では、第二十七話をどうぞ
Side鏡夜
「ふあ~もう朝か」
なんとなく目が覚めたので時計を見ると、時刻は五時程だった。
「そろそろ起きないとな」
俺は時計を見た後、体を起こそうとするが起きれなかった。何故だと思い掛け布団を見ると、腹の辺りが膨らんでいた。
「なんだ?」
膨らんでいる部分を捲ると、そこには体を小さくして寝ている、お嬢様達がいた。
「・・・どうしてこんなところに?」
疑問に思ったが、とりあえず朝飯の支度をしなければならないのでお嬢様達を起こすことにした。本当はこのままぐっすりと寝かせてあげたいんだけどね。
「お嬢様、お嬢様、起きてください」
俺はそっとお嬢様達の肩を揺さぶる。
「う、う~ん―――あれ、鏡夜だ。おはよう~」
「おはようございます。フランお嬢様」
まず、最初に起きたのはフランお嬢様だった。フランお嬢様はまだ眠いのか、瞼を擦りながら上体を起こした。
「鏡夜、おはよう」
「おはようございます。レミリアお嬢様」
今度はレミリアお嬢様が起きた。レミリアお嬢様は対照的に目をパッチリと開けて、こちらを見ていた。
「ふあ~で、どうしたの鏡夜?」
「あの~大変言いにくいんですが、そろそろ起きて、朝食の用意をしなければならないので、避けてもらえるとありがたいです」
俺がお嬢様達に言うと、お嬢様達は自分のいる場所を見た。
「あら、ごめんなさい。今避けるわね」
「ごめんね」
「こちらこそ、すみません」
お嬢様達は俺の上から避けると、ベットの上に座った。
「じゃあ、鏡夜、いつものして頂戴」
「いつもの?」
「いつもしてるじゃん、鏡夜~」
俺がいつものと言われ、首を捻っていると、お嬢様達はドンドン俺に近づいてきた。
「ま、まさか・・・」
「そうよ」
レミリアお嬢様が言った瞬間、お嬢様達は唇を突き出してきた。
「ええっと」
「お願い、早くして、鏡夜」
「!・・・分かりました」
俺が迷っていると、フランお嬢様が上目遣いで言ってきた。その瞬間、俺はすぐにお嬢様達にキスした。
「ん」
「ありがとう、鏡夜」
「いえいえ」
お嬢様達にキスすると、お嬢様達は笑顔でベットから降りた。
「さてフラン、まだ朝だけど起きましょうか」
「そうだね」
「まだ寝てていいですよ?」
「いいの、私達が起きたいと思ったから起きるのよ」
「そうそう」
そう言うと、お嬢様達は服を脱ぎ始めた。・・・って、なんで脱いでるの!?
「お、お嬢様!?」
「何? 鏡夜?」
「そ、その、なぜ服を脱いでいるのですか?」
「だって、寝巻じゃあ食堂にいないじゃない」
「いやいや、そのことでは無く」
「じゃあ、どのこと?」
お嬢様達は寝ぼけているのか、再び服を脱ぎ始めた。昨日はあんなに緊張してたのに、なんで朝になって普通に脱ごうとするの!?
