~宴会の事で気になったことはない~?」

 

「宴会の事ですか? うーん……お料理の量が足りないとかですか?」

 

いやいや、なんで? 私宴会行ってないから、そういうの分かんないから。アレか? 幽々子って幽霊のせい? 幽々子、いっぱい食べるって言ってたもんな……鏡夜が。

 

「違くて~こう~宴会が多いな~とか~」

 

「そうですね。……ああ、そういえば、最近宴会に出てると、誰かに見られてる感じがするんですよね。それに、お酒の量も、いつの間にか減ってることもありますし」

 

ふむふむ、成程。誰かに見られている……ね。多分それが、今回の多々宴会の原因だね。その後お酒の量については……微妙かな? 関係あるようで、関係ないようなそんな感じ?

 

「どうしてですか?」

 

「いや~ちょっとね~……そうだ、咲夜~鏡夜見なかった~?」

 

「鏡夜さんですか? 鏡夜さんなら、今食堂で昼食の用意をしていますよ」

 

「そ~ありがとうね~」

 

咲夜と別れて館の食堂へと向かう。別段それだけ。特に何かとあったりとかはしない。

 

……そういえば、最近霊夢に会ってないな~。紅魔館から出ることが少ないし、霊夢も紅魔館へと来る頻度はそれほど高くないから、会わないのは当然か。……これ、別になんとなく思っただけだからね。宴会の事とはなんにも関係ないから。

 

「やっは~鏡夜いる~?」

 

「ん? どうしたカロ?」

 

食堂の中へと入り声を掛けてみると、そこには美味しそうな料理を両手いっぱいに持った鏡夜がいた。

 

あいも変わらず美味そうな料理作ってるな、鏡夜。なんでこうも鏡夜の料理は涎が流れそうな位、いい匂いを放っているのだろうか。……今度、教えてもらおうかな?

 

「う~ん、ちょっとね~」

 

鏡夜の隣に行き、こっそり鏡夜の持っている料理に手を出そうとしたら、手を弾かれた。くそ、少し位つまみ食いさせてくれたっていいじゃない。

 

「へ~それで、何しに来たの?」

 

「えっとね~最近宴会が多ことについて何か鏡夜は疑問を持ってないかなって~」

 

「……そうか、カロが最初に気づいたか」

 

……? 鏡夜、今なんかこそっと言ったよな? 怪しいな。

 

鏡夜は何か考える素振りをしたあと、こちらを見ながら――――――

 

「カロ、今回のは確かに異変だ。だけども、今回の異変に、俺は関わらん」

 

「どうして~?」

 

「今回の主役は、お前だ。カロ」

 

持っていた料理をテーブルに置いた鏡夜は、私の肩にポンっと手を置くと、そのまま部屋の外へ出ていってしまった。

 

……はて、主役とは一体どういうこと? それと、鏡夜の奴、なんかこの異変について知っているな。……でも、聞き出すのは無理だね。自分で今回は関わらないって言ってるし。

 

しゃーない。地道に聞き込みしていきますか……その前にちょっと食事の味見を――――――

 

「痛っ!?」

 

鏡夜め、料理に触られないよう結界貼っていったなぁ! あああ、料理があああああああ!!

 

 

 

そんなこんなで次の日。晴れ渡る青空の下、門の前でボケっとしながら今回の事について、最初に聞く人物を考え始める。

 

まず霊夢は除外。だって、なんか勘だけで全部済ませようとしてそうだから。それと、宴会の事について、あんまり異変だと思ってないような気がする。

 

じゃあ、他に誰がいるかって言われれば……う~ん、誰がいるかな?

 

湖の近くにいる妖精達に聞いてみる? いやいや、聞いたところで、変な答えしか返ってこないから論外。

 

魔理沙? う~ん、なんか魔理沙も霊夢と同じような感じがするんだよね。

 

……はぁ、なら残り一人しか残ってないな。

 

「文か~」

 

この前少し喧嘩したけども、別に私は嫌いでもないし苦手でもないし、ましてや口も聞きたくない……なんてことはない。むしろ、大好きだ。

 

でもなあ……この前の喧嘩のせいで、少し会いづらいんだよね。でも、他に聞けるような人脈もないし……よし、文の所に行こう。

 

「ね~美鈴~」

 

「なーにー、カロー」

 

座って門に寄りかかり、目を瞑りながら答えてくる美鈴。

 

こう寝ているように見えて、実際は起きてる。ってか、寝ていたとしても、侵入者が来れば、即座に起きて迎撃するけどね。

 

「私ちょっと出かけてきていい~?」

 

「いいよ。夜までには帰ってくるんでしょう?」

 

「う~ん、どうだろうね~早く用事が終われば帰って来れるけど~」

 

「ま、別にいいよ、行ってきな。鏡夜と咲夜には私から言っておくから」

 

「そ~……じゃあ任せたよ~」

 

