二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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まず、一言。申し訳ございません!

次次回で妖々夢に入ると言いましたが、それが実行できず、今回の話が文字数が多すぎて前編、後編となってしまいました。更には五日間もの間を開けてしまい申し訳ございません。

それでもよろしければ、第四十六話をどうぞ。


第四十六話 女性? 男性? いいえ、ショタでロリです。前編

Side鏡夜

 

バク君を助けてから一日経った。現在俺は、昼食を取り、庭に出て洗濯物を干していた。

 

「ふ~これで終わりっと」

 

最後の洗濯物を干して一息つくと、遠くの方から風を切る音が聞こえてきた。

 

「ああ、またか・・・」

 

「にいいいいいいいさあああああああああああん!!!!!!」

 

風を切る音の方角を見ると、文が猛スピードでこちらに突っ込んできていた。

 

よけられる速度だが、俺はあえてよけずに真正面を向き、突っ込んでくる文を抱きしめた。

 

「グ・・・どうした、文」

 

「兄さん!」

 

あの天狗の里の一件依頼、文は妙に俺に甘えてくる回数が多くなったな、と内心思っていると、文は俺に抱きついたまま甘えた声を出して抱きついてくる。

 

「こらこら、今日はどうしたの、文?」

 

「う~んとね、これを渡しに来たの」

 

文はそう言うと俺から離れて、一枚の封筒を渡してきた。

 

「これどうしたの?」

 

「えっと、里の慧音から渡されて、兄さんに渡してくれって」

 

「ふむ」

 

多分昨日のことだろうけど、一体どうしたのだろか。

 

俺は受け取った封筒を開け、中を覗き込む。中を覗くと、一枚の手紙が入っていた。

 

文字はあまり綺麗ではないが、思いのこもった字で書かれていた。

 

『鏡夜、昨日はありがとう。あの後、すぐに行っちゃってお礼が言えなかったから、手紙という形でお礼を言わせてもうらうよ。今度また人里に寄ったら、寺子屋によって話しを聞かせてくれよ。じゃあな。  あんたを尊敬するバクより』

 

「成程ね。まあ、認めてもらえたかな」

 

「なんて書いてあったの、兄さん?」

 

「ちょっとね」

 

俺は手紙を封筒の中に入れると、そっと懐に手紙をしまった。

 

「あ、そういえば兄さん、これ新しい新聞」

 

俺が懐に手紙をしまうと、文はどこからか新聞を取り出して俺に渡してきた。

 

「今回は、早いな」

 

「昨日、すごいネタを仕入れたからね!」

 

「ほ~それは楽しみだ」

 

若干楽しみにしつつ、新聞を見た俺は、固まってしまった。何故なら新聞には、龍が大きく写真で載っていたのだ。

 

『激震!? ついに幻想郷にも龍が現れた!?』

 

その題名の下の内容に目を通していくと、下にある写真が載っていた。

 

『夜の幻想郷に一体何が!?』

 

その言葉とともに、天に向かって伸びる一本の光の柱の写真が載っていた。

 

若干嫌な予感がしつつ、その写真の内容を読んでいくと、また写真が載っていた。

 

『新種の植物!? 一体これは!?』

 

写真には白黒の薔薇の写真が貼ってあった。

 

ここまでの事、気づいてる人は気づいてるよね? これ全部俺の仕業です!

 

「・・・・・・・・・」

 

「ふふ~ん、どう、凄いでしょう!」

 

ドヤ顔で文は言ってくるが、俺は新聞を見たまま何も言えずにいた。

 

「どう兄さん・・・兄さん?」

 

俺が答えないのが不審に思ったのか、文は俺の顔を覗き込んできた。

 

「あ・・・ああ、うん、凄いよ。うん、凄い」

 

「・・・・・・・」

 

なんか、スッゴイジト目で文が見てくる。

 

「・・・兄さん?」

 

「ど、どうした?」

 

「何か隠してるでしょう?」

 

文の言葉に思わず体がビクッと震えた。やばい、バレたかな。

 

「な、なんの・・・」

 

「とぼけないでよ兄さん。いったい何年一緒にいたと思ってるの」

 

