では、第十九話をどうぞ。
Side鏡夜
俺が幻想郷から帰ってきてから、結構な時間が経った。季節は冬になり、空は曇りだ。
そんなある日、朝ごはんを作ろうと食材を取りに行くと、ある問題が起きてしまった。
「そろそろ、食材が尽きてきたな」
そう、食材が随分と減ってきたてしまったのだ。
基本的に、紅魔館の食材の管理は俺がしている。その為、食材が減ってきたら俺が街まで買いに行くことにっているのだ。
「・・・まあ、お昼まではもつだろうから、お昼が過ぎたら買いに行くか」
俺は独り言を言いながら、数種類の食材を持って厨房に向かい朝ごはんを作り始めた。
「さて、皆さん来ましたか」
朝ごはんを作り終えた俺は、お嬢様達以外の皆を起こして食堂に集めた。
「よし、それじゃあ食べましょうか」
皆が揃ったのを確認して、俺と皆は料理を食べ始めた。そういえば、皆は服装はいつものなのだが、俺があげたプレゼントを皆付けていた。
「美鈴の料理も美味しかったけど、やっぱり鏡夜の料理が一番美味しいわ」
「そうですね~」
「鏡夜! おかわり!!」
「あっ、私にも頂戴」
「はいよ~」
そんな感じで、楽しく朝ごはんを食べ終えた。その後、一通り食器を片付けていつも通りに紅魔館の掃除やら皆の服の洗濯などをした。
そして、今度はお昼ごはんの時間がやって来た。
俺は残りの食材を全て使って料理を作った。全てを使ったけど、作れた料理は十品だった。
「そうだ、皆、このお昼を食べ終えたら買い物に行くんで何か買うものがあったら言ってください」
俺が一旦料理を食べるのをやめて言うと、皆はそれぞれが買ってきて欲しいものを次々と言ってきた。俺は皆の買ってきて欲しいものを次々と紙にまとめていく。
「・・・・・・成程、これで全部ですか?」
「ええ、お願いね」
「鏡夜~よろしく~」
「よろしくね」
「買ってきてね!」
そして再び、料理を食べ始めた。
その後、皆が使った食器を洗って、俺は自分の部屋に戻った。
部屋に戻った俺は、執事服を脱いでこの国に来て最初に買った服に着替える。
「さて、行きますかな」
俺は買ってきて欲しいものを書いた紙を持って、門に向かった。ちなみに、お金の方はスキマの中に入れて管理している。
門に着くと、美鈴とカロが門の前に立って門番をしていた。
「ん? 鏡夜、いくの?」
「ああ、行ってくるよ」
「気を付けてね~何か雪が降りそうだから~」
「わかった」
俺は二人に手を振って、街に向かって歩き始めた。
街に向かって数十分歩くと、ようやく街が見えてきた。
街は最初に来た時のように殺伐とはしてなく至って平和だった。
「ふ~さて、買い物を始めますか」
そう呟いてから、街の中にある食材屋に向かった。
「さて、こんなもんか」
一時間ちょっと食材を買い漁った俺は、ベンチに座って一休みしていた。ちなみに、買った食材は全てスキマに入れた。
「・・・そろそろ、買い物を再開しますか」
少し休憩した俺はベンチから立ち上がり、皆に頼まれたものを買うため色々な店を回り始めた。
「やべっ、遅くなった」
皆に頼まれたものの最後の品を買った俺は、店の外に出た。店の外に出ると、空は真っ暗で雪が降っており、地面にも少し積もっていた。
「早く帰んないとな」
そう呟いて、最後に買ったものをスキマに入れて歩き始めた。
「やばいな、早く帰って料理を作んないと・・・・・・ん?」
俺は通り過ぎてしまった路地裏に違和感を感じた為、少し戻り路地裏を見てみた。よく見るとそこには、子供の形に雪が積もっていた。
「!?」
俺はすぐさま駆け寄り雪を払う。すると、雪を払った中から女の子が現れた。俺はすぐさま抱き上げて、女の子の状態を確認する。
(衰弱して呼吸も弱いがちゃんとしている・・・それよりも、体温の低下が激しい!)
