時間飛びすぎじゃね? と思うかもしれませんが、早く幻想入りさせたかったので、そこは了承してください。
では、第三十話をどうぞ
第三十話 幻想入り
Side鏡夜
あれから一年が経った。この一年間、特に変わったこともなく平穏無事だった。
まあ、変わったことといえば、皆が一歳、歳をとったことと、そろそろ咲夜ちゃんに戦闘を教えても大丈夫かな~って位には体力がついてきたことぐらいだ。
「さて、皆さん準備は出来ましたか?」
で、現在夜の十時程。俺と皆は幻想郷に行く為の準備をしているところだ。準備するものは得にはないのだが、一応の確認としてだ。
「あ、鏡夜ちょっと待ってて頂戴」
「どうしました?」
「ビリエルにちょっと手紙を出すからちょっと待ってて」
レミリアお嬢様はそう言って窓を開けると、一匹のコウモリがやってきた。
「これを、ビリエルにお願い」
コウモリはレミリアお嬢様の言葉がわかったように少し体を曲げると、外へと飛び立って行った。
「会わなくてよろしいのですか?」
「ええ、大丈夫でしょ」
そうですかと言って、俺は紫ちゃんを呼ぶために息を吸った。
「紫ちゃ~ん」
「はーい!」
「キャッ!」
紫ちゃんの声がした瞬間、美鈴から短い悲鳴が聞こえた。皆が美鈴の方を一斉に見ると、そこには美鈴の胸を揉んでいる紫ちゃんがいた。
「はあ~」
俺は呆れつつ紫ちゃんに近づくと、紫ちゃんが何か真剣な顔でブツブツと呟きながら胸を揉んでいた。
「ちょっ! やめてください!」
「ふむ、大きさは藍の方が・・・いや、だけど・・・」
「アホか」
「痛!」
な~んか真剣な顔してると思ったら、くだらないことを言っていた為、とりあえずチョップをしておいた。
「何するのよ!」
「アホなのことしてるからだよ」
「痛!」
再びチョップすると、涙目になって頭を抑え、しゃがんでいじけてしまった。
「あ~あ~どうすの~鏡夜~」
「はあ~仕方ない」
俺はやれやれといった感じで、紫ちゃんの足を掬って、お姫様抱っこのの形にする。
「これでいい?」
「ええ、満足よ」
何故かこの体制にすると、紫ちゃんは機嫌が良くなるのだ。
俺が床に下ろすと、紫ちゃんはさっきのような巫山戯た感じではなく、いつもどおりの優雅な雰囲気を纏って立った。
「ゴホン、先程は失礼したわ」
「全くです」
美鈴が嫌味っぽく言うが、紫ちゃんは平然として話を進める。
「さて、じゃあ行くけど何か質問は?」
「はい」
「はい、どうぞ」
フランお嬢様が手を上げると、何故かノリノリで紫ちゃんは扇子でフランお嬢様を指した
「あっちのどんな所に着くの?」
「何か要望があるなら出来る範囲でするけど?」
「まあ特にはないよ」
「無いの?」
「無いけど?」
紫ちゃんはその返事にため息を吐きつつ、他の皆を見渡した。
「他には?」
皆は特に質問はないのか、無言になった。
「そう、じゃあ行くわよ」
そう言って紫ちゃんは指を鳴らすと、一瞬浮遊感を味わった後、外が夜から朝に変わっていた。
「はい、到着」
「「「「「はやっ!?」」」」
俺とカロ以外が驚く中、俺は窓際に行ってカーテンを閉めた。
「さてと、じゃあ私は帰るね」
「あ、ちょっと待って」
「何?」
紫ちゃんがスキマを作って帰ろうとするが、俺はあるものを貰うため引き止めた。
「この、幻想郷の地図かなんかない?」
「あるわよ」
紫ちゃんはそう言うと、スキマの中に手を突っ込んで、何かを探しだした。
「え~と、これじゃない・・・と、はいこれ」
一分ほどスキマを漁ると、一枚の紙を渡してきた。
「ありがとう」
「徹夜で藍に作らせたんだから」
「そ、そうなんだ」
紫ちゃんは胸を張って言うが、俺は紫ちゃんよりも藍ちゃんに感謝したかった。今度何かお土産でも持って行ってあげようと思いながら、紙の内容を見る。紙には簡単な地図と名前が書かれていた。
博麗神社、人間の里、魔法の森、太陽の畑、妖怪の山、香霖堂、霧の湖、そして紅魔館が書かれていた。
俺がその地図を見ているうちに、再び紫ちゃんはスキマに入ろうとしていた。
「じゃあね、また何かあったら呼んでちょうだい。それと、さっき渡した地図の裏も見ておいてね」