「・・・はあ、まあ、いいか、別に隠してるわけでもないし」

 

もう諦めた。正直別に隠すことでもないしね。唯、説明がめんどくさいだけで。

 

「兄さん、一体何を隠してたの?」

 

「文、その写真あるじゃないか」

 

「写真? 写真がどうしたの?」

 

「その写真の一連の行動は、俺がしたんだよ」

 

「・・・・・・え?」

 

文は数秒間を空けてから、驚いた表情で固まった。

 

「兄さん・・・どういう・・・」

 

「だから、その新聞に載ってる写真の龍やら光やら薔薇やらは、俺がしたの」

 

「え、だって、これを取った時に大妖怪並の妖力と、馬鹿みたいに多い魔力とか、霊力とか・・・」

 

「それ全部俺の」

 

「・・・・・・」

 

再び固まった文を見ながら、俺は新聞をそっと文の手元に返した。

 

「そういうわけだ」

 

「いやいやいやいや、嘘だよね、兄さん!?

 

先ほどまで固まっていたのに、文はいきなり俺の腕を掴んで揺さぶってきた。

 

「嘘じゃない」

 

「だって兄さん今、私と同じくらいの妖力・・・て、あれ? なんで兄さんは妖力を持ってるの?」

 

「文!」

 

「な、なに、兄さん」

 

俺は揺さぶられた手を解いて、真剣な顔で文の両肩に手を置いた。文はなんか頬を赤らめてるが、そんなことは関係ない。

 

「文、一つ言わせてくれ」

 

「な、なに兄さん、まさか、告白!? そんな・・・」

 

「俺もな、なんで妖力持ってるか知らん」

 

「へ・・・なに・・・・?」

 

「だから、俺もなんで妖力を持ってるか知らん」

 

もう一度同じことを言って両肩から手を離す。すると、文は真っ赤な顔のまま俯いて、両肩を震わせ始めた。

 

「こ、この、バカ兄いいいいいいいいい」

 

両肩を震わせていた文は、顔をガバっと上げると、涙目で右ストレートを顔面に向けて放ってきた。

 

「よっと」

 

「え、避けられた!?」

 

前は不意打ち、まあ今も不意打ちだけど、そうそう何度も同じのを喰らう俺じゃない! 俺は体を少しずらし、振り抜かれた文の腕を掴む。

 

「よっと」

 

「え、あ!」

 

そして、俺は文を引き寄せて腰に手を回し、そして―――

 

「ん」

 

「ん!? ん、む~~~~~~~~~~!!!!!?????」

 

キスした。もうね、めんどくさくなったんだよ。それに、文にはしてあげてなかったしね。ん? そこ、女たらしとかいうな。

 

「ん・・・」

 

「~~~~~~~!!!!!!!」

 

そのまま一分ぐらいキスした後、俺はようやく文の唇から離れた。

 

「ん・・・と」

 

「え、えへへへへ~~~」

 

唇を離し文の顔を見ると、真っ赤な顔のまま気絶していた。

 

「うん、まさかここまで効き目があるとはね・・・寝かせとこう」

 

とりあえず俺は文を庭の椅子に寝かせて、午後の仕事も終わったことだし、別の椅子に座って文が起きるまで待つことにした。

 

 

 

「えへへへ~~~にいさ~ん・・・あれ?」

 

「あ、ようやく起きた」

 

気絶してから二時間後。そろそろ日も傾いてきたから夕食でも作ろうかな~と思っていると、文が目を覚ました。

 

「ん、兄さん・・・・・・・!!!!」

 

文は椅子から起きて俺の顔を見た瞬間、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「まあ、文。それで許せ、色々と」

 

「・・・・・・・・・う~~~~!!!」

 

なんか文が俯いたまま頭を抱えて唸る。

 

「そんな、落ち込むなよ」

 

「落ち込んでないもん」

 

「ほらほら、飴玉あげるから」

 

「私は子供か!」

 

冗談でスキマから飴玉を出して文の方にやると、口ではああ言いながらも、ちゃっかり飴玉を取られた。

 

「全く、兄さんは全く」

 

