ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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遅れてすみません、クロス・アラベルでございます。
何度か書き直していたら、かなり時間が経ってしまった…
タイトルは直訳すると『命運をかけた戦い』です。FGOやってる人ならよく見るものですね〜
今回のは自論というか、結構無理矢理なところがあります。最後の最後にして、ちょっとやらかしたかな〜…と思う所存です。ただ、この展開に関してはもうこのssを投稿し始めた時から決めていたので、貫き通すことにしました。
では、本編どうぞ〜


《Fatal Battle》

 

 

 

「_____おおおッ!!」

 

「____」

 

剣を振るう。

速さは、先程よりも増している。

先程の一件で頭が冷めた。

より冷静に、もう、彼は心で負けることは無い。

愛する人に、あんな事をさせてしまったのだ。

____誓いは破らない。

 

愛する人の想いを胸に、ひたすらに二振りの剣を振るい続ける。

しかし___

 

「______君は、冷静でいると思っているようだが…そうとは言えない」

 

「____ッ!!」

 

無慈悲に告げるヒースクリフ。

そう、冷静に努めようとしているキリトだが、その反面、冷静ではない。

刀身が半ばから折れた剣を使うなど、言語道断。

 

「_____君は確かに、吹っ切れただろうが…状況が悪い」

 

「ぐ____!!」

 

キリトの利点____圧倒的手数は、折れてしまったダークリパルサーによって帳消しになっている。

リーチは半分以下。

本来の手数は潰れている。

これでは、戦いにく過ぎる。

 

確かに_____これは、負け戦だった。

 

 

「ふッ______!!」

 

「____うッ!?」

 

攻守はいつしか替わり、キリトが防戦一方となる。

ダークリパルサーの刀身が健在であったなら____もしかしたかもしれない。

だが_____この状況は覆らない。

 

「ちィ_____!!」

 

後ろに飛びずさって、距離をとる。

麻痺して倒れ込んでいるユージオ達の元へギリギリまで下がった。

このままの勢いに呑まれれば、確実に負ける。

しかし、ヒースクリフはそれを許さない。

 

「_____逃すものか…!!」

 

動かぬ巌(ヒースクリフ)が______攻めに転ずる。

本来ならここが攻め時なのかもしれない。

武器がまともでは無いが故に、攻めきれない。

 

勝ち筋は_____無い。

その事実に思わず苦虫を噛み潰したような表情になるキリト。

負けることは無いと、確信するヒースクリフ。彼はキリトを追い詰めようと剣を振り上げた。

 

 

 

 

その時だった。

 

キリトの目の前に、システムウィンドウが突如現れたのは。

 

「_____!?」

 

「_____!!」

 

予想出来なかったその障害物にヒースクリフは_______咄嗟に縦を構えながら後方へと回避行動をとっていた。

 

ヒースクリフは、ただのシステムウィンドウに回避行動をとるような馬鹿ではなかった。

 

むしろ、システムウィンドウが出てもそのまま斬撃を繰り出すだろう。

ヒースクリフは、キリトに最大限の注意を払っていた。何せ、例の決闘でも負ける寸前までいったのだ。警戒しない訳が無い。だからこそ、ヒースクリフは彼の一挙手一投足を異常な程警戒していた。

キリトもユージオと同じくイレギュラーなプレイヤーだ。どんな策を練ってくるか、ヒースクリフの予想を上回る何かがあるかもしれない。だからこそ、どんなプレイヤーにも感じることのない、プレッシャーを彼は感じていた。

 

普通、決闘の最中にシステムウィンドウなど出ない。当たり前だ。

どんな決闘だって、メッセージなどのシステム介入はストップする。彼自身がそう設定したのだ。

戦いに邪魔が入らぬように、と考えての事だった。フェアであろうとするヒースクリフらしい思考だ。

しかし、彼は無意識の中で思い込んでいた。

これは誰の邪魔も入らぬ、聖戦だと。

何せ、周りのプレイヤー達は全員麻痺状態。

先程は邪魔が入ったが、それも例外中の例外。

これがデュエルなら______確実に邪魔等入る隙もない。

 

