ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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比較的早めに投稿出来ました、クロス・アラベルです。
今回は、お察しの通りになります。
次回も早めに投稿できるように、頑張ります(`・ω・´)キリッ
では、本編へどぞ〜( ◜ω◝ )


狂気はすぐそこに

 

 

 

 

キリトとロニエが血盟騎士団に加入した翌日。

 

「………」

「………」

 

キリトは実に気まずい状況にあった。

74層のとあるフィールドダンジョン。そこにキリトは来ていた。血盟騎士団の幹部の1人の管轄に入った_____というより入れられたキリトはその幹部の男に連れられて来た。

 

『攻略組きっての実力者だというのは分かっている。だが、私が直接見なければ話にならん!危機対応能力も見ておきたいから、諸君らの結晶アイテムは全て預からせてもらう』

 

との事。

アスナがそんなことする必要はないと猛反対したが、事は変わらず。

キリトからすれば別にどうと言うことはなかった。『郷に入っては郷に従え』と言う奴だ。確かに結晶アイテムを全没収には少し思う所があったが、ここで拒否すればアスナの面目丸潰れ___ということになりかねない。

 

中庭集合だと聞いて向かってみれば、驚いた事に____

「……」

クラディール____この間の決闘沙汰になって上から注意を受けた男がいた。

これにはキリトも、なんとも言えない表情を隠しきれなかった。

「……先日はご迷惑をおかけしました。二度と無礼な真似はしませんので…」

「あ、ああ…」

ぺこりと頭を下げ、ボソボソと謝罪の意を込めたクラディールの言葉を聞いたキリトは再び驚いた。あの態度から一変、ここまでさせるなんてどこまで厳しい罰則を与えたんだろうか。

「よし、これで一件落着だなぁ!!」

フィールドに陽気な幹部の男____ゴドフリーと言った男が笑いながらキリトとクラディールの背中を叩いた。

 

「ふむ、君の実力は聞いていたが、素晴らしい!!これなら即実戦投入だろう」

「…いや、ずっと最前線なんですけど…」

幹部の男にそう言われてボソリとつぶやくキリト。偉そうなのが少し気に入らないが、ここでは彼の方が立場が上だ。黙って従っておこう。

「む、もう昼か。ではそろそろ休憩をとろう!」

そう言われてフィールドダンジョンの中のセーフエリアに来た一行は、それぞれ岩に腰かけ、手渡されたパンと水を受け取り、食べ始める。

「………はぁ」

キリトにとって食事とは、ひとつの楽しみなのだが、なんの味気もないお昼ご飯に、ため息が出てしまった。毎日毎日ロニエの手作り料理を食べているせいで余計に悲しくなる。

「……ぁむ(ロニエの料理が恋しい_____っていうか俺はいつの間にロニエに餌付けされたんだ…)」

硬めのパンにかじり付きながら心の中でボヤく。こんなことならロニエに弁当を作ってもらうべきだったか、と後悔した。

第1層で食べていた激安パンが懐かしい。

周りを見ると、幹部の男やもう1人の団員、そしてクラディールも岩に腰かけてパンを食べている。

そして、瓶に入った水を飲む。

ゴドフリーと、もう1人の団員も水を飲む。が_____クラディールだけが、水に手をつけない。

 

「_____?」

 

キリトは何か、不審に思った。

クラディールの視線はキリトたちに向けられて_____否、キリトたちの手に持っている物を注視している。

それはまるで____

 

「____っ、まさかッ!?」

 

獲物が、罠にかかるのを待つ狩人のような____そして、罠にかかる様を心の中で笑っているかのように。

即座にクラディールの思惑に勘づいて水の瓶を投げ捨てる。

が、それと同時に全身の力が、抜ける。抵抗することなど出来ず、そのまま地面に倒れ込んだ。

ゴドフリーともう1人の団員も同様に倒れ込む。

既に、遅かった。

 

 

「____ひひっ、ひひはははははははははははははははは!!」

 

 

