では、第三十七話をどうぞ。
Side霊夢
「ん? あの二人は?」
飛び続けて数分程。館の前に着くと、門の前に二人の女性が腕を組んで立っていた。
「普通に考えたら、門番じゃないか?」
「まあ、そうよね」
そんな感じで魔理沙と話していると、二人の女性は私達に気づいたのか、こちらを見てきた。
「敵意ありまくりね」
「だな・・・まあ私達には関係ないぜ」
私と魔理沙はその場に止まると、二人の女性は地面を蹴って私と魔理沙の前に飛んできた。
「貴方が博麗の巫女?」
「そうよ」
二人の女性の一人、中華服のような物着た女性が聞いてくる。私はその女性に警戒しながら返事を返した。
「そうなんだ~で、そちらは~」
もう一人の銀色のワンピースのようなものを着た女性が、間の抜けた声で魔理沙を見ながら話しかけた。
「霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ」
魔理沙はニヤリと口の端をあげて、返事を返す。って、いつも思うけど、普通の魔法使いって何よ、普通の魔法使いって。
「そうなんだ~で~要件は~」
「決まってるでしょ。この霧を出してる、黒幕をやっつけに来たのよ」
「ふ~ん、じゃあ~敵ってことでいいんだな」
女性は妖力を放出すると、先ほどの間の抜けた声とは違う、殺気のこもった声で言ってきた。
瞬間、私は少しだけ冷や汗をかき、警戒しながら女性を見た。
「なあ、霊夢。あいつ、いきなり性格変わったぜ」
冗談のように言った魔理沙だが、その声は若干震えている。やはり、霊力を持たない魔理沙には、これほど大きい妖力はきついのだろうか。
「さて、つまらない話しは終わりにして、やろうか。美鈴、あっちの魔法使いは任せた」
「わかったわ」
中華服の女性は、魔理沙の正面に行き。もう一人の女性は、私の前にきた。
「おっとっと、敵さんからのご指名だ。じゃあ霊夢、そっちは任せたぜ。終わったら、先に行ってるから」
「ええ、わかったわ」
軽くお互いに会話した後、私と魔理沙はそれぞれ距離を取った。
「さて、準備はいいな? 残機は三、スペルカードは四」
私は無言でお札を指の間に挟む。相手の女性は構えも何もせず、ただ空中で浮かんでいた。
しばらく、お互いに動かず、睨み合った。そして、短く風が吹いた瞬間―――
「さあ、行くぞ! 博麗の巫女!」
女性は赤や青、紫といった三色の妖力弾を放ちながら突っ込んできた。私は飛んできた妖力弾と突っ込んできた女性を避け、女性の後ろに回り込んだ。
「破!」
手に持っていたお札を全て投げる。しかし、女性はその場で宙返りし、お札を全て躱しながら妖力弾を撃ってきた。
「どうした! その程度か博麗の巫女!」
女性が挑発じみたことを言ってくるが、私は冷静に飛んでくる妖力弾を躱し、再度お札を投げる。そして、戻ってきたお札と先ほど飛ばしたお札で挟み撃ちの状態にした。だが―――
「バレバレだ!」
女性は飛び上がり、お札を躱した。お札はよけられたせいで、勢い余ってお互いにぶつかって消滅してしまった。
私はよけられた事に驚き、一瞬その場に固まってしまった。その一瞬の隙をついて、女性は妖力弾を放ち、私はその妖力弾に当たってしまった。
「くっ!」
「まずは、一回だ!」
少しだけ痛かったが、私はすぐさま袖に手を突っ込み、スペルカードを取り出した。
「スペルカード宣言!」
「来な!」
「霊符『夢想封印』」
スペル宣言が終わると、私の周りに四つの虹色に輝く光の珠が現れた。
「喰らいなさい!」
私の言葉と共に、霊力の珠は女性に向かって飛んでいく。珠はそれぞれ上下左右、女性を囲むように飛んでいった。
「これぐらい・・・!」
女性は先ほどと同じように上に飛んで躱す。だが、この珠は先ほどのお札より強力なホーミング機能が付いている為、どこまでもついていく。
「く!」
女性はそのまま振り切ろうと飛び回るが、とうとう珠に挟み込まれ当たった。
「お返しよ!」
「ク! やるね~」
女性はニヤリと口の端を釣り上げると、今度は高速で飛び回りながらバラバラに三色の妖力弾を撃ってくる。私は女性の妖力弾を避け、両手にお札を握り、女性に向かって投げた。
「アッハッハッハッハ!」
当たりそうになる妖力弾を躱していると、女性が突然笑い出した。
「やっぱり強いね~!」
女性はそう言うと、どこからかスペルカードを取り出した。
「さて、こちらもさせてもらうぞ! スペルカード宣言!」