「わかった。多分次呼ぶのは異変の時だと思うから」
「わかったわ」
紫ちゃんはそう言うと、手を振ってスキマの中に入って行った。
「・・・てなわけで、皆さん無事幻想郷にやってきました」
皆は緊張していたのか、ふ~っと息をついて椅子に座った。
「では皆さん、これから三つ程、この世界について話しときます」
「何かしら?」
皆が見てくる中、俺は紫ちゃんが持ってきた地図の裏側を見ながら話し始めた。
「まず一つ目、この世界には日本と呼ばれる国の妖怪がいます」
「日本?」
首を傾げて聞いてくるフランお嬢様に頷きつつ、続きを話す。
「そうです、これはあまり関係ないですね・・・そして二つ目はこの世界では無闇に人は襲ってはいけないのです」
「それは問題ないわ、血を吸うときは鏡夜の血を吸うし」
レミリアお嬢様はニヤリと笑って俺の方を見ながら言ってくる。その顔に見とれたかったが頭を振ってすぐに話に戻った。
「まあ、それは構いません・・・で、三つ目なのですが、これは私の考えなんですがよろしいでしょうか?」
「いいわよ」
レミリアお嬢様が頷いたのを確認してから、俺はある計画を話していく。
「この館の存在を隠したいのですがどうでしょうか?」
「どう言う事?」
皆は首を傾げながら俺を見てくる。俺は自分のある計画を話し始めた。
「では、一から説明します。まず、この館を私の曲げる能力で見えなくします」
「それで?」
「館を見えなくしている間に、私が咲夜ちゃんを鍛えます・・・大体四年くらいですかね」
そこまで話し一旦区切ると、咲夜ちゃんが手を挙げてくる。
「どうしたの?」
「あの、別に館を隠す意味はないのではないでしょうか?」
「いや、これには二つ目的があるんだ」
そう言って、俺は人差し指と中指を立てながら話しを続ける。
「まず一つ目、この館を隠すことで、侵入者はいなくなる。その為、門番のカロと美鈴には館の仕事をしてもらい、その間に私直々に咲夜ちゃんを鍛えたいんだけど・・・いいかな」
「まあ、私は別にいわよ」
「私も~」
二人に確認をとってはいなかったが、二人が頷いたのに安心しつつ、再び話し始める。
「で、二つ目は、咲夜ちゃんを鍛え終えた後、館を見えるようにする。そうすると、ここの近くの妖怪はこの館は何だ! と戦いを挑んでくると思うんだ」
「そう上手くいくかしら?」
レミリアお嬢様が不安げに聞いてくるが、俺は自信満々に答える。
「大丈夫です。そこはお嬢様が、この幻想郷を支配してやる! とでも言えば一発で、戦いを挑んできますよ」
「それは、私に悪役をやれって言ってるの?」
「ダメでしょうか?」
俺は断られないか心配になりながらも聞くと、レミリアお嬢様は笑いながら答えてきた。
「ふふ、アハハハハ、いいわよ鏡夜、久々に悪役もやりたいしね」
以外にもノリノリなお嬢様にホッとしつつ、計画の続きを話し始める。
「それは、良かったです・・・で、そこで妖怪達の迎撃を、咲夜ちゃんにさせます」
俺がそう言うと、咲夜ちゃんはビクッと驚いて、こちらを不安げに見てきた。俺は咲夜ちゃんを安心させるために、笑顔で頭を撫でつつ、話を続ける。
「勿論、一人ではやらせないよ。カロか美鈴のどちらかは必ずついてもらう。それでいいよね? カロ、美鈴」
「ええ」
「いいよ~」
「以上が私の作戦です」
そこまで話して、ふ~っと息を吐くと、レミリアお嬢様は笑顔になっていた。
「中々いい作戦ね」
「そうね、でも鏡夜、一つ聞きたい事があるのだけどいいかしら?」
「どうしました、パチュリー様?」
「貴方の妖力は四年も持続して、能力を発動できるほどあるの?」
「ああ、そのことですか」
俺はそう言った後、妖力を三割程出す。妖力を出した瞬間、皆の表情が凍りつき、冷やせ汗をダラダラと流していた。
「この通り、妖力はバカみたいに大量にありますんで」
すっと、全ての妖力をしまうと、皆は肩で息をして、安心したような表情になっていた。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫。それにしても、なんて量の妖力よ」
「まあ、私の能力のおかげなのですがね」