俺は女の子を抱き上げたまま、火の魔法を発動してゆっくりと温める。
(よし、これで体温の方は大丈夫・・・残るは栄養か)
俺は霊力の翼を出して空に飛び上がる。そして、曲げる能力で光を曲げて俺の姿を街の人から見えなくする。そして、今度は女の子に当たる風や雪などを当たらないように、能力を発動する。
「急げ急げ」
霊力の翼を勢いよく羽ばたかせて、紅魔館に向かう。数十秒程で紅魔館の門の前に着き、翼を消して地面に降りた。
「どうしたの鏡夜!?」
俺が地面に降りると同時に、美鈴がすぐさま紅魔館から出てきてくれた。
「美鈴、お願いがある! すぐにこの子の体を拭いて温めてあげてくれ!」
「その子がどうし・・・!? わかったわ!」
美鈴は女の子を受け取ると瞬時に理解して、紅魔館の中に走っていった。
俺は紅魔館の中に入って、厨房に向かう。厨房に着いた瞬間、すぐさまスキマを開いて今日買った食材を出す。そして、なるべく栄養を取りやすい食材を選んで、弱ってる子でも食べられるような料理を作っていく。
「よし、これでいいか」
「ここにいた~」
「カロ?」
料理を作り終えた俺が一息つくとカロが厨房に入ってきた。
「どうしたの?」
「美鈴が鏡夜を呼んで~って言ってたから呼びきた~」
「そうなんだ、教えてくれてありがとう。で、美鈴はどこにいるの?」
「鏡夜の部屋~」
「俺の部屋か・・・わかった」
俺はさっき作った料理を持って、カロと一緒に自分の部屋に向かう。部屋に着いた俺は、カロにドアを開けてもらって中に入った。
中に入ると俺のベットの横に椅子を置いて美鈴は座っていた。そして、ベットの上にはさっきの女の子が寝ていた。
俺は料理を机の上に置いて、
「具合の方は?」
「一応拭いて、温めてはいるけど・・・」
俺は女の子の額に手を置いて、熱を測る。さっきの冷たくなってた時よりは、幾分か普通の体温に戻ってきてる。
「・・・・・・大丈夫そうだね、後は栄養をしっかり取ればいいはず」
そう呟いた俺は、美鈴の隣に椅子を置いて座る。そして、美鈴やカロに女の子を連れてきた事情を説明してると、女の子はゆっくりと目を開いて上体を起こした。
「ここは・・・どこ・・・?」
「良かった、目が覚めたんだね」
「!?」
俺が女の子に声を掛けると、女の子はこちらを見て怯えだした。
「だ・・・誰・・・?」
「私は時成鏡夜、よろしく」
俺は女の子に自己紹介するが、女の子は怯えたままだった。俺は下手に女の子に近づけば更に怯えると考え、どうすればいいか分からずにいた。
「・・・・・・仕方ない、美鈴、カロ、後はお願いするね。女の子が落ち着いたらまた来るか」
俺が立ち上がると、女の子はビクッと驚き、また怯えてしまった。俺は女の子に頭を下げてから部屋の扉から廊下に出た。
Side女の子
「見て見て! お母さん!」
私は懐かしい夢を見ていた。私が捨てられる前、お父さんとお母さんと仲良くしてた夢を。
何故、私は捨てられてしまったのだろう?
