ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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お待たせいたしました、クロス・アラベルです。
今回はボス戦前の休憩になります(作者にとっての)
次回とその次から本格的なボス戦になる予定です。



Second Quarter Point(第二の1/4)

 

 

 

 

「偵察部隊が、全滅…!?」

 

75層の主街区、そのとある広場にやってきたユージオとティーゼ。二人に告げられたのは、先遣隊としてボス部屋に入ったパーティが全滅____帰ってこなかったという衝撃的事実だった。

 

75層のマッピング自体は時間はかかったものの犠牲者無しでボス部屋まで辿り着くことが出来た。しかし、今回のボスはクォーターポイント。圧倒的なまでに強いボスモンスターが待ち構えていることは目に見えている。

故に攻略組は2パーティの偵察部隊を送り込むことを決めた。

 

偵察は慎重を期して行われた。十人が後衛としてボス部屋入り口で待機し、最初の十人が部屋の中央に到達して、ボスが出現した瞬間、入り口の扉が閉じてしまった。その後衛として扉の前で待機していた10人によると、扉は五分以上開かなかった。鍵開けスキルや直接の打撃等何をしても無駄だったらしく、ようやく扉が開いた時には_____ボス部屋には何も無かったのだという。入ったハズの10人も、ボスの姿さえも消えていた。

 

後に生命の碑でその10人の死亡が確認された。

 

「…じゃあ、その10人はボスに殺された……と考えざるを得ない、ね」

「____それに、転移もしてないことを考えると…」

「うん、これからのボスモンスターとの戦いは常に結晶アイテムが使えないって想定しておいた方がいいかも」

「ああ、今回もキツイのを覚悟しておかないとな」

と2人で会話していると、

「____あ、キリトとユージオだ!」

聞きなれた声が。

 

「___あ、ユウキ。ランも…久しぶりだね。最近一緒にダンジョンに行けてなかったから…」

「コンディションはどうですか?」

「うん、問題無いよ。ランこそ、どう?」

「いつでも行けますよ」

「ボクも、いつでも戦えるよ!」

ユウキとラン。彼女達も攻略組で、最近はあまりパーティを組んでいなかったため、ご無沙汰だった。

 

「キリトさん、ユージオさん。今回もよろしくお願いしますね」

「ん、ネズハか。よろしくな、君のチャクラムは攻略組の主力だ。今回も頼むぜ?」

「はい。しっかり援護させていただきます」

そして、《レジェンドブレイブス》のネズハも一緒だ。勿論、ギルドメンバーも来ている。

ネズハは攻略組の中でも唯一の遠距離攻撃が可能なチャクラム使い。彼こそがこのボス攻略の要だ。

 

「キリト、ユージオ!今回も気張っていこうぜ!」

「…さて、今回のボス戦でしっかり稼いでおかないとな」

「クライン、エギル…今回もよろしくね」

「おう!」

「任せときな」

いつものメンバー、クラインとエギルも来ていた。

武者鎧に身を包んだクラインは意気揚々とユージオとキリトと肩を組み、エギルは両手斧を肩に担いでやってくる。

 

「___キリト、ユージオ。久しぶりだな」

「あ、ケイタ。気分はどう?」

「いつでも戦える。皆も準備万端さ」

「キリト、ユージオ!もう来てたんだ。久しぶりだね」

「___久しぶり、サチ」

「新婚生活は楽しめた?」

「ああ、楽しめたよ」

《月夜の黒猫団》も集まっていた。

 

あのダンジョントラップで死にかけた一件から、レベリングを続け、攻略組の仲間入りを果たした。

今では攻略組の中でもかなりハイレベルなギルドだった。残念ながらギルドメンバーはあれから増えなかったようだが、それでも気の置けない仲間達と一緒に仲良くやっているようだ。

 

 

 

「さて、皆!今回も集まってくれてありがとう!!今回のボス攻略の指揮を務めるディアベルだ!」

すると広場の中央でディアベルが大きな声で号令をかける。

「今回は___いつものメンツが集まってくれて嬉しい。新婚夫婦まで来てもらうのは心が痛むが……」

「いいよ、ディアベル。ボス戦を新婚だから、なんて理由で欠席するのは流石の俺でもしないさ。問題なく続けてくれ!」

 

「___と、言う事で続けさせてもらおう。今回は75層のボス攻略だ。皆もわかっている通り、25、50層と並んでより危険な戦いになる。クォーターポイントは通常よりも激しい戦いになるだろう。その証に、先日派遣した偵察部隊…そのうちの半分、ボス部屋に入ったパーティが全滅した!」

ざわざわと騒がしくなる広場。

話に聞いていたとはいえ、やはり信じたくないというのが皆の思いだろう。

 

「今まで以上に苦しい戦いだろうが、皆_____頑張ろう!!」

 

ディアベルの掛け声に全員が「おう!!」と返事をする。

「えー……ちょっとディアベルはんと変わるけど、皆許してや。キバオウや!今回のボス戦の前に言うておきたいことがある!」

するとディアベルに変わってキバオウが中央に出てきた。

 

「10日前程から起こってた《オプリチニク暴走》の件についてや!皆、各々の層のパトロールホンマありがとう!!みんなのパトロールのおかげでアイツらの暴動も収まってきた!逮捕者は78人や!始まりの街とか、色んな町で暮らしてるプレイヤー達が皆に礼を言うといて欲しいって言ってたわ!!ホンマ、ありがとう!!」

