二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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今回でコラボ終わりです。あんまり出番なくてごめんね、龍君。

では、第七十九話をどうぞ。


第七十九話 え~これで終わり?

Side鏡夜

 

さて、折角、龍くんに傷を治してもらおうと思っていたのに、文のアッパーによって気絶してしまったので、傷は自分の血で再生させて治しました。

 

本当に残念。治してもらうために、半身失くしたまま来たのに……その点だけは、文の事を褒められないな。

 

「な、文」

 

「はい……ごめんなさい、兄さん」

 

そんなわけで、俺は今、気絶いた龍君を肩に担ぎ、文に説教し終えた所だ。

 

いやね、本来なら説教しなくてもいいんだけど、ここはほら、人と妖怪の違いもありますから、文の過剰な暴力は危ないっていう説教をね。

 

なんせ、あの怒った時の、文アッパー(命名俺)は、気持ちとかその辺いっぱい乗ってるから、誰でも気絶させることが出来るんだよ。無論、俺もね。

 

もしかして、文が幻想郷最強なんじゃね? ちょっと、俺の立ち位置的に危ないかも……

 

いや、しかし、もしかしたら、お嬢様達の方が怖いかもしれん。今の所はほら、本気で怒らせたことないけど、本気でブチギレたら……想像しただけで寒気がする。

 

絶対、肉体的ではなく、精神的に攻めてくるな……けど、単純な話し、お嬢様達を怒らせなければいいだけだよね、うん。

 

そしてこの後、鏡夜はレミリアとフランに激怒される事になるのだった……なんてね。あるわけない。

 

「に、兄さん……」

 

「お、おう!? あ、文、ど、どうして泣いてるんだ……?」

 

ボケーっと空を見上げながらそんな考え事をしていると、目の前で大粒の涙を目に溜めて、今にも泣きそうな文がいた。

 

ど、どうしたんだ文は!? も、もしかして、叱り過ぎちゃった……? 

 

ま、マズイ! 早く泣き止ませないと……。

 

「だ、だって、兄さん……話しかけても、は、反応、してくれないし、さっき怒ってたから、無視してると思ったん、だもん」

 

「あ、ああ、ごめん、ごめんな。少し考え事してただけなんだ。そんなに怒ってないから! 無視なんかしてないから!」

 

担いでいた龍君を空にぶん投げた後、急いで妖力のネットに龍君を包めて空に放置する。そして、慌てながら、俺は文の肩を両手で抑える。

 

女の子の笑顔を維持する方法やら、怒ってるのを笑顔にさせる方法やらは慣れてはいるけども、悲しい表情を笑顔に変えるのは慣れてないんだよ!

 

文は兄妹? ということもあって、抱きしめるだけじゃ泣き止まないんだよ! だから、こういう場合の、主に文に対する対応が分からない!

 

「で、でも……」

 

「だあー! もう泣くなって、一つだけなら、了承出来る範囲で聞いてやるから」

 

もうヤケクソになった俺は、取り敢えず文の顔を覗き込みながら、叫び声に近い勢で言う。

 

すると、文は一瞬キョトンとした表情になると、俯いた。そして、そのままクツクツと笑い声が聞こえ始めて、更には文の両肩が震え始める。

 

……アレ? コレってもしかして、地雷踏んじゃいましたか、俺?

 

「ふふふ、じゃあ何してもらおうかなあ。アレにしようかなあ~でもな~」

 

結果。完全に地雷を踏んでしまいました、俺。どうしよう、やばい要求されそう……で、でも、了承出来る範囲って最初に決めてたから大丈夫だよな。

 

でも俺……大抵の事、了承出来ちゃうんだよな~。はぁ、無茶なお願いじゃないことを祈ろう。

 

俯きながら頬を抑え、肩を震わしながら笑っている文を見ながら、俺は一つ、ある決心をした。

 

文に甘くしてもいいけど、少しだけ甘やかさないようにしよう。

 

 

 

「んふふ~兄さん!」

 

結局あの後、俺に対するお願いはまた今度ということになった。また今度、何かやらされるのか……。

 

そんなこんなで、今は文に抱きつかれながら、妖力のネットで包まれている龍君を引き連れながら、紅魔館へと戻っていた。

 

距離的には遠くはないから、結構なスピードを出して飛べばいいんだけども、文がスピードを出させてくれない。

 

出そうと何度も提案してみたのだが、帰ってくる言葉は、ダメ! の一言。やっぱり、甘えたい年頃なのかねえ。七百を過ぎたっての……に――――――!

