さあ、今回の話はまあ……いつも通りです!
では、第八十一話をどうぞ。
Sideルナサ
「ふ~ごちそうさま」
「……ごちそうさま」
鏡夜に食べさせてもらうという形で食事をした私は、朝食を全て食べさせてもらった後に、食べさせてもらった恥ずかしさに耐えながらも両手を合わせて食事を終えた。
……恥ずかしかった。だって、常に隣に鏡夜がいて、私の目を見ながら食べさせてくれるんだよ? 思わず、さっきの覚悟を捨てるところだった……捨てないけどね。
そうして、朝食を食べ終えた私と鏡夜は、鏡夜が入れてくれた紅茶を飲みながら食後の一服に入ってた。
「……ねえ、鏡夜」
「何だい、ルナサちゃん」
紅茶のいい匂いを目を瞑りながら楽しんでる鏡夜に、私は朝起きてから鏡夜に会ってからずっと聞きたかったけど聞けなかったことを聞いてみた。
「なんで家にいるの?」
そう、何で家にいるかだ。
だっておかしいでしょう? ここは私の……私達三姉妹のプリズムリバー家。鏡夜が住んでいるのは、紅魔館。プリズムリバー家に居るのはおかしい。
遊びに来たとか、ご近所さんとかなら分かるけど、紅魔館はご近所ではないし、ましてや遊びに来るなら来るで、私達三人の誰かに連絡でも入るはず。
「ああ、そのこと」
鏡夜は目を瞑りながら紅茶を一口飲み、カップをテーブルに置くと、ゆっくりと話し始めた。
「今日は、たまたま暇でね。いつもは、暇があれば魔理沙ちゃんやアリスや妖夢の所に行っているんだけど、最近ルナサちゃんに会ってないなと思ってね。それで、今日はルナサちゃんに会いに来たってわけ」
……なるほど、今日は暇だったから、私に会いに来たってことね。なるほど。
……うぇぇぇぇええええ!!?? ど、どうして私個人を名指しなの!? そこは私達三姉妹に会いに来たとかじゃないの!? ……あ、ああ、多分、私が長女だから、代表として会いに来た相手として名前を呼ばれただけだよね!
「へ、へ~そうなんだ」
内面は緊張しまくりではあったが、外面は冷静に取り繕い、なんとか紅茶を一口飲む。
「ちなみに、今日はルナサちゃんに会いに来たと言ったら、メルランちゃんとリリカちゃんは出ていって今日は帰ってこないって」
……え?
「なので、今日は二人っきりです」
い、いいいいいいま、今なんて言った!? 二人っきり!? 鏡夜と!?
え、って事はその、二人っきりって事は……二人っきりってことだよね! って、なにを当たり前のことを言ってるの私!
「んぐ!? ケホッ! ケホッ!」
「あらら、大丈夫?」
あまりにも衝撃的な言葉に、口の中に入っていた紅茶が変な所に入って、思わずむせてしまった。
「ほらほら、じっとして」
「むひゅうッ!?」
むせた私に、鏡夜はゆっくりと近づいてくると、鼻先がつきそうな位の距離で、私の口元を拭いてくる。
な、何故そんなに顔を近づけてくるのですか、鏡夜! もう少し離れていても拭けると思うのですが!
ああ、まずいよ! この距離はまずいよ!
なんでこの距離がまずいかって? いつでも押し倒されるからだよ!
家に二人がいない。鏡夜が私に好意を寄せている。私も鏡夜に好意を寄せている。多分、鏡夜は色々と経験済み。これは、押し倒されてもおかしくない!
で、でも、大丈夫! こ、心の準備はいつでも出来てる……つもり。だ、だから押し倒すなら……。
「はい、終わり」
「……ふへ?」
目をギュッと閉じ、さっき決めた覚悟とはまた違う覚悟を決めていると、鏡夜が離れた。
……あれ? 押し倒さないの?
折角覚悟を決めていたのに、押し倒されなかった事に少しだけキョトンとしてしまう。……なんでキョトンとしてるんだろう、私?
これでよかったんだよ! なんで押し倒されることを望んでいるの! これでいいんだよ!