門に背を預けた状態のまま、美鈴は手を振ってくる。私も見えてはいないだろうけど、一応美鈴に手を振ってから、文のいるであろう場所に向かって飛び始めた。

 

 

 

「始まったか……頑張れよ、カロ。今回の異変がお前にとって初の異変なんだから。……だが、それはいらない心配か。なんてたってお前の能力は俺と肩を並べる位、えげつない能力だからな……でも、油断はするなよ。アイツは……強いぜ」

 

 

 

紅魔館から走り出し、地を駆け木々の間を飛び回りながら文の所へ向かうこと数分。多少道草はくったものの、意外と早く文のいるであろう山に着いた。

 

道草ってのは、妖精に襲われたりとかだね。まあ、全員返り討ちにしたけど。それと、私が空を飛ばない理由だけど、実は空飛ぶの苦手なんだよね、私。

 

こうふわっとは飛べるんだけど、速く動くのには慣れてないんだよ。

 

「止まれ侵入者! これより先は天狗の領地なり!」

 

「うん~?」

 

何事かと思い止まってみれば、白いもふっとした尻尾と、白い狼耳をした少女が現れた。……なんか、私と見た目がかぶってるな~。

 

大人しく言われた通り止まると、少女は私の前まで来て、刀を突きつけてきた。

 

「貴方は何者ですか? この山に何の用ですか?」

 

「私はカロだよ~で~この山にはある人物に会いに来たの~」

 

「そうですか……ではカロさん、一体誰に会いに来たのですか?」

 

「文なんだけど~」

 

「文さんですか?」

 

文の名前を出すと、少女は首を傾けた。……アレ? もしかしてこの山にいないとか? 間違っちゃった?

 

妖怪の山が文の住んでる所だったと思うんだけど……ここじゃないのかな、妖怪の山。

 

「どうしたの~?」

 

「いえ、私の友人の名前でしたから……そうですか、文さんに会いに来たのですか」

 

少女は刀を収めると、振り返って歩き始めてしまった。

 

「付いて来てください。文さんの所へ案内します」

 

「随分すんなり入れてくれね~」

 

「妖怪の場合、別段警戒する必要はありませんからね。人間なら、警戒しますけどね」

 

「そんなもんかね~」

 

ま、妖怪よりは、人間の方が怖いってのは認めるし警戒もするけどね。だってね、人間は弱いが故に卑怯で姑息にしてきたりするからね。警戒する気持ちもわかるよ。

 

「そういえばさ~」

 

「何ですか?」

 

少女の隣を歩き、本来なら一番最初に聞いておかねばらない事を思い出してしまった。なんで私はこの事を聞かなかったのだろうか。

 

「君の名前は~?」

 

そう聞いた途端、少女はその場に棒立ちになってしまった。

 

止まってしまったせいで少しだけ少女の前を歩いていた私は、振り返って少女を見る。わーお、青ざめちゃってるよ。

 

こう、やっちゃった! とか、マズイ! みたいな表情してる。……そんなになるほど、重要なことではないと思うんですけど。

 

「も、もも申し訳ありませんでした! 私、白狼天狗の犬走椛です」

 

「椛ね~」

 

なるほどね、白狼天狗ですか。だから、そんなに私と似ているのか。

 

しかし白狼ね……なんていうか、その名前ってこう、私に似合ってる気がするんだよね。むしろ、そのまんま私を表してない?

 

……でも違うのか。私の毛色は白じゃないもんね。私の毛色は銀。銀狼って呼ばれる方が似合ってるか。

 

「ここです」

 

「へ~こんな風になっているんだ~」

 

椛に案内されること五分程。私は天狗の里であろう場所に着いた。

 

里の中は天狗でいっぱい。右を見ても左を見ても天狗だらけ。一体どこにいるのだろうか、文は。

 

……しかし、なんでしょうかね、先程から感じる奇異の視線は。しかも、男からしか感じない。

 

気持ち悪いな。私の事を見てもいいけど、出来ればジロジロ見ないで欲しいよ。

 

「あ、あの、貴方は?」

 

「ん~?」

 

奇異の視線を鬱陶しく思っていると男の一人が声を掛けてきた。

 

身長は鏡夜より小さいくらい。中肉で顔はまあまあ。私の好みではないけど。妖力は……てんで駄目。紅魔館の小悪魔より少ない。

 

「カロだよ~」

 

取り敢えず、表面上は普通を装いながら返事をする。すると、男は一瞬首を傾げたが、すぐに普通になり、私の手を取ってきた。

 

「カロさん。よろしければ、私と付き合ってはくれない――――――」

 

「ごめんね~」

 

なんでいきなり告白してきた、この天狗。お前に興味など無いわ。あたしが付き合うとすればそれはただ一人、鏡夜のみだ。

 

それに、その程度の力で私と付き合おうなど笑止千万! 鍛え直してから出直してこい。

 

振られた天狗は一瞬固まってから、俯いてワナワナと震え始める。

 

