二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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え~今回、ちょっと表現に乏しいかもしれません。

では、第五十三話をどうぞ。


第五十三話 あんまり切れないものがない庭師と死を操るお嬢様

Side鏡夜

 

プリズムリバー三姉妹と別れてから、上空へと飛んでいく。大体門の中間あたりに着くと、俺のことを待っていた咲夜ちゃんがこちらを見下ろしていた。

 

「何してきたんですか?」

 

「ちょっとルナサにアドバイスをね」

 

「・・・?」

 

「さ、いこっか」

 

首を傾げている咲夜ちゃんに、俺はそう言って門の上に向かって飛び始めた。

 

「あ、ちょっと、待ってください」

 

飛び始めた俺のあとを追うように、咲夜ちゃんは飛んできた。ゆっくりと咲夜ちゃんが追いつくスピードに落とし、俺と咲夜ちゃんは並んで飛び始めた。

 

しばらく飛んでいると、門の頂上が見えてきた。門の頂上に来たのはいいのだが、向こう側は、唯の空が見えているだけだった。

 

「この先に黒幕がいるのかな?」

 

「鏡夜さんがそう思うなら、多分そうだと思いますよ?」

 

「ふむ・・・ま、行ってみますか」

 

門の上に立ち、取り敢えず一歩足を踏み出してみる。すると、目に見えない、なんか柔らかい壁のような感触を感じた。その感触に一瞬戸惑ったが気にせず、そのまま透明な壁に片足を徐々に入れ、今度は片手、全身とゆっくり入れていく。

 

「よっと、ん? おお、なんとまあ、これは・・・」

 

透明な壁を通り抜けるとそこには、向こう側から見えていた空ではなく、桜の花びらが舞い散る石段へと出た。石段の上の方を見るが、その最終地点は見えない。

 

「よいしょっと、わあ~綺麗」

 

俺の後を続くように、咲夜ちゃんも透明な壁をくぐり抜ける。そして、この光景を見ると、感嘆の声を出し、桜の舞い散るこの光景を見た。

 

先ほど、咲夜ちゃんはこの光景を綺麗と言った。確かにその意見に俺は賛成なのだが、どうしてだろうか? なんか俺たちはこの場に居てはいけない気がする。いや、正確に言えば、住む世界が違う気がする。

 

「綺麗ですね・・・あ! 見てください鏡夜さん! なんか飛んでますよ!」

 

「あれは・・・」

 

咲夜ちゃんが指差した方向を見た俺は、先ほどから感じていたこの違和感の正体が解った。

 

咲夜ちゃんが指差していた方向にいたのは・・・人魂だ。

 

人魂、魂、霊魂。呼び名は様々だったり、色々の意味合いはあるが、要は死んだ人間の魂だ。そう、ここは多分、死んだ人間が集まる死後の世界だと思う。だが、死後の世界にしては、黄泉の川や、渡し舟などがいない。だから、それに近い何かなのだろう。

 

まあ、そういうことで、先程から俺の感じでいた違和感は、死後の世界なのに生者がいるという矛盾のせいだろう。咲夜ちゃんはそういうことにはあまり感が鋭くないせいか、気づいてはいないだろうが・・・

 

「鏡夜さん? どうしました?」

 

「ん? ああ、すまない。なんでもないよ。それより、早く行こうか。そろそろ、夜になっちゃうからね」

 

「そうですね。夕食の準備もありますし、早く洗濯物が乾く春にしたいですからね」

 

咲夜ちゃんとそんな事を言いながら、今回は白い翼を出して石段を飛んでいく。

 

 

 

しばらく飛んでいると、石段の中腹あたりに着いた。そこは平坦で、俺と紫ちゃん達が入った結界程の広さがあった。

 

「大体ここは・・・石段の中腹あたりかな?」

 

「飛んだ時間からして、多分そうだと思います」

 

石段に降り、真っ直ぐ歩いて進んでいると、この中腹の中心あたりに、一人の少女が立ち、その横に一匹の幽霊がいた。

 

少女は上下緑で、上は白いシャツとを着てその上に緑の肩から先がないベストのようなもの。下はミニスカート。髪の毛は白髪、ボブに前髪ぱっつん。腰には二本の、大太刀と小太刀を差している。幽霊は・・・ただ白く発光してるだけ。

 

「あれは・・・」

 

少女を見た俺は、昔あった一人の人物の姿と少女の姿が被った。その人物の名は・・・・・・魂魄妖忌。

 

少しだけ昔話をさせてもらうと、あれは今から大体千年前、紫ちゃんと別れてから数百年ほどか? まあ、その辺の時期、俺は一人の老齢な爺さんと出会った。その爺さんは目の前の少女のように二本の大太刀と小太刀を持って、突如俺へと勝負を仕掛けてきた。