一旦、お札を投げるのをやめ、女性を見る。
「赤符『嘘つき狼』」
女性は背を曲げ、空中に四つん這いの状態になる。そして、息をふっと吐くと、その姿が白銀の狼へとみるみる変化していった。
「グルアァ!」
狼は叫び、口を大きく開ひて噛む動作をする。すると、狼の口から噛み付くうように青と赤の針のような弾幕が出てきた。
弾幕はまるで、私に噛み付くように迫ってくるが、その真ん中は空洞で抜けられそうだった。
「これくらい・・・!?」
弾幕の真ん中を通り過ぎようとする。だが、通り抜けようとすると、先ほどの弾幕を小さくしたような弾幕が、弾幕の間から迫ってきた。
「ぐ・・・しゃあ!」
私は無理やり体を捻って躱し、袖に手を突っ込み即座に右手でお札を取り出して投げつけ、左手では退魔の針を掴み投げる。
狼は弾幕を放つのをやめると、迫り来る弾幕から空中を蹴って避けた。空中を蹴って避けたことには多少驚いたが、私はそれでも構わずお札と針を投げつける。
「はああああ!」
「グラアァ!」
狼は私の弾幕から逃げるのをやめると、先ほどの弾幕を放ってきた。そして、私の弾幕が狼に当たると同時に、狼の弾幕に私も当たってしまった。
「同時ね・・・」
「グル・・・」
狼は唸ると、その姿が先ほどの女性の姿となった。
「全く、突っ込んでくるとはね。博麗の巫女も意外と単純なのか?」
「そうでもないわよ。ちゃんと考えてるって」
「どうだが」
女性は苦笑いしながら言うと、スペルカードを取り出した。
「さあ、楽しい戦いもこれで終わりにしよう。スペル宣言」
「ええ、終わりにしましょう」
私は右手にお札を持ち、右手で退魔の針を持って構えた。
「狩符『どこまでも行く狼の群れ』」
女性は再び狼になると、体を震わせる。体を震わせると、狼の数が増えていった。一から二、二から四、四から八。そうして、三十二体に分裂すると一箇所集まり、一つの大きな狼となった。
「グル!」
まるで、「行け」とでもいうように狼は唸ると、巨大な狼は突撃してきた。巨大な狼のスピードは速いのだが、躱せ無い速度ではなかった。
「これなら躱せる・・・でも・・・」
巨大な狼を見ながら飛んで躱し、躱した巨大狼の群れを見る。やはり、一筋那覇ではいかず、巨大な狼の群れは半円を描くように回り、私に向かって再び突っ込んできた。
「やっぱりね」
私は再び突っ込んできた巨大な狼を避ける。だが、そこで少しだけ違和感を感じた。
「スピードが・・・上がってる?」
そう、スピードが上がっていたのだ。実は先ほど巨大な狼を躱したとき、巨大な狼に僅かに掠ってしまったのだ。
「これ以上スピードが上がると面倒ね・・・なら!」
私は持っていた退魔の針とお札を、本物の狼に向かって投げる。しかし、案の定軽く躱されてしまった。
「躱されちゃうか・・・っと」
躱されてしまったのに気を取られていると、巨大な狼が先ほど本体が避けたお札を喰らいながら突っ込んできていた。
「先にあの厄介な狼を片付けないと、でもどうしよう」
巨大な狼を避けつつ、どうするか考え、結局あれをすることにした。
「やっぱりこれかな・・・・これで片付いてくれるといいのだけれど」
私は再びお札を握ると、本体の狼に向かって投げた。もちろん、本体の狼はお札を避けるが、それは計算済みだ。
「さて、準備は整った」
「ガルアァ!」
ある事の準備が完了すると同時に、本体の狼がこれまでにない程声で叫ぶ。そして―――
「嘘でしょ・・・」
先ほどまで一つの巨大な狼だった物が分裂し、まるで流星群のように空から降って来た。私はその光景に少しだけ冷や汗をかきつつ、袖からスペルカードを取り出した。
「決まって頂戴よ。スペルカード宣言!」
「夢符『封魔陣』」
スペルカード宣言が終わると、流星群が私の目の前にきていた。間に合わないと思ったが、私に当たる前に、光が私と本体の狼を覆った。
「グル!?」
光が晴れるとそこには、残機がゼロになった狼がいた。私の残機を確認すると・・・良かった。一つだけ残機が残っていた。
「ふ~」
私は息を吐いて、呼吸を整える。呼吸を整えると、狼は女性へと変化してた。
「流石博麗の巫女だ。まさか、あんな手があるとは」
「逆に言えばあれしかなかたったのよ」
私はため息混じりに答えると、女性は楽しそうに笑った。
「アッハッハ、それは良かった。博麗の巫女にそこまで言わせられたんだから、満足だ。本当は勝ちたかったけどな」
