二人の吸血鬼に恋した転生者   作:gbliht

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ちょっと、今回は苦労しました。それと文字数がいつもより二千文字も長い・・・

それでは、第二十八話をどうぞ


第二十八話 昔話1

Side鏡夜

 

「さて、あれは私がまだ修行していた時の話です」

 

俺は昔の記憶を思い出しながら、話始めた。

 

 

 

あれは大体、紫ちゃんと別れてから数百年目の事。俺は唯強いものと戦いたくて、日本中を彷徨っていた。ちなみに、服装は黒い和服に草鞋だ。

 

「さて、どっかにいないかな~」

 

そんな事を呟きながら森を歩いていると、突然森が開けた。

 

「ん?」

 

森が開けた場所には、川があった。川の上流の方を見ると、滝が流れており、魚も泳いでいた。

 

「ほ~これはこれは」

 

滝の方を見ながら呟くと、後から水が跳ねる音が聞こえた。

 

「誰かいるの・・・」

 

後ろを振り向くと、黒い翼を生やして、黒髪で、全裸の、もう一度言うが全裸の! 女の子がいた。女の子はこちらに気づくと、目を見開いて固まっていた。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

俺と女の子は無言のまま、固まった。

 

「え~と、ごめんなさい!」

 

俺が謝ると、女の子は無言で服を着て、下駄を履くと、服と一緒に置いていた団扇を思いっきり振ってきた。

 

「うおっ!」

 

女の子が振った団扇のせいか知らないが、かまいたちのようなものが首に向かって飛んできた。なんとか首に当たる直前にバク転して躱ししが、当たってたら死んでるぞ。

 

「危な!」

 

「危な! じゃないわよ! 貴方誰! とういうか死になさい!」

 

女の子は俺の返答も聞かずに、再び団扇を振ってきた。すると今度は、無数のかまいたちが飛んできた。

 

「ちょ! ごめんってば」

 

「ごめんと思うなら、当たりなさいよ!」

 

「どうして!?」

 

「そうすれば、私の裸を見た者がこの世からいなくなるからよ!」

 

女の子は顔を真っ赤にして、涙目で更にかまいたちの量を増やしていく。俺はかまいたちに当たりたくないので、ひたすら避け続けた。

 

「なんで、当たらないのよ~!」

 

女の子は疲れたのか、ようやく団扇を振るのをやめてくれた。周りを見渡すと、周りにあった木が全て真っ二つに切られていた。

 

「ここまでやるとは・・・」

 

「う~~」

 

女の子は唸った後、ペタンと地面に座ってしまった。

 

「えっと、大丈夫?」

 

俺は女の子に声を掛けるが、女の子は俯いてしまった。

 

「えっと、ごめんなさい」

 

俺が再び謝ると・・・

 

「う・・・うえええええん!!!!!」

 

「え、ちょ!」

 

突如、女の子は泣き出してしまった。俺はどう対応していいか分からず、その場で混乱してしまった。

 

「ほ、ほら、あの、えーっと」

 

「うええええええん!!!」

 

何とか慰めようとするが、女の子は一切泣き止む気配が無かった。

 

「どうした文!」

 

「どうしたの!」

 

女の子が泣いていると、上空から二人の男女が降りてきた。二人を見ると、女の子と同様、黒い翼を生やしていた。

 

「ぐす・・・あの人に・・・ぐす・・・裸見られた~」

 

「「何!?」」

 

女の子が二人に言うと、二人は同時に俺の方を睨んできた。

 

「おい貴様、ちょっと付いてきてもらえるかね?」

 

「えっと、断ると言ったら?」

 

「この場で殺すわ」

 

二人は殺気のこもった目で俺を見てくる。正直な話、この二人を相手しても負ける気はないが、女の子に対する罪悪感がある為、結局ついていくことにした。

 

 

 

で、俺は今両手を縛られて、山の山頂辺りに連れてこられた。そこには、先ほどの三人と同様に黒い翼を生やした人が沢山おり、ちょっとした里だった。

 

「ここは・・・」

 

「黙ってろ!」

 

俺はここがどこか聞こうとしたが、男の方が黙ってろといったので、おとなしく黙ることにした。

 

「天魔様、侵入者を捕らえてきました」

 

「ご苦労」

 

里の奥の方に着くと、大きな台座らしきものがあった。台座の前で女性の方が誰かの名前を呼ぶと、黒髪ロングの女性が台座の奥の方から現れた。

 

ちなみに、さっきの方の女の子は黒髪ボブ、女性はショートカットだった。男の方は・・・知らん!