そう言いながら、文は俺が飴玉を食べる。おいおい。

 

「まあ、すまないな」

 

「別にいいよ」

 

「それで、急で悪いんだが、これからどうする?」

 

「う~ん、ちょっとやることもあるし、今日は帰るよ」

 

「そうかい・・・そうだ、文、明日暇か?」

 

「暇・・・だね」

 

文は若干考えたあと暇だと言ってきた。よし、これで明日のいたずらの面子が増えた。

 

「よし、じゃあ明日の午後、ここにこい」

 

「なんで?」

 

「面白いもんが見れるから」

 

首を傾げてる文に見えないように口もとを手で隠しながら、俺はほくそ笑んだ。

 

「ふ~ん」

 

「あ、それと、霊夢ちゃんと魔理沙ちゃん・・・知ってる?」

 

「博麗の巫女と魔法使いの事? 知ってるよ」

 

「じゃあついでにその二人も呼んできてくれ」

 

「別にいいけど、兄さん、明日何するつもりなのよ」

 

「明日のお楽しみ・・・じゃあ、俺は仕事に戻るから。約束忘れんなよ」

 

「うん、わかった。じゃあね、兄さん」

 

俺が椅子から立ち上がると、文も椅子から立ち上がり、風のように走り去ってしまった。

 

「・・・さて、明日は悪戯でもするか」

 

くっくっくと俺は小声で笑いながら、紅魔館の中へと入っていった。

 

 

 

Side文

 

「で、文、なんで今日は紅魔館に行こうなんて言ったんだぜ?」

 

「さ~私にも解らんのですよ。兄さんが何故か二人を連れてくるように言ったもんですから」

 

現在、昨日兄さんと分かれてから、私はあの新聞を配っていた。新聞の最後に時成鏡夜主犯と書いて。

 

そんな昨日から一日経った今日。私は神社に行き、霊夢と魔理沙を連れて、紅魔館へと向かっていた。

 

「兄さん? ちょっと待って、兄さんって誰?」

 

「ああ、言ってませんでしたっけ? 私と鏡夜は義理の兄妹なのですよ」

 

「へ~知らなかったわ。あんたと鏡夜って兄妹だったの」

 

「そうですよ、自慢の兄さんです」

 

霊夢の質問に返して歩いていると、紅魔館が見えてきた。紅魔館の前に着くと、いつも門の前に居るはずの、中華服の女性と銀色のワンピースを着た女性の姿がなかった。

 

「あややや? 門番のお二人がいませんね」

 

「どういうことかしら?」

 

「まあ、とりあえず入っていいんじゃないか」

 

門番の二人がいないことをいいことに、魔理沙は門の中に入ろうとすると、霊夢が魔理沙の肩に手を置いて止めた。

 

「いやいや、待ちなさいよ」

 

「そんなこと言ったって、ここにいてもどうにもならないぜ」

 

そんな二人の会話を聞いていると、門の向こう側にある紅魔館の入口が開かれた。

 

入口が開いた向こう側には、若干困ったような顔をした咲夜が立っていた。

 

「いらっしゃいませ」

 

「咲夜さん、お久しぶりです。どうかなされたんですか?」

 

入口まで行き、軽く手を上げながら咲夜に言うと、咲夜は何故か困ったような顔をして頬に手を当てた。

 

「それが・・・いえ、お客様を外で待たせるのは失礼ですから、中に入ってください」

 

咲夜はそう言うと、振り返って中に入っていった。私とお二人は顔を見合わせて、疑問に思いながら咲夜の後ろを付いていった。

 

一体どうしたのだろうか? 何か悩み事でもあるのだろうか。まさか、兄さんか!?

