あと、今回地の文が多く、意味が分からないといったところがある場合があります。その時は感想欄に質問してください。
では、第五十六話をどうぞ
嫌な予感がして急いできてみれば、咲夜ちゃんと異変の首謀者が戦っていた。普通のスペルカードルール勝負……弾幕ごっこと言ったかな? でだ。だから、俺は手を出さずに咲夜ちゃんが勝つことを信じながら、見守ることにした。あれぐらいの相手には自力で勝ってもらうくらいの力を付けてもらいたからね。
塀の上から見守っていると、弾幕ごっこは進んでいきとうとう終盤が見えてきた。互いの残機は二つ。だが、咲夜ちゃんが何かを異変の首謀者に聞いた瞬間、背中に弾幕が当たり、何故だか地面に倒れてしまった。
そうして地面についたまま首しか動かさない……いや、動かせないのだろう。あの弾幕には、死の呪いのようなものが付いていたから……多分神経をやられたのだろう。
そして倒れている咲夜ちゃんに向かって蝶に似た弾幕が放たれると、諦めたかのように咲夜ちゃんは頭を下ろして動かなくなった。
「どうした咲夜ちゃん? もう終わりか? だらしないな~」
諦めたように動かなくなった咲夜ちゃんに、呆れと失望が混ざった感じで言うと、咲夜ちゃんはマジカル☆咲夜ちゃんスターからナイフが飛び出し、蝶の弾幕を消し去った。
消しさると同時に、咲夜ちゃんは霊力を纏い、空中に浮いた。
「そう、それでいい。それでこそ……俺の弟子だ」
小声で呟くと同時に、再び咲夜ちゃんと異変の首謀者の弾幕ごっこが開始された。
満身創痍な咲夜ちゃんであるが、なんとか飛び、上手く策を巡らして一発相手にぶつけ被弾させた。
これで互に残機は一つ。状況は咲夜ちゃんが不利だとしても能力を使えば勝てるだろう。俺はそう思っていた。
だが、状況は急激に一変した。……異変の首謀者の纏う雰囲気がおかしくなったのだ。
先程までは優雅な雰囲気を醸しだし、おしとやかな雰囲気だったのだが、今は違う。今、彼女が纏っている雰囲気は……死だ。
他に表現方法はいくらでもあるのだろうが、彼女の雰囲気を一言で表すなら死だった。
異変の首謀者は、両手に持っていた扇子を広げると、背後にも巨大な扇子が広がった。
そして、そこから放たれる弾幕は尋常ではなく、今の状態の咲夜ちゃんでは到底避けれるものではなかった。
普通の弾幕だったら、当たってやられたところを助けるのだが、今回は事情が違った。弾幕の一発一発に、死の呪いが掛けられているのだ。
当たれば死ぬ。掠っても死ぬ。そんな呪いが弾幕には込められていた。
急いで塀の上から飛び出し、咲夜ちゃんの体を抱える。そして、飛んでくる弾幕には拳を振るう。しかし、ただ単純に拳をぶつけては俺が死ぬので、代わりに空気を殴り飛ばして、風圧で叩き落とす。
「よく頑張った。後は任せろ」
瀕死の状態の咲夜ちゃんを抱きかかえつつそう言うと、咲夜ちゃんは意識を失った。周りには未だ弾幕が囲んでいるが、一瞬霊力を放出させて周りにある弾幕を吹き飛ばす。
「貴方は……誰?」
「お前こそ誰だ?」
目の前の女性に問いかけられたが、逆に問い返す。何故ならば、目の前の女性は人ではなく、ましてや幽霊でもない。何か別な……もっと面倒くさい存在に感じる。
「私は……西行寺幽々子。この白玉楼の主……? 違う、私は……俺は……」
俺の問いに答えた女性だが、自分の言った言葉に疑問を持ち、頭を抱えた。
その間に、すぐさま地上の安全な所に降りて、咲夜ちゃんを地面に寝かせる。そして、女性の方を向くと、まだ頭を抱えていた。
「俺は……いや……俺は……駄目! ……俺は」
女性は頭を抱えて横に振り続けながら、自問自答を繰り返してひたすら何かを呟いている。