「ふふふ、な~に期待してるの。私は、押し倒したりなんかしないよ」
な!? 心を読まれた!?
「ど、どうして……」
「……」
「どうして黙っちゃうの!?」
「いや、まさか本当に考えているとは思ってなじゃったから」
「……」
もしかして、私、墓穴掘った?
「……うわああああああああああああああああああああ!!」
恥ずかしい! 騙された! 鏡夜のバカ! そして私のバカ! なんでもう少し考えなかったあ!
もうこうなったら!
「どうしたの、急に立ち上がって」
もう頭の中がこんがらがり、自分でも何を考えてるかわからないが、わたしはいすからたちあがる。
しられてしまったのなら、こうするしかない。
「ふにゃ――――――!!」
「何故ねこおおっと!?」
や、やるしかない。こうなりゃあ、きょうやのよめなんかしらん。やるしかない。
訳の分からない脅迫観念に後押しされ、私は鏡夜に飛びかかり、そのまま鏡夜に馬乗りする。
「ふ、ふふふ、知られたのなら、やるしかない」
「ルナサちゃん、キャラがぶれてるよ」
「キャラって何? それより、積極的な私もいいものでしょう?」
ああ、どうした私。興奮しすぎで、口調や態度が大きくなりすぎてる。絶対、我に返ったら恥ずかしすぎて、死んでしまう。
「ほら、可愛い子に押し倒されているんだよ? 何もしないの?」
何、自分で可愛いいとか言ってるんだろう……本気で頭がおかしくなってるな私。
「いやね、何もしないのかと聞かれればしたいけども……」
「したいけども……なによ。やっぱり、私には色気が……足りないの?」
自分で色気無いとか言っておいてなんだけど、泣きたくなってきた。でも泣かない! 泣いたら、なんかここまでの大胆な行動が無駄になる気がするから。
困った表情でいる鏡夜に、涙を目尻に貯め、頬を膨らませながら顔を近づける。
「そんなわけじゃないんだけどね」
なら、一体何がいけないのだろうか。もしかして、実は私のことが好きじゃなかったとか……
「……」
「えっと……ルナサちゃん」
そんなはずはない……と思いたい。だって、これまで散々色んな事したりしてきたのだから。これで、実は嫌いでしたなんて言われたら、私は……
「ルナサちゃん」
「……なに?」
「どうして泣いてるの?」
「え……?」
頬を触ってみれば、そこにはいつの間に流れていたのかは知らないが、涙が流れていた。
鏡夜に好かれていない、そんな考えをしてしまい、私の瞳から涙が流れたのだろう。
「……ふ~仕方ない、後悔しないでよ?」
鏡夜は急に上体を起こしてくる。
馬乗りになっていた私は、鏡夜に振り落とされそうになるが、その前に鏡夜に抱き寄せられた。
「大方、涙の理由は、本当は自分は鏡夜に好かれてない……って所かな?」
なぜ鏡夜は私の泣いている理由が分かったのだろうか。いや、その前に、なぜ私は鏡夜に抱きしめられているのだろうか。う、動けない……
さっきまでの涙はどこへやら。今は、涙ではなく、なんか違うものが出そうです。
鏡夜は私の瞳を見ると、一つため息を吐く。
「はぁ、やっぱね。全く、何度も言うけど、俺はルナサちゃんの事が好きなんだって」
「でも、鏡夜は二人っきりだってのに一切何もしてこないじゃない……」
「ルナサちゃん、少し窓を見てみようか」
「窓?」
少しだけ鏡夜から離れて、言われたとおり窓の方を見てみると、そこには――――――
「……え?」
「姉さんって、以外に大胆ね」
「お姉ちゃん、流石にがっつき過ぎだと思うよ」
な、ななななななんでメルランとリリカが窓から見てるの!? い、いつから見られてたのよ!?
「よいしょっと」
「よっと」
窓からメルランとリリカが中に入ってくると、二人して私の肩に手を置いてきた。
「ま、姉さん」
「お姉ちゃん」
「「性欲も程々に」」
「……うわああああああああああああああん!!!」
「後悔しないでよねって、言ったよね」
ああ、もう、どうして最初に教えてくれなかったのよ! 確かに後悔しないでよねって言ったけども、まさかこんな展開だとは思わなでしょう!