 

「さて、お前は何故、文の裸を見たのだ? それと、何が目的でこの山に侵入したのだ?」

 

天魔と呼ばれている方の質問に答えさせるためか、男の方が俺の事をドンっと押して天魔の前に突き出した。

 

「えっと、まずお名前からでよろしいでしょうか?」

 

「貴様!」

 

「よい・・・お前、名乗れ」

 

「では失礼ながら・・・私は時成鏡夜です」

 

「時成・・・鏡夜?」

 

天魔はなにか思うところがあるのか、首を捻っていた。俺はそんな事は気にせず、続きを話始めた。

 

「まず、文さん・・・でしたか? その裸を見たのはただの偶然です」

 

俺がありのまま起こった事を話すと、天魔が睨んできた。

 

「本当に偶然か?」

 

「本当です」

 

俺がキッパリと答えると、天魔はジッとこちらを見てきた。

 

「・・・嘘はついてはいないな・・・で、なぜこの山に侵入した?」

 

「それも偶然です。しかし、一応目的はあります」

 

「その目的とは?」

 

天魔は俺の瞳を見て、問いかけてきた。俺も天魔の瞳を真正面から見つめ返して答えた。

 

「・・・強者と戦うことです」

 

俺がそう言うと、天魔は俯き何かを呟いた。

 

「そうか・・・やはりお前が鏡夜だったか」

 

「やはり?」

 

天魔は何か呟いたあと、急に笑い出した。

 

「ク、クク、アッハッハッハ!!」

 

「て、天魔様!?」

 

「い、如何なされました!?」

 

男と女性は突如笑い出した天魔に、困惑していた。

 

「面白いやつが来たよ。柑奈、葛木、里の全員を呼んできて」

 

「「はい!」」

 

天魔がそう言うと、二人は疾風のごとく消え去った。

 

「文、貴方はこっちに来なさい」

 

「い、いいのですか!?」

 

「許す」

 

女の子・・・文ちゃんは緊張した表情で天魔の近くに座った。

 

「文、この男はね・・・」

 

天魔が何か言うと、文ちゃんは驚いた表情をしていた。

 

「本当ですか?」

 

「本当だよ、だから・・・・」

 

天魔と文ちゃんが話し始めてしまったので、あの二人が帰ってくるまでボーっとすることにした。

 

 

 

さて、あの二人が戻ってくると、翼を生やした人が数えきれないほど集まってきた。

 

天魔は台座の上に立つと、集まった皆に話し始めた。

 

「さて、よく集まってくれた。今日はこの男に対する処罰を考えたいと思う」

 

天魔がそう言うと、皆がざわめき始めた。

 

「天魔様、どういうことですか?」

 

ざわついていた一人が、天魔に問いかけた。

 

「うむ、実はこの男はこの山に無断で入り、さらには文の裸まで見たのだ」

 

「「「「何!?」」」」

 

天魔が言った一言により、男達が一斉にこちらを睨み、女性達は最低なものを見るような目で、こちらを見てきた。俺はすぐさま、全員から目をそらした。

 

「ということで、この男の処罰を考えたいのだが・・・いい案がる奴はいるか」

 

その瞬間、男達が一斉に叫び始めた。

 

「「「「殺しましょう!」」」」

 

「え~」

 

俺は一斉に叫んだ男達に呆れた。まあ、そりゃああんだけ可愛い女の子の裸を見たって言うんだったら、殺したくはなるけども・・・

 

「やはり、そうか・・・他に意見のある奴は?」

 

「あの、天魔様」

 

皆が叫ぶ中、文ちゃんが手を挙げた。

 

「どうした、文?」

 

「皆さんがそう言っていただけるのはありがたいのですが、私は裸を見られたのは別に構いません」

 

文ちゃんがそう言うと、俺の方に近づいてきた。その時俺は、心の中で突っ込んでいた。

 

(思いっきり泣いてたじゃん!)