まあ、それにしてもここまで増えているとは思わなかった。実は妖力や霊力は、日に日に十倍ずつぐらい増えていっているのだ。なので、今俺が持っている妖力や霊力をすべて開放すると、どれくらいになるのかはわからない。
ちなみに、三割でお嬢様達二人の十倍くらいだ。
「でもこれなら、大丈夫ね。じゃあ、能力を発動して頂戴?」
「もう発動しているので安心してください」
「早いこと」
「まあ、この計画が通ると思っていましたから」
俺は苦笑いで言いつつ、皆を見渡すと、皆は疲れきっていた。
「じゃあ、皆さん終わりにしましょうか。後、咲夜ちゃん明日から鍛えるから覚悟してね」
「はい!」
そうして、無事に終わり、夕食まで解散となった。
Sideフラン
「はあ~美味しかった」
「そうね~」
私とお姉様は、夕食を食べ終えて、いつもの紅茶を飲む部屋で椅子に座って、幻想郷? の月を見ていた。
「それにしても、今日は何か色々と疲れたよ」
「そうね、あの妖力の時が一番疲れたわ」
お姉様と同様、私も一番疲れたのは鏡夜の妖力の時だ。あの時の鏡夜の妖力は、紅魔館にいる皆を足しても足りないくらいだった。
「あ~速く鏡夜に甘えたい」
「本当にね」
あ~速く鏡夜がこないかな~っと内心思っていると、扉が叩かれた。
「失礼します」
部屋を叩いたのは鏡夜だとわかると、私とお姉様は椅子を降りて、扉へと走って向かった。
「入りますよ~っと」
扉が開けて鏡夜が中に入ろうとした瞬間、私とお姉様は鏡夜に抱きついた。
「「鏡夜――!」」
「うおっ! って、お嬢様達ですか、今日はいつにも増して甘えてきますね」
「だって今日、疲れたんだもん」
「そうよ、だからいつも以上に甘やかして?」
私とお姉様が上目遣いで言うと、鏡夜は笑顔になって私とお姉様の頭を撫でてくれた。
「ふふ、分かりましたよ」
鏡夜はそう言うと、私とお姉様を腕に座らせて、椅子へと向かった。椅子へと着いた鏡夜は私とお姉様を膝の上に乗せて椅子に座った。
「さて、今日は何をしましょうか」
「何でもいいわよ、鏡夜と一緒にいれればね」
「そうそう」
「そうですか」
私とお姉様は笑顔で鏡夜の胸に頭を乗せた。一方鏡夜は、笑顔のまま再び頭を撫でくれた。
「そういえば、私には妹がいるんですよ」
数分程、静かに頭を撫でてもらっていると、鏡夜が突然妹がいると言い出した。私は今までに妹がいるとは聞いたことがなかったので、驚いて鏡夜の顔を見た。
「え? 妹がいたの?」
「ええいましたよ。義理の妹ですが」
「初めて聞いたわ」
「初めて言いましたから」
私が何故今そんなことを言ったのだろうと考えていると、顔に出ていたのか、鏡夜はふふっと笑ういながら説明してくれた。
「何故こんなことを突然言いだしたのだろう、って顔をしていますね」
「良くわかったね」
「ふふ、なんとなくですよ・・・で、私が何故妹のことを言い出したじかと言うと、多分この幻想郷にいるんですよね」
「そうなの?」
今日は頷くと、一旦撫でるのをやめて、月を見ながら苦笑いを浮かべた。
「そうなんだ、じゃあ妹さんに今度挨拶しないとね」
「そうだね」
私とお姉様が頷きながら言うと、鏡夜は再び私とお姉様の頭を撫で始めた。
「まあ、いずれ会えますよ」
「その時を楽しみにしてるわ」
そうして、再び私達は静かになり、数分が経った。鏡夜に頭を撫でられていると、私は段々と眠くなってきた。
「ふあ~」
「眠いのですか?」
「うん、ちょっとね」
「そうですか」
私が欠伸をすると、お姉様も欠伸をした。私とお姉様が欠伸をすると、鏡夜は少しお待ちをと言って、何かから毛布を取り出した。
「寝るのであれば冷えてしまいます。これをお使いください」
鏡夜はそう言うと、私とお姉様に毛布をかけてくれた。
「ん、ありがとう鏡夜」
「ありがとう」
「いえいえ、もし寝てしまったら、部屋まで運びますので、安心してください」
「うん」
「わかったわ」
そこから少しの間、お姉様と鏡夜と一緒に話していたが、いつの間にか眠ってしまってた。
いかがったでしょうか?
誤字報告、感想、アドバイス、質問、お待ちしております