 

「ニイさん?」

 

「ちょっと文さん? お願いですから、俺の腕に爪を食い込ませるはやめていただけないでしょうか?」

 

直感かはたまた何かを感じたのか、文の年齢の事を考えた瞬間、文の爪が俺の腕に食い込んできた。

 

やはり、女性の年齢を考えるのは、絶対ダメですね。痛感しましたよ。直にね。

 

でもさ、正直、皆見た目は若いよね。

 

お嬢様達なんて、五百超と五百近くなのに、見た目まだロリータだもんな。紫ちゃんだって、見た目まだ可愛い女の子だし、そんな年齢の事を気にしなくてもいいかと思うんだけども……。

 

「むー! むむむー!」

 

「ん? 龍君目覚めたのか?」

 

紅魔館が見えてきたって所で、急に龍君を包んでいたネットが暴れだした。

 

う~ん、このまま運んでもいいけども、正直運ばなくてもいいと思うんだよね~。いや、紅魔館まで運ばないってだけで、ここには降ろしてはいかないよ。ならどうするかって? 簡単だよ、こうする!

 

「文、ちょっと離れてて」

 

「お~い~鏡夜~お帰り~」

 

文が俺から離れると同時に、紅魔館の方から、俺の飴玉と自身の回復力によって完全に回復したカロがこちらに向かって手を振ってくる。

 

「カロー! いくぞー!」

 

俺はそれだけを言って、この後の事を何も言わずにその場で俺自身を軸にして回りだす。

 

さあ、何をしているでしょうか……って、分かりきってるよな? 俺自身が回りだす。すると、俺が持っている龍君入のネットはどうなるか? 答えは――――――

 

「むー! むー! むー!! む――――――!!!!!!」

 

「そーら、よっと!」

 

「む――――――!!!!!」

 

遠心力によって振り回され、龍君が大変な事になります。たぶん、今頃気持ち悪くなりすぎて、吐き気催してるだろうな。いや、吐き気どころじゃないか。

 

龍君を振り回すこと数百回。振り回した勢いのまま、俺はネットから手を離す。すると、カロの方に向かって、龍君入の妖力ネットは音速で向かっていく。

 

「う~ん~とりあえず~落とす!」

 

上下に腕を開き、前後に足を開く。掌はパーのまま。その状態で龍君が飛んでくるのをカロは待つ。

 

音速で飛んでいく龍君が、とうとうカロへとぶつかる。その直後、尋常ではない速度で半身になりながら、カロの下にしていた手が飛んでいった龍君の先端を上から押す。次に、カロはその場で押した勢いのまま上に跳び、余っていた上の手を、龍君の末端を地面に向かって押し込む。

 

……ちょっとした悪戯だったけど、アレじゃあ龍君大怪我かも……でも、ま、こうすれば――――――

 

ちょっと危険な感じだったので、龍君の足元にスキマを展開して地面への衝突を避けようとしたら、先に誰かのスキマが開かれた。

 

紫ちゃんでは無い。だって、紫ちゃんだったら、感じでわかるし。ならこれは、もしかして――――――

 

「君かい?」

 

「ええ、そうですわ」

 

「あれ? 紫さんではないですか」

 

隣に声を掛けると、そこにスキマが出来上がり、中から紫が現れた。

 

紫ちゃんではない、紫だ。この紫は、別世界……つまり、龍君の方の紫だ。

 

「それで、紫。どうしたんだ?」

 

「こちらの世界の龍――――――もとい、双夢を連れ戻しに」

 

「へ~もうかい? 随分と早いこと」

 

扇子で口元を隠し、ちょっと胡散臭い空気を出しながら、紫は言ってくる。

 

それにしても、龍君が帰るなんて、早いこと。今日来たばかりだよ。今日来て今日帰るなんてね。

 

「で、一体、なんで龍君をこっちの世界に連れてきたんだい?」

 

「目的としては、数日感遊ばせる予定だったんですけどね……その、霊夢達が」

 

「ああ、なるほどね」

 

要するに、こちらに遊びにこさせたはいいけど、霊夢達が龍君がいないせいで、龍君不足アンド寂しくなっているってわけね。そりゃあ、早く返していあげないと。

 

