では、後編をどうぞ。
Side文
「フフ、意外と面白い反応が見れましたわね」
「そうでございますな」
「もう~全く、なんで誰も気づかないのよ」
「しょうがないよ、能力を使って、皆の視線を曲げて見えなくしてたんだから」
「クックック、いや~楽しかった」
「どうでした? 今回の鏡夜達は?」
女性男性、少女少年、そして老人大人。全く異なる姿の兄さんが五人立っていた。そして一人、いつも見ている青年の鏡夜が優雅に椅子に座って紅茶を飲んでいた。
「えっと、兄さん・・・」
「何?」
「なんで六人もいるの?」
なんでこんなことをしただとか、なんで女性になってるのかとか、子供になってるのかとか、色々と疑問があったが、まず私は兄さんの数をどうしても見逃せなかった。
「ああ、俺以外全員、分身」
「分身?」
「そう、魔力で作った分身。ただし、能力や力は俺と同じ、更には視覚や記憶、感覚なんかも共有してる」
「それって」
「簡単に言えば、もう一人の俺だね」
平然と鏡夜は答えるが、カロ以外、その場にいた全員は鏡夜の言葉に固まっていた。
「やっぱり鏡夜はすごいね~」
「ありがとう、カロ」
「やっぱりカロは驚かないのね」
「鏡夜なら何やってもおかしくないからね~」
「・・・・・・って、なんでそんなことしたのよ、鏡夜!」
鏡夜の言葉に固まっていたレミリアは復活すると、青年鏡夜に詰め寄りながら問い詰めた。
「すみません、お嬢様。実はお嬢様に伝え忘れていた能力があるのです」
「な、何?」
「実は私の能力はありとあらゆる限界を自分の意志で無くせる能力と、自分の肉体を子供から大人のどれにでもできると能力があるのです。・・・で、なぜ私が急に自分の能力の話しをしたかというとですね。これは、実験も含めていたのです」
「実験?」
レミリアは実験という言葉に首をかしげるが、私はその前に納得していた。何に納得したのかって? それはあの日。兄さんが死んだふりをした日は老人の姿なのに、今の姿が青年だということだ。対して気にはしてなかったが、成程、能力だったとはね。
「そうです、実験です。どれほど私の肉体が変えられるかという実験と、お嬢様達が突然私が女性や子供や老人になったらどんな行動をとるのかな~という実験です」
「そ、そんなことをしてたの」
「申し訳ありません」
兄さんが頭を下げると、他の兄さん五人が隣に並んで一緒に頭を下げた。
「・・・鏡夜、顔を上げて頂戴」
レミリアがそう言うと、兄さん達は申し訳なさそうな表情で頭を上げた。
「鏡夜、私は別に怒ってはいないのよ」
「・・・・・・・」
「でもね、こんな能力持ってるならもうちょっとだけ早く教えて欲しかったわ」
「お嬢様・・・」
「だって、だってよ・・・」
レミリアは何故か兄さんの隣にいる少年鏡夜に近づくと―――
「こんなに可愛い鏡夜も見れるんですもの!」
思いっきり少年鏡夜を抱きしめた。
「ちょ、ちょっと、レミリアお姉ちゃん」
「あ~可愛い! この子供特有の肌の弾力! いつもの鏡夜とは違ってこっちもやっぱりいいわ! 更にこの抱き心地も最高!」
レミリアは少年鏡夜を抱きしめながら笑顔でクルクルとその場で回りだす。その光景に、周りにいる皆は唖然としていたが―――
「レミィ!」
「ど、どうしたの?」
パチュリーがクルクルと回ってるレミリアに一括した。注意でもしてくれるのかと思ったが、その予想は外れた。
「私にもさせなさい!」
パチュリーはそう言うと、レミリアから少年鏡夜を取ると、抱きしめて回りだした。
「あ~レミィの言った通りだわ~いい抱き心地~」
「でしょう~」
もう二人がおかしくなってしまったせいか、周りの皆もおかしくなりだした。
「ちょ! パチュリー様だけずるいですよ! 私にも抱きつかせてください!」
「そうよ! レミリア、私にも抱きつかせなさい!」
「何、この可愛い生き物・・・」
「魔理沙お姉ちゃん!」
「!!! 可愛いい~~~!!!!」
小悪魔と霊夢は少年鏡夜に向かってダッシュし、魔理沙は少女鏡夜の方へ行くと、少女鏡夜の笑顔に悶えていた。
「どうしましたかな、フランお嬢様?」
「・・・・・・・」
「フランお嬢様?」
「か、格好良い!」
「ホッホッホ、こんな老人を格好良いと言ってくださるとは、感謝の極みです」
「いや~ん、いつもの鏡夜も格好良いけど、こっちの鏡夜も渋くて格好良い!」