だが_______これは()()()()()()

システム上のデュエルではなく、ただの殺し合いなのだ。

メッセージを送られればシステムウィンドウが出るし、アラートも鳴る。

 

ヒースクリフのミス。

壁役(タンク)としての守りの癖、キリトに払っている注意と最大限に警戒していたその意識が_____ヒースクリフには有り得ない、ミスを生み出した。

 

「____っ(私は一体何を……!!今すぐにトドメを刺さなければならないと言うのに!)」

 

即座に前へと突撃するヒースクリフ。

 

「___ああ」

 

彼は、過ちに誤ちを重ねる男ではない。即座に取り返そうと攻撃をしようとして_____

しかし、キリトの右手が雷の如く素早くウィンドウを操作する。ウィンドウに触れる事、四度。

二度目のタップで左手の折れた剣(ダークリパルサー)が消え、4度目のタップでキリトの背中に何かが現れる。

その背中に現れた剣をキリトは左手で掴んで、鞘から勢いよく引き抜いた。

 

 

「_______なっ!?」

 

斬撃はキリトに届かない。

ヒースクリフの一撃は止められた。

 

 

 

 

 

_____()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「_______ふッ!!」

 

押し返される。

予想外の攻撃に驚愕しながらも咄嗟に後ろへと飛びずさるヒースクリフ。

 

「それは_____!!」

 

そして、キリトの携えるもう一振りの剣を見て目を見開く。

 

「_______」

 

 

 

キリトが左手に持っていたの______ユージオの愛剣(アルマス)だった。

 

 

 

「まさか、あのシステムウィンドウは…!」

 

「ああ、()()()()()()さ。俺のダークリパルサーと交換しろって____ユージオがこの土壇場で仕掛けてくれた。」

 

あの瞬間______キリトが後ろへと跳んだ時。

倒れ込むユージオ達に近づいたのをチャンスと捉え、ユージオが咄嗟にトレードを仕掛けたのだ。

元より、ユージオはその気だったのか。既にメニューウィンドウをトレード画面にし、あとは送信するだけにしていたようだった。麻痺状態でありながらも、かなり時間をかけて待機していたようだ。

 

SAOにおける《トレードシステム》には2つのルールがある。

当たり前だが、トレード可能区域は圏内である事。そして、周りにモンスターが居ないこと。だが、これには抜け穴があった。

2()m()()()

2m以内であれば圏外でもトレードは可能になる。

そして、このボス部屋ではモンスターなど湧くはずが無い。何せ、この部屋の主は攻略組が倒してしまったのだから。

 

元より2つ目の条件は満たされていたが、1つ目の条件は難しかった。何せキリトはユージオ達に被害が及ばぬようにと遠ざかっていたからだ。

キリトが後ろへと飛び退いた時、偶然にも一つ目の条件を満たしていたのだ。

 

まさに奇跡。

 

 

「_____これで、五分五分(イーブン)というわけか」

 

「________」

 

キリトは無言で二振りの剣を構える。

 

その眼に映るのは、倒すべき敵。

見据えるのは、勝利をもたらす一手。

 

「______行くぞ」

 

「_____来たまえ、キリト君」

 

研ぎ澄まされる五感。

 

再び______三度目の真剣勝負が幕を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「_______ッ!!」

 

「シッ_____!!」

 

激しい金属同士の衝突音。

薄暗いボス部屋で散る火花。

 

翻る黒い影、宙を駆ける黒白の対を成す2つの星。

 

真正面からそれを受ける紅い十字架。

先程とは比べ物にならない剣戟だった。

 

ヒースクリフは息を呑む。

先程の戦闘で見せた速さ、それを遥かに超えた神速の斬撃。それがヒースクリフの盾を超えんとし唸りを上げ、加速していく。

 

「ぬ、ぅ______!!(まだ、加速するか____!?)」

 

彼の予想の上を行くキリトの剣は未だ、加速し続ける。一撃の重さを先程とは比べ物にならない。

その速さに______ヒースクリフの盾は防ぐだけで精一杯となっていた。

 

 

 

キリトは、負けることは出来ない。

いや、負けられないし、負けたくない。

 

攻略組として、プレイヤーとして_____一人の剣士として。

 

背負うものは、アインクラッドにいるプレイヤー達の願い、攻略組の信頼____何よりも親友の激励と愛する人の想い。

 

《殺意》ではない。

 

純粋な勝利への《渇望》を胸に、キリトは駆ける。

 

 

 

 

 

「______おおおおおおッ!!」

 

勝負だ、ヒースクリフ。

俺はここで______アンタを超える!!