「それじゃあ、短い間だったけども、楽しかったよ」

 

「え、ええ、俺も短い間でしたけど、楽しかったですよ」

 

妖力のネットから解放された龍君は、さっき振り回された影響か、若干顔色を青くしながら紫のスキマから顔を出してきた。

 

「そうれは良かった。じゃあ、また今度遊びに来てよ」

 

俺が右手を上げると、龍君も青くした表情のまま、右手を上げてくる。

 

「ええ、また必ず来ますね。……うぷ、紫、先に戻ってるわ」

 

「皆を大切にしてやれよー」

 

右手を振りながら、龍君を見送る。龍君も、右手を軽く二、三度こちらに振ると、ゆっくりとスキマの中に入っていった。

 

「それでは、鏡夜さん。私もこれで」

 

「ああ、気をつけて」

 

「では……」

 

軽く頭を下げた紫は、スキマの中へ入ると、スキマを閉じてしまった。

 

これにて、龍君は帰ってしまったわけだが……なんていうのかな、消化不良を起こしそうだ。

 

後、十個位、悪戯を考えていたのにな……ま、今度会った時にでもやってやろう。

 

「じゃあ、文、帰るか」

 

「うん、兄さん」

 

ボケっと隣で俺と紫のやり取りを見ていた文に声を掛けると、いきなり抱きついてきた。

 

「鏡夜~私も~」

 

「ぬおッ!?」

 

「カ、カロ! 離れなさいよ!」

 

「いい~や~だ~」

 

何故でしょうかね、文とカロの二人に抱きつかれてしまった。しかも、空中で。バランス……取りづらいんですけど。

 

「ぐぬぬ……」

 

「ふんふ~」

 

やんややんやと俺の取り合いが起こり、カロと文が少しづ~つヒートアップし始めて、とうとう取っ組み合いの喧嘩が始まりそうになっている。

 

この二人が喧嘩したら、ぶっちゃけ幻想郷が壊れちゃうので――――――

 

「は~い、お二人さん、喧嘩する仲がいいって言うけど、そこまでね~」

 

「ふげッ!?」

 

「ふぎゃッ!?」

 

脳天にチョップして気絶させ、肩に担ぐ。

 

今の所はこれでいいでしょう。起きたら起きたで、何かしてやればいいし。

 

二人を肩に担いだ俺は、ゆっくりと紅魔館の方へと飛んでいった。はぁ、帰ったら二人の介抱と飯の用意しないと。

 

 

 

時刻は深夜。もう二時を回って、普通の生き物ならとうに眠っている時間帯だ。

 

あの後、紅魔館に帰った俺は、二人を一緒のベットに寝かせ、夕食の用意をしていた。勿論、外で寝てた咲夜ちゃんや美鈴を起こして手伝っては貰ったけども。

 

でだ、夕食の用意をし終えて、文とカロを起こしに行ったんだけども、そこにはとんでもない事が起こってたんだよ。

 

何かっていうと、こうね、二人が如何に俺を奪えるかという事で、女のテクニックを磨くとかで、色々と相談していたんだよ。

 

まあ、ビックリしたね。部屋に入った瞬間、二人して裸なんだもん。もう、無言で扉を閉めたよね。扉閉めた後で、必死に弁明されたけど。

 

そんな事がありながらも、一応今日の仕事を終えた俺は、紅魔館の屋根へと飛んで登り、一人で座りながら月を見てのんびりとしていた。

 

ただボーッと。何も考えることなく、ひたすらのんびりと。

 

「あら、鏡夜。こんな所で何してるの?」

 

ボーッとしていると、後ろから急に声がかけられた。

 

振り返ってみると、そこにはいつもの大きな帽子を頭から取って、綺麗な紫色の髪の毛を風になびかせ、白の薄い服を身に纏ったパチュリー様が立っていた。

 

「パチュリー様……いえ、何もしてはいませんよ。ただ、月を眺めていたんです」

 

「そう……」

 

パチュリー様は俺の方へ向かって歩いてくると、俺の隣ではなく、俺の胡座している足の上にチョコンと座ってくる。

 

「パチュリー様……?」

 

「たまにはいいでしょう? 私だって、寂しい時はあるのよ」

 

そう言いながら、パチュリー様は俺の手を取って、肩から抱きしめる形に俺の手を持っていく。

 

「少し寒いわ」

 

パチュリー様の言葉で、俺は腕に力をいれ、パチュリー様を後ろから抱き寄せる。

 

「ん……」

 

少し艶かしい声をパチュリー様は出すと、俺に体を預けるように後ろに体重を掛けてくる。

 

お嬢様達とは違う感触だな。こう柔らかいのは同じなんだけども、なんだろうなあ……ちょっとだけ、パチュリー様の方が弾力がある。

 

お嬢様達はモチモチ。パチュリー様は、プニプニって感じ?