 

理由は、「我が主のご友人の師匠の強さ、見せてもらう」との事だった。あの頃、まだ若く、戦いに明け暮れていたため、俺はその決闘を了承した。あの頃の俺は、全力で、今の俺の一割半にも満たないし、しかも戦術なんてものも無かった。

 

それでもまあ、俺はその爺さん・・・魂魄妖忌と戦かったわけだ。空間を切ったり、距離を切ったり、かなりの距離が空いているというのにいきなり俺の体が切られたりしたが、俺は辛くも勝利した。

 

いや、本当にあの時は危なかった。だって、剣術だけで空間切ったり、距離切ったりするんだぜ? もう、化けもんだったよ。・・・まあ、そんなわけで、その爺さんと勝負のあと意気投合して、傷が回復したあと、一日中馬鹿話や酒を飲んだりしていた。

 

そうして、数日そいつと一緒にいたのだが、何やら我が仕える屋敷の主のためとか言って、帰らなくてはならないとのことで、そいつと別れたんだ・・・って、ああ、そういうことか。

 

ここまで思い出して、ようやくわかったのだが、この目の前の少女は多分、あいつの娘か孫だろう。よく気配を観察すると、あいつの気配と似ているし、周りを見ると、屋敷のような感じの作りの気がする。ま、少女に聞いてみれば早いだろう。

 

「鏡夜さん・・・」

 

「あ、ああ、どうやら今日は考えることが多い日みたいだな~」

心配そうにこちらを見る咲夜ちゃんに、笑顔でそんなことを言って、少女のところへと歩いていく。

 

少女のところへと歩いていくと、急に少女は腰を落として刀に手を添えた・・・って、あの構えは!

 

「咲夜ちゃん!」

 

「え? キャッ!」

 

「ッ! あっぶね~」

 

少女が次にやることを察知した俺は、咲夜ちゃんを蹴り飛ばした。蹴り飛ばした瞬間、悲鳴が聞こえたが、それを気にする間もなく、先ほど咲夜ちゃんの首があったところに刀が振りかかってきた。

 

なんとか、刃が首に触れるか触れないかのところを真剣白羽取りで止めれたが、あと数秒遅かったら咲夜ちゃんの首がバッサリ飛んでたぜ?

 

「鏡夜さん!」

 

「来るな! 咲夜ちゃん、君は俺の事を置いて、先に行け!」

 

蹴りとばされた咲夜ちゃんは起き上がると俺の方に駆け寄ってこようとしたが、俺は声を大きく出して止める。

 

「ですが・・・」

 

「いいから、俺は大丈夫だから。先に行って、この異変の首謀者を倒してくれ。その方が・・・早く夕飯を作れるだろう?」

 

冗談を交えて、俺は咲夜ちゃんに言う。その間も、目の前の少女は刀を振り切ろうと力を込めるが、こちらも力を入れて応戦する。

 

「・・・く、解りました」

 

咲夜ちゃんは数秒考えて悔しそうな顔をした後、この石段の頂上を目指して飛び始めた。

 

「・・・行ったか・・・でだ、お嬢さん、いきなり斬りかかってくるとは、随分なご挨拶じゃないか!」

 

未だに俺の首を切ろうとする少女の刀を引っ張り、少女の腹に向かって蹴りを放った。だが、その蹴りが当たる前に、少女は俺の手から刀を滑らすように外し、バックステップで距離を取った。

 

「・・・やはりやりますね」

 

少女はそう言うと、刀を鞘にしまった。

 

「お初にお目にかかります。私、魂魄妖忌の孫、魂魄妖夢です。時成鏡夜?」

 

「やっぱり、妖忌の孫だったか。俺の名前は妖忌からか?」

 

「ええ、そうです。名前もですが貴方の強さも教えていただきました」

 

「成程・・・で、俺の力はどうよ?」

 

「流石・・・としか言えません。師匠に聞いた以上です」

 

「クックック、それでも、妖夢、お前は俺にかかってくるのだろう?」

 

「勿論です。私はなんたって、師匠の血を継いでますからね」

 

妖夢はそう言うと、再び刀に手を添えて、鋭い眼光で俺の事を見た。その瞳に懐かしさを覚えながら、俺は霊力で右手に二メートルもの大太刀を形成しながら、あのスペルカードを取り出した。

 

「・・・流石、妖忌の孫だ。その鋭い眼光、妖忌にそっくりだ」

 

俺はスペルカードを取り出し、上へ思いっきり放り投げた。

 