でも、これで納得したわ。二人に見られてたら、私に手出しできないよね。
「じゃあ、頂きます」
「え、ちょっと、いただきますってどう言う意……!!」
「こういう意味」
いつの間にか抱きしめ直してきた鏡夜は、二人に見られているのにも関わらず、キスしてくる。
しかも! さっき襲ってこないのとか挑発的に言ったせいか、鏡夜はその、し、舌まで入れてきた!
「むぐー、むぐぐー」
必死に離れようとするが、離れない。むしろ、ドンドン舌を入れて、私の舌を弄りくりまわしてくる。
た、助けて……あの時の私はどうかしてたんです。今は正常だから、こ、こんなことされたら、私……わた……し……
「ふぇ~」
「あらあら、鏡夜さんったら、遠慮がないですこと」
「ちゅ。だって、襲わないのって挑発されたからね。これぐらいしとかないと」
「でも、流石に気絶するまではやりすぎだとおもうんだけど?」
「リリカちゃんもしたい?」
「遠慮します。私も、鏡夜さんの舌使いじゃあ、お姉ちゃんと同じ末路を辿ってしまうので」
「そう……いつでもいいからね」
「気が向いたらで」
「……あれ、私……」
私は今、昨日着ていた服を着たまま、ベットの上で眠っていた。
……あれは、夢だったの? でも、夢にしては随分と鮮明すぎる気がするのだけど……だって、あの、その……キ、キスした感触とか、鏡夜の肌の暖かさとかは今でも思い出せるもん。
……夢の中の私って、大胆だったね。
「……気持ち悪い」
寝ている間に汗を掻きすぎたせいか、服がベトベトする。
汗でベトベトする体を洗いたいから、布団を頭から被り、イモムシのようにして服を脱ぎ捨て、全裸になる。
お風呂に入るためには、一旦部屋の外に出ないといけない。メルランやリリカがいるかもしれないけど、家族だから大丈夫だよね。
それに、今は夜だし、もしかしたらメルランもリリカも寝てるかもしれないし。
……なんか、前もこんなことあった気がするけど、気のせいだよね。
「早く、お風呂入ろ」
扉まで歩き、ドアノブを握る。そのドアノブを握った瞬間、私の中で何かが爆発した。
物理的なものではない。いうなれば、そう、さっきまで見ていた夢……の、記憶……
ちょっと一旦落ち着こう。さっきの夢では、この先には鏡夜がいた。もし、もしもだよ? さっきの夢が予知夢だとしたらどうだろう?
夢の時とは違い、今は夜だ。だから、鏡夜がいるっていう可能性は低い。だって、あの夢の時は、朝だったから。
でも、一応確認しとこう。
「もう、メルランお姉ちゃん。お料理美味しいからって食べ過ぎ」
「いいじゃない。折角のご馳走なんだから」
扉を少しだけ開け外を見ると、そこには鏡夜の姿はなく、あるのは四二人で食事しているメルランとリリカの姿だけだった。
……やっぱり、あれは夢だったってことでいいのかな? ……うん、あれは夢だったって事にしょう! そうしないと、恥ずかしさで死んじゃうからね!