 

 

苛烈になっていく剣戟。

ヒースクリフに反撃の余地を与えぬ連撃。

 

確かに_____真の魔王(ヒースクリフ)を追い詰める。

 

「___おおッ!!」

 

「ッ!!」

ここでついに動かぬ巖のような彼が、反撃に出る。

十字の盾を前に押し返し、この現状を打破しようと攻撃に回る。

それを___キリトは逃さない。

 

押し返され、後ろへと下がった直後、再びヒースクリフへと走る。

キリトはその十字盾を____踏み台にし、前宙の要領でヒースクリフの頭上へと跳ぶ。

 

「___ふッ!!」

ヒースクリフはすかさず剣で刺突するも、左手に持つユージオの剣(アルマス)の回転斬りに弾かれた。

回転そのままに後ろへ回り、右手のエリュシデータの斬撃を食らうヒースクリフ。

 

「ぐ___!!」

着地後の隙も作ることなくヒースクリフに再び斬撃の嵐を叩きつける。

 

一撃一撃の重さは、先程とは全く違う。キリトの攻撃の一つ一つが、ヒースクリフの守りを崩しうる威力を持っていた。

特に_____ユージオの愛剣(アルマス)の一撃が重い。

 

盾による防御(ガード)は何も盾を前に掲げていればいいという話ではない。

攻撃の瞬間____盾と攻撃がぶつかるその一瞬に力を込めしっかりと防がなければならない。

完全に防ぎ切る、相手の攻撃を弾き返す技術を《完全防御(ジャストガード)》と呼ぶ。

ジャストガードによって盾装備者の防御時の反動による少量のダメージを最低限まで減らすことが可能だ。

しかし____キリトの予想以上の加速にヒースクリフは少しずつ、そのジャストガードが追いつかなくなってきていた。

駆け引き(ブラフ)》だけではない。

キリトの攻撃によってヒースクリフの防御が剥がれてきている。

 

そして________限界が訪れる。

 

「ぐ、ぉ______!!」

 

ヒースクリフの十字盾が弾かれ、正面からヒースクリフの身体が見えた。

 

「____おおおおおおおッ!!!!」

 

瞬間、ここぞとばかりに追撃を開始する。

今まで封じてきたもの______ソードスキルを解放した。

ヒースクリフの体勢が崩れたのは一瞬だ。しかし、確かな好機。その一瞬の隙に、斬撃を滑り込ませる。それが出来なくても、その守りを超高速の連撃で引っ剥がす。

 

《二刀流》スキル、上位スキル《スターバースト・ストリーム》。

 

斬撃は流星群の如く、ヒースクリフに襲いかかる_____!!

 

「_____ふッ!?」

 

しかし、ヒースクリフも反応してのけた。

即座に盾を正面へと直すが_____ジャストガードする程の余裕がない。

 

キリトによって最大までブーストされた斬撃がジャストガードのままならないヒースクリフの盾へと殺到する。

 

一撃目から五撃目まではギリギリ防ぐ。

六撃目から、盾が斬撃の重さに耐えられず、あちこちへブレる。

 

そして____

 

「____ッ!?」

遂に、最硬の防御を突破した。

盾を弾き飛ばし、ヒースクリフへと肉薄する。

 

最後の足掻きに剣で防ごうとするも、10撃目の斬撃で弾き返された。

 

がら空きになったヒースクリフの身体に____連撃を叩き込む。

 

11、12、13、14撃。

15撃目のエリュシデータによる突攻撃。

ヒースクリフのHPゲージは_____危険域(レッドゾーン)へ。

 