「では、始めようか、妖夢。一人の剣士として」

 

「ええ、お願いします。師匠の孫である私には、切れぬものはあんまりない!」

 

二メートルの刀を握った俺と、刀に手を添えた妖夢を、スペルカードから出た結界が囲んだ。

 

 

 

Side咲夜

 

「く、申し訳ないです・・・」

 

鏡夜さんと別れてから、私はただ一人でこの石段の頂上へと向かっていた。

 

「私が、もうちょっとしっかりしていれば・・・」

 

向かっている途中、先ほど、少女の刀を躱せなかった事を悔やむが、すぐにそんな迷いを捨てて、目の前の異変解決だけに集中する。

 

悔やむことなど、後からいくらでもできるのだ。今は、唯目の前の異変の首謀者を倒すだけだ。

 

そう、胸に決意しながら飛んでいると、一つの門があった。この門は、先ほどあった巨大な門とは違い、この幻想郷から来て初めて見た、少々大きいぐらいの木製の門だった。

 

「ここかしら・・・」

 

とりあえず木製の門に手を触れ、ゆっくりと押す。すると門は、以外にあっさりと開いた。

 

開いた門の間から、中にいるであろう異変の首謀者に警戒しながら慎重に中に入る。この時、私は異変の首謀者を倒すだけを考えて中に入った。だが、中に入った私の気持ちは、ある気持ちに支配された。

 

「綺麗・・・」

 

美しい、或いは綺麗。そのような感情に私の心は支配されていた。

 

私の心を支配したもの、それは・・・桜の木である。大きな桜。だが、その桜は満開とは言わず、未だ六分咲きといったところだろう。それなのにも関わらず、この桜はあまりにも美しすぎる。まるで、こちらの全てを吸い込むような美しさ。

 

「・・・ッ!? 私は、一体・・・」

 

桜に見とれていると、いつの間にか私の右手にはナイフが握られ、左手の頚動脈に当てられていた。慌てて左手からナイフを外し、ナイフを投げ捨てる。

 

「これは・・・」

 

「あらあら、珍しいお客さんね~」

 

「誰!」

 

ナイフを投げ捨てると、そのナイフを拾う一つの手が見えた、と同時に声がかけられた。その声をかけられた方を見ると、ピンク色の髪に、水色っぽい服を着た女性が扇子を出して、拾ったナイフを眺めていた。

 

「誰って、最初に自分の名前を言うのが筋ってものじゃないかしら?」

 

女性は扇子を口元まで持って行き、目を鋭くしながら言ってくる。その目に言い知れない恐怖を感じつつも、私はなんとか喉から声を出す。

 

「・・・十六夜・・・咲夜」

 

「十六夜ちゃんね。私はこの白玉楼の主、西行寺幽々子よ。あ、あとこれは返すわ」

 

女性・・・幽々子はそう言うと、先ほどから持っていたナイフをこちらに投げてくる。私は咄嗟のことだったが、体を半分だけずらしてそのナイフを避ける。

 

「あら、なんで避けちゃうの?」

 

「一度敵に触られたものは警戒しろと師匠に言われてるので」

 

「・・・ふ~ん」

 

そう言っていると、ナイフが後ろの木製の扉に突き刺さった。だが、ただ突き刺さった訳ではなく、そのナイフを中心に扉が崩れていった。

 

「これは・・・」

 

「貴方、師匠にそのこと教わっといてよかったわね。そのナイフ、躱して正解よ」

 

「貴方、一体何をしたの?」

 

ナイフから視線を外し、幽々子を睨みつける。睨みつけているのに、幽々子は平然とした態度を取る。

 

「自分で、自分の能力をばらすと思う?」

 

「それは・・・」

 

ばらすはずがない。自分の能力が知られていないだけで、戦術の幅はかなり広がるのだから、ばらすはずがない。ばらすやつは、大馬鹿者か、絶対に勝つという自信がある強者だけだろう。

 

「ま、別に教えるけど」

 

「・・・・・・・・・・」

 

ツッコミを入れたい症状に駆られたが、自重する。いや、心の中でツッコませてもらう。

 

言うんかい!

 

「私の能力は『死を操る程度の能力』」

 

幽々子の能力を聞いたはいいのだが、一つ不自然なところがある。それは、先ほどの扉だ。

 

「さっきの扉がどうして崩れたかって考えてるわね。そ~ね~」

 

考えていることを読まれた。顔に出ていたのだろうか?

