では、第二十五話をどうぞ
Side鏡夜
「じゃあ、早く来てね」
「はい、わかりました」
お嬢様達にキスされた後、俺は屋根から飛び降りて自分の部屋へと向かった。自分の部屋へと着いた俺は、服を脱いで軽く体を流した。
「ふ~しかし、お嬢様も話があるみたいだけど、なんなのだろうか?」
軽く体を流した俺は、服を着ながらそんな事を呟いた。
「・・・まあ、なんでもいいか」
俺はすぐさま考えるのをやめて、いつもの執事服に着替えた。
「さて、行きますか」
そう呟いた俺は、自分の部屋を出て、皆のいる部屋へと向かった。
「あ~鏡夜が来た~」
皆がいる部屋に入ると、カロが出迎えてくれた。俺は頭を下げて部屋へと入った。
俺が入ると、皆はお嬢様達の方へと集まって座り、俺はその対面へと座った。
「さて、鏡夜。私達の話と貴方の話どちらから話しましょうか?」
「私の話は長くなるかもしれませんので、皆さんの方からでお願いします」
「わかったわ」
俺がそう言うと、レミリアお嬢様はテーブルに両肘をつけて、真剣な表情になった。
「私達が聞きたいことは二つ。一つ目は、貴方は人間?」
俺はその質問に若干戸惑いながらもしっかりと答えた。
「私が思っている限りでは、人間のつもりです」
「そう―――じゃあ、もう一つの方を聞くわね」
お嬢様はそう言うと、俺の瞳をジッと見つめてきた。嘘はつかせない、と言う感じの瞳で。
「二つ目は・・・貴方の能力は何?」
正直に言うと、俺はこの質問に答えるかどうか迷った。別に答えてもいいのだが、どの能力を伝えればいいか迷ったからだ。
「別に、最初は霊力持ちの普通の人間だと思っていたわ。でも、今日の戦いを見て思ったの、唯の霊力持ちの人間が血を操って、腕を治すなんてことはできないって」
レミリアお嬢様はそこまで言うと、一息ついた。
「だからね、貴方は何かしらの能力を持っていると思ったのだけど・・・持っているの?」
俺はその言葉を聞いて、これは答えないといけないと思った。
「そうです、持っています」
「やっぱり持っていたのね、で、どんな能力?」
俺が能力を持っていることを言うと、皆が一斉に興味津々な目でこちらを見てきた。皆に見られてる為、ちょっとだけ気恥ずかしかったが、一応真剣な表情で答えた。
「・・・私の能力は、あらゆる限界を自分の意思でなくせる能力です」
俺がそう言うと、皆は固まっていた。数秒程でレミリアお嬢様は我に返っていた。
「・・・本当なの?」
「本当です」
「ち、ちなみに何をこれまでになくしてきたの?」
フランお嬢様がそう言ってきたので、これまでになくしてきた限界を思い出しながら言っていく。
「そうですね・・・まず――――」
とりあえず、俺が今までに無くしてきた限界を皆に話していくと、皆はまた固まってた。
ちなみにこれまで無くしてきたのは、身体能力の限界、暗闇で見える限界、視力の限界、魔力量と霊力量の限界、増える速度の限界、理解できる限界、加工できる限界etc思い出すのが面倒なくらいなくしていた。
「――――とまあ、こんなところですかね」
俺が一通り言い終わると、やっぱり皆は固まっていた。しかし、レミリアお嬢様は疑問に思ったことがあるのか、すぐに復活して質問してきた。
「で、でも鏡夜。私の能力を使っていたけどあれはどうやったの?」
「ああ、あれですか? あれは、理解できる限界をなくしたのです」
「どう言う事?」
「つまり、私に理解できないものはないのです。そこで、お嬢様の能力を見て、それを理解し、霊力や魔力を使用してお嬢様の能力を使ったまでです」
「な、成程」
レミリアお嬢様は納得したのか頷いていた。
「そういえば~思ったんだけど~」
「どうしたの? カロ」
俺がレミリアお嬢様に説明し終えると、カロが何故か顔を赤くしながら言ってきた。
「その~理解できる限界がないんだったら~私達の胸の大きさとかもわかるのかな~って~」
カロがそう言った瞬間、皆は一斉に胸を隠して俺の方を見てきた。皆が俺を見た瞬間、俺は即座に皆から視線を外した。
「・・・鏡夜、わかるの?」
レミリアお嬢様は顔を真っ赤にしながら聞いてくる。他の皆も同じように顔を真っ赤にしている。
「・・・・・・はい」
「~~~~~~!!!」
俺が答えると、皆は一斉に声にならない声を上げ、口をパクパクさせて何か言おうとしていた。
「でも、お嬢様達はいいではないですか! この前、私と一緒に風呂に入ろうとしたではないですか!」
「あ、あれと、これは別よ!」
「そ、そうよ!」
まあ、そこからは大変だったよ。皆を落ち着かせるのは。
「仕方ないから、まあ許すわよ。皆もそれでいい?」
皆は一斉に顔を真っ赤にしながらも頷いた。あの後、俺は必死に説得し、なんとか皆に認めてもらった。
もし、認めて貰えなかったら目を抉られていたかもしれない。・・・まあ多分しないと思うけど。
