そして、毎度のことながら、キャラ崩壊が起こっている可能性があります。おかいしいところはおかしいと言ってください。似せる努力はしましたが。
では、第六十一話をどうぞ
Side 鏡夜(男? 女?)
「いきなり吹き飛ばすとは……オリジナルの奴、後で文句を言ってはやらないといけませんね」
「一体、何なんだよ。あの爆発」
今、私はオリジナルから発生された爆発により、元いた場所から数十km程吹き飛ばされていた。
それにしても、爆発が起きたというのに、体にダメージがありませんね。これは、オリジナルによる配慮でしょうか。
「お~い」
全く、ダメージの配慮はいいですから、容姿の方に気をつけて欲しかったですね。
「聞いてる?」
鏡を出してみましたが、なんですかこの中性的で、見る人によれば男とも女ともとれる顔立ちは。それに、髪はロングの茶髪で後ろに大きな三つ編み。これに、髪の中にでも鉄の破片でも入れて、それを組み合わせたら鎌が出来る。そんな事が出来たら、どこのHSSの兄貴だよと言われてしまう。
まあ、HSSなんてそんなことはできませんが。……いや、もしかしたら出来るのかもしれませんが。
「ちょっと?」
「うるささいですね」
「ガッ!?」
なにやら、先程からずっとこちらに向かって話しかけてきていた男……神崎優でしたか? が、うるさいいので、体内の妖力を空気中に放出させ、それを操り、空気を圧縮して腹を殴ると、優は苦悶の表情を浮かべて吹き飛んでいった。
人様が考え事をしていると言うのに、全く、迷惑な方ですね。
「いきなり不意打ちかよ」
優は空中で態勢を整えると、空中に浮かび上がり、その場で滞空しながらこちらを睨んできた。
「貴方がうるさいのがいけないんです」
「なにこれ、俺が悪いの!?」
「千対零で、貴方が悪いですね」
「そんなに!?」
オーバーリアクションを取りながら優は驚いた表情を作る。
「そうです。貴方が悪いんです。私は悪くない」
「そうか……って、ちげぇよ! 俺悪くないよね! 話しかけただけだよね!」
「うるさい! 黙りなさい!」
「え~」
一喝すると、優は納得のいかないといった表情で不満の声を上げた。
「いいから、来なさい。相手になってあげます」
「いきなり、好戦的だな。でも……いいぜ。簡単にはやられてくれるなよ?」
優がそう言った瞬間、空中にいたはずの優の姿が消えた……ように、普通のやつなら見えただろう。
だが、私にとって、そのスピードは、あまりにも遅い。遅すぎる。
「遅すぎますよ」
「な!?」
瞬間的に、背後に回り込んだ優に対して、振り向きながら裏拳を放つと、優は咄嗟に後ろに飛び退き、私の拳を躱した。
「やるな。昔戦った神とは違うってわけか」
「神なら、私だって相手にしたことくらいありますよ」
私はそう言うと、素早く詰め寄り、右手で見え見えのテレフォンパンチを放つ。
「見え見えだぜ!」
優はそう言うと、私の拳を、体をずらすことによって右側に躱した。そして、すぐさま右足で、私の腹めがけて蹴りを放ってくる。
「もらっ……!?」
だが、その蹴りは私に当たることなく、空を切った。
何があったかというと、優の体がふらつき、体制が後ろへと崩れたため、蹴りが空を切ったのだ。
その、ふらつき、困惑の表情で呆然としている隙だらけの優に、すぐさま体を空中で捻り、顎に向かって、飛びながらの左後ろ回し蹴りを放つ。
この蹴りに対して、困惑していた優は咄嗟に反応し後ろへと上体を逸らす。そして、私の蹴りは空を切るが、躱したはずの優は、顎の部分に何か当たり吹き飛んだ。
「よっ」
蹴りを放った後に、空中で態勢を整えて、地面へと立つ。
優の方向を見ると、地面に手をつきバク転し、片膝を着けた状態でこちらを睨んでいた。
「……あんた、何をした?」
「教えるとでも?」
「思っては…ないさ!」
優はそう言うと、地を蹴り、地面スレスレを飛びながら突っ込んでくる。ただ突っ込んでくるだけなのだが、何か能力でも使ったのか、その速度は異常だった。光速、或いはそれ以上のスピードで迫ってくる。
「ふべ!?」
まあ、曲げる能力で向きを下に曲げて、地面へと突っ込ませましたが。その時、小さなクレーターができましたが、なんて威力なんだろうか。
「な、何が……」
「ほ~ら、いきます、よっと!」
「のわ!」
私は、驚いて地面へとうつ伏せになっている優に近寄り、顔面めがけて右足を振り下ろす。だが、優は咄嗟に私の右足を横に転がることによって躱し、地面を拳で弾いて飛び退いた。
優に躱されたことによって、私の右足は地面へと思いっきりぶつかってしまった。その際、地面に、威力が強すぎたのか右足が埋まってしまった。
「隙有り!」