「あらあら、どうしました? 咲夜ちゃん」
「先程はすみませんでした」
「気にしないでください。私も悪かったのですから」
「・・・・・・」
「どうかしましたか?」
「あ、あの・・・」
「ん?」
「お姉様とお呼びしてもよろしいでしょうか!」
「いいですよ」
フランは老人鏡夜の元に向かうと、頭を撫でられている。そして、咲夜の方は女性鏡夜に向かって抱きついていた。
「あの・・・」
「どうしたんだい、美鈴?」
「お父さんと呼んでもいいでしょうか」
「・・・こんな俺でよければね」
「はい、お父さん!」
美鈴は大人鏡夜に近づくと、大人鏡夜の事をお父さんと言い始めた。で、私とカロはというと―――
「やっぱり普通の兄さんが一番だよ」
「そうだよね~」
青年鏡夜もとい兄さんに二人して左右から抱きついていた。
「いいのかい? 他の鏡夜のところに行かなくて」
「いいのよ、私はこの兄さんが好きなんだから」
「私は~どの鏡夜でも好きだよ~」
「・・・全く、可愛い妹と相棒に恵まれた上に、綺麗な恋人もいる。俺は幸せだよ」
Side鏡夜
「いや~楽しかった」
現在時刻は夜の九時ほど。あの後、散々俺の分身たちは、三時間ほど弄られ続けた。その後に、霊夢ちゃんと魔理沙ちゃんと文に夕飯をご馳走し、使った食器を洗い終え、俺は自分の部屋に戻って今日のことを思い出していた。
本当に今日は楽しかった。・・・そういえば、俺がなんで女性になってたか言ってなかったね。あれは紫ちゃんの能力、境界を操る能力なんだけど、それを利用して俺の男と女の境界を弄って、女性になってたの。
「やはり女性にはショタなのかな?」
ぼ~っと椅子に座って今日の事を再び思い出していると、後ろの空間が裂ける気配を感じた。
「紫ちゃんかい?」
「あら、よく気づいたわね」
後ろを振り向かずに声を掛けると、返ってきた声は紫ちゃんのものだった。
「わかるよ、今日の事、ずっと見てたでしょう」
「さ~なんのことでしょうね~」
「全く・・・で、今日はどうしたの?」
後ろを振り返りつつ要件を聞くと、紫ちゃんは扇子で口元を隠しながら笑っていた。
「少年鏡夜が可愛くてね~」
「見てたんじゃん」
「いえいえ、見てないわよ? ちなみに、私は老人の貴方の方が好きだったわよ」
「そりゃあどうも。で、本当に要件は何だい?」
俺がそう言うと、先ほどまで扇子で隠しつつも笑っていた顔を真剣なものにする。
「鏡夜、貴方この前三匹の上級妖怪を殺したようね」
「ああ」
俺は素直に紫ちゃんに答えた。隠す必要はないし、何よりこのような真剣な話し合いでは、真実を曲げるの駄目だろう。
「それは、この幻想郷にとってのバランスが崩れてしまうの」
「バランスね」
「そう。人間と妖怪が暮らしていけるバランスがね。一方の力が強すぎると、この世界のバランスが崩れてしまうのよ。そのバランスを崩さないために、スペルカードルールを作ったのだから」
「そうだったね」
「でも、やはりスペルカードルールを認めない妖怪はいるわ。だから、そんな妖怪とあった時用に・・・はいこれ」
「これは?」
紫ちゃんはスキマを開くと、一枚のスペルカードのようなものを取り出した。紫ちゃんからそのカードを受け取り確認すると、スペルカードとは違うものだった。
「それは、近接戦闘を主にするときに、死なないようにするようの結界が入ってるカードよ。もし、近接戦闘をする場合、それを張ってから戦って頂戴」
「わかった。ちなみに効果は?」
「効果はただ相手が死ななくなるだけ。気絶するほどのダメージを受けると、強制的に結界の外に弾き飛ばされるようになってるわ」
「成程ね」
一通り効果の方を聞いた俺は、懐にカードをしまう。
「じゃあ、私の要件はそれだけだから、またね」
「またね」
紫ちゃんはそう言うと、手を振りながらスキマに戻って行った。
「・・・・・・」
ぼ~っとただ紫ちゃんが帰って行くのを見ていると、廊下の方からドタドタと走ってくる音が聞こえた。それも一つではなく、二つほど。
何事かと思い、扉の方を見ていると、扉が思いっきり開けられた。
「鏡夜! 甘えさせろ―――!!!!」
「鏡夜! 今日はたっぷりと甘えさせてもらうよ!!!!」
「へ? ・・・うお!?」