 

幽々子は頬に手を当て、考える仕草をする。

 

「あれは、刺さった対象が死ぬように設定しておいたの。それで、刺さった対象・・・つまり、先ほどの扉は死んだの。あ! でも、あれは加工としてるから木としては死んでたわね。じゃあ、あれは、扉としての死を迎えたんだわね」

 

・・・イマイチ本当の事を言ってるのかどうかわからない。まるで、自分の能力の全てを知らないようにも感じるし、全てを理解してるようにも感じる。

 

「まあ、そんなのはいいわよね~。で、貴方、ここに何しに来たの?」

 

「・・・春を独り占めしている奴をやっつけに来ました」

 

私がそう言うと、幽々子は困ったような顔で、こちらを見てきた。

 

「まあ、誰が春を盗んだのでしょうね~」

 

「誰でしょうね。後ろに、物凄く咲いている桜の木があるんですが。一体誰が春を盗んだのでしょうね」

 

白々しい嘘をつく幽々子に向かって、桜の木を指差しながら言う。幽々子は私の指のさした方をゆっくりと向くと、驚いた顔をした。

 

「まあ! 私の庭に桜の木が生えてるわ!」

 

「・・・・・・」

 

いい加減ムカついてきた。この飄々とした性格のせいか知らないが、どうしてか相手のペースに乗せられてる気がして、ムカついてくる。

 

黙ったせいかは知らないが、幽々子はこちらを見ると、つまらなそうにため息を吐いた。

 

「は~冗談の通じない子ね~多少の冗談には返してちょうだいよ」

 

「・・・・・・・」

 

「は~ノリが悪いわね~」

 

再び幽々子の言葉に黙ると、幽々子はもう一度ため息を吐いた。

 

「そうよ、私が貴方たちの春を奪ってる犯人」

 

「・・・目的はなんですか?」

 

「あらやっと喋ってくれたわね」

 

「目的はなんですか?」

 

「全く、会話のキャッチボールくらいしてくれないと、幽々子泣いちゃうわよ?」

 

駄目だ。私、多分この人とあまり合わない気がする。鏡夜さんとかなら、上手くいくんだろうだろうな~

 

などと、わけのわからない想像をしていると、幽々子がまたしてもため息を吐いた。

 

「は~、私の目的はこの桜の木・・・西行妖って呼んでるんだけど、その木の下になにか封印されているようなのよね~、で、その封印を解く条件が桜の気を満開にさせるってことなの。だから、幻想郷全部の春を集めれば咲くかな~っと思って、この異変を起こしたの。解った?」

 

「・・・本当ですか?」

 

「本当よ本当。もう、十六夜ちゃんったら、疑りぶかいんだから」

 

幽々子の話しを無視して桜の木を見ると、また私の心の中があの感情に支配されそうになった。だが、支配されそうになった瞬間、突然目の前に桜の花びらが書かれた扇子で遮られた。

 

「ッ!? 何するんですか!?」

 

「見てはダメよ。あの桜の木は人を死に誘う。貴方みたいな人間が見たら、すぐに無意識で死に向かうわよ?」

 

さっきとは全く違う、真剣な表情でそう言ってきた。

 

「く・・・ありがとう・・・!?」

 

敵だというのに、私は何故かお礼を言っていた。助けられたら、敵であろうと礼を言いなさいと言っていた鏡夜さんのせいだろうか。・・・いや、違う。それだけではなく、先ほどまでふざけていた幽々子とは違く、今の幽々子には礼を言うだけのカリスマがあった。

 

私がお礼を言うと、真剣な表情からニッコリと笑った。

 

「さ~て十六夜ちゃん。異変を起こした私を、一体どうするのかな?」

 

「勿論、戦ってこの異変をやめさせます。それが、鏡夜さんが私に願ったことですから」

 

「そう・・・残機は四。スペルカードも四。これでいいかしら?」

 

「ええ、構いません。どんなことでも、私は負ける気はないので」

 

私がそう言うと、幽々子はクスクスと笑い出した。まるで、さっきあった紫という妖怪と、何故かは知らないが鏡夜さんを思い浮かべさせるような笑い方だった。

 

「それじゃあ、始めましょう。今宵、一世一代の宴。舞いなさい、十六夜のメイドちゃん」

 

「ええ、舞わせていただきますよ。ただし、私が舞い終わったその時、貴方の時間は私の物になってますがね」

 

互いに言い終えた瞬間、幽々子は飛び上がり、私はマジカル☆咲夜ちゃんスターを出す。弾幕ごっこの開始である。

 




最後のセリフは、原作が思い出せなかったのでちょっとパロを交えてのセリフです。 そういえば、質問の件なのですが、ちょっとまだ考えてる・・・・というか、これを聞いてもいいのかな? という感じなので、もうちょっと後にするかもしれません。

アドバイス、感想、誤字、批判、お待ちしております。

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