二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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さてさて、ようやく原作入りです。といっても、本格的な開始は次回からですけどね。

今回、スペルカードルールに独自の解釈が入ってます。これおかしくない? と思った場合、感想に書いてください。

では、第三十五話をどうぞ。


紅魔異変
第三十五話 赤い霧の異変


Side鏡夜

 

さて、あの宣戦布告をした次の日。宣戦布告当日は何もなかったのだが、次の日の昼頃、門の前には数十の妖怪達がいた。

 

妖怪一匹一匹は大した妖力は持っておらず、下級クラスの妖怪の群れだった。

 

「さて、準備はいいかな、咲夜ちゃん」

 

いつもの執事服を着て、部屋の窓から門の前を見ながら、後ろでナイフを磨いている咲夜ちゃんに問いかける。

 

「はい、いつでも出れます」

 

「そう・・・で、その服の感想は?」

 

「とっても動きやすいですね、それにナイフも隠しやすいですし」

 

「それはよかった」

 

この会話でわかるかもしれないが、咲夜ちゃんの格好は俺が作った、青を基調としたミニスカートのメイド服だ。

 

咲夜ちゃんはナイフを磨き終えると、太もも辺りに付いているホルスターにナイフを入れる。ちなみに、このメイド服は俺特性で、ギミックが何個かある。そのうちの一つに、ナイフなどの道具をしまいやすいようになっている。

 

作り方は企業秘密ね。

 

「では、行きましょうか」

 

「ああ、行こっか。くれぐれも殺さないようにね」

 

「分かってますよ」

 

部屋の窓を開け、俺はあのマスクを付け、咲夜ちゃん共に窓に足をかけて外へと飛び出した。

 

 

 

Side咲夜

 

部屋の窓から飛び出し、門の前に着地する。着地の衝撃は、昔覚えた空を飛ぶ方法で軽減したため、衝撃は殆どない。

 

「これが、妖怪ですか」

 

「そうだよ」

 

目の前の妖怪の群れを見た私は、そのあまりにも気持ち悪い姿に、吐き気がした。紫さんのような人型ならともかく、私の目にいる妖怪たちはその殆どが化物だった。

 

鋭く尖った爪を持つもの、カマキリのような鎌を持っているもの、ムカデの足に人間の胴体を持つもの、等等色々と気持ち悪い姿をしていた。

 

「こんなのを相手にしなければならないのですか」

 

は~っとため息を吐きながら、太ももからナイフを抜き、ナイフを持っている手を下ろした状態で妖怪達を見た。

 

「ゲハ! この前の女が出ると思ったら、人間の女だと?」

 

「これはおもしれえ、よほどここの主は腰抜けということかよ」

 

妖怪達は口々に言いたいことを言うと、ゲハゲハと気持ちえ悪い声で笑う。私はお嬢様達を馬鹿にされたことで、怒りのあまりナイフを握る手に力がこもってしまった。

 

「咲夜ちゃん、落ち着きなさい」

 

肩にポンっと鏡夜さんの手がのったことで、ハッと我にかえりナイフを握る力を緩めた。

 

「すみません、つい熱くなってしまいました」

 

「気を付けなさい、お嬢様達を馬鹿にしたことで熱くなるのはわかる。けど、熱くなってしまうと、体に無駄な力が入って、動きが悪くなってしまう。だから、なるべく冷静になりなさい」

 

「わかりました」

 

ふ~っと二、三回程深呼吸をして、落ち着きを取り戻した。そして、再び妖怪達の方を見ると、未だにゲハゲハ笑っていた。

 

「ゲハゲハ! じゃあ、俺達は全員で行かせてもらうがよ~文句はないよな、まあ、聞いてないけどな!」

 

妖怪の一人はそういうと、一気に私の方へと突っ込んで、鎌のような腕を振り下ろしてきた。

 

「遅いですよ」

 

私は少しだけ体をづらして躱し、妖怪の腹に蹴りを叩き込んだ。そして、少し後ろに後退した妖怪にすぐさま近寄り、殴り飛ばした。

 

「は?」

 

驚いている周りの妖怪を無視し、持っていたナイフを一匹の妖怪の腹にめがけて投げつける。ナイフは綺麗に真っ直ぐ飛ぶと、妖怪の腹に見事に当たった。

 

「グハ!?」

 

「くそ、捕まえろ!」

 

慌てた様子で私を捕まえようとする妖怪達の手を掻い潜り、ナイフを太ももから取り出して妖怪たちの足を切り落としていく。妖怪たちの足を切り落としていると、他の妖怪達が私に向かって妖力弾を飛ばしてきた。

 

「これなら、躱せねえだろ!」

 

「残念」

 

鏡夜さんの弾幕に比べたら、天と地ほどの差がある弾幕を躱し、その場で妖力弾を飛ばしてきた妖怪達の頭上高くに飛び、太ももから持てるだけのナイフを持った。そして―――

 

「さあ、踊りなさい」

 

まるで銀色の雨が降っているのではないかと思わせるくらいの、馬鹿げた量のナイフが一斉に相手に向かって飛んでいく。大体百本くらいかな? どうして一度にこれだけの量のナイフが、妖怪達に向かって飛んだのにはちゃんと理由がある。