「あの、カロさん」

 

「ん~?」

 

失恋した男を眺めていると、椛が肩を指でチョンチョンとしてきて、耳元で語りかけてきた。

 

「この人、実はこの里では結構偉い方なんですよ。まあ、親の七光りですけど。でまあ、欲しいものは、なんでも手に入れてきたんですよ。で、ですね、この人手に入れられないものがあるとですね――――――」

 

「そ、そうですか……なら、私と戦い、勝ったら私と付き合ってください!」

 

「戦いで解決しようとするんですよ」

 

ふ~ん、なんだ、唯の親の七光りではないのね。いいじゃない、権力に甘えて親に頼るよりも、戦いで決める方がよっぽど唯の親の七光りよりいい。

 

まあでも、それ相応の力がないといけないけどね。

 

「いいよ~条件は参ったか気絶でいい~?」

 

「構いません!」

 

顔をガバっと上げ、男の……いや、漢の顔になった天狗は、戦う構えを取った。

 

「カロさん、危険ですよ。この人意外と強いですよ」

 

強い……ね。ハッ! 笑わせる。この程度で強いと言っていたら、咲夜とか鏡夜とか霊夢とか美鈴とかお嬢様たちとかパチュリー様とか小悪魔なんかどうなる。強いどころじゃないよ。

 

「じゃあ~はじめるよ~」

 

「はい、行き……」

 

『……え?』

 

天狗の言葉が終わる前に、天狗は崩れ落ちて気絶した。その姿を見ていた観客達は、何が起こったのか分からないといった表情で固まっている。

 

「もう少し強くなったらまた遊んであげるよ~」

 

天狗の後ろに立った私は、振り返ることもせずに言った後、椛のもとへとまた戻る。

 

「カロさん、一体何を……」

 

「ん~? ちょっと動いただけだよ~」

 

そう、ちょっと動いただけ。

 

ただし、天狗たちには見えないような速度で……といっても、上級の天狗なら見切れるだろうけどね。

 

その速度で動いた私は、天狗の顎にみぞおち、顔面に側頭部、喉に額、計六箇所に一撃ずつ拳を打ち込んだだけ。

 

紅魔館面子ならコレぐらい余裕で耐えれるんだけどな……ま、まだまだ鍛え方が足りませんね。

 

「なんだい、騒がしいねえ」

 

「お~!」

 

天狗の一人を倒した後、これからどうしようとかと考えていると、遠くの方から見知った声が聞こえてくる。

 

その声の方を向くと、周りにいる天狗より豪華な衣装を身に纏った天狗がこっちに向かって歩いてきていた。

 

その人物は――――――

 

「桜~!」

 

「誰だい……ってカロさん!?」

 

いたのは桜! ……って言っても分からない? 今では天狗の長の天魔って言えばわかるかな?

 

桜の姿が見えると同時に飛び出して、桜に向かって抱きつく。

 

桜と私の関係だけど、幼馴染? 的な感じ。正確に言うと、紫との旅で会った時に仲良くなった子。

 

いや~この子も偉くなったよ。最初に会った時なんか、ただの子供だったのに今では天狗の長だもんね……本当、お姉さん涙が止まらないよ。

 

「カロさん、どうしてここにいるんですか?」

 

「いや~文に会いに来たんだけど~勝負を挑まれてね~それと戦ってたら桜が来たの~」

 

桜の柔らかい胸に顔を埋くめる。ああ、柔っこくて気持ちいい。……私、女ですけど、女もいけますからね? なにがとは言いませんが。

 

「そうですか……ですがカロさん。そろそろ離れてください」

 

「あう~いけず~」

 

両手で無理やり引き離された私は、ちょっとだけ頬を膨らませる。う~もう少し堪能したかったな……。

 

でもま、今はいいですか。これが終わったら、また来て堪能しよう。

 

「なんか今、物凄く悪寒がしたんですけど」

 

「気のせいだよ~」

 

「だといいのですが……それでカロさん。文に会いに来たんですよね」

 

「そうだよ~」

 

「それじゃあ、案内しますよ……椛、ここまでの案内ご苦労さま」

 

「は、はいッ!」

 

あらら、畏まっちゃって。かっわいい。

 

「と、ところで天魔様。その、カロさんは一体……」

 

一体と言われてもね。私はただの一般的な妖怪ですよ。一般的なね。

 

「カロさん? カロさんはね、私と同じ大妖怪よ」

 

『……うぇえ!!??』

 

なんで皆一斉に驚くの? 対して驚くことじゃないと思うんだけど。

 

「ではカロさん。行きましょうか」

 

「行こっか~」

 

驚きで固まっている皆を放置して、私と桜は歩き始めた。

 

出来れば、穏便にことが進めばいいな~……ま、本心は戦いたいですけどね。

 




次回は……どうなるのかな?

感想、誤字、アドバイス、お待ちしております。

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