 

そんな感じで考えながら歩いていると、咲夜は一つの扉の前で止まった。

 

「どうぞ」

 

咲夜はゆっくりと扉を開けると、中にはこの紅魔館の住人全員が困ったような顔で立っていた。

 

「どうも、こんにちわ。一体どうしたのですか?」

 

「あ、ああ、文。それが実はおかしなことが皆に起きてね・・・」

 

中には入り挨拶すると、何故か寝巻き姿のレミリアは、中に入り声を掛けたことでようやくこちらに気づいた。そんなに考えに没頭するくらい何を考えていたのでしょうか。

 

「おかしなことですか?」

 

おかしなことと言われて、新しいネタが入るのかと思い、すぐさまネタ帳を取り出す。

 

「ええ、実は今日の朝・・・といってもさっきの事なんだけど・・・」

 

どんなネタか楽しみにレミリアと他の人の話しを聞いてみると、それはおかしなこととは言い表せないほどおかしなことだった。

 

 

 

Sideレミリア

 

「お嬢様、起きてください」

 

「う~ん、あと五分・・・」

 

眠気に支配されている今、私はまだ起きたくない。例え鏡夜にキスされようとあと、五分は絶対にねると決めていた。

 

「お嬢様、起きてください」

 

「う~ん・・・ん?」

 

鏡夜は懲りずに、今度は肩を揺らしながら起こしに来る。私は更に必死に寝ようと抵抗をするが、鏡夜は肩を揺さぶるのやめない。

 

もう、こうなったら意地でもあと五分寝てやると思い必死に抵抗したが、どこか鏡夜とは違うものを感じた。

 

「ん? 鏡夜よね」

 

「そうでございますよ?」

 

目を瞑りながら、鏡夜だと思われる人物に声を掛ける。鏡夜と思われる人物は返事を返すが、やはりどこか鏡夜とは違う気がする。

 

・・・そうか、声が違うのだ。こう、いつもは若々しい声なのだが、今の声はどこか老齢の、歴戦の戦士のような声なのだ。

 

「鏡夜・・・あれ? 貴方誰?」

 

恐る恐る目を開け上体を起こし周りを見ると、私の横に、白いヒゲを生やし、貫禄のある深いシワがある老齢の人物が立っていた。

 

「おはようございます。レミリアお嬢様」

 

「え、あ、おはよう・・・じゃなくて、貴方誰!」

 

老齢の人物は、優しい笑顔で言ってくる。私は思わずその笑顔に普通に返してしまったが、即座にベットから飛び降り、臨戦体制を取った。

 

「お嬢様、時成鏡夜でございますよ」

 

「嘘よ! だって、鏡夜はもっと若い姿だったはずよ」

 

老人を睨みつけながら言うと、老人は悲しそうな表情を浮かべた。

 

「・・・レミリアお嬢様、貴方は今深い眠りから覚めたのですよ」

 

「何を言って・・・」

 

「貴方様は今、あの怪物にやられて長き時を眠っておられたのです。貴方様が寝ておられる間、私はこんな姿になってしまわられたのです」

 

「そんな・・・だって・・・」

 

老齢の人物の言葉に、私は動揺してしまう。

 

確かに昨日は鏡夜とイチャついて寝たはず。なのに、目の前には老齢の鏡夜。

 

どういうことなのか、まだ頭の整理がついていない内に、老齢の人物は片膝をついて涙を流し始めた。

 

「本当に・・・本当に良かったです」

 

「そんな・・・泣かないで鏡夜」

 

私いつの間にか、泣いている老齢の人物をそっと抱きしめていた。その時に、何故か私も涙を流してしまってた。

 

「お嬢様・・・」

 

「今までのお世話ありがとう、鏡夜。もう、私は大丈夫よ」

 

「そうで・・・ございますか・・・では、お嬢様、その元気な姿を皆にも見せてください。今、皆は大広間にいますので」

 

「わかったわ!」

 

私は特に考えもせず、抱きしめてる鏡夜をそっと離し、扉を勢いよく開け、急いで大広間へと向かった。

 

大広間の前へと着き、私は勢いよく扉を開け、中へと転びそうになりながら入る。中に入ると、皆がこちらを驚いた顔で見ていた。

 

「皆、おはよう!」

 

「あ、うん、おはようお姉様」

 

「おはようございます、お嬢様」

 

「おはよう、レミィ」

 

「あ、あれ?」

 

ここはあれじゃないの、ほら、今まで眠ってた私が目覚めた喜びで、全員が一斉に抱きついてくる場面じゃないの?