その瞬間を好機と思ったのか、優は再び私へと同じように突っ込んでくる。
同じように突っ込んできたため、同じように地面へと向きを曲げたが、優は地面へと当たる直前に地面を蹴っ飛ばして、向きをこちらに戻し、右足で蹴りを放ってきた。
「そら!」
「危ないですね」
私は咄嗟に蹴りを上体をそらすことによって躱し、埋まっている右足を引っこ抜こうとする。しかし、その前に優は蹴りを放った足を、そのまま私の埋まっている右足の膝の部分に当て蹴りぬく。
膝の関節を破壊されたか。
優の蹴りの威力に耐えきれなかった私の膝は、完全に破壊され、膝から下が無くなってしまった。
私は、残った左足で地面を蹴飛ばして後ろの空中へと飛ぶ。右足を失ったことで、跳躍力は半減したが、それでも数十mは跳ぶことができた。
空中へと跳んだ私は、妖力の翼を出して、羽ばたきながらその場に滞空する。
吸血鬼の翼を使っても良いのだが、いつもの癖なのか、こちらの翼を出してしまった。やはり、いつも使って、使い慣れてる方が使いやすいからな。
空中で滞空していると、地面にいる優はこちらを見て、笑っていた。
「おいおい、威勢の良かった割には、随分とボロボロだな」
……ちょっと、プッツンしちゃいました。
「それにしても、あんた男なのかよ、女なのかよ」
「我が血、我が肉よ。目の前の敵を殲滅せんが為に我に服従しろ」
「聞いてるか?」
優が何かごちゃごちゃ言っているが、そんなもんは無視して詠唱を続ける。
「我が体内から出てよ、真紅なる鎧――――」
――――ブラッディアーマー
詠唱が終った途端、私の無くなっていた右足から血が溢れ出した。
「な、なんだ!?」
その血は止まらず、私の体の血、全てを吐き出しそうなぐらいの勢いで噴出され続ける。
だが、吸血鬼のせいか、血は一向になくならない。そればかりか、噴出されている血以上の量を、すぐさま生成していく。
噴出されている血は、まるで球体でも作るかのように私を覆っていく。そして、血の噴出が止まった瞬間、私の体に、周りを囲んでいた血が一斉に飛びついてきた。
ベタベタと張り付いてくる血は、徐々に形を整えていく。
「……―――――――――!!!!!!!!!!!」
「ぬお!?」
そして、血が形を整えた瞬間、私は声にならない咆哮を上げていた。
たった一つの咆哮で地面は抉れ、周りの空気は吹き飛び、優はあまりに大きすぎる咆哮故に目を瞑って耳を塞いだ。
ブラッディアーマー。自分の血液によって、色々なもの作る私の技。
「よ、鎧?」
咆哮が収まり、優は目を開けこちらを見ると、目を見開いて驚いていた。
私の現在の姿は、フルフェイスのマスクだが両目の部分が空いており、体は真紅の色の鎧。肩の辺りに捻じ曲がった角のようなものが一本ずつ生え、両腕の二の腕の部分には片刃の刃が付いている。そして、頭の後ろからは、私の大きな茶色い三つ編みが出ており、背中にはコウモリの翼が飛び出ている。
鎧の姿となった私は、地面へと降りる。ちなみに、この時私の右足は、血によって形成された義足のようなものが付いている。
「それは……」
「――――――!!!!!!!」
「っ!?」
優が何か言っているが、そんなものは聞かない。というか、今のこの状態は、マスクを取らなければ、まともに話せない。
咆哮を上げると、衝撃波が発生し、周りのものを吹き飛ばしてく。先程は、耳を塞いでいる優だったが、今度は顔の前で両手をクロスさせて防いだ。
「話は聞かない、か」
「――――――!!!!!!!」
私は右手に、二m程で、幅が三十cmはあろうかという大剣を血で作り出し、肩に担いで優に向かって突っ込む。
優へと一瞬で詰め寄った私は、肩に担いでいた大剣を大きく振る。
斬撃は地面を割り、三m程の亀裂を地面につくる。だが、それ程の威力を持っていたとしても、躱されてしまえば何も意味はなく、優は最初に使った瞬間移動で背後へと回った。
瞬間移動で背後へと回った優は、右手に妖力、霊力、そして神力に似た何かを込めて殴りかかってくる。
拳は、当たれば容易に鎧は破壊されるほどの威力を持っている。しかし、それも当たればの話だ。
優の拳は、勢いよく私の背中に迫ってくるが、その拳は私の背中へと当たる瞬間、私の鎧から飛び出した棘が刺さり止められた。
「な!?」
驚いている優に、すぐさま棘を鎧に収納し、振り向いての大剣での横薙の斬撃を放つ。
優はその斬撃を屈んで躱すが、またもや謎の衝撃によって吹き飛ばされた。
ここいらでそろそろ、この謎の衝撃にのことについて説明する。この衝撃は、最初にやったように、妖力を空気中に放出して、それを操って、空気で優を殴っているのだ。
なぜ優がよけられないかというと、知らん!