 

「ですから天魔様、この男に一度だけ助かる機会を与えてくださいませんか?」

 

「いいだろう、で、文。何をするつもりだ」

 

「それは・・・」

 

そこから、俺はえっ? となる事を言われた。

 

 

 

「どうしてこうなった」

 

今俺は両腕の拘束を外され、里の中央辺りに連れてこられた。

 

あの後、文ちゃんが言った機会というのが・・・

 

「私と速さ比べをして、勝ったらあなたの願いを私がなんでも聞いてあげる。でも、もし私が勝ったら、私の言うことをずっと聞きなさい!」

 

というものだった。

「さて、準備はできたか、鏡夜」

 

「できましたよ、天魔さん」

 

先ほどから何故か名前で呼んでくる天魔に答えつつ、俺は競争用のルートを確認していた。というか、山一周なんだけど、距離が二十キロ位あるんだけど、絶対これ山一周の距離じゃないよね?

 

「山一周って長くない?」

 

「あら、自信がないの?」

 

俺がため息をつきながら呟くと、文ちゃんが笑顔で挑発してきた。

 

「自信ないね~」

 

「・・・・・・」

 

俺が巫山戯た風に言うと、文ちゃんは呆れたような顔でこちらを見てきた。

 

「では、この競争について簡単に説明させてもらう」

 

天魔は俺と文ちゃんの前に来ると、手を大樋区広げて皆に聞こえるように話し始めた。

 

「まず、対戦者への妨害はなんでもあり」

 

(この時点で普通の人間は勝てないだろ)

 

俺は心の中でツッコミを入れつつ、天魔の話の続きを聞いた。

 

「その他は、文の方は三十秒遅れて走ること、競争用の道をキチンと通ってことの二つ」

 

「もし破ったら?」

 

「・・・・・・」

 

俺が質問すると、天魔はニッコリと笑顔になった。その笑顔の意味を知っている俺は、ちょっとだけ怖いと思った。

 

「と、いう訳で、準備はいいかな」

 

「大丈夫です天魔様」

 

「同じく」

 

そう言って、俺は足に力を溜めて、前の方に跳ぶ準備をした。

 

「では・・・始め!」

 

ドンっという音ともに地面はへこみ、俺は前の方に跳んだ。

 

「ちっ!」

 

「やっぱり」

 

俺が何故走るではなく跳んだかというと、文ちゃんが俺の方に向かって、あの団扇でかまいたちを撃ってきたのだ。

 

「じゃあ、おっさき~」

 

俺はすぐさま地面を蹴って、山の下に降りた。

 

 

 

「さてと、そろそろかな」

 

大体、四分の一程を走った所で、俺は文ちゃんの事を待っていた。なんで? それはガチンコで競争したいからね。

 

「見つけた!」

 

俺が待っていると、上空から文ちゃんの声が聞こえてきた。

 

「え~」

 

上空を見ると、文ちゃんは黒い翼を羽ばたかせて飛んでいた。

 

「こんな所にいるなんて、流石人間ね。鈍すぎるわ!」

 

文ちゃんはそう言うと、団扇でかまいたちを撃ってきた。俺はすぐさま降ってきたかまいたちを躱して、ルート通りに走った。

 

「あっ、コラ! 待ちなさい!」

 

「やだね~」

 

俺が走り出すと、文ちゃんはかまいたちを撃ちながら、空の上から追いかけてきた。

 

「ほらほら、当たってないよ~」

 

「こんの!」

 

更に大量のかまいたちを撃ってくるが、俺は全て躱していく。ちなみに、俺がかなりの速度を出して走っているのにも関わらず、文ちゃんは俺の速度についてきた。

 

「さあ、さらに速度をあげるよ!」

 

「嘘!」

 

俺はさらに足に力を入れて、速度をあげた。文ちゃんは驚きつつも、しっかりとついてきた。

 

「くっ!」

 

「そらそら、ドンドン速度上げるよ」

 

そこから更に、速度を上げると、文ちゃんの姿はドンドン遠ざかっていた。

 

「何だこんなものなの?」

 

俺が止まって呟いた瞬間、遠くの方から驚く程のスピードで文ちゃんが走ってきた。

 

「まてええええ!」

 

「うわおっ!」

 

俺は追いつかれる前に、再び走り出した。

 

「逃がさいない!」

 

「速っ!」

 

全力で走ってはいないが、それでも並大抵の速度では走ってはいない。大体、 三百キロぐらいかな?