 

周りのあまりにも普通な挨拶に思わず固まっていると、フランが近寄ってきた。

 

「どうしたのお姉様?」

 

「え、だって、私ってあまりにも酷い傷を負ったせいで、数十年眠りについてたんじゃ・・・」

 

フランに私は呆然とした状態で聞いてみると、フランはえ? って顔でこちらを見てきた。

 

「・・・ねえお姉様、寝ぼけてる?」

 

「寝ぼけてないわよ?」

 

「・・・じゃあ誰からその話を聞いたの?」

 

「誰って、白いヒゲを生やして、顔に深いシワがある老齢の鏡夜だけど?」

 

そこまで私が話すと、フランはは~っと息を吐いた。

 

「また、新たな鏡夜が・・・」

 

「え? フラン、どういうこと?」

 

また新たな鏡夜がというが、この館に鏡夜は一人しかいない。

 

「・・・実はね、お姉様。この場にいる皆、ここに鏡夜によって集められたの」

 

「それがどうしたのよ。別に普通じゃない?」

 

「うん、普通だったらね・・・」

 

「普通だったら?」

 

普通だったらとはどういう意味なのだろうかと疑問に思っていると、フランの口からよくわからない説明がされた。

 

「この場に集められた全員、見たのは普段の鏡夜の姿じゃなかったの」

 

「どういうこと?」

 

「・・・話した方が早いね。実は私は今日の朝ね・・・」

 

そう言って、フランは今日の朝の出来事を話し始めた。

 

 

 

Sideフラン

 

「うぐ!?」

 

「フランお姉ちゃん! 起きて、朝だよ!」

 

ゆったりと惰眠を貪っていると、突然腹部に総激が走った。突然の衝撃に、目を開け腹部を確認すると、5~6歳くらいの子供が乗っていた。

 

「・・・誰?」

 

寝起きの頭ではこの状況が理解できず、私の口から出た言葉は「誰」の一言だった。

 

本当に誰だろうだろう。どことなく鏡夜に似てるけど、鏡夜はこんな小さくはないし・・・

 

私が子供をボケ~っと見ながら考えていると、子供は衝撃の一言を言った。

 

「僕? 僕は時也鏡夜だよ! 忘れちゃったの、フランお姉ちゃん」

 

「・・・・・・あ~成程」

 

この子供が鏡夜と言った瞬間、思考がまた固まったが、すぐに一つの結論に至った。それは―――

 

「夢か」

 

「フランお姉ちゃん!」

 

「グ!」

 

夢だと思い再び寝ようとすると、子供は私の上で跳ねて寝かせないようにしてくる。

 

「夢じゃない・・・?」

 

「何言ってるの、フランお姉ちゃん! いいから、起きて! 皆が大広間で待ってるよ」

 

子供はそう言うと、私の腹の上からから降りて、そそくさと部屋から出ていった。

 

「・・・・・・なあにこれ~」

 

 

 

Sideレミリア

 

「で、部屋から出て、私は大広間に向かったの。それで、そこにいたパチュリーと情報交換してたの?」

 

「・・・・・・・」

 

私はもう絶句していた。何故先ほどまで老齢だった鏡夜が、フランの話では子供だという。

 

「じゃあパチュリー、今度は貴方が話して頂戴」

 

「わかったわ。あれは、お昼過ぎ頃かしら」

 

 

 

 

Sideパチュリー

 

「今日も美味しかったわ、鏡夜」

 

「ありがとうございます、パチュリー様」

 

私は昼食を取っていたわ。この時の鏡夜はまだ普通だったわ。

 

「じゃあ、私は部屋に戻るから・・・小悪魔、行くわよ」

 

「ハイです!」

 

そして、私は小悪魔と共に部屋に戻った。そこから、一時間くらいかしら? それぐらい経ったあと、急に図書館の扉が叩かれたの?