 

「……ねえ、鏡夜」

 

「どうしました、パチュリー様?」

 

パチュリー様を抱きしめながら、月を見ていると、急に話しかけられた。

 

何事かと思い、顔を正面に持ってくると、パチュリー様が半身になりながらこちらを見ている。

 

目と目が合う。そんなよくしていることだけども、なんだがパチュリー様は緊張するな。いや、緊張じゃないな、これは……照れくさいのか。

 

俺と同じなのか、パチュリー様も若干顔を赤くしてるし。

 

「貴方は、なんでレミィ達の事を好きになったの?」

 

……これはなんとまあ、珍しい事を聞いてくること。お嬢様たちには聞かれたことはあるけども、パチュリー様が聞いてくるとは……意外だ。

 

しかしなあ、どこを好きになったか、か。正直な話し、一目惚れだったからな、アレは。

 

どこを好きかと聞かれれば、全部好きだし。これは、前、お嬢様たちに聞かれた時にも答えったけか。

 

「そうですね……全てですよ」

 

「そう……」

 

俺の返答を聞いたパチュリー様は、一つ頷くと、また正面を見てしまった。

 

何か悪いこと言ってしまったのだろうか? 若干、不機嫌になったような気がする……。

 

「それじゃあ、鏡夜」

 

 

不安になって、何かマズイ事を言ってしまったのか考えていると、パチュリー様が俺に声を掛けながら、俯いてしまった。

 

本当に、俺は何か言ってしまったのだろうか? だが、何も見当たらない。これは……どうすりゃあいい?

 

「貴方は、その……レミィ達の事が好きでしょう?」

 

「そうですね」

 

「それじゃあ、その……わ、私のことって、どう思う?」

 

どう思うと聞かれても、困るのだが。だって、回答は一つしかないのだから。

 

そこで俺は、ようやくパチュリー様がいきなり俯いたのか分かった。要は、不安だったのだ、パチュリー様が。

 

多分、最近俺がパチュリー様にこんな感じでお付き合いしてないからだろうな。いやはや、男として、まだまだだな、俺も。

 

そっと抱きしめていた腕に力入れ、更にパチュリー様を抱き寄せ、顔を耳元の近くに持っていく。

 

「好きですよ。それ以前に、貴方は私の大切な家族です。好き以外、あるわけないじゃないですか」

 

あらら、パチュリー様ったら耳元で囁いたら、お顔が真っ赤になってしまいましたよ。可愛い事。

 

「そ、そうよね」

 

「ええ、ですから安心してください。最近はお相手できませんでしたけども、これからは少しづつちゃんとお相手しますので」

 

優しく頬にキスすると、パチュリー様は頭から煙でも出るんじゃないかとばかりに顔を真っ赤にする。

 

「そうして頂戴よ。私だって、鏡夜と一緒にこういう事したいんだから……それに、私は意外と寂しりがり屋さんなんだからね」

 

俺の腕をギュッと握り、悪戯しているような感じで言ってくる。

 

「すみません。パチュリー様」

 

苦笑いを浮かべて答えると、何かが吹っ切れたのかパチュリー様は顔を上げて、ぼんやりと月を眺める。

 

「綺麗ね」

 

「ええ、綺麗ですね。もっとも、パチュリー様の方が綺麗ですが」

 

「もう~」

 

そんなやりとりをしながら、俺の一日は終わり、そして始まった。

 




コラボ、ありがとうございました! suryu- 様!
これにて、コラボ終了です。

それとですね、次回の事についてお知らせしときます。次回、八十話になるんですよ。
そこで! ある話を書きます。それは、アンケートで地味に多かった、ルナサの甘甘? 照れ照れ? 話しです。お楽しみに!

あ、ちなみに、アンケートはまだやってますからね。

感想、アドバイス、誤字、お待ちしております。

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