頭を下げて礼を言うキバオウに皆が拍手を送る。

 

「何言ってんだ、キバオウさん。このパトロールをしだしたのはアンタじゃねぇか。俺たちはそれに賛同して勝手に手伝っただけさ。礼を言うのは俺たちだぜ」

エギルが笑顔でキバオウに礼を言う。

それもその筈、このパトロールはキバオウが言い出したことだった。

始まりの街を重点的にパトロールしているキバオウを見て、攻略組の皆も自然に参加するようになり、その後、当番制に切り替わった。

 

「水クセェぜ、キバオウさんよ。俺たちだってこのアインクラッドにいる奴らみんなを解放するために戦ってんだ。守るのだって同然だろう?」

「……エギルはん、クラインはん……ありがとう、ホンマ…ありがとうやで…!!」

 

 

 

 

 

「今回のボス戦は、オレ___ディアベルが指揮をさせてもらう!前回、ヒースクリフさんに担当してもらったからな」

血盟騎士団のヒースクリフと青の騎士団のディアベル。この二人が主に指揮をしている。

前回____74層はキリトたちが倒してしまったが____はヒースクリフが担当していたので今回はディアベルの番だ。

 

「それでは、今回の攻略について______」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「_____ここが、正念場…だ」

攻略直前の作戦会議が終わり、各々が武器の最終整備やポーションなどの回復アイテムの最終チェックを行う中、ユージオはティーゼとロニエ、ユウキとランに広場の端っこへ集まってもらい、とある話をすることにした。

 

「…うん、クォーターポイントだもんね!まだ25層あるんだし、ここで止まる訳には___」

「違うんだ、ユウキ。……前にも言ったけど、僕の頭痛…《未来のキリトの記憶(追憶)》については覚えてるかな?」

「えーっと……うん、大体覚えてるよ。キリトの経験した記憶、その一部を見てしまうっていうあれだよね」

「うん、そうなんだけど…」

「____もしかして、見たんですか?ユージオさん」

皆_____時を超えてきた者達(ユウキ達)はユージオの頭痛(キリトの記憶)について既に知っている。

 

「うん、手っ取り早く言うとね。かなり激しい戦いだったみたいで、犠牲も出ていた……全部を見れた訳じゃない、断片的なものだったけど、見られたんだ」

「あー……確か、アスナに一度聞いたことがある気がするなぁ………確か、10人以上犠牲者が出たけど、一応倒したって言ってたね」

「そう、なんだ……今回も断片的な記憶(もの)しか見てないから詳しい所までは分からないんだよね。ありがとう、ユウキ」

「でもボクだってそんなに詳しく知ってる訳じゃないから、頼りにし過ぎない方がいいよ!」

「使える情報は使っていきたいんだ…………それで、今回見たのは____ボスとの戦いの、一部だった」

「ユージオ、そのボスの容姿とかは……?」

ティーゼが恐る恐る聞いてきた。

「____なんて言うんだろうね、蜘蛛…じゃない、あれは…えっと……足が沢山あって、確か、修剣学院の図書館で読んだことがある……そう、キリトが毒について調べてた時に…………………あ、《サソリ》だ」

ユージオが言い淀む。

 

何せ、ユージオにとって、サソリは図鑑の中でしか見たことが無い生き物だ。アンダーワールドの中でも砂漠は南帝国の領土でしか見られないので、北帝国で暮らすユージオにとって、見慣れないものだった。

 

「サソリ、かぁ……って言うことはダメージ毒はありそうだね」

「いや、サソリっぽいだけで、体は骨だけだった。ハサミも無いし、その代わりに大鎌みたいな鋭い前足があったよ」

「骨の、サソリ…」

「身体中鋭そうだったから、もしかすると身体全体に攻撃判定があるかもだね」

「うわぁ……厄介そう…」

「犠牲者が10人以上出ているのなら、やはり今回も苦戦するでしょうね」

 

「うん、だから……皆も気を付けて」

ユージオはここにいる三人____ロニエはほかの人たちにこの会話を聞かれないようにキリトの横についている_____に真剣な表情でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「では回廊結晶を使用し、ゲートを開く!!みんな、遅れるなよ!!」

ディアベルの呼び声に、各々が返事を返した。

 

本来ならば、あの黒い柱のような迷宮区を一〜二時間かけてボス部屋へと向かうのだが、今回は別だ。

 

開かれるゲート。予め、偵察部隊の後衛が回廊結晶のゲート先を設定しておいたので、ダンジョンは一気にカット出来る。

あのゲートをくぐれば、ボス部屋への扉が待ち受けているはずだ。

攻略組がゲートへと入っていく。

ユージオ達もゲートをくぐり、75層迷宮区、その最上階___ボス部屋への扉の前へとたどり着いた。

 

「みんな!今回も手強いだろうが_____全員の生還を目標とする!!犠牲者は絶対に出さない!全員生きて____勝つぞ!!!!」

 

『『『おおおおおおおおおおおお_______!!!!!』』』

攻略組は雄叫びを上げながら、皆が各々の武器を構えた。

そして_____

 

_____絶望への扉は、開かれた。

 

 

 

 


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