 

「誰かしら、小悪魔見てきて頂戴」

 

「ハイ!」

 

魔道書の整理をしていた小悪魔を見に行かせて、私はジッと扉を見ていたわ。

 

「誰ですか~?」

 

「鏡夜です。紅茶をお持ちしました」

 

「入って頂戴」

 

「失礼します」

 

小悪魔が扉を開けて、入ってきたのは鏡夜だったわ。ただし、雰囲気がどことなく大人びてたの。いや、いつも大人びてるけど、なんかこう、更に大人びてたの。年齢で言えば、30~40くらいかしら。

 

「・・・貴方、鏡夜?」

 

「そうですよ、パチュリー様」

 

そう言って、鏡夜は私の前に紅茶を置いた。そして、帰るのかな~と思っていると、私の隣に椅子を持って座ったの。

 

「あら、どうしたの?」

 

「可愛いパチュリー様の読書タイムでも堪能しょうかと思いまして」

 

「か、可愛い?」

 

不意のその一言で、私は動揺してしまったわ。いつも格好良いいのに、その時の鏡夜は更にかっこよかったせいかしらね。

 

「そうですよ。パチュリー様、貴方は可愛いですよ」

 

「ど、どうしたの鏡夜・・・!?」

 

鏡夜はそう言って私に近づくと、私の顎を指でそっと持ち上げたの。

 

「私は正常ですよ。最近あまりしてませんでしたからね」

 

「な、何を・・・!?」

 

鏡夜は私の顎を更に持ち上げると、徐々に自分の唇を近づけてきたの。もうね、私の心臓の鼓動が速すぎて、壊れるんじゃないかと思ったわよ。

 

そして、徐々に近づいてくる鏡夜の唇が、くっつきそうになった瞬間―――

 

「私も!」

 

鏡夜の横から小悪魔が飛びかかったの。鏡夜にぶつかる! と思ったけど、鏡夜は片手で小悪魔を受け止めると、私の顎から指を外して、その場で半回転すると―――

 

「「!?」」

 

私と小悪魔の唇をくっつけさせたの。要は、キスさせたの。

 

「フフ、残念。また今度ですね」

 

私と小悪魔がキスしている間に鏡夜は扉の前まで行って、笑顔を浮かべた。

 

「それじゃあ、私は失礼します・・・あ、そうそう、パリュリー様、小悪魔、このあと大広間の方に来てください」

 

鏡夜はそれだけ言うと、扉から外に出ていった。私はというと、未だ小悪魔とキスした状態で動けずにいた。

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

私は小悪魔を掴み、無言で横にポイと投げる。

 

「ギャ!」

 

小悪魔は間抜けな声を上げるが、私はそんなことは気にせず、無言でスペルカードを取り出す。

 

「ちょ、ちょっと、パチュリー様」

 

「日符『ロイヤルフレア』」

 

そして、小悪魔は私がスペルカードから出した炎に当たって気絶した。

 

 

 

Sideレミリア

 

・・・鏡夜、パチュリーにそんなことしてたなんて・・・今日絶対甘えてやろう。それもとことん。

 

「って感じだったわよ。私達は」

 

「そう・・・」

 

そして、私は残っている美鈴、カロ、咲夜の方へと視線を向ける。

 

「私はカロと一緒に鏡夜を見たんですけど・・・」

 

「どうしたの?」

 

美鈴が困った表情のまま話し始めた。その話しは、ここまで聞いてきた中で、これまでより不可思議だった。

 

 

 

Sideカロ

 

「平和だね~」

 

「平和ね~」

 

私と美鈴はお昼を食べ終えて、門の前で寝転がって門番をしていた。

 

「眠いね~」

 

「そうだね~」

 

やることもなく、ただひたすら寝転がって日の光を浴びていると、その暖かい日差しのせいで段々と眠くなってきた。

 

「美鈴~」

 

「何~?」

 

「おやすみ~」

 

「おやすみ~」

 

 

 

「起きて、美鈴お姉ちゃん、カロお姉ちゃん!」

 

「う~ん」

 

「誰~」

 

私と美鈴が眠っていると、急に肩を揺さぶられ、声がかけられた。仕事をサボっているため、咲夜が起こしに来たのかな。

 

咲夜かな~と思いつつ、眠くて開けるの辛い眼を擦りながら目を開けると、目の前には咲夜よりも小さい、黒髪ロングストレートの小柄な少女が、鏡夜の着ている服を小型化したような服を着て、立っていた。

 

「もう~やっと起きたね。カロお姉ちゃん、美鈴お姉ちゃん」

 

少女は腰に両手を当て可愛く頬を膨らませながら言ってくる。言ってくるのはいいのだが、この少女、誰?