唯、私はお母さんに褒められたかっただけなのに・・・
「どう・・・やったの?」
「普通にできたよ!」
「そ、そう・・・凄いわね」
私は皆の動きが止まったから、お母さんの目の前に、遠くにあったリンゴをを置いただけなのに・・・
お母さんに、褒められた夜。寝ていた私はトイレに行きたくなり起きてしまった。
「ねえ、貴方、聞いて頂戴」
「なんだ?」
(? なんだろう)
「実は・・・」
私はトイレに向かう途中、明るくなってた部屋があったので覗いてみた。そこには、お父さんとお母さんが真剣な表情で話していた。
「・・・今・・突・・・・の・・遠・・・・た・ン・・・を・・・・のよ」
「な・・・て?」
私はお父さんとお母さんと距離があった為うまく聞き取れなかった。
そこから、少しの間お父さんとお母さんは話し合っていた。そして、衝撃の言葉がお母さんお父さんの口から出た。
「あの子を捨てましょう」
「そうだな」
私はそのお言葉を聞いた瞬間、理解でき無かった。私はすぐに自分の部屋に戻って、すぐさま寝た。何かの聞き間違えだと思いながら。
どうしてこの時だけハッキリ聞こえてしまったのだろうか。聞こえなければ良かったのに・・・
そこからは最悪だった。お母さんからは無視し続けられて、お父さんからは、化物を見るような目で見られた。
そんなある日。私は久しぶりにお母さんに隣町に行こうと言われた。私はお母さんとお父さんとこの街に一緒に来て、気づいたら・・・・・・置いてかれた。
見知らぬ街で一人置いてかれた私は、街の中を彷徨った。この街に知り合いがいるわけでもなく、ましてや知ってる街でもない。
街を彷徨っていると、空から雪が降ってきた。私はどうすればいいか分からず更に街を彷徨い続けた。
しかし、体力が続かず彷徨っている最中に路地裏で倒れてしまった。
(ああ、私、お父さんとお母さんに捨てられてここで死ぬんだ)
そんな事を考えながら、私は雪が降ってる中目を瞑った。
(ん? ここは?)
私はゆっくりと目を覚ました。確か私は意識を無くす前、路地裏に倒れた筈なのだが、いつの間にかベットの上に寝ていた。
「ここは・・・どこ・・・?」
私はベットの温もりを感じながら、上体を起こして言った。
「良かった、目が覚めたんだね」
「!?」
声のした方を見ると、そこには見知らぬ男性と女性二人がいた。私は、見知らぬ男性がいたため怯えてしまう。
「だ・・・誰・・・?」
「私は時成鏡夜、よろしく」
男性は笑顔で言ってくるが、それでも私は怯えてしまう。
私が怯えていると、男性は悲しそうな顔をして立ち上がって、女性二人に何か言った後、部屋を出て行った。
「ここは・・・どこですか?」
「ここは紅魔館。貴方はこの雪の中、倒れていたところを鏡夜に助けられたのよ」
「そう・・・だったのですか」
助けた人に対して怯えてしまうとは・・・私はさっきの男性に、次にあったら謝ろうと思った。
「それで・・・」
<ぐう~~>
「・・・・・・」
「「・・・・・・」」
そして、次の質問をしようとした時、私のお腹が鳴ってしまった。その瞬間、私は赤面して俯いてしまう。
「す・・・すみません」
私が謝ると、女性の一人が笑っていた。
「ふふっ、よっぽどお腹が空いていたのね」
女性はそう言うと、机に置いていた料理を持って来てくれた。
「はい、どうぞ」
「いいんですか?」
「いいんだよ~貴方の為に鏡夜が作ったんだから」
「そう・・・なのですか」
そう言って、私は料理を一口食べた。
「・・・美味しい」
私はそのまま次々と料理を口の中に運んでいく。料理は食べやすく、そして物凄く美味しかった。
料理を食べ終えた私は、ふうっと息を吐いた。
「口の周りに付いてるよ~」
「あ・・・ありがとうございます」
女性の一人が私の口の周りを拭いくれた。
「よし、じゃあカロ。食器を鏡夜に持って行って」
「は~い」