「まだ負けないわよ」
女性はまた短く笑うと、右手を差し出してきた。
「私の名前はカロだ。博麗の巫女」
「博麗の巫女じゃないわよ。私の名前は、博麗霊夢よ」
「そうかい」
私は差し出された右手を握りながら言うと、女性・・・カロはクックっと笑った。
「じゃあ、霊夢。楽しかったよ」
「ええ、私も肝を冷やしたけど、楽しかったわ」
右手を離して、苦笑いで答えた。いや、本当に肝が冷えたわよ。
「それじゃあ、カロ。私は行くから」
「ああ、気をつけてな・・・っと、一ついうのを忘れてた」
「何?」
「霊夢ちゃん、十年前の約束を果たそう・・・だそうだ」
「どう言う事?」
カロに言われたことに私は首を傾げてしまう。十年前・・・そんな古い記憶は殆ど残っていない。ただ、しいて残っている記憶といえば、たった一つ。
「いや・・・そんな・・・まさか・・・」
私は最高で最悪な一番マズイ考えが浮かんでしまった。あの人が・・・あの人がいるとでも言うのだろうか? それならば、この異変を解決できる確率はかなり低くなってしまう。
「カロ、まさか、それを言った人って・・・」
「おっと、詳しい事は言わないように言われているんだ」
「そう・・・」
カロの返答に一気に気を引き締め、私は門をくぐり抜けて屋敷中へと向かった。
Side魔理沙
「っと、入ったはいいもののどこに向かえばいいんだ?」
あの中華服を倒したあと、私は屋敷の中へと侵入していた。ん? あの中華服の倒し方? マスパ三連で一気に仕留めましたが?
「さてっと、とこに向かえば・・・ん?」
屋敷の中を飛んでいると、一つの大きな扉があった。なんとなく気になって入ってみると、そこには無数の本が大量にあった。
「わ~!」
箒から降りて、本を見ながら歩いていると、少し開けた場所に出た。
「あら? 貴方は誰?」
開けた場所には、椅子に座って本を読んでいる、紫色の髪の女性がいた。
「私? 私は・・・」
「貴方は次に、霧雨魔理沙普通の魔法使いだぜ、と言う」
「霧雨魔理沙普通の魔法使いだぜ・・・ハッ!」
私は自分の名前を言った瞬間、固まってしまった。自分の言おうとしていたことが、先に言われていたのだ。
私が驚きで固まっていると、女性はクスリと笑ってこちらを見てきた。
「ごめんなさいね。外での会話を聞いていたからわかるの」
「そ、そうなのか」
女性の言葉に、内心ホッとしていると、女性はクスクス笑い出した。
「私だけ貴方の名前を知っているのは、流石に失礼ね。私はパチュリー・ノーレッジ。ここの一住人よ」
「そう・・・で、パチュリー、ここの本は・・・」
「ああ、本? いいわよ、自由に見て」
先ほどから、本を見たくてウズウズしていた私は、パチュリーの言葉を聞いた瞬間、棚に置いてある本を一冊とって読み始めた。
「ほ~!」
自分では見えないから分からないが、多分目をキラキラさせて私は本を読んだ。
「ふふ、それにしても魔理沙。貴方は異変を解決しに来たのではないの?」
「あっ! そうだった」
本に気を取られて忘れてたが、私はこの異変を解決しに来ていたんだった。私は本を元の棚に戻し、箒に跨った。
「なあパチュリー、この異変が終わったらまた来ていいか?」
「別にいいわよ」
「ありがとう」
パチュリーの返答に笑顔でお礼を言い、私は部屋から出た。部屋から出ると、ようやく終わったのか、霊夢と出会った。
「あ! 霊夢!」
「魔理沙」
「? どうした?」
霊夢の顔を見ると、どことなく緊張していた。
「何でもないわ、行きましょうか」
「? そうか?」
霊夢の事が気になったが、取り敢えず何も聞かずに霊夢についていった。
「霊夢、大丈夫か?」
飛んでいる途中に聞いてみると、霊夢はやはりどこか緊張している顔をしていた。
「魔理沙、気を引き締めておいて」
霊夢はいつもの余裕そうな声ではなく、珍しく緊張した声で言ってくる。私は不思議に思いつつも、一応気を引き締めておいた。
しばらく飛ぶと、一つの大きな扉に近づいた。
「ここね」
「そうみたいだな」
「行くわよ」
緊張した表情のまま霊夢はゆっくりと扉を開ける。扉の中に入るとそこには、仮面を付けた男性と、メイド服を着た女性が、頭を下げていた。
美鈴の扱いはすみません。そして、パチュリーが何かお姉さんっぽいという。
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