 

「美鈴~この子知ってる~?」

 

「さあ?」

 

隣にいる美鈴に聞いてみると、美鈴は困った顔で答えてくれた。

 

「そっか~え~と~お嬢ちゃんは~誰なのかな~?」

 

笑顔を浮かべつつ、少女に聞くと、少女は驚いた顔をして涙目になってしまった。

 

「そ、そんな、わ、私の事、忘れてしまったのですか?」

 

「え、え~っと~・・・・・・ごめんね~」

 

「ヒグっ、そんな、あんなに長い間一緒にいたのに・・・」

 

長い間一緒にいた?

 

正直な話し、この子との面識なの本当に無い。この位の少女とあっているとしたら、昔の紫ぐらいだ。

 

「えっと~本当に私たちって知り合いなのかな~?」

 

「知り合いですよ・・・」

 

少女は不貞腐れたように言う。私は少女の反応に困り、隣の美鈴を見ると、驚いた表情のまま固まっていた。

 

「美鈴~どうしたの~?」

 

「カロ、驚かないで聞いて頂戴」

 

「どうしたの~?」

 

美鈴は驚いた顔から真剣な表情になると、冷や汗を流し始めた。

 

「この子の気配がね」

 

「うん~」

 

「鏡夜と同じものなの」

 

「・・・・・・・・・・へ~」

 

何故かね、へ~としか言えなかった。正直言って、あのなんでも超人の鏡夜なら、普通にできそうな気がするから。

 

ちょっと感覚を鋭くして、表情の気配を感じると・・・成程、確かに鏡夜と同じ気配がする。

 

「へ~貴方って鏡夜なの~」

 

「そうですよ、カロお姉ちゃん。全く、結構一緒にいたのに気づかないなんて、悲しいですよ」

 

「ごめんね~」

 

いやいや、見た目可愛い少女なんだから、鏡夜だって気づけるわけがないと思うんだが。

 

「じゃあ、美鈴お姉ちゃん、カロお姉ちゃん。大広間まで来てね。お願いだよ!」

 

少女は可愛く微笑むと、綺麗な黒髪を揺らしながら、紅魔館の中へと戻っていった。

 

「・・・・・・なんだったんだろうね~?」

 

「・・・・・・私に聞かれても、わかんないわ」

 

そうして、私と美鈴は紅魔館の中へと戻っていく少女を見ながら、首をかしげた。

 

 

 

Sideレミリア

 

「・・・というわけです~」

 

「まさか、鏡夜が女の子になれるのとわ・・・」

 

老人や大人系、少年の姿の鏡夜ならわかるのだが、まさか女の子にもなれるとは・・・あ、いや、老人や子供になるのもおかしな話しだけども。

 

「で、最後は咲夜、貴方はどんな鏡夜にあったの?」

 

「はい、私が出会った鏡夜さんは・・・」

 

 

 

Side咲夜

 

「ふ~疲れました」

 

私は昼食を取って、皆が使った食器を洗い終えて、一息ついていた。いつもなら恭弥さんもいるため早く片付くのだが、トイレに行ってくると言ってから一向に戻ってこない。

 

「鏡夜さんはどうしたのでしょうか?」

 

独り言を呟きながら紅茶を入れ、厨房にある椅子に座って紅茶を一口飲む。うん、今日もいい出来だ。

 

適当に紅茶に合うお菓子を取り出し、紅茶を一緒に飲んでいると、厨房の扉が叩かれた。

 

「鏡夜さんでしょうか? はーい」

 

「いや~咲夜ちゃん、ごめんね」

 

叩かれた扉に声を掛けると、帰ってきた声は女性の声だった。パチュリー様や小悪魔、カロや美鈴の声のどれでもない。

 

私はその声に対して不思議に思っていると、厨房の扉が開かれた。

 

「え?」

 

「いや~ごめんごめん」

 

