では、霊夢視点オンリーの第三十六話をどうぞ
Side霊夢
霧が発生した次の日、博麗神社で私は箒で地面を掃いて、ため息をついていた。最初は唯の霧だと思って放っておいたが、どうやら普通の霧ではないらしい。
「は~全くなんなのよ。これじゃあ洗濯物が乾かないじゃない」
太陽の日差しを殆ど隠してしまっている霧は、私にとっては洗濯物が乾かないため、とても鬱陶しかった。
「は~やっぱり解決しに行かないといけないわよね」
博麗の巫女として、異変は解決しなければならない。そんなすごく面倒な事をしなければならないのかと思い、私は再びため息を吐いた。
「おーい、霊夢ー!」
私が再びため息を吐くと、空から声が聞こえた。空を見るとそこには、箒に乗り、魔法使いの格好に三角帽子を被った、幼馴染の魔理沙がこちらに向かって飛んできていた。
彼女は霧雨魔理沙。自称普通の魔法使いの金髪の女の子だ。年齢は確か私と同じ十代前半だ。
「どうしたのよ、魔理沙」
魔理沙は私の前で箒から降りると、片手で箒を持って、二ッと笑った。
「どうしたのよって、決まってるだろ。異変だよ異変!」
「そうね~異変ね。で、それが?」
私はそれがどうしたの? っといった感じで聞くと、魔理沙は一旦肩を落としてから詰め寄ってきた。
「あのな~異変だったら博麗の巫女が解決しなきゃいけないだろ」
魔理沙が詰め寄りながら言ってくる。私は詰め寄ってくる魔理沙から一歩下がりつつ、一つの考えが浮かんだ。
「・・・もしかして魔理沙、私と一緒に行きたいの?」
「勿論そうに決まってるだろ・・・それに、私もやってみたいからなこれ」
魔理沙は二ッと再び笑って、帽子の中を漁る。そして、一枚のカードを取り出した。
「弾幕ごっこをな!」
弾幕ごっことは、二年ほど前から広がったスペルカードルールの別称である。広がったといっても、一部の者のみだが。
「弾幕ごっこね~でも、今回の異変の首謀者が弾幕ごっこで戦わなかったならどうするの?」
「そこは、安心してくれ」
「どうしてよ」
「私の女としての勘だぜ」
魔理沙の言葉に私はため息を吐いてしまった。勘ってなによ、勘って。もう少し別な理由はなかったのかしらね?
「・・・は~でも魔理沙、今回はその勘は当たってるわよ」
「ん? どいうこと?」
「今回の異変、少し紫が噛んでいるみたいなの」
「紫が?」
「ええ」
ついこの前、私を修行してくれた紫が突然現れ、今回の異変の本当の目的をいって言った。その目的というのが、この幻想郷にスペルカードルール・・・つまり弾幕ごっこを広めるというものだった。弾幕ごっこであれば、なんでも、人間でも妖怪に勝てるということを、この幻想郷に広めたいらしい。
そんな感じで、簡潔に魔理沙に話すと、魔理沙は腕を組んで頷いていた。
「成程ね、ってことは、これはやらせってことなのか?」
「いえ違うわ。相手も相手で、手加減はあまりしないそうよ」
「ってことは、本気で潰しにかかってくるってことか?」
「そうなるわね」
そこまで言うと、魔理沙は口元を釣り上げて、笑った。
「ハハハ、面白いじゃないか。じゃあ、早速行こうぜ霊夢」
魔理沙は笑っていった後、箒に乗った。
「わかったわよ。少し待ってて頂戴、直ぐに用意するから」
「四十秒で支度しな!」
「無理よ。三分間は待って頂戴」
私は箒を片付けると、自室へと向かった。そして、お札やら針やらを持って、魔理沙と共に博麗神社から飛び立った。
「で、霊夢。どこに迎えばいいんだ?」
飛んでいる最中、魔理沙がそんな事を聞いてきた。そんなこと言われても、私も行く宛など知らないのだが。
「どこって、私も知らないわよ?」
「知らないって、じゃあどうすんだよ」
「取り敢えず、私の勘が湖に行けば何かあるって言ってるから、そっちに向かいましょう」
ちなみに、私の勘はかなりの確率で当たる。大体十割中、九割ぐらい。
私がそういうと、魔理沙は下を向きながらため息を吐いた。
「は~勘って、でもいっか、霊夢の勘はよく当たるからな」
そんな感じで、魔理沙とたわいもない話をしていると、急に目の前に黒い靄のような物がふよふよ飛んでいた。
「なんだこれ?」
「さあ?」
黒い靄は何を思ったのか急に止まると、黒い靄は消え、中から金髪で頭にリボンを結び、黒のロングスカートを履いた女の子が現れた。
「んー? 人間なのかー?」
「そう人間よ。無垢で善良な一般的な人間よ」
「どこがよ、魔理沙」
魔理沙のボケを流しつつ、女の子を見る。女の子はこちらを見ると、口を三日月のようにして、笑っていた。