「・・・いえ、なんでもないです!」
俺はもう諦めて、着替えを持って風呂場に駆け込んだ。
「? 変な鏡夜」
「だね~」
お嬢様達はそんなことを言っているが、おかしいのは貴方たちです。と、心の中でツッコミを入れつつ、いつもの執事服に着替えた。
「じゃあ、行きましょうか鏡夜」
「行こっか」
「そうですね、行きましょうか」
俺は若干疲れながらも、部屋から出た。
「・・・ああ、太陽がまぶしいわ」
「だね・・・」
部屋から出ると、お嬢様達が呟いた。ちなみに、お嬢様達は窓から一番遠いところを歩いている。
「我慢してください、もう少しでつきますから」
お嬢様達はそのまま、だるそうに歩いた。
「ほら、咲夜! 後、二周!」
「は・・・はい!」
「ん?」
窓の外から声がしたのでそちらを向くと、庭を走っている咲夜ちゃんと、応援している紅
美鈴がいた。
「頑張ってますね~」
「どうしたの?」
お嬢様達は窓の近くに行けないため、俺に聞いてくる。
「咲夜ちゃんが走って鍛えてるんです」
「そうなの」
「はい」
俺は咲夜ちゃんの方を見た後、食堂へと向かった。食堂についた俺とお嬢様達は、とりあえず中に入った。
「さて、さっさと用意しちゃうんで座っていてください」
「わかったわ」
そうして、俺はお嬢様達を椅子に座らせて、厨房へと向かって料理を始めた。
「ふ~さてっと、こんなものかな」
料理を作り始めてから、何分かが過ぎた。
「さて、皆そろそろ来るかな・・・」
俺が呟くと、食堂の方からパチュリー様と小悪魔の声が聞こえてきた。
「ふあ~おはよう・・・って、レミィ、フラン、速いわね」
「なんとなくね」
「そうなの」
「おはようございます。レミリアお嬢様、フランお嬢様」
「おはよう、小悪魔」
とりあえず、二人が来たので食堂に、料理を運び始めた。
「おはようございます。パチュリー様、小悪魔」
「あら、おはよう、鏡夜」
「おはよう、鏡夜」
俺はパチュリー様と小悪魔に挨拶して、料理を並べていく。
「相変わらず、美味しそうね」
「ありがとうございます」
再び厨房に行き、残っている料理を食堂に運んでいく。そして、全ての料理を運び終えて、椅子へと座った。
「カロと美鈴と咲夜は?」
「そろそろ、来ると思いますけど」
俺がそう言った瞬間、食堂の扉が開いた。
「つ、疲れました~」
「お疲れ~咲夜~」
「おはようございます。皆さん」
扉の向こうにはカロと美鈴、そして疲れきった咲夜ちゃんがいた。俺は咲夜ちゃんを手招きして、隣に座らせた。
「疲れました」
「お疲れ様、さあ、皆が揃ったので食べましょうか」
そうして、俺と皆は料理を食べ始めた。
「そうだ、パチュリー様、この食事の後図書館に行ってもいいですか?」
「いいけど・・・どうしたの?」
「ちょっと、調べ物がありまして」
「ふ~ん」
俺は前に戦った時に相手が使っていた、結界のことが気になっていた。
「まあ、別にいいわよ」
「ありがとうございます」
そんな、感じで食事終えて、一通りの仕事を終えた後、図書館へと向かった。
「失礼します」
俺は扉をノックして、中へと入った。
「いらっしゃい、で、何を調べるの?」
「えっとですね、結界関連なんですが、ありますか?」
「ちょっと待っててね。小悪魔――! 小悪魔―――!!!」
「はーい、どうしましたか?」
パチュリー様が叫ぶと、本棚の上を通って、小悪魔が現れた。
「鏡夜を結界関連の本の場所に連れて行って」
「分かりました・・・じゃあ行こっか、鏡夜着いてきて」
「わかった、ではパチュリー様、しばらく居させてもらいます」
「いいわよ」
そして、俺は小悪魔の後ろを歩いて追った。一、二分程歩いたところで、小悪魔が止まった。
「えっと、ここからここまでが結界関連の本のはず」
「ありがとう」
小悪魔のさした棚は、百冊以上の本が入っていた。
「これ全部でいいのかな?」
「うん」
そうして、俺は本の一冊を取って捲った。
「っと、その前に」
「どうしたの?」
「ちょっとね」
俺はそう言うと、自分の意思で覚えていられる限界をなくした。まあ、ここ千年の事は覚えてるんだけどね。
「さて、じゃあ小悪魔、俺はここで全部読むから仕事に戻っていいよ」
「うん、わかった。でも、ごめんね、手伝えなくて」
「別にいいさ」
そう言って、俺は小悪魔の頭を撫でた。・・・最近、これがデフォルトな気がする。
「じゃあ、また後でね」
「ああ、じゃあね」