クラディールが高らかに笑う。もう堪えられないとばかりに笑い叫ぶ。こんなフィールドダンジョンで大声をそうと、誰も気付かないだろう。

キリト達は彼の術中、掌の中に落とされてしまった。

「ど、どういうこと……だ…?この水、を用意したのは______」

「ゴドフリー…早く、解毒結晶を____」

左手で腰につけていたポーチから緑色の結晶アイテム___解毒結晶を取り出そうとして、

「えひゃあああああああッ!!」

「ぐ、ああ_____!?」

クラディールにポーチごと、蹴り飛ばされた。

「させると思ってんのかァ…?」

ポーチの中に入っていた結晶アイテムが散らばる。それもゴドフリーや俺たちの手では届かない。

「クラディール…これは、何かの訓練………なのか…?」

「バァーカがよォ!!」

「ごぁ……!?」

未だ状況を飲み込めていないゴドフリーはクラディールによって蹴りを入れられ、HPゲージが減る。それと同時にクラディールのカーソルが緑からオレンジへと変化した。

「ホントよォ……アンタは馬鹿だ馬鹿だって思ってたけど、筋金入りの筋肉脳味噌(ノーキン)だなァ!!」

自分が犯罪者(オレンジ)になったことも気にしていない様子でクラディールは嗤う。

「ま、待ってくれ!な、何かの間違いだ……これはただの訓練で____」

「さァて……ゴドフリーさんよ…アンタ、現実が受け入れられねェみてェだな……なら、さっさと死んで理解しろ________()()()()()()()()()()()()()()ってことをよォ!!」

無造作に振り下ろされる両手剣。ドスッ、という鈍い音と共にゴドフリーの背中に突き刺さる。

「ぁ……ぐあああああああああ!?」

「やっと理解したかよ!なら、もっといい経験させてやるよ……両腕両足切り落として、最期は首とイクかァ!?」

「や、やめっ_____」

「イヤッホォォォオォォォォオオオオオオ!!」

「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

右腕が切り落とされる。続いて左腕、そして、右足、左足。流血のエフェクトが散り、HPゲージがかなりのスピードで削れていく。

「いよいよ、ラストだぜ…?飛びっきりの叫び(歓声)を上げてくれよォ!!」

「ぅ、うああああああああああああああああああああああ_________!!」

「ヒャァァァァァァァァァアアアアアアア!!」

最後に首を斬り落とされ、それと同時にHPゲージが消える。

そして、ゴドフリーはポリゴン片へとなって砕け散った。

「______っ」

「いやァ……ったく、ゾクゾクしちまうよな……クセになっちまうぜ…なァ?」

「ひ、ヒィ___!?」

初めてではない。態度から見て明らかに回数を踏んでいる。

もう1人の団員は逃げようともがくが、体は麻痺しているので動けない。逃げられる術など、無かった。

「お前にはよォ……なんの恨みもねェ………でもなァ?俺のシナリオだと、生存者は()()()なんだよ…」

「や、やめてくれっ……来るな…!?」

「いいか…?俺達のパーティはァ……」

もう1人の団員の懇願も聞き入れることなく、クラディールはもう一度剣を振りかぶる。

「荒野のフィールドダンジョンで犯罪者プレイヤーの大群に襲われてェ……」

「ぎゃぁぁぁっ!?」

突き刺す。

斬る。

「善戦虚しく3人が殺されてェー……」

何度も、何度も。

「俺一人になったけど、見事犯罪者共を撃退して無事生還しましたァ…!」

遂にその1人もHPが尽き、ポリゴン片となって砕け散った。

「_____こい、つ」

「ああ……ぎも"ぢぃぃ……最っ高だなァ……!!」

それを見て、息を荒くしながら痙攣するように震えるクラディール。まさに《快楽殺人鬼》だった。

「……よォ…気分はどうだよ?お前の為だけに、余計なヤツ2人も殺しちまったじゃねェか…?」

「…その割には、随分と楽しそうだったな……お前みたいな奴が良くもまぁ、血盟騎士団に、入れたもんだよ………それこそお前には、《嗤う棺桶(ラフィンコフィン)》みたいなのがお似合いだ…!」