 

時間を操る程度の能力を使い、時を止め、その間に大量のナイフを一気に投げる。そして、時が動き出すとともにナイフの止まっていた時も動き出し、このようなことができたのだ。

 

「グハ!」

 

「ガッ!」

 

妖怪達はナイフの雨を躱せず、ドンドンその身にナイフが突き刺さっていく。ちょっとやりすぎたかなと思ったが、妖怪だということで大丈夫だろうと考え、地面に着地する。

 

「これで、終わりですかね」

 

ふ~っと息を吐き、辺りを確認すると、三匹の妖怪が鏡夜さんに向かって突っ込んでいた。

 

「しまった!」

 

「ゲハゲハ! あのつええ女の方は後回しだ! 先に弱そうなあいつをやっちまえ!」

 

妖怪三匹は気持ち悪い声で笑いながら鏡夜さんに突っ込んでいく。私はすぐさま走って向かうが追いつかなかった。

 

「死ねええええええ!」

 

とうとう、妖怪の一匹が鏡夜さんに向かって、拳で殴りかかる。

 

「鏡・・・!」

 

妖怪の拳が鏡夜さんの顔面に当たる瞬間、私は叫びそうになった。しかしその声は出せなかった、何故ならば鏡夜さんは当たる瞬間、一言だけ呟いたのだ。

 

「邪魔」

 

そう呟いた瞬間、妖怪三匹は全て空中で一回転していた。

 

「まだまだぬるいぞ妖怪、せめて鬼くらい強かったら、いい勝負は出来たろうにね・・・って、聞いてないか」

 

私は鏡夜さんの元に近づき、妖怪達の方を見る。そこには、手足を全て折られ、泡を吹いて気絶している妖怪がいた。

 

「あの一瞬でどうやって」

 

「ん? まあ、練習すればできるよ・・・それよりも、咲夜ちゃん」

 

「な、なんでしょうか」

 

「てい!」

 

「痛!」

 

鏡夜さんは真剣な表情をすると、私の額にデコピンをしてきた。

 

「何するんですか~」

 

額の痛みを我慢しつつ、鏡夜さんに聞くと、呆れながら首を振った。

 

「あのね~最期の時、走ってきたでしょう」

 

「はい、それがどうしましたか?」

 

「時を止めて走れば、間に合ったんじゃない?」

 

「あ!」

 

私は鏡夜さんに言われて気づいた。先ほど、そんな考えは一切なかったが、よくよく考えれば、普通に間に合う手段はいくつもあった。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・てへ!」

 

「てい!」

 

「痛!」

 

鏡夜さんが無言で見てくるので、可愛く舌を出して誤魔化すと、再びデコピンされた。

 

「は~全く、戦いの最中で焦っちゃいけないって何度も教えたでしょう」

 

「すみません」

 

「これから、気を付けなさいよ・・・じゃあ、そろそろナイフを回収して、ご飯にしよっか」

 

「はい、わかりました」

 

私が返事をすると、鏡夜さんはやれやれといった感じで頭を撫でてくれた。頭を撫でてもらった私は、上機嫌で先ほど使ったナイフの回収へと向かった。

 

 

 

Side鏡夜

 

さてさて、妖怪達の襲撃はあの後何度もあったが、特に苦戦することもなく咲夜ちゃんがすべて撃退した。

 

そんな感じで二年程撃退していると、妖怪達は諦めたのか襲撃は無くなってしまった。

 

「諦めたのでしょうか?」

 

「そうじゃない」

 

門の前に立ちながら、襲撃に来る妖怪を待っていたのだが、一向に来る気配がない。そして、時間は流れて夜になった。念のため夜も警戒しているんだが、妖怪達は一向に来ない。

 

「もう終わりでいですかね?」

 

「もういっか、じゃあ明日からは準備に取り掛かりますか」

 

「何のですか?」

 

首を傾げながら聞いてくる咲夜ちゃんに、俺はこれからの事が楽しみすぎて、笑顔になりながら答えた。

 

「異変の準備だよ」

 

 

 

「で、一体何をするの?」

 

次の日の昼、俺は紅魔館の皆を例の紅茶を飲む部屋に呼んだ。

 

「決まってるじゃないですか、異変の準備ですよ、お嬢様」

 

レミリアお嬢様が聞いてくるので、俺は笑顔で答えた。

 

「異変の準備といっても、何をするの?」

 

「まずは、スペルカードのルールの確認ですね」

 

そう言った後、紫ちゃんを呼ぶため息を吸った。

 

「紫ちゃ~ん」

 

紫ちゃんの名前を呼んだ瞬間、カロと美鈴は反射的に胸を両手で抱きかかえるように隠した。

 

「何かしら?」

 

だが、カロと美鈴が胸を両手で抱きかかえるように隠したのにも関わらず、紫ちゃんは普通にスキマから現れた。

 

「やあ紫ちゃん。今日は普通に出てきたね」

 

「いや、いつもこうでしょう」

 