 

まあ、何で俺がそんなスピード出せているかというと、身体能力の限界を無くして、鍛えたら出来ました。

 

「くらえ!」

 

「危な!」

 

かなりのスピードを出しているというのにも関わらず、文ちゃんはかまいたちを撃ってきた。

 

俺はかまいたちを躱しつつ、更にスピード上げた。

 

「くっ!」

 

文ちゃんは何とかといった感じで、ついてきた。俺は更にスピードを上げようとしたが・・・

 

「あっ!」

 

草鞋が壊れてしまった。

 

「隙あり!」

 

「隙なし!」

 

草鞋が壊れ、体勢が崩れた瞬間、文ちゃんはかまいたちを放ってきた。だが、俺は崩れた勢いのまま地面に倒れてかまいたちを躱し、すぐさま地面に手をついて、前転しながら手で思いっきり地面を押して前へ跳んだ。

 

「なっ!」

 

そこから、霊力で足を覆って更に速度を上げて走った。

 

「じゃあ、おっさき~」

 

そのまま、走り出して一分後、里へと到着した。

 

「到着!」

 

俺が里へと到着すると、皆が驚いた顔で俺の事を見ていた。

 

「どうしたのですか?」

 

「あ、いや、なんでもない」

 

俺が声を掛けると、天魔は慌てたように感じで返事を返した。

 

「そう・・・じゃあ、文さんが来るまで待ちましょうか」

 

そこから一分後、汗だくで息を切らしながら、文ちゃんはやってきた。

 

「はあ、はあ、はあ」

 

「お疲れ様」

 

俺がそう言うと、文ちゃんは座り込んでしまった。俺はそんな文ちゃんを見ながら、天魔に近づいた。

 

「さて天魔さん、私の勝ち名乗りをあげてくれますかね?」

 

「あ、ああ」

 

天魔さんは動揺しながらも、俺の勝ち名乗りを上げてくれた。

 

「勝者、時成鏡夜!」

 

俺の勝ち名乗りが上がると同時に、男達から不満の声が上がった。

 

「巫山戯るな!」

 

「ズルだ! ズルをしたに決まってる!」

 

「天魔様、こんな奴!」

 

「黙りな!」

 

「「「「っ!」」」」

 

男達は不満の声を上げ、女性達は男達に便乗して叫んでいた。しかし、天魔は少しだけ息を吸うと、大声で叫んだ。天魔が叫ぶと同時に、男達と女性達は息を詰まらせて黙った。

 

「お前ら! これは神聖な決闘だ! それをお前たち外野がどうこう言っていいものじゃない!」

 

「しかし、奴は反則を・・・」

 

「私は奴のことを監視していたが、奴は何も反則などしていない!」

 

「「「「!?」」」」

 

天魔の一言により、皆は一斉に息を呑んだ。俺はそのやりとりボーっと見ていると、天魔がこちらに近寄ってきた。

 

「鏡夜、勝ちは勝ちだ。約束通り、文に対して一つだけ願いを言え」

 

そう天魔に言われた瞬間、文ちゃんはビクッと震えた。まあ、負けることなんて考えてないだろうからね。

 

「本当にいいのですか?」

 

「ああ、そういう約束だったからな」

 

「そうですか」

 

俺はそう言って文ちゃんに近づいた。文ちゃんは俺が近寄っていくと、震えだした。

 

「覚悟は出来てるよな?」

 

「い、いや・・・」

 

俺は悪役のような笑顔を浮かべて言うと、文ちゃんは更に震えだした。

 

「さて、俺の願いだが・・・」

 

そう言って、俺は右腕を振り上げた。俺が右腕を振り上げると、文ちゃんはギュッと目をつぶった。

 

そして、俺は勢いよく腕を振り下ろし・・・

 

「えっ?」

 

そっと、文ちゃんの頭の上に手を置いた。

 

「俺の願いは、君の願いを出来る範囲で叶えることだよ」

 

俺は文ちゃんの頭の上に手を置きながら屈み、目線を合わせて、さっきのような悪役のような笑顔ではなく、優しい笑顔で言った。

 

「そもそも、俺がこんな怯えてる女の子に何かするわけ無いでしょう。しかも、全面的に俺が悪いのに」

 

そのまま、文ちゃんの頭を撫でつつ笑顔で話すが、理解できないのか文ちゃんは固まっていた。

 

「ほら、立てる?」

 

俺は頭を撫でるのをやめて、そっと右腕を差し出した。俺が手を差し伸べると、文ちゃんは我に返って、俺の手を掴んだ。

 

「よっと」

 

文ちゃんの手を優しく引いて起こしてあげると、文ちゃんは俺の方に倒れ込んできた。

 

「おっと、大丈夫?」

 

「え、あ、はい」

 

何故か顔を真っ赤にして、文ちゃんは返事を返してきた。・・・まさかね?