そうして、しばらくその状態が続いたが、急に女性は動かなくなった。
「……そうだ。俺は……死だ」
その言葉と共に、地獄の亡者の雄叫びのようなものが聞こえ、彼女の背後にあった桜の木から、怨念が一つ一つ巨大な塊となって、生きとし生けるもの全てを殺さんとするように吹き出した。
「俺は死だ。その他のなんでもない。俺はただ死を全てに送り出すものだ……」
女性の声ではない、低い男の声を発しながら女性は俺の方を睨んでくる。
「ならば……お前は何者だ? 正者でもなければ亡者でもない。生まれながらにして死んでいる……もう一度問おう、お前は何ものだ?」
多分、奴は転生のことを言っているのだろう。確かに俺は一度死んで、転生している。ならば、生まれながらにして、死んでいると言っても過言ではないだろう。この身はなんてったって一度死んでいるのだからな。
「俺は……俺だ。それ以上でもそれ以下でもない。生者亡者なんて関係ない。俺は俺だ」
そうとしか言えない。自分でも分からないのだから。
「そうか……お前はお前か。……ならば死ね。大した理由もなく死ね。なんとなく死ね。病的に死ね。肉体的に死ね。精神的に死ね。あいにくと、俺はそういう存在だ。だから……死ね」
「断る。貴様に指示されて死ぬつもりはない。死なせたかったら、殺してみろ。だが……俺は死んでも死なないぞ?」
「ならば、殺し続けて、死に続けさせるまでだ」
構えは取らず、ただ目の前の人物を睨みつける。一秒、一瞬たりとも目を離せない。目を離した瞬間、殺される。そんな気がするからだ。
「一から五までの全てのリミッター解除、限定許可。対象の殲滅又は無力化だけに意識を集中」
意識を目の前に集中させつつ、リミッターを五割解除していく。リミッターを解除した瞬間、地面に罅が入り、地鳴りがし、大気が震え始める。更には、時空すら歪み始めてきたが……そんなことは無視する。
「さあ、死ね。今すぐ死ね」
奴がそう言った瞬間、俺の周りは死の弾幕に包まれた。一切の逃げ道もなく、美しさの欠片もない。ただ、相手を死に追いやる弾幕。
「霊力、魔力、妖力、開放」
そんな無粋な弾幕など気にせず、全ての魔力、妖力、霊力を放出して周りの弾幕を吹き飛ばしながら真っ直ぐと突っ込む。踏み込んだ際、地面にクレーターが出来、音速を超えた速度……光速の速さ発生し、一瞬で奴との間合いを詰める。
「あ~うざい、死ね。さっさと死ね」
「お前が死ね」
奴との距離を詰め、妖力を拳に纏い、拳を振るうと同時に拳に纏っていた妖力を放出させてぶつける。
「てめえが死ね」
光速で拳を振るったというのに、目の前の奴は平然と妖力を躱した。だが、それでやめるような俺ではない。
すぐさま拳を引き戻し、今度は反対の拳を振るい妖力を放つ。先程は一発で避けられたため、今度は一瞬で千や一万では数え切れない程の数を放つ。
まるで巨大な壁のようになりながら、妖力は飛んでいく。しかし、奴は右腕をひと振りすることで全ての妖力を死なした。
「邪魔だ。死……ガ!?」
妖力は死なされた。だが、空気の壁に死ななく、奴はその空気の壁にぶつかり吹き飛ぶ。吹き飛んだ先には桜の木があり、その桜の木にぶつかるとそのまま動かなくなった。
しかし、奴は動かなくなったが、俺は空中を蹴って奴との合間を詰める。元々俺の狙いは、奴がぶつかった桜の木だからな。
詳しいところは省いて、桜の木のことだけを少し説明させてもらうと、元々あの桜の木には人を死に誘う力があった。そして、人が死んでいくたびに、桜の木は死んだ人間の怨念だけを取り込み、力を高めていった。そこまでだったらいいのだが、最終的には死んだ人間の魂すら取り込み、その苦痛のまま永遠に自らの内に閉じ込めることによって、怨念を永遠と取り込めるようにした。そうして、力を取り込み続けた桜の木は、意思を持ち始めたのだ。