衝撃によって吹き飛ばされた優に、更なる追撃を仕掛けるため、地面を蹴っ飛ばして優へと近づく。
まだ、空中にいる優は、私の接近に気づき、すぐさま態勢を整えて、迎撃するため拳を構える。
私は持っていた大剣を鎧に溶かすようにしまい、今度は両手に小さなダガーを作り出す。そして、右手に持っていたダガーで、優の頚動脈を狙って、振るう。
優は腕全体を強化して、右手でダガーを防ぐ。そして、今度は反対の手で殴りかかってくる。その拳を、ダガーの刃で受け止める。
光速で放っては防がれ、防げば放つ。そんな攻防を数十回と繰り返していると、とうとう私の斬撃が、優の頚動脈を切り開いた。
だが、そこで優は何かしたのか、頚動脈の傷はなくなった。
「埒があかないから、反則じみたことさせてもらったぜ! 傷の概念を操り無くした。気絶の概念を操ってあんたは気絶する。そして、俺から死の概念を無くして俺は不死となった!」
優の言葉を聞いた瞬間、私の視界は急にブラックアウトした。しかし、そんなことはこの鎧が許さず、私の体に、優に刺した棘を、私に刺した。その痛みのおかげで、私は気絶した状態から、意識を取り戻した。
意識を取り戻した私は、すぐさま優に向かってダガーで斬りかかるが、優は避ける素振りを見せない。
「気絶したのに、意識を取り戻したことには驚いたが、無駄だぜ!」
私のダガーは、優の言葉の最中に、頚動脈を切り裂いたのだが、その傷は最初から存在しないように消え去った。
傷の概念を操ったということは、もう奴はダメージを受けない。それに、不死となったということは、奴はもう死なない。ということは、勝てる方法は存在しない。
そんなことを、内心考えていたが、その考えはすぐさま消え去った。
殺せないのならば、発想を変えるだけだ。
私はすぐさま、その案を考えると、妖力の翼を出して、地面へと勢いよく降りた。
「待て!」
優も私を追ってくる。その速度は、光速に近いため、私は自分の力全てを逃げることだけに集中させ、光速に近い速度を出して逃げる。
地面スレスレまでいった私は、方向を変えて、妖力の翼を羽ばたかせて地面と並行して飛ぶ。優は地面に着地するときに、地面を蹴ってこちらへと跳んでくる。その時に、僅かに距離が空いたため、ここぞとばかりに私は逃げた。
私は、自分の考えたある計画のため、スキマを開き、あるものを取り出す。取り出した私は、地面を削って着地しながら優の瞳を見る。
「もらった!」
優の瞳を見た瞬間、私は、優の振り抜いた拳によって、心臓を貫かれた。
何故……何故、鎧の能力が発動しない!