嘘つけっといった視線でカロと美鈴は紫ちゃんを見るが、紫ちゃんは一切無視した。

 

「まあ、それはいいとして、聞きたいことがあるんだけどいい?」

 

「何かしら?」

 

「スペルカードのルールを教えて」

 

「ああ、その事」

 

紫ちゃんはスキマを開くと、一枚の紙を取り出して渡してきた。紙を受け取ると、そこにはスペルカードのルールが書かれていた。

 

「これがルールでいいの?」

 

「ええいいわ」

 

顔を上げて聞いたあと、再び紙に視線を落として内容を確認する。

 

「皆の分もあるから見て頂戴」

 

「あら、ありがとう」

 

紫ちゃんは再びスキアを開くと、人数分の紙を取り出して、皆に渡した。

 

紙の一度見て、俺は紫ちゃんに紙を返した。

 

「ありがとう紫ちゃん、はい」

 

「あら、もう覚えたの?」

 

「ああ、これぐらいだったら一度見れば覚えられるからね」

 

紙を返したあと、俺は頭の中で紙の内容を思いだした。紙には五つのルールが書かれていた。

 

ルールその一。基本的に飛び度具または妖力や魔力、霊力を用いた弾を撃ち合って戦う。

 

ルールその二。このスペルカード戦は、美しさも求められる。

 

ルールその三。スペルカードは宣言した時にのみ発動される。そして、スペルカード宣言の時は一切の攻撃はしてはいけない。ただし、自分が宣言中の時に、相手も宣言してきた場合は、スペル攻撃を続けて良い。

 

ルールその四。スペルカードの枚数、及び自分が当たってもいい回数を事前に両者で決める。掠った場合は、当たってないという判定になる。

 

ルールその五。このルールで戦い、負けた場合は負けをちゃんと認める。余力があってもスペルカードルール以外の別の方法で倒してはいけない。

 

「で、このルールに二つ質問なんだけど、まず一つ目基本的にって何?」

 

「ああそれ、それは特殊な場合ね。その場合になったら私が言うから安心して」

 

「そう、じゃあ二つ目。当たった場合ってどうやって確認するの?」

 

「その場合は、自動的に当たった判定が出るから大丈夫」

 

「わかった」

 

「他に質問がある人はいる?」

 

一通り聞いたあと、紫ちゃんは皆に聞いた。すると、フランお嬢様が手を上げた。

 

「ハイ質問」

 

「何?」

 

「私達の能力は使用してもいいの?」

 

「いいわよ。ただし、直接相手に痛みを与えるのは駄目よ」

 

「わかった」

 

「他には?」

 

フランお嬢様が頷いた後、紫ちゃんは周りを見渡す。周りを見渡すが、皆は質問はないのか、黙った。

 

「・・・ないようね。じゃあ、私は帰るけど、もしかして異変を起こすの?」

 

「ああ、そのつもりだよ」

 

紫ちゃんはスキマを開いて、体が半分入った状態で聞いてくる。その質問に肯定で返すと、紫ちゃんはニヤリと笑った。

 

「そう、楽しみにしてるわ」

 

「ああ、楽しみにしてて」

 

そう言うと、紫ちゃんは手を振ってスキマに入って行った。

 

「・・・さて、じゃあ異変を起こしますか」

 

俺は紫ちゃんがスキマに入ったことを確認した後、皆に向かって話し始めた。

 

「異変を起こすといっても何をするの?」

 

レミリアお嬢様は首を傾げながら聞いてくる。俺は一応考えがあったのだが、これでいいか再び考え始めた。

 

「う~ん、そうですね~」

 

「考えてなかったの?」

 

「いや、あるにはあるのですが・・・」

 

「何か問題があるの?」

 

「ええ、あります」

 

「それは何かしら?」

 

「お嬢様は霧を出せますか?」

 

「霧?」

 

「そうです」

 

そこから一通り、俺の計画を話し始めた。まず、最初にこの幻想郷中に妖気を含ませた霧で覆う。霧を出す理由はなんでもいいのだが・・・例えば太陽を隠すためとか。で、妖気を含ませた霧を幻想郷中に放てば、普通の人間は無事では済まない。そうすれば、人間の危機として、異変解決に博麗の巫女が来る。

 

「・・・っと、そういう風にやれば異変として捉えてもらえると思うのですが」

 

そんな感じで簡潔に説明すると、レミリアお嬢様は腕を組んで頷いた。

 

「成程ね。まあ、霧の方は大丈夫よ、出せるから。それと、異変の目的としても、それなら私達吸血鬼には最もな理由だし、それでいきましょうか」

 

「よろしいのですか?」

 

「ええ、私はいいわ。皆もいいでしょう?」

 

レミリアお嬢様は皆の方を見ながら聞くと、皆は頷いた。

 

「・・・と、いうことよ」

 

「そうですか・・・では、いつ異変開始にしますか」

 

俺がレミリアお嬢様に聞くと、レミリアお嬢様は口の端を上げ、悪い笑みを浮かべた。

 

「決まってるじゃない、それは・・・」

 

 

 

次の日、幻想郷は赤い霧によって包まれた。




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