俺は小悪魔が行ったのを確認して、ため息をついた。
「は~さて、お昼までには終わらせますか」
そうして、俺はさっき取った本の一冊を捲って読み始めた。
「クソ、見つからんかった」
一通り読んだのだが、後一冊のところで時間が来てしまった。
「早く飯食って、読むか」
俺は厨房についた瞬間、すぐさま料理を作って食堂に運んでいく。
「あら、先に来てたの?」
「ええ、用意がありますからね。パチュリー様」
一番最初に入ってきたのは、パチュリー様だった。俺はパチュリー様の椅子を引いて座らせた後、再び厨房に行き、料理を運び始めた。
「ふ~お腹すいたわね」
「そうだね」
お嬢様達が入って来ると、続々と皆が入ってきた。皆が入ってきたと同時に、俺は料理を運び終えた。
「じゃあ、食べましょうか」
そして、昼ごはんを食べ始めた。
「あった! これか」
あの後、食器を片付けて、一通り仕事を片付けて図書館で続きを読み始めた。そして、最後の本を読むとすぐに、目的の結界のことにつて書かれていた。
「え~と、なになに・・・マジかよ」
俺は書いてあったことについて、思わずそう呟いてしまった。
本にはこう書いてあった。
『結界:シュレディンガーの猫
この結界は事実上不可能とされている。この結界の効果は、生贄を用意して、その生贄に別世界の者を憑依させる(その際、憑依させたものが持っていたものも呼び出せる)というものだ。しかし、別世界というものが不確定なため、憑依させようにも、呼ぶこと自体がまず不可能なのである。しかも、憑依させる者は、術者がその相手のことをある程度知っていなければならないのだ。それゆえにもし、この結界が使えるとしたら、よほど異世界に詳しいものか天使か神くらいなものだろう』
俺はその本を静かに閉じ、記憶を探った。
「神様・・・いやまさか、あいつはその手下か?」
俺はとりあえず、結界のことについて知れた為、本を片付けてパチュリー様の居る所に戻った。
Sideパチュリー
「あら、探し物は見つかったの?」
私が机に乗っている本を読んでいると、結界の類の本の方から鏡夜が現れた。
「え、ええ見つかりました」
見つけたというのに、何故か鏡夜は暗い顔をしていた。
「どうしたの?」
「書いてあった内容が意外なものでして」
鏡夜はそう言うと、はあ~っと息を吐いた。私は鏡夜の調べていたものが気になったので聞いてみることにした。
「ふ~ん、そういえば何を探していたの?」
「シュレディンガーの猫という結界のことなんですけど・・・」
「ああ、あれ」
一度だけチラッと読んだが、私には無理だと悟った本だ。
「で、あの結界がどうしたの?」
「あの結界、昨日の奴が使っていたのですよ」
私は鏡夜の言葉を聞いた瞬間、驚いた。流石に生きている内にあの結界を使う者に会うとは思っていなかったからだ。
「そ、そうだったの!?」
「ええ」
鏡夜はそう言うと、紫が使っていた何かから紅茶とカップを取り、私の前に出した。
「貴方も使える?」
「はい、ただし紫ちゃんには内緒でお願いします」
私の前にカップを置いた鏡夜は、私の向かい側の椅子に座った。
「わかったわ」
そう言って、紅茶を一口飲む。
「あ! パチュリー様狡いです!」
紅茶を飲んだ瞬間、上から小悪魔が私が先程頼んだ本を持って、隣に降りてきた
「あら小悪魔、ありがとう」
「どういたしまして。鏡夜、私にも紅茶頂戴」
「はい」
小悪魔は紅茶を受け取ると、私の隣に椅子を持ってきて座った。
「そういえば鏡夜はいつまでここに居るの?」
「夕飯を作る時間までここでゆっくりしたいのですが、良いでしょうか?」
「いいわよ」
私はそう言うと、小悪魔が持ってきた本の一冊を取り出した。
「って、これは!」
「どうなさいました?」
「い、いえ、なんでもないわ!」
私はすぐさま先ほど取った本を、机の下に隠した。
「そ、それより鏡夜、何か面白い話はない?」
「面白い話ですか・・・」
私はなんとか誤魔化しながら言うと、鏡夜は考え出した。
「・・・面白い話ではなく、昔話でいいのなら少しだけしましょうか?」
「面白そうね、じゃあお願いするわ」
鏡夜は頷くと、昔話を始めてくれた。ちなみに、先ほど隠した本は、恋の魔法についての本だ。
次回は鏡夜君の昔話1です。ちなみに、天狗の話です。
それと、パチュリーさんの恋の魔法の本はR指定の本です・・・書きませんからね?
感想、批判、アドバイス、お待ちしております。