桜の木は意志を持ち始めると同時に、更に被害は広がっていった。それをなんとかするために、人一人を犠牲にすることによって封印が施された。
その犠牲になったのが、目の前の彼女なのだが、それはまた今度話すとして。
そうして、封印を施された桜の木は全てを封じ込められ、被害は無くなった。だが、現在、何故だか封印は弱まり、桜の木は意思を取り戻し、手身近にいた彼女の体を乗っ取ったのだ。だから、先ほど体を乗っ取られた彼女の雰囲気は変わったのだ。
ここまで、俺の限界をなくす力によって無くなった理解力で解った。
さて……では、どうやったら俺の勝利になるのだろうか? 彼女は操られているだけで、殺したところで何も解決にならない。だったら答えは一つ。
「要は、お前をまた封印すればいい」
簡単な話だ。もう一度封印すればいい。この封印をした奴は、人を使って封印したようだが、俺は自分の力を使って奴を無理やり封印する。
奴との間合いを詰めた俺は、奴を右手で桜の木に押し付ける。
「出て来い」
奴と彼女の意識の境界を操り、奴を外に弾き飛ばす。
彼女の体から、人の形をした真っ黒い何かが現れた。何かは呪詛のように、ただ、ひたすら一つの言葉を繰り返続ける。
「死ね死ね死ね死ね死ね」
死ね。その一言だけを言いながら、突っ込んできた。
「うるさい、さっさと封印されろ」
突っ込んでくる奴を、曲げる能力で向きを曲げて、桜の木に向かうようにする。
そして、桜の木の中へと奴が入った瞬間―――
「■■■■■■■―――――――!!!!!!!!!!!!」
桜の木か雄叫びを上げ、先ほどとは比べ物にならない程のドス黒い怨念が吹き出した。
怨念は周りを無差別に死なせようとするのではなく、明確な意思を持って俺ひとりを狙って、突っ込んできた。触れれば死ぬ。そんな実感を俺に与えたが―――
「引っ込んでろ。邪魔だ」
霊力、魔力、妖力全てを使い、無理やり桜の木の中に押し戻す。先ほど妖力で触れたときは、妖力は死んだが、俺は妖力、霊力、魔力が死ぬという運命を無くした。そのおかげで、死ぬことはなく、怨念を押し戻せた。
怨念達は何とかして桜の木から出ようとするが、そんなことは一切許さず、曲げる能力で一切出てこれないようにする。
「封印開始」
出てこれなくなった怨念達を叫びをよそに、俺は封印の作業を開始した。
まず、曲げる能力で怨念を桜の木の表に出てこれない最も深い場所まで誘導する。次に、念のため、運命を操る能力で、この桜の木から出れるという運命を無くす。最後に、元々あった封印を見つけ出し、その封印にアレンジをして、再度封印を施す。アレンジと言っても、更に封印を強くしただけだが。
そこまでやったところで、桜の木から噴出していた怨念はなくなり、この広場一帯を支配していた死の気配は無くなった。
無くなったのを確認してから、自分の力にリミッターを掛ける。五割程開放したため、空間が所々歪んで、別な世界とかが見えているが、まあ、それは放っておけば勝手に世界が修正してくれるので放置する。
そんなことよりも、俺は体を乗っ取られていた彼女の安否の方が心配だった。
桜の木にぶつかった彼女のところまで歩くと、彼女は安らかな顔をして、寝息を立てていた。
「どうやら、無事なようだね」
俺は彼女にゆっくりと近づき、眠っている彼女に向かって小さな言葉で言った。
「これにて、一件落着」
如何だったでしょうか?
幽々子の説明などは、次回説明します。
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