「すみません、皆さん」
「いいわよ、私達もその・・・鏡夜のあれを見たことあるし」
パチュリーさんの言葉に、今度は俺の顔が赤くなってしまった。顔が赤くなった俺と皆はお互いに無言になってしまった。
「じゃ、じゃあ、今度は鏡夜の大事な話を聞きましょう?」
「そ、そうですね」
レミリアお嬢様の言葉によって、俺と皆はいつもの感じに戻れた。顔はまだ赤いが。
「ゴホン、では、私から重大な話をさせていただきます」
俺は咳払いをして、真剣な表情になってから皆に話し始めた。
Sideレミリア
(ま、まさか胸の大きさを知られていたとは予想外だったわ)
鏡夜が私の胸の大きさを知っていると知ったとき、私は顔を真っ赤にしてしまった。
(別に知られてていいのだけれど、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。)
私はそんな事を考えつつ、別の話題に切り替えることにした。
「じゃ、じゃあ、今度は鏡夜の大事な話を聞きましょう?」
「そ、そうですね」
鏡夜は真っ赤にしていた顔を真剣な表情に戻しながら話し始めた。鏡夜の真剣な表情だったので、私達も真剣な表情になった。
「私が伝えたいことは一つだけです」
鏡夜は人差指を立てながらそう言った。
「まず、今回のことですが、敵の一人に逃げられてしまいました」
「そうね、別に気にはしてないわよ」
「それはありがとうございます・・・で、このまま、ここにいたらまた襲われる可能性があります」
「そうだね、でもまた鏡夜が守ってくれれば・・・」
フランがそう言うと、鏡夜は首を横に振った。
「いつも、私が守れるとは限りません」
「じゃあ、どうするの?」
私が聞くと、鏡夜は少し溜めた後、再び話始めた。
「・・・別世界に行きます」
「どう言う事!?」
鏡夜の言った突拍子もない言葉に、私は驚きながら返した。結界を常に張るとか、常に警戒するとかだと思っていたのだが、まさか別世界に行くと言われるとは思っていなかったからだ。
「順を追って説明させていただきます」
「お願いするわ」
「まず、お嬢様の考えたことでは常に結界を張るとかだと思います」
「え、ええ、その通りだわ」
私は考えていたことを当てられたので再び驚いた。
「それはそれでいい案なのですが、私しかできないという欠点があります」
「そこは、パチェに頼めば・・・」
「パチュリーさんは結界の類はあまり得意ではないのですよ」
「そうなの? パチェ」
「ええ、そうよ、レミィ」
私がパチェの方を見ながら聞くと、パチェは頷きながら答えた。
「そうだったの」
「そこで、まずこの案はできますが厳しいです」
「そうね」
「そこで、私は、だったら別世界に行けば奴も追っては来ないのではないかと考えたのです」
「成程ね、それで別世界に行くって結論になったのね」
「はい」
私は鏡夜の説明で納得したが、一つだけ問題があると思った。
「でも、鏡夜、別世界に行く宛が私達にはないわよ」
そう、別世界に行くという案は確かにいい。しかし、私達は別世界に行く宛などない。だが、鏡夜は行く宛があるのか、自信たっぷりに笑っていた。
「大丈夫です、行く宛ならあります」
「でも、その世界は危険じゃないの?」
今度はフランが質問するが、鏡夜はやはり自信たっぷりだった。
「大丈夫です、その世界は私の知り合いが作った世界ですから」
「そうなんだ・・・まあ、私は鏡夜と一緒だったらどこでもいいんだけどね」
フランの言葉に私は賛成だった。しかし、私はやはり少しだけ不安だった。
「心配しないでください、必ず皆さんは守りますから」
鏡夜は私の方を見ながらそう言ってきた。私は先程まであった不安が、鏡夜の言葉によってなくなっていた。
「・・・わかったわ、私は貴方を信じるわ」
「ありがとうございます」
「皆も鏡夜の案でいいかしら?」
私が皆に聞くと、皆は一斉に頷いた、私は皆が頷いたのを確認して、席を立った。
「よし、じゃあ、皆、早速荷物を纏めようかしら」
「あ、お嬢様」
「どうしたの?」
私が席を立って、早速荷物を纏めようとしたら、鏡夜が席を立って私達を止めた。
「いえ、荷物はまとめなくて構いません」
「何で?」
「この館ごと、別世界に行くからです」
「は?」
鏡夜は床を指差しながらそんな事を言った。私は訳が分からず、混乱していた。周りの皆を見ると、私と同様に混乱していた。
「どう言う事?」
「そのことについては、ある人から話してもらいます・・・っと、そういえばこれから来る人は私の知り合いで、さっき言ってた別世界を作った人です」
鏡夜はそう言うと、人の名前? らしきものを叫んだ。
「ゆーかーりーちゃーん」
「はーあーい」
「キャア~!」
どこからか、返事が帰ってきた瞬間、突如悲鳴とは思えない悲鳴がカロから聞こえていた。
「だ、誰あなた!?」