「そーなのかー」
「そうよ」
「じゃあ、食べてもいいよねー」
「良薬口に苦しよ」
女の子はどこからかスペルカードを取り出すと、二枚掲げた。
「残機はニ。スペルカード枚数も二枚」
「いいわよ、来なさい。相手してあげるわ」
魔理沙を目線で私から離れさせた後、私は両手の指のあいだにお札を持った。お札を持った瞬間、女の子は典型的な丸い妖力弾を何十も撃ってきた。
「まあまあね」
私はその場で、最低限の動きだけで妖力弾を躱す。次々と飛んでくる妖力弾を、しばらく躱していると、女の子はスペルカードを取り出した。
「スペルカード宣言!」
妖力弾が飛んでこなくなったのを確認した後、私はジッと女の子を見た。
「夜符『ナイトバード』」
スペル宣言が完了した瞬間、女の子は左右に高速で動き、青色の弾幕を円弧状に放ってきた。
「甘いわよ」
私は飛んでくる妖力弾の間を通り抜けつつ、両手に握っていたお札を、女の子に向かって投げつける。
「当たらないよー」
女の子は、私が投げたお札を平然と躱す。だが、それは私の狙い通りだった。何故なら―――
「へっへー・・・って、いたー!?」
お札は弧を描くように戻り、ルーミアの背中に直撃した(直撃した瞬間、ピチューンという音がした)。実はこのお札、一枚一枚にホーミング機能がついているのだ。
「いたた、ちょっとずるくないー?」
「ずるくないわよ。戦略よ戦略・・・それよりも、後一回よ」
背中を摩りながら文句を言う女の子に皮肉で返すと、女の子は再びスペルカードを取り出した。
「スペルカード宣言」
私は再びジッと見ると、女の子はニヤっと笑っていた。
「月符『ムーンライトレイ』」
女の子は両手かレーザーを出すと、私の左右から挟み込むようにレーザーを詰めてきた。
「どうしたの~逃げないのー?」
私が微動だにしないことに疑問なのか、首を傾げながら言ってくる。そんな私はというと、迫り来るレーザーに怯えていた・・・というわけではなく、唯ため息をついた。
「は~もう終わりでいいわね」
そう言った後、私は袖から一枚のスペルカードを取り出した。
「スペルカード宣言」
「無駄なのだー」
女の子は更にレーザを詰め寄らせてくる。しかし、私は眉一つ動かさず、静かに呟いた。
「夢符『封魔陣』」
呟いた瞬間、スペルカードに一瞬光が集まった。そして、次の瞬間・・・
「!?」
光が広がった。正確には、四方に張ったお札が共鳴して、一つの退魔結界を貼ったのだ。
女の子は光を浴びた瞬間、気絶して地面へと落ちていった。大した高さではないし、なにより妖怪だから大丈夫だろうということで、放っておいた。
「やっぱり流石だな、霊夢」
「あら魔理沙、今までどこにいたの?」
「ずっと木の裏から隠れて見てたぜ」
「そう―――じゃあ、湖に向かいますか」
「そうだな・・・っと、霊夢。次は私にやらせろよ!」
「わかってるわよ」
そうして再び飛ぶこと数分、今まで幻想郷を覆ってた霧とはまた違う霧が出てきた。
「ここが、湖だっけ?」
「そのはずよ」
ドンドン湖の中心に向かって飛んでいく。
「なあ霊夢。なんか寒くないか?」
「確かにちょっと寒いわね」
中心に向かって飛んでいると、徐々に寒くなってきた。今の時期、夏には入っていないとはいえ、この寒さは異常だった。
「そこの人間、止まりなさい!」
急に前方から声が聞こえた為、その場に止まった。前方を見るとそこには、青髪で背中に氷でできた羽のようなものを生やした女の子がいた。
「チルノちゃん、やめようよ」
「大丈夫だよ、大ちゃん。私にかかればこいつらなんて、ひと捻りだよ!」
その女の子、確かチルノと呼ばれた女の子の隣には、緑色の髪と透明な羽を生やした女の子がいた。
そんな二人組を見ていると、チルノの方が指を差してきた。
「やい人間! 最強のあたいと勝負しろ!」
「望むところだぜ!」
チルノの言葉に即座に返した魔理沙に呆れつつ、私は魔理沙から離れた。
「チルノちゃん・・・」
「大ちゃん心配しないで」
「・・・うん、頑張ってね」
チルノとは別の方の女の子は、チルノに何か言ったあと、私と同じくチルノから離れた。
「残機はニ。スペルカード三!」
「OK 来な!」
そして、妖力弾が飛ぶかと思ったら、チルノがすかさずスペルカードを取り出した。
「スペルカード宣言」
魔理沙はスペル宣言された瞬間、箒の上で余裕の笑みを浮かべていた。
「氷符『アイシクルフォール』」
チルノは左右から魔理沙に向かって、つららのような弾幕を放ち、正面からも黄色い妖力弾を放っていく。