突然、部屋にお嬢様たちが入ってきたかと思うと、扉の位置から思いっきり飛びついてきた。なんとか二人を受け止めるが、俺はよろけて後ろにあるベットに背中から倒れてしまった。
「ちょ、ちょっとお嬢様! どうなされたんですか!?」
「うるさい! 全く、今日パチュにあんな事したくせに!」
「あんな事?」
「とぼけないで! パチュリーの顎を持ち上げて、大人のキスしようとしたじゃない!」
「あ、ああ、あのことですか?」
「そうよ! だから、私達は今日、鏡夜に徹底的に甘えてやるんだから!」
要するに、ヤキモチか。なんとまあ、ヤキモチを焼いているお嬢様は可愛らしいこと。
「いいでしょう! 私も今日は徹底的に甘えてもらいますよ!」
「「当たり前よ!!」」
「鏡夜~」
「どうしました、レミリアお嬢様?」
あの後、ベットに倒れた俺とお嬢様達は、一緒にベットで横になっていた。
横からレミリアお嬢様の声が聞こえそちらを向くと、レミリアお嬢様が目をうるうるさせてこちらを見ていた。
「キスして?」
「いいですよ」
俺はレミリアお嬢様に言われた通り、キスした。だが、いつものそっとするようなキスではなく、いつまでも離さないといったように、押し付けてくる。
「む~お姉様ばっかりずるい~」
「ん・・・姉の特権よ」
レミリアお嬢様の唇が外れた瞬間、寝ている俺の上に、フランお嬢様が乗っかってきた。
「いいもん、妹にだって特権はあるんだから。ね、鏡夜お兄ちゃん」
フランお嬢様はそう言うと、俺の上に乗っかった状態で、胸に頬を擦り付けてくる。
「うへへ~鏡夜~頭撫でて?」
「フフ、いいですよ」
俺はそっと、フランお嬢様の綺麗な金髪の頭を撫でる。頭を撫でられて気持ちいいのか、フランお嬢様は口もとを二ヘラっと曲げる。
「気持い~」
「鏡夜」
「どうしまし・・・」
「はむ」
「うひゃあ!?」
レミリアお嬢様から声をかけられ、そちらを向こうとした瞬間、何故かレミリアお嬢様が俺の耳たぶを甘噛みしてきた。
「はむはむ」
「ちょ、ちょっとお嬢様・・・」
「はむ」
「うひょあ!?」
「フフ、いい反応するわね~」
ようやく耳たぶの甘噛みから解放され、レミリアお嬢様の方を見ると、ドSの笑み浮かべていた。このままではマズイ!
「レミリアお嬢様!」
「え?」
俺はこのままではマズイと思い、フランお嬢様を撫でている手とは別の方の手でレミリアお嬢様を引き寄せる。そして―――
「はむ」
「ふあ・・・」
仕返しとばかりに、耳たぶを甘噛みしてやった。甘噛みした瞬間、レミリアお嬢様から気の抜けた声が聞こえたが、そんなことは気にせず、更に甘噛みしていく。
「ちょ、ちょっと鏡夜~くすぐったい~」
「はむはむ」
「ふあ、もうだめ~」
そろそろかなと思い甘噛みをやめて、レミリアお嬢様を見る。
甘噛みされ続けていたせいか、レミリアお嬢様は顔を真っ赤にして、息を切らしていた。
「ふあ~鏡夜~」
「お返しです」
悪戯をしたような笑みで、言い返すが、レミリアお嬢様はくすぐったかったのか、何も言わず、顔を真っ赤にして息を切らしている。
「きょ・う・や」
「どうしましたか・・・!?」
「ん~~~~~」
フランお嬢様は急に俺の後頭部とベットの間に手を差し込むと、俺の頭を動けないようにして、キスしてきた。
「ん~~~~~!!!!」
フランお嬢様は一旦唇を離すと、口元をぺろりと下で舐め―――
「鏡夜、大好きだよ」
妖艶な笑みでそう言ってきた。具体的に言うと、あの某ヤンデレの恍惚のポーズで言ってきた。ちなみに、フランお嬢様はヤンデレではないよ。
「私もですよ」
「知ってる!」
フランお嬢様は俺の返答を聞いた瞬間、再び俺にキスしてきた。
「あ~む」
「!?」
何故かは知らんが、レミリアお嬢様が今度は俺の指を舐めてきた。
「おふぁへしよ、きょうふぁ(お返しよ、鏡夜)」
・・・・・・もう、理性が爆発しそう。だけどども! 俺は理性を爆発させずに耐えた。
「ん~~~~!!!!」
「フフ、鏡夜~大好きだよ」
「わふぁしもよ、鏡夜(私もよ、鏡夜)」
心の中で言わせていただかせてもらう! この姉妹、可愛すぎ!
そんな感じで、俺とお嬢様達、レミリアとフランのあま~い夜は過ぎていった。
消されないよね? 如何でしたか、悪魔0417さん。ご要望の吸血鬼姉妹の絡みでした。
批判、感想、アドバイス、誤字報告、お待ちしております・・・あ! 次回から妖々夢に入っていきます。