「初めまして」
カロの方を向くと、よくわからない何かから上半身を出した女性が、カロの胸を揉んでいた。
「紫~久しぶりだね~」
「はあい、カロ、久しぶり」
「や~紫ちゃん」
女性は何かから出ると、カロと鏡夜が手を上げて挨拶していた。
「えっと、二人は知り合いなの?」
「そうです、昔の修行仲間です・・・紫ちゃん、自己紹介お願いしてもいいかな」
「いいわよ」
女性は袖から、何かを取り出すと顔の前で広げ、圧倒的な迫力を放ちながら話始めた。
「初めまして、私は八雲紫、よろしく」
「え、ええ、初めまして私は・・・」
「ああ、大丈夫知ってるから」
女性こと紫はそう言って、私達を順に見ながら、名前を言った。
「小悪魔にパチュリー、紅美鈴、レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレット・・・で、あってるわよね」
「え、ええ、その通りよ」
「何で紫ちゃん知ってるの」
「だって、最初の頃見てたし」
「何してんの・・・まあ、いいけど」
紫は圧倒的な迫力を収めながら言った。
私は皆の名前が当てられたことよりも、最初の頃見ていたという所に引っかかった。
「最初の頃見てたって?」
「最初の頃は最初の頃、名前とか自己紹介の時よ、そこからは私は忙しかったし」
「それなら、良かったわ」
とりあえず、キスした場面とか見られていなかったのなら良かったと、私が安堵していると、鏡夜が話始めた。
「さて紫ちゃん、話があるんだけどいいかな」
「いいわ」
そこから、鏡夜はこれまでの事を話した。
「・・・って事なんだけど、大丈夫かな?」
「全然大丈夫よ・・・でも二つお願いがあるわ」
「何かな」
鏡夜がそう言うと、紫は怪しい微笑みを浮かべた。
「まず一つ目、私も準備やら何やらがあるから移動は一年後になるけどいいかしら」
紫がそう言うと、鏡夜は私の方を見てきた。私は頷いて、大丈夫だと伝えた。
「・・・多分一年ぐらいなら大丈夫」
「そう、じゃあ二つ目ね」
私は二つ目を聞いたとき、唖然とした。紫が言った二つ目の条件が意外な事だったからだ。
「あっちの世界に行ったら、貴方達に異変を起こしてもらうわ」
「どう言う事?」
「一から説明すると、あの世界には妖怪の方が力を持っていて、博麗の巫女っていうのがいるのだけど、その子一人が異変を解決している状況なの」
「ああ、あの子がやってるんだ」
鏡夜は博麗の巫女を知っているのか、頷いていた。
「でも、それじゃあダメなの。私の目指している世界はあくまで妖怪と人間が共存できる世界なのだから」
「で、それと私達が異変を起こすのにどう関係するの?」
私が聞くと、紫はこっちを見ながら話し始めた。
「そこで、私は考えたの。人間と妖怪、神様でもなんでもいいけど、とりあえず誰でも平等に戦える戦い方を考えたの」
紫はそう言うと、何かから一枚の真っ白い紙を取り出した。
「これは、スペルカード」
「スペルカード?」
「そう、このスペルカードに自分の好きな弾幕を思い描けばその通りの弾幕を撃てるわ」
紫は私達に一枚ずつ真っ白のカードを渡していく。とりあえず、私は自分の考えた弾幕を思い描いていく。すると・・・
「わっ!」
カードが光り輝くと、そこには私が先ほど思い描いた弾幕が描かれていた。
「へ~面白いわね」
「でしょう? まあ、とりあえずこれを広めるために貴方達に異変を起こしてほしいの、あっ、戦い方はあっちで教えるから」
「成程ね、それぐらいだったらいいわ」
私は面白そうだと思いながら、返事を返した。
「成程ね・・・でも、紫ちゃん、異変を起こすのを引き受けてもいいのだけど、少し時間をもらってもいいかな」
「どうしてかしら?」
紫が聞き返すと、鏡夜は咲夜を自分の前に連れてきた。
「この子を、戦えるように鍛えたいから」
鏡夜がそう言うと、紫はジッと咲夜を見つめた。
「へえ~貴方、面白い能力を持っているわね」
「えっと・・・」
「わかったわ、鏡夜、異変を起こすのは今すぐってわけでもないから、この子を鍛え終えたら異変を起して頂戴」
「わかったよ」
そこで、一通り話は終わり、私達は一息ついた。
「さて、これで話は終わりかな」
「そうね」
私と鏡夜がそう言うと、紫は笑顔で何かを開いた。
「じゃあ、私は戻るわね。何かあれば鏡夜を通して私に伝えて頂戴。それじゃあ、また一年後に会いましょう」
紫はそう言って、何かの中に入って行った。
「ふ~そういうことで皆さん、別世界に行くのは一年後になりました。その間、私がこの屋敷に結界を張りますのでご安心を」
「そう、よろしくね、鏡夜」
そうして、大事な話というのは終わった。
若干説明不足な感じがします。聞きたいことがあれば感想に書いてください
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