島夢様
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では、第五十八話をどうぞ。
第五十八話 シュレディンガーの猫
Side鏡夜
「いやはや、待ちくたびれましたよ?」
目の前のローブは何か言っているが、俺の耳には一切入ってこない。そんな、ローブの言ってることなど無視して、俺は一瞬で全員をお嬢様達の近くに集める。
「無視ですか?」
すぐさま、呼吸、傷、脈拍を検査する。
呼吸は安定しており、脈拍も少し早いが安定している。だが、傷の方が深かったのか、まだ完全に癒えてはおらず、パチュリー様と小悪魔は一刻も早く治療しなければならない程の致命傷だった。お嬢様達の傷は致命傷とまではいかなくとも、それでも、かなり傷は深かった。
急いでスキマから例の飴玉を取り出して、食べさせる。お嬢様たちには俺の血も同時に飲ませる。
「お前が……やったのか?」
一通りの処置をして、地面に寝かせたあと、俺は、自分でもゾッとするような低い声を出していた。
恨みや憎悪や殺意、そういった類のものは……含まれていない。何も感じさせない、ただの低い声だ。それなのに、自分でもゾッとする。
「ええ、そこの人たちを餌にして、貴方を呼ぼうとしたんですがね、少々暴れましてね。ですから、ちょっと痛めつけてしまいました」
「そうか……じゃあ、覚悟は出来てるんだな!」
瞬間、俺は自らのリミッターを全て開放していた。
妖力はまるで台風のように俺の周りで吹き荒れ、霊力は白い雷のようになって俺の体を通る。そして、魔力は相手を飲み込もうとするように、龍の幻覚を見せるような錯覚さえ覚えさせるようにこの一帯を覆い尽くしていく。
「これほどとは……ですが、それもこの一瞬だけです」
ローブはそう言うと、杖の底を地面に叩きつけた。
「魔法、シュレディンガーの猫」
その言葉共に、真っ暗になった。だが、そんなことは今の俺には関係ない。
纏っている全てを開放して、周りにあるもの全てを吹き飛ばす。地面や、空気。そこにある次元や存在。何もかもを一度に吹き飛ばす。
「なんと手荒な」
光が戻るとそこは、端がなく唯大地が広がっているだけの草原だった。先ほど全てを吹き飛ばしたというのに、元に戻っている。
なぜだ? いや、今はそんなことはいい。
俺は奴の姿が見えた瞬間、その場を蹴って接近していた。光速という最高のスピードすら上回り、形容できないほどのスピードで奴へと接近した。
そして、奴へと近寄った瞬間に、俺は拳で奴の顔面を殴り抜いていた。音や残像等はない。そもそも、俺の速度に追いついてきていない。
「~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」
音、光、その二つを置き去りにした俺の拳は、奴へと当たり、奴が数Ym飛んだところでようやく落ちた。
だが、それでも、俺の気は収まらない。すぐさま、地面を蹴り飛ばし、横になっている奴との距離を一瞬で詰めて蹴りを放つ。しかし―――
「術式展開」
その言葉が聞こえた瞬間、俺の体から力が抜けた。何が起こったのかわからない。だが、それでも関係ない。
「貴方の限界を無くす能力を封印させて―――グハ!」
なんかごちゃごちゃ言っていたが、そんなものは気にせず腹を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばしたところで、ようやく冷静になり奴の言葉を思い出す。どうやら俺は、限界を無くす能力を封印されたらしい。
……だから、何って話なのだが。
所詮あの能力は他人から貰ったもんだ。故に、そんなものに頼りっきりの俺ではない。ちゃんと、能力がなくなったことを想定していつも戦っているのだ。それ故の、リミッターだしね。
「く、なんで、そんなに力が……」
奴は、上体だけを起こしてこちらを見ている。
流石の奴でも、二発も馬鹿げた威力の攻撃を喰らえばまともに動けないか。というか、そもそも一発目に耐えられたことが驚きなのだが。
「……まさか、貴方」
奴は驚いた顔で、俺の背中を見ている。
何ごとかと思い背中に意識を集中すると……成程、それは驚くはな。
俺の背中には、コウモリのような羽が生えていた。つまり……唐突だが、俺は吸血鬼になっていた。
ここからは俺の推測だが、多分、今まで俺が吸血鬼にならなかったのは、人間じゃなかったからだろう。ずっと人間だと自負してきたが、ここで訂正する。俺は、人じゃない、人外だ。
吸血鬼に血を吸われた人は吸血鬼になる。じゃあ、人じゃないものから血を吸っても対象は人ではないので、吸血鬼にならない。だから、今まで俺は、吸血鬼ならなかったのだろう。
では、なぜ今は吸血鬼になっているのか? それは、限界を無くす能力を封印されて、人間の限界を無くした人外ではなく、限界がある人に戻ったからだろう。そこで、昔血を吸われていたから、吸血鬼化が今発現した……ってところかな。