厨房の扉の向こうから現れたのは、黒髪で、腰に届くほどのポニーテール、そして鏡夜さんがいつも着ている服を着た綺麗な女性が立っていた。女の私でも、その女性の綺麗さには驚いてしまった。

 

「えっと、貴方は誰ですか?」

 

「そんな、酷いな咲夜ちゃん。鏡夜よ」

 

女性は厨房の中に入ると、私の対面の椅子に座って、鏡夜さんが愛用しているカップに紅茶を注いで飲み始めた。

 

「う~ん、美味しいわね。これ、咲夜ちゃんがいれたの?」

 

「は、はい、そうです」

 

「美味しいよ」

 

女性は笑顔を浮かべると、再び紅茶を飲み始めた。

 

「って、何普通に飲んでるんですか! 貴方は誰ですか!」

 

普通に紅茶を飲み始めてる女性にツッコミを入れるが、それでも構わずに女性は紅茶を飲み続ける。そして、紅茶を全て飲み終えると、困った顔をし始めた。

 

「誰と言われても、私は正真正銘、時成鏡夜よ」

 

「嘘です! だって、鏡夜さんは男性ですよ!」

 

私が男性だと言った瞬間、女性は両手をテーブルの上で組んで、その上に顎を置いて真剣な表情になった。

 

「実はね、咲夜ちゃん」

 

「な、なんですか?」

 

「時成鏡夜は、実は女性だったのよ!」

 

「な、なんだってー!? って、そんな嘘に引っかかるわけないじゃないですか! 本当に貴方は誰なんですか!」

 

「いや、本当に私は鏡夜なんだけどな・・・まあ、いいや、咲夜ちゃん。この後、大広間に来てね」

 

「何でですか?」

 

「いいから」

 

女性はそう言って笑顔を浮かべると、フッと私の目の前から消えた。

 

「・・・け、結局、あの女性は誰だったのでしょうか? ・・・考えてても始まりませんね、大広間に向かいますか」

 

私は手早く紅茶を飲んで食器を洗い、大広間へと向かった。

 

 

 

Sideレミリア

 

「今度は女性の姿・・・」

 

「はい」

 

「・・・どういうことなのよ?」

 

これで一通り皆の話しを聞いたわけだが、訳がわからない。男だと思ったら女になったり、子供だったら、老人になったりと本当に訳がわからない。

 

「全く、一体どうなってるのよ」

 

「私たちにもわからないよ、お姉様。だからこうして、その色々鏡夜に言われた通りに、この大広間に集まってるんじゃない」

 

「そうよね・・・」

 

と、皆と話していると、突然紅魔館の入口が叩かれた。

 

「誰かしら?」

 

「お客様でしょうか? 見てきます」

 

咲夜はそう言うと、時を止めたのか、パッと目の前から消えた。

 

「本当に、どうなってるのかしら」

 

 

 

Side文

 

「とまあ、そんなことがあったのよ」

 

「成程、そんな事があったのですか」

 

一通り話しを聞いたが、兄さんがしたいことが全く分からない。そもそも、五十年は一緒にいたのに、女だということは一切言われてないし、実際見たときは男だったし。何を見たかは聞かないでね。

 

「で、その・・・兄さんはどこにいるんですか?」

 

「それが、先程から時を止めて探してるんですが、いないんですよね」

 

「兄の部屋には?」

 

「行きましたが、やはりいませんでした」

 

「そうですか・・・」

 

私達を呼んだのだから、この屋敷から出て外にいる可能性は低い。だから、この屋敷のどこかにいるんだろうけど、どこにいるのだろうか。

 

「一体どこにいるのでしょうかね」

 

「ここに居るよ」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

どこにいるのだろうかと話しあっていると、突然鏡夜の声が室内に響いいた。

 

「鏡夜、どこにいるの!?」

 

「兄さん、どこにいるの!?」

 

「だからここに居るよ」

 

私とレミリアが室内に向かって叫ぶと、突然大広間の中央の空間が歪んだ。空間の歪みが収まるとそこには、先ほどまで探していた兄さん、それも六人の兄さんの姿があった。

 




終わりが中途半端ですが、このまま次回の後編に続きます。

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