「________ 」

キリトの吐き捨てた言葉にクラディールは目を剥いて驚いた。そして、笑った。

「____くっ、ぎゃははははははははは!!なんだ、勘が鋭いなァ!!よくわかったじゃねぇか……お前の言う通りだぜ…?」

するとクラディールは何を思ったか、手甲を外し、

手首に描かれた何かをキリトに見せつけた。

そこには______

「_______ま、さか…お前…………!!」

タトゥーが刻まれていた。棺桶から除く、笑顔の殺人鬼。それは《嗤う棺桶(ラフィンコフィン)》のマークであった。

「その通り、そのまさかなんだなァ……俺は、元々ラフィンコフィンって訳だ」

「…お前、ラフィンコフィンの生き…残り、なのか……!?」

「いんや……俺が入ったのはあのラフィンコフィン捕縛作戦の少し後だ。もう解体されてたのと同じだったさ。だから、精神的にって所かァ…」

 

嗤う棺桶(ラフィンコフィン)》捕縛作戦。

それは3ヶ月前。攻略組はベルたちが率いる《スズラン》と共にラフィンコフィン捕縛作戦を行った。

被害は増えていく一方だったラフィンコフィンの悪行。だが、それは《スズラン》に提供されたとある情報によって阻止する目処が立った。ラフィンコフィンのアジトと思われる場所が分かったのだ。それを受けて《スズラン》と《青の騎士団》、《血盟騎士団》、その他攻略組によって作戦は行われた。

 

ベルは情報があるとはいえ、絶対に勝てる確証は無く、今までの相手の行動から楽観視は出来ないとの厳重注意を受けて作戦に臨んだのだが、先遣隊がそのアジトがあると思われるフィールドダンジョン一部である洞窟の中に何者かが入口で隠れているとの一報を受けた。

それを聞いたベルがこの情報が自分たちを欺くための罠だったことに勘づく。作戦を中止すべきだとベルは提案したが、しかし同時にこれはチャンスだとも言った。罠だとしても彼らの戦力を少しでも削れるのなら本望だし、リーダーであるPoHや他の幹部2人のしっぽを掴むには今しかない。故に作戦は続行された。

結果的に言うと、ラフィンコフィン40人の捕縛成功を攻略組6人の犠牲()に成し遂げた。

が、肝心のPoHやその幹部は発見には至ったものの、逃げられてしまった。

 

その一件があってからラフィンコフィンの名前は以前よりも聞かなくなったが、ひっそりと……しかし、確かに手を回していたのか。

まさかそれも攻略組の2大ギルド、《血盟騎士団》の中に紛れ込んでいるなど、誰が予想出来ただろうか。

 

「……で、なんで血盟騎士団に、入っ…たんだよ…あそこじゃなくたって、殺しは出来たろう…?」

「ぁン……?ンなもん決まってンだろォ________あの女だよ。お高くとまってる、副団長サマさ」

「…っ!」

理由を聞くのが馬鹿だった、とキリトは唇を噛む。この手の下種共は聞くのも呆れるような理由で犯罪に手を染める。

「イイ女じゃねぇか……ちょいと若すぎるがよォ…………上玉だよな…?」

「______ 」

そんな話を聞いていると同時にキリトはクラディールに見えないように左手をゆっくりと……麻痺した体で出せる全速力で動かし、腰に装備していた投擲用のピックを取ろうとする。怒りを抑え、奴に一矢報いる為に。が____

 

「それによ…この間お前と一緒にいた女……《ロニエ》……だったか。アレも中々だったしなァ……あれも一緒に頂くか…?」

 

その言葉を聞いたキリトは完全にブチ切れて直後、投擲スキルを左手の手首の動きだけで起動させ、クラディールの顔面に向けてピックを投擲した。

「______ッッ!!」

「がァ……!?」

それはキリトが狙っていた顔面_____彼奴の右眼、眼球にのクリティカルヒットした。麻痺している状態での投擲スキル使用は命中率が著しく下がるため、当たるかどうかは完全に運任せではあったが____