「成程ね、だから一瞬力が弱まって、また力が湧いてきたわけか。それに……」
先ほどまで霊力が自分の中にあったのだが、今はない。代わりに妖力の量が、リミッターを解除した時の七割ほどまである。
とまあ、一通り自分の分析と診断を終えたところで、奴は杖を支えとして、立ち上がった。
「全く、まさか、吸血鬼になっているとは驚きですよ。」
「そりゃあどうも。……で? まさか、もう終わりじゃないだろうな?」
「勿論ですよ。ここからが本番です」
奴はゆっくりと杖で地面を突くと、七人、人の形をした何かが現れた。その七人は、奴と同じようなフードを被っており、表情がわからない。が、七人はどこか、笑っているような気がした。
その気配のせいで、動けない。いや、俺は今、あえて動かない。奴の全力であろうこの魔法を破壊して、完全なる敗北を奴に与えるためだ。
「さあさあ、異世界の者たちよ。現れて頂戴」
再び奴が地面を叩くと、七人の体が急に痙攣し始めた。
「――――――――!!!!!!!!!!!」
七人はそれぞれ同時に獣のような雄叫びを上げると、その身を一度大きく震わせた。すると、七人の体は、男や女、それぞれ特徴的な体になった。
「……ここはどこだ?」
『あれ? 私たちってなんでここにいるの?』
「どこだ? 俺は確か幻想郷にいたはずだが……というか、フード邪魔!」
「ここはどこだ? 確か俺は死んだはずだが?」
「どこだ、ここは?」
「何かに呼ばれたから、来てみれば、いい『闇』が揃ってるね」
「あれ? 鏡夜じゃないか」
七人七様の反応を見せると、それぞれが同時にフードを取り外した。
最初に言葉を発した人物は、腰に十字の剣を携えてこちらを見ている。第二の人物は、女性であり、どことなく着ているものと雰囲気が、霊夢ちゃんに似ている。第三の人物は……なんか、自分と同じような能力を持っている気がする。第四の人物は、あのスパースターが白衣を着ていた。ドクターなマリオだ。第五の人物は、至って普通の青年なのだが、神が持っている、神力だったかな? を、内に秘めている。第六の人物は、今までにであったことのない神だった。別世界の神なのだから当たり前か。そして、第七の人物は、ついこの前あったばかりの、晴夢だった。
「皆さん、こちらに集まってください」
七人はそれぞれ自分が何故ここに居るのか考えていると、奴が全員を呼び何か話し始めた。
何を話しているのやら。
数分程奴らが話していると、奴らは同時に首を振って、こちらに向き直った。
「それでは、戦いましょうか? 鏡夜」
「望むところだ」
奴らが各々準備に移る中、俺も自らの妖力で例の分身を六人作り出す。
「さあ、戦いの幕開けだ」
Sideローブ
「皆さん、こちらに集まってください」
憑依させた異世界の人物を呼んだ私は、彼らを近寄せると、まず、事情の説明を開始した。
「皆さん、今回は事情も知らずに集まって下さり、ありがとうございます」
「そんな前置きはどうでもいい。で、この俺を呼び出したお前は、一体俺たちに何をしてもらいたいんだ」
彼……ネメシスがそう言うと、周りにいた一同は同時に頷いた。
「あの正面にいる人物と戦っていただきます」
「鏡夜とか?」
「はい、そのとおりです。晴夢さん」
「何故、俺の名前を?」
「乙女の秘密です」
晴夢の質問に答えて彼らを見ると、ネメシスとドクターマリオは口もとを三日月のように歪めた。
「ということは、あいつをバラバラにしてもいいんだね?」
「構いません。それに……貴方の欲している『闇』とやらも回収していいですよ。負けても、あなたなら、憑依を解くことぐらい出来るでしょうからね」
「お見通しなんだね……」
私がネメシスにそう言うと、ネメシスはバツの悪そうな表情をした。
「ええ、ですが、別に構いませんよ。私がして欲しいのは、あの人物と戦ってもらえればいいので」
「おい、お前」
「なんでしょうか?」
ネメシスを説得した私は、今度はドクターに話しかけられた。
「俺がなんで死後の世界からこんな世界にいるんだとか、おまえは一体何者なのかとか、色々と聞きたいことがあるが、一つ聞かせろ、……俺は奴と戦えばいいんだな?」
「ええ、そうです。戦ってもらえればいいです。戦ってさえ貰えば、貴方の好きなデータ採取等、好きにしていいですよ」
「くくくっ……成程、わかった」
「それと、あなたのメモリですが、T3ガイアメモリのゼウスしかありませんから、気をつけてくださいね」
「ちっ、やはり全てはないのか」
「流石にそれは、ハデスに止められましてね。……他に質問がある方は?」
ドクターの説得に成功し、まだ、他に疑問がある人がいないか聞いてみると、二人ほど手を上げた。闇崎幸助と神崎優だ。
「ちょっといいか? 俺には奴と戦う理由がないのだが」
「同じく」
「そこに戦う意志がある者がいるから、戦ってください」
「「え~」」