女性の一人が私の食べ終えた食器を持って、部屋を出て行った。
そして、もう一人の女性は真剣な顔つきになった。
「・・・で、貴方はどうしてあんな事になってたの?」
「それは・・・」
そこから、何故あんな所で倒れていたのか説明すると女性は拳を握りしめていた。
「成程ね」
女性はそう言って部屋を出ていこうとする。
「あ、あの!」
「どうしたの?」
「どこに・・・行くのですか?」
「ちょっと、鏡夜の所にね」
「そうですか・・・それと、お名前を・・・教えてくれませんか」
「ん? ああ、そういえば言ってなかったっけ。私の名前は紅美鈴よ」
女性はそう言うと、部屋を出て行った。
一人部屋に残された私は、とりあえずベットに横になった。
(また・・・・・・一人だ・・・)
私はこの状況が、お父さんとお母さんに置いてかれたのと同じに感じた。
(・・・・・・寂しい・・・)
段々と一人が寂しくなってきた私は、泣きそうになる。
(・・・誰か・・・誰か・・・来て・・・)
私はとうとう、声を殺して泣き始めてしまった。
「・・・誰か・・・来て・・・一人は寂しいよ」
そして、泣き始めて数分、或いは数十分経った時、部屋の扉が開いた。
開いた扉の向こう側には、さっきの男性・・・鏡夜さんが立っていた。
Side鏡夜
女の子と別れた後、俺は厨房に戻って夜ご飯を作っていた。
「大丈夫だろうか」
料理の大半が完成したとき、厨房の扉が開いた。扉の向こうには、食器を持ったカロが立っていた。
「どうしたの? カロ」
「女の子が料理を食べてくれたからね~その後片付け~」
「・・・そっか、食べてくれたか」
「美味しいって言ってたよ~」
「それは、良かった」
カロが持ってきた食器を受け取り、洗い始める。食器を洗っていると、また厨房の扉が開いた。
「・・・どうしたの? 美鈴」
厨房の扉の向こう側には、神妙な顔をした美鈴がいた。
「・・・鏡夜、あの女の子の事で話がるの・・・カロも一緒に聞いて頂戴」
「・・・・・・あの女の子がどうしたの?」
「うん、実はね・・・」
そして、俺は美鈴から女の子が、何故あんな事になっていたのか聞いた。
「・・・そんな事があったのか・・・」
その話を聞いた俺は、厨房の扉に向かった。
「鏡夜、どこに行くの?」
「女の子の所」
そう言って、俺は厨房を出た。
女の子のいる部屋の着いた俺は、ドアノブに手をかけ開けようとした瞬間・・・
「・・・・・・誰か・・・来て・・・一人は寂しいよ」
女の子の声が聞こえた。俺は胸が締め付けられるような感覚に襲われながら、そっと扉を開けた。
扉を開けて中に入ると、女の子が目を真っ赤にして泣いていた。
「鏡夜・・・さん?」
「ごめんね、一人にして」
女の子が俺の名前を呼んだことに少し驚きながら、笑顔で答えた。
「べ・・・別に・・・大丈夫です・・・それと、さっきはすみませんでした」
「いいよ、別に慣れてるからね」
女の子は必死に袖で涙を拭いながら言った。そんな女の子の姿を見た俺は、再び胸が締め付けられるような感覚に襲われながら、ベットの横に椅子を持ってきて座った。
「・・・話・・・美鈴から聞いたよ」
「そう・・・ですか」
俺がそう言うと、女の子は俯いてしまった。
「その・・・大丈夫かい?」
「大丈夫・・・ですよ」
女の子は俯いたまま、再び涙を流してしまった。
「別に・・・大丈夫・・・ですよ」
「無理しなくていいんだよ・・・泣きたいなら、泣いていいんだよ」
俺が女の子にそう言うと、女の子は段々と声を出して泣き始めた。
「う、うわぁぁぁぁあああああん!!!!」
俺がそう言うと、女の子は俺に抱きついてきて大声で泣き始めた。
「よしよし、大変だったね」
俺は女の子が泣き止むまで、そっと背中を撫で続けた。
どうでしたでしょうか?
今回の独自設定で聞きたいことがあれば感想に書いてください。
感想、誤字報告、お待ちしております。