「_____ぬぅうううんッ!!」

 

ヒースクリフも反撃の手を休めない。今まで聞いたことの無い雄叫びと共に弾かれかけた剣でキリトの首元へと一撃を加えようと、剣を振るう。

 

しかし_____キリトの方が速かった。

 

「まだだァ_____!!」

 

16連撃目、最後の一撃。

 

ユージオの愛剣(アルマス)の一撃が、ヒースクリフの左胸を貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『___________』』』

 

ここまで、ずっと麻痺状態ながらも声を張り上げて応援してきた攻略組達の声が止む。

 

最後の一撃が、ヒースクリフを貫いた。

10分の1しか残っていなかった紅いHPゲージは、減り続け_____

 

ピタリ、と。

後ほんの数ドットを残して止まった。

 

「_____ッ!!」

キリトはそれを見てヒースクリフから剣を抜き、一度下がろうとした時、ヒースクリフの持っていた剣が、するりと彼の手を離れて床に落ちた。

ガラン、と金属が落ちる音がボス部屋に響き渡る。

 

「_____本当に、負けてしまうとはね」

 

悔しそうな声が零れる。

そしてヒースクリフは後ろへと二歩下がり、自らアルマスを体から引き抜いた。

 

 

 

 

 

「おめでとう、キリト君_________君の勝ちだ」

 

 

 

 

 

 

そう言ってヒースクリフは盾を手放し______残り数ドットのHPゲージを消して、無数のポリゴン片となって爆散した。

 

 

 

「_________」

 

ヒースクリフの最期の言葉。

キリトは遅れながらもそれが正真正銘の賛辞である事を理解した。

 

 

 

 

ヒースクリフが消えて10秒程経った時、ボス部屋中に大きな鐘の音が鳴り響いた。

攻略組達にとってこれは_____どこかで聞いた覚えがあったものだった。

 

 

荘厳な鐘の音。

このデスゲームの始まりの日。その日に鳴り響いた音に酷似していた。

 

始まりの鐘の音。

 

全員が身構える中、女性の声が響いた。

 

 

 

『____現在、全プレイヤーのHPゲージは最大値で固定されました』

 

 

聞いたことの無いアナウンス。

このデスゲームでこのようなアナウンスなど1度もなかったが故に全員に緊張が走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『2024年6月12日水曜日、現在時刻13時29分、ラストボスの討伐を確認______アインクラッドはクリアされました』

 

 

 

 

 

 

 

 

沈黙。

 

たった今聞こえた言葉が事実なのかどうか、それが信じられなくて。

全員が声を出すことが出来なかった。

 

しかし、誰かが気付く。

減りに減っていた筈の自身とパーティメンバー達のHPゲージが全回復している事に。全員を苦しめていた、麻痺状態も消えている。

 

 

『____やった』

 

攻略組の誰の声だったか。

 

たった一言。

自分達が成し遂げたこの事実(ゲームクリア)に思わず零れた。

それを合図だった。

 

 

 

 

『クリアだぁ______!!!!』

 

 

 

 

大歓声がボス部屋に響き渡った。

 

喜びのあまり泣き出してしまう者や半狂乱になってはしゃぎだす者、静かに涙を流しながらへたり込む者、先程まで共に戦っていた仲間と抱き合う者…三者三様の喜び。

 

そして、一部の者______主に、キリトと特に親しかった者達はキリトの元へと駆け出した。

 

 




後、4〜5話でフィナーレを迎えます。
ここまで4年…長かった
次回は近いうちに投稿出来ると思います。実を言うと、次話はもう勢い余って描き始めてました。

映画プログレッシブ、しっかり見てきました。進化しましたね、SAO。感想書くと1万字行くかもしれないので、遠慮しましょう()
まだ見てない人は是非、ご覧下さい。若かれし頃のキリト君、可愛いですよ!

ハロウィンロニエは当てた。しかも初回で(( ドヤァ
ジャックも水着の反動か、10連で2人も来てくれました。水着ジャンヌは来ませんでしたが。
ここからガチャ禁だぁ

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