こう言う人たちは、多少強引に話しを進めると、渋々といった感じで受けてくれるものだが、この二人も例外ではなく、は~っと二人同時にため息を吐いて頷いてくれた。
「さて、残りの御三方、何か質問は?」
私は、彼ら……幻狼竜牙、博麗星夢とその守護霊である和島現。そして、晴夢を見て話す。
「特に質問はない。召喚者のあんたが、奴と戦えというのならば、俺は戦う。それだけだ」
『私も、同じくです。というか、そもそも、皆さんが戦うと言っているのに、ここで戦わないとか言ったら、場違いじゃないですか』
三人のうち、竜牙と星夢は説得できたが、以外にも、一番早く引き受けてくれそうな晴夢が渋い顔をしながら、何かを考えていた。
「どうしましたか、晴夢さん?」
「……一つ聞かせてくれ。あんたは一体、鏡夜に何をしたんだ?」
「……」
「俺と戦った時でさえ、鏡夜はこれほどの殺気を放ってはいなかったぞ? ……もう一度聞く、鏡夜に何をした?」
真剣な表情で聞いてくる晴夢。
そういえば、彼は確か、鏡夜とは次元を超えた親友だった。そして、彼の性格は、女性の願い事優先だが、女性のお願いが親友に更に追い討ちをかけるようなことがある場合、親友の味方になってしまう。
「いいえ、ただ、彼の大切な人とお話ししただけですよ」
「……」
とりあえず、嘘はいっていない。ただ、ちょっとだけ、表現を変えただけ。
晴夢は私の言った言葉を聞くと、ジッとこちらを見てきたが、しばらくすると、ふ~っと息を吐いた。
「まあ、別にいいか。鏡夜のことだ、多分何とかしているだろう。……OK 女性の頼み事だ。了解した」
「そうですか。……では、他に質問のある人は?」
何とか晴夢も納得させた私は、皆に視線を向けながら聞く。
どうやら、誰も質問はないようなのか、ただ無言でこちらを見てきた。
「……無いですね。それでは、皆さん、お願いします。……あ、そうそう。ちなみに、皆さんの肉体は、人間に近いものなので、一回殺されたら、元の世界に戻ってしまいますからね。それと、数名、能力の制限がかかっている場合があるので、各自確認してくださいね。それと、最後に、これは弾幕ごっこではありません……殺し合いです」
そこまで言ったところで、全員は頷き、鏡夜の方に振り返った。
「それでは、戦いましょうか? 鏡夜」
「望むところだ」
鏡夜はその言葉と同時に、七人に分身した。女性に男性、ロリにショタ、大人に老人。そして、いつもの鏡夜の七人。
「くくくっ、おもしれえ。流石、一目見た時からデータを取りたいと思ったわけだ」
「これは……バラしがいがあるな」
「おいおい、鏡夜って女になれたのかよ」
『なんて可愛い女の子……』
「別に、俺は誰が相手でもいいがな」
「できれば、老人は相手にしたくないな」
「俺は元が男だったら男女関係無く戦うぜ」
七人対七人。それぞれの前に鏡夜は立つと、彼らを睨んだ。
「さて、生憎と、こちらはプッツンしてるんだ」
「ですから、わかりますよね?」
「手加減できないからね」
「恨むなら」
「そちらのフードを恨んでくださいな」
「じゃあ」
「やろっか」
「くくくっ、手加減の心配をされとは、俺も舐められてもんだな。変身!」
《ゼウス!》
ドクターは雷のようなZが書かれたメモリを二の腕に突き刺すと、雷雲が立ち上り、幾多の雷が舞い落ちドクターを覆った。そして現れたのは、白い体に薄衣一枚だけを纏い、一本の三叉槍を持った男性ドーパントが現れた。
「全くだ。神の僕に対して、手加減を考えるとはね!」
ネメシスは構えなどせず、口もとを三日月状に歪めて、鏡夜を睨んだ。
『できれば、私には手加減して欲しいかな。……出てきて、現』
【何泣き言言ってんの。行くぞ、星夢】
「うん」
『星の記憶、検索、Feather(羽)の記憶』
星夢は自分の守護霊である現を出すと、現の能力である『地球の記憶を司る程度の能力』で、星夢に翼を生やして空に飛び立った。
「ここまで、なめられちゃあ、本気を出すしかないな」
「全くだな」
そう呟いた幸助は霊力と妖力を全開にして、自らの周りに属性魔法によって作り出された数十もの炎の塊を作り出す。そして、優は、自分の持っている神力……いえ、覇力でしたかね? それを開放して、戦闘態勢に入る。
「さて、今回で二回戦目だな!」
「多少能力に制限は掛かっているが、問題はないな」
晴夢はネメシス同様、口もとを三日月のように歪め、鏡夜を見る。主に、女性の鏡夜を。対称的に、竜牙は、冷静に自らの状態を確認してから、背中に携えていた十字の剣を抜いて構えた。
そして、両者に沈黙が訪れる。
互に動かず、唯にらみ合い、そして、一陣の風が吹いた瞬間――――生きるか死ぬかの戦が始まった。
キャラの口調や、性格など、おかしな点があれば報告ください。できるだけ、似せてはいるつもりですが、それでも、やはり変なところがあるかもしれないので。
感想、批判、誤字、アドバイス、質問、そしてキャラの修正点、お待ちしております。
ちなみに、このコラボはあと三話か四話ほど続きます。