「テメェ_____やってくれんじゃねェかァ!!」

「ぐッ_____!!」

苛立ったクラディールの両手剣の一撃がキリトのHPゲージを2割に行かないほどではあるが、削っていく。

「ッたくよォ……まぁ、丁度いい。麻痺毒もあんま長い時間効くわけじゃねェからな……お前もそれを狙ってた腹だろ?」

「___!」

見抜かれていた。麻痺毒が解けるまでこの奇妙な会話を続けて時間を稼ごうとしていたが、クラディールも流石に分かっていたようだ。

「痛てぇな…あ?右眼視力無効化ァ…?チッ……余計なことしてくれてんじゃねぇか…」

クラディールは右目に突き刺さったピックを抜くと、クラディールのHPゲージの横に目に《×》の印がついたアイコンが表示された。右眼視力無効化状態。眼球に対して直接攻撃を食らった時に陥るデバフである。効果内容は察しの通り、右眼の視力が完全に消えるというものだ。

右目を閉じながら、キリトをクラディールは睨みつける。

「俺はこの時を待ってたんだぜ…?あのデュエルん時からよォ…」

「……!」

「さァて……イクぜェ…?」

クラディールは両手剣を動けないキリトの左胸向けてゆっくりと突き刺した。

「______っ!!」

ひんやりと、氷のように冷たい刃がキリトの胸を突き刺す。

「なァ……今どんな気持ちだよ?あそこまでデュエルでコテンパンした奴に、殺されるってのはよォ……?」

「____なら、逆に聞きたいな」

「ああ?」

クラディールの言葉にキリトは半ばキレながら言い放つ。

「_____純粋に戦って勝てず……相手を麻痺させることでしか俺を殺せないなんて滑稽だよな…?…自分じゃ勝てないことを自分自身の行動で指し示してるんだから…!!」

「テメェ、クソガキがァ……!!」

その言葉に激昂してより剣を深く突き立てるクラディール。

ズブズブと、キリトの体に剣が沈んでいく。減っていくHPゲージ。

抵抗しようとするが、キリトは麻痺しているせいで体の動きが鈍い。

このまま、キリトが殺されれば……アスナはどうなるのか。そして_____

 

______ロニエは、どんな目にあうのか。

そう考えるだけで、震えた。キリトと共に戦い、支えてくれた彼女が____このイカれた殺人鬼の手に渡る、そんなことは_____それだけは、許せなかった。

親友(ユージオ)はどう思うだろうか。あの優しい友は、キリトの死を知れば、怒り狂うだろう。ロニエも、どうなるかは想像に固くない。

15層で自身の死を偽ってPoH達を追い詰めようとした時も、ロニエはその精神が崩壊しそうになるほどにショックを受けた。

そうなれば_____本当に死んでしまえば、その比では無い。

彼女と過ごした日々が_____彼女の笑顔が、キリトに力を与えた。

こんな所で、諦めるわけにはいかなかった。

「ぐ、ぅおおおお……!!」

「おお?なんだよ…やっぱり死にたくねぇのかァ?」

「こん、なとこで、死ねるか_____!!」

「クヒャヒャヒャ!!そうだよなァ……そう来なくっちゃァ、面白くねェよなァ!!」

キリトが力を振り絞り、自身に突き刺さる刃に手をかける。引き抜こうと力を入れるが、クラディールはそれ以上の力で突き刺そうとする。キリトは麻痺しているが故に全力が出せない。

ゆっくりと_____刃が深く刺さっていく。

HPゲージも残り2割を切り、危険域(レッドゾーン)に入った。麻痺毒は、まだ解けない。

「______っ!!」

「さァ、死ねェ……死ねェェェェエエエエエエエエエエエ!!!!」

ロニエを置いて逝くのか。

この男の手に、堕ちる_____そう考えると恐ろしくなって、震えた。

そして、残酷にもクラディールの剣はキリトの体を貫通し、HPゲージは1割を切って_______

 

 

 

 

 


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