 

「さて、じゃあ、お願いは何かな?」

 

「ほ、本当にいいのですか?」

 

「いいとも。俺が悪いんだから。それと、敬語じゃなくてもいいよ」

 

「じゃ、じゃあ」

 

俺がそう言うと、文ちゃんはお願いを言ってきた。

 

 

 

「って、感じでしたね」

 

「ふ~ん、まあ色々と突っ込みたい所はあるけど、一つだけ聞かせて」

 

「なんでしょうか?」

 

「結局そのお願いはなんだったの?」

 

「ああ、それですか。それは」

 

「それは?」

 

俺はあの頃の記憶を思い出しながらパチュリー様に言った。

 

「まあ、結婚してくれと言われました」

 

「え?」

 

俺がそう言うと、パチュリー様は驚いた顔をしていた。

 

「そ、それでどうしたの!?」

 

驚いているパチュリー様と違って、小悪魔は興味津々といった感じで聞いてきた。

 

「いや、断ったよ」

 

「え~どうして?」

 

「あの頃は、まだ色々としたいことがあったからね」

 

苦笑いしながら俺が言うと、パチュリー様は安心したような顔をしていた。

 

「じゃあ、女の子は他に何をお願いしたの?」

 

「じゃあ、貴方が死ぬまで私に付き合ってください! って、言われました」

 

「それ実質、結婚してくれっていってるようなものじゃない」

 

「で、結局鏡夜はどうしたの?」

 

「受けましたよ」

 

「「え?」」

 

「いや~その後、全部そんな感じのお願いだったので」

 

俺がそう言うと、今度は二人共固まった。しかし、すぐさまパチュリー様は復活した。

 

「じゃ、じゃあ何でここにいるの!?」

 

「あれは大体、五十年すぎぐらいの時ですかね。その時に私は死んだふりをして、その子と別れたんですよ」

 

「死んだふりって・・・」

 

「本当ですよ? 死ぬ前に土に埋めてくれと言って、予定通り土に埋めてもらって、その夜に土から抜け出して、抜け出した時に出た土を元に戻して、また旅を始めたのですよ」

 

まあ、実は霊力で心臓を止めたり、土に埋められているとき死にかけたりしたけどね。

 

「そ、そうだったの・・・」

 

俺はパチュリー様に答えたあと、ポケットに入れていた時計を見た。時刻は五時半程だった。

 

「っと、そろそろ夕食の準備に行かねばならないので、これで失礼させていただきます」

 

「え、ええ、面白い話をありがとう」

 

「いえいえ」

 

俺はパチュリー様に頭を下げて、図書館を出た。廊下に出た俺は、なんとなく外を見た。

 

「元気にしているかな~文ちゃん」

 

そう呟いて、俺は厨房へと向かった。

 

 

 

Side文

 

「へっくしゅ、あれ~おかしいですね、風邪でしょうか?」

 

私は今、新聞を作っていた。新聞の名前は文々。新聞。昔、新聞を作りたての時に、鏡夜と考えた名前の新聞だ。

 

「それにしても、懐かしいことを思い出しましたね」

 

私はあの日、鏡夜と出会った日を思い出していた。

 

「あれから数百年、本当に懐かしですね」

 

一緒に入れたのは五十年程、鏡夜は最初は皆に嫌われていたが、徐々に打ち解けて、皆から慕われるようになっていた。

 

そして、鏡夜が死んだ日、私達一同は泣いた。たった一人の人間の友達を無くして大声で泣いた。

 

「鏡夜・・・う~んさて、気分を変えて書きますか!」

 

私は鏡夜が死んだ日を思い出して泣きそうになったが、気分を入れ替えて新聞を書き始めた。

 

「鏡夜、天国で見ていてくださいね! 絶対に天狗の中で一番の新聞屋になりますから!」

 

 

 

その頃の鏡夜

 

「へっくしゅ、風邪かな~?」




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