「あんたの能力は発動したさ。でも、棘が出てくる時以上の力で、俺は拳を振るった。つまりは、能力は発動したけど、意味はなかったのさ」
優の言葉終わった瞬間、優は私のマスクを拳で破壊した。
「あんたの負けだよ」
「バカ……な…」
私はその言葉だけを残すと、その場に倒れた。
「……死んだかな? それにしても、久々に手応えのある戦いだったぜ」
私が倒れている間、優は腕を上に上げると、背伸びをした。そして、優が振り返った瞬間、私は最後の力を振り絞って優へと特攻した。
「バレバレだよ!」
「ガ!」
背中を向けていた優は、私が特攻を仕掛けた瞬間、振り向き、かかと落としを放ってきた。
「最後の悪あがきだったようだけど、無駄だったな」
そのかかと落としを頭に喰らった私は、地面へと叩きつけられ、頭が血がドバドバと溢れ始めた。
「さてさて、本当にこれで終わりだよな」
そう言って振り返った優に向かって、私は再び特攻した。
「な!? まだ、生きてんのかよ!」
優は再び私の事を地面へと叩きつけると、更に追い討ちを掛けて、頭を踏み潰して破壊してきた。
「頭を破壊されれば、流石にもう……」
優はそう呟いて、私の頭があった場所から、足を退け、数歩下がる。その次の瞬間、私は再び優に襲いかかった。
「なんで、なんでだよ! なんで頭を破壊したのに動けんだよ!」
「なんでだよ!」
「まあ、こんなもんでしょ」
今、鎧を解除した私の目の前には、植物に絡まれて身動きが取れず、叫んでいる優がいる。
さてさて、私は何をしたでしょうか? 答えは簡単、私の得意な幻術です。
ですが、今回は少し道具を使わせていただきました。それは、邪念樹。知る人ぞ知っている、あの筋肉弟の兄貴に妖狐が使った魔界の植物だ。この植物は、種子を植えつけられた者に幻影を見せ、その者を養分として死ぬまで寄生する植物だ。だが、優は死なない不死なため、永遠に栄養を吸われるはめになる。
ん? どこから調達したって? もちろんスキマから。
それにしても、楽でいいですよね、目を見ても幻術。ほんと楽でいいです。実はさっき、優の瞳を見たときに、幻術を掛け、その後にこの植物の種子を大量に優の体内に植え付けたんだよね。
な~んて考えていると、優の体が光りだした。多分、憑依の限界でも来たのだろう。色々と概念を操っていたのだけど、精神でもやられたのかな?
流石に、このまま返すのは可哀想なので、邪念樹を全て引き裂いて、優の額に手を当てて、幻術を解除する。
「なんで! ……って、あれ?」
「やあ、優、どうだった? 悪夢は見れたかい?」
「あ、あんた、死んだはずじゃ……」
「残念幻覚でした」
私がネタばらしをすると、優は呆けた表情をした後、目を右手で抑え、左手で腹を抑えて後ろに倒れこむ。そして――――
「ハ、ハハ、成程、俺はまんまと騙されたわけか」
小さく笑い始めた。
「残念ながら、それしか勝つ手段がなくてね」
「ハハハ、いやいや、面白いな」
優は笑い続けると、右手を避けて、私の方を見た。
「なあ、あんた、名前はなんて言うんだい?」
「名前? ……そうね、時成極夜だ」
特に名前の由来とかはないが。なんとなくだ。なんとなく。
「時成……極夜か。いい名だな!」
「ありがとう」
優はそう言うと、自分の右手を見た。
「……どうやら、終わりのようだな」
「そうよ。終わりだ」
「そうか、なあ極夜。楽しかったぜ」
「そうかい、そいつは良かったわ」
私はため息混じりにそう言うと、優は笑顔を作った。
「じゃあな、極夜。また、会う機会があったら会おうぜ」
「私は別に、会いたくはないがな」
「冗談きついぜ?」
私が笑顔で優にそう言うと、優は笑顔のまま、光の粒子となって消えていった。あとに残ったのは、男性のような何かだけだった。
「……行ったか。は~それにしても、疲れたわ。全く、なんて能力だよ」
優が消えたあと、私は立った状態から、後ろへと倒れ込んだ。
「は~本当に疲れた」
は~っとため息を吐き、両目を瞑る。
両腕はボロボロ。体も限界以上の力を出してボロボロだし。右足はないし。もう最悪。
そんな感じで、心の中で愚痴を言ってから、目を開けると、空に妖力の粒子が飛んでいた。
「私より速い奴がいたんだな。じゃあ、俺もそろそろ行きましょうか」
そう呟いた私は、再び目を閉じて、体の力を抜いた。
「じゃあね、オリジナル。後は任せたぞ」
キャラ崩壊が起こってませんように。
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