それに、アレが現実だったら、色々とおかしいしね。主に、私の大胆な発言とか。普段はあんな事言わないよ? あの覚悟だって、よくよく考えれば、おかしなものだしね。
「はぁ、欲求不満なのかな……」
ため息を吐き、扉を開けて、全裸のまま外に出る。すると、食事をしていたメルランとリリカは、同時にこっちを向いてきた。
「おお、おはよう、お姉ちゃん。起きるのが遅いよ」
「あら、姉さん。起きるのが遅いわね。もう料理が冷めちゃうわよ」
うん、それはいいんだけど、なんで二人は私が全裸なのにツッコミを入れないのだろう? もしかして、全裸が普通だと思われてる……? 痴女じゃないよ、私。
「うん、でも、まずはお風呂入ってくるね」
「入ってきなよ」
私から顔を逸らす二人。……何か隠してそうなんだけど、何を隠してるんだろう。でもまあ、いいか。早くお風呂入って、汗流そう。
風呂場の扉を開け、浴槽に一直線に向かう。
「ふ~お風呂……」
「ん? 起きたんだ、ルナサちゃん」
……はい? 何で鏡夜がお風呂場にいるのでしょうか? しかも裸で。
いや、そりゃあお風呂場だから全裸なのは当然で、体を洗ったりしてるのは分かるよ。でもね、そこが問題じゃない。問題なのは、鏡夜が何故、私の家のお風呂に入っているのかだ。
……ああ、そうか。まだ私は夢を見てるんだ。そうだ、そうに違いない。いや、そうだと思わせてください、お願いします!
「痛い」
夢だと思い、頬を思いっきり抓ってみたが、ただ痛いだけだった。
って事は何? もしかして、コレは夢じゃないとか? ……ハ、ハハハ、ハハハハハ……
「キャアアアアアアアアアアアアア!!」
いやー! 恥ずかしいから顔を見ないとかの前に、早く出ないと!
咄嗟にお風呂場から飛びだし、僅かに濡れた体を拭かずにメルランとリリカがいる場所まで突っ走る。
「もう、どうしたのお姉ちゃん」
「うるさいですよ、姉さん」
「きょ、きょ、きょきょきょきょきょうやが、お、おおお、お風呂場、ににににに!!」
「そりゃあ、今日泊まっていくって言ってたしね」
なにそれ!? 聞いてないんですけど? ……ん? 待って、一体いつそんなこと言ってたの?
「リリカ、姉さんは知らないわよ。だって、鏡夜さんとのキスのせいで、気絶してたんだから」
それってつまり、今朝の事から昼のことにかけての出来事は、全部夢じゃなかったって事で……
「……んにゃあああああああああああああああああああああ!!」
「ル~ナサちゃん!」
「にぎゃあああああああああ!!」
だ、抱きつかれた! 腰にタオルを巻いただけの鏡夜に、背中から抱きつかれた!
「ああ、スベスベのお肌。プニっとした肌。超気持ちい!」
「あああ! ああああ!」
きょ、鏡夜の頬が! 私の体に擦り付けられる! 別に嫌とかじゃないんだよ! 恥ずかしい!
あまりの恥ずかしさに、声にならない叫び声を上げて、必死に暴れるが、離れられない。
だ、だれかたすけて……
「ありゃりゃ、本日二度目」
「もう、鏡夜さんったら、手加減しましょうよ」
「いや~手加減無用でしょう、ルナサちゃんには」
次の日。テーブルの上に、四角い箱と共に、ひとつの手紙が置かれていた。
『ルナサちゃんへ。昨日は楽しかったよ。普段見れない、ルナサちゃんの素顔を見れたしね。でも、もう少し私に慣れてね。じゃないと、ルナサちゃんを押し倒すなんて真似、できないからね。最後に、昨日の衣装はあげるから、是非着てね』
手紙を読み終えた私は、今度は四角い箱を持ち、開けてみる。
「うわ~綺麗」
中に入っていたのは、白のブレスレットに、金色の刺繍がされている物だった。それを腕につけてみれば、大きさは丁度。
ブレスレットの下を見てみれば、そこにはまた手紙が入っていた。
『そういえば、まだ渡してなかったから、こういう形だけど渡しとくね。それ、どれだけつけてても、絶対に壊れないから。安心して、どこにでも付けていってね』
その晩。宴会に呼ばれたので、腕に鏡夜から貰ったブレスレットを付け、鏡夜から貰ったあのドレスを着て演奏をした。
「姉さん、随分と音が生き生きしてるね」
「鏡夜さんのお陰ね」
「うん……鏡夜のおかげだよ」
その日の演奏は、今までに無い位最高の演奏になった。
色々と恥ずかしいこともあったけど、私も楽しかったよ、鏡夜。
さて、ようやく次回からは、萃夢想です。あの人が主人公になりますよ。
感想、アドバイス、誤字、お待ちしております。