「私の戦い方は、真っ向勝負だぜ!」
魔理沙は訳わからんことを言うと、チルノに真正面から突っ込んでいった。
「ほ、よ、危な!」
迫ってくる弾幕をギリギリで躱していき、チルノの正面までついた。チルノの正面についた瞬間、服のポケットから八角形の物を出した。
魔理沙が取り出した物、それはミニ八卦炉と言う。これは、魔力を燃料とする小さな火炉である。
「よいしょー!」
魔理沙はそのミニ八卦炉から、魔力で作ったミサイルをちるのにぶつけた。
「ぐ!」
あの独特の音がなり、チルノから残機が一つ削られた。魔理沙はチルノから距離を取ると、すぐさま魔力で作ったミサイルを撃った。
チルノは迫ってくる魔理沙の弾幕をギリギリで躱し、つららのような弾幕を撃ち始めた。しかし、チルノの弾幕はことごとく魔理沙の弾幕によってかき消された。
「な!?」
「弾幕はパワーだぜ!」
チルノは聞かないことを悟と、もう一枚スペルカードを取り出した。
「ス、スペルカード宣言!」
魔理沙は動きを止めると、箒の上で再び余裕な顔をしていた。一方、チルノは息を切らしながら、スペルカードを持っていた。
「凍符『パーフェクトフリーズ』」
チルノのスペル宣言が終わると、何十もの色とりどりの妖力弾が、バラ撒かれた。
「へっ! こんなの余裕だぜ!」
魔理沙は次々と来る妖力弾を順調に避ける。
「フリーズ!」
「危な!」
チルノが手を握ると、先ほどまで動いていたチルノの弾幕が、ピタッと止まった。魔理沙は勢いのあまり、止まった妖力弾にぶつかりそうになるが、ギリギリのところで止まった。だが―――
「はじけろー!」
チルノが手を広げた瞬間、先ほどまで止まってた弾幕が、色々な向きに動き出した。
「嘘―!」
魔理沙は急に動き出した妖力弾に動揺にしつつ、自分に飛んできた妖力弾をギリギリ躱した。
「あ、ぶ、ない!」
次々と来る妖力弾を躱すと、魔理沙はある程度の距離を保ちながら、チルノの正面にいき、箒の上に立ちスペルカードを取り出した。
「スペルカード宣言」
チルノは魔理沙のスペル宣言に、チャンスだと思いドンドン魔理沙に向かってスペルカードの弾幕を放つ。魔理沙は向かってくる弾幕には目もくれず、八卦炉を正面に構えてチルノを見た。
「恋符『マスタースパーク』」
魔理沙のスペル宣言が終わった瞬間、八卦炉からバカみたにでかいレーザーが発射された。
レーザーはチルノの弾幕を全て飲み込み、チルノへと真っ直ぐに向かった。
「!?」
チルノは何とか回避しようとするが、あまりにも大きすぎるレーザーを回避することはできず、モロにレーザーを浴びてしまった。数秒程レーザーは出ると、細い光となって消えた。
「弾幕はやっぱりパワーだぜ!」
「チルノちゃん!」
レーザーが終わると、中からチルノが気絶した状態で出てきた。先ほどの女の子は、チルノの姿を見ると、一直線にチルノへと向かった。
「お疲れ、魔理沙」
「おお、これぐらいウォーミングアップだぜ」
私も魔理沙の方に行き労いの言葉をかけると、親指をぐっと立て返してきた。
「チルノちゃん! チルノちゃん!」
「ああ、大ちゃん。あたい、負けちゃったよ」
「いいよそんなこと別に」
チルノと先ほどの女の子の方を見ると、女の子がチルノを抱きかかえていた。
「じゃあね、二人共。私達は先を急ぐから」
私は二人に声を掛けて、自分の勘を信じて向って飛んだ。魔理沙もその後に続くように飛ぶが、チルノに声をかけられ止まった。
「そこの、魔法使い」
「どうした?」
「次やったら、絶対勝つからな!」
「ああ、楽しみにしてるよ」
「魔理沙、行くわよ」
「ああ、今行く」
魔理沙は再びこちらに向かってくる。魔理沙が私の隣にきたら、魔理沙と並行して飛んだ。
「魔理沙、なんて言われたの?」
私が先ほどチルノに呼び止められた時の内容を聞くと、魔理沙は笑顔を浮かべて答えた。
「今度やったら絶対に勝つからな、だそうだ」
「そう、じゃあ今度が楽しみに」
「ああ、今度が楽しみだよ」
そうして湖を飛んでいると、一つの陸地が見えてきた。その陸の中央には、今回の異変の首謀者がいると思われる、館が立っていた。
「魔理沙、多分あれよ」
「とうとう、首謀者のお出ましかな?」
「多分ね・・・それじゃあ、魔理沙行きましょうか」
「行きますか」
そして、私と魔理沙は飛ぶ速度を上げ、今回の異変の首謀者がいるであろう館に向かった。
魔理沙の口調がわからない。今回多分色々とおかしいですね。次回は再び霊夢視点となります。
感想、誤字、アドバイス、お待ちしております。