ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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お待たせしました!最近ユージオ×ティーゼいいなぁ結婚しちゃえよと思っているクロス・アラベルです!
今回は短めです。
次がかなり長くなります。
多分今までで1番長くなるかもですねw
では、どうぞ〜


追われる2人

 

 

後日。

74層の迷宮区のボスである《グリームアイズ》の討伐がなされた2日後。

キリトとユージオはエギルの雑貨店の2階に避難していた。

「ごめんね、エギル。匿ってもらっちゃって…」

「いいんだよ。別にここにいるだけだしよ」

「……分かってはいたけど、やっぱりこうなるよなぁ…」

何から避難していたかというと、情報屋やその他の中堅プレイヤー達である。

2日前のたった2人でのフロアボス討伐がアインクラッド中に広がったその1時間後、キリトとユージオの持つ、《ユニークスキル》についての情報を聞き出そうと大勢のプレイヤー達が2人を血眼で探した。

 

このアインクラッドに存在する《ユニークスキル》はそれまでたった一つだけだった。それがアスナの所属する血盟騎士団団長ヒースクリフの《神聖剣》だ。異常な程の防御力、それが彼の武器だった。噂によるとボス戦でさえHPゲージをイエロー____つまり半減させた事が無く、常にボス戦では先頭に立ち、攻撃を受け止めて自身のギルドメンバーへの指示もこなす。彼以上に強いプレイヤーは中々居ない。

実はユニークスキルに関して明確に規定されたものはなく、ただ単にそのスキルを持っているプレイヤーが1人だけだと言うことしか説明できない。こればかりは製作者である茅場晶彦に聞いてみなければ誰一人として分からないだろう。

 

キリトとユージオも初めはエクストラスキル____他のスキルの派生スキルではないかと考えていたが、他のプレイヤー達の反応を見るに…

「ユニークスキルだよな、やっぱり」

「まぁ、武器を2本一気に持ってソードスキルが打てる時点で確定でしょ。ホント、あんたら2人は規格外よねー」

 

エギルの店に素材を取りに来たリズが呆れながら素材を確認している。

リズベットはエギルの店で時たま武器製作のための素材を買っており、この店の常連である。ユージオ達が追われているとリズが聞いて1番に案内してたのがエギルの雑貨店だった。

 

そのお陰で追っ手を振り切った訳だが。

「うーん……災難だなぁ…というか、あんなに言いふらす事ないだろうアイツら…」

「まぁ、あの雷帝直属解放軍(オプリチニク)の人達はギルドを辞めるって話してたしね。それに、ちょっとは改心してくれたと思うよ」

「元々コーバッツ以外はギルドを辞めたがってたみたいだしな。でもさ…」

「尾ひれが付き過ぎ……でしょ?」

「なんだよ、50連撃って……逆に使えないだろ、ソレ…」

「僕なんか魔法使い扱いだよ?神聖j……魔法、の概念がないこのアインクラッドにそんなのある訳ないのにね」

「誇張して書くのにも程があるっ」

新聞に書かれた記事を見てキリトは怒りを露わにする。ユージオも少しボロが出そうになったが、キリトには同感だ。

 

『とあるギルドの大部隊を全滅させた悪魔』『それをたった2人で撃破した勇者』『二刀流の50連撃』『氷魔法使いの大魔法』

最後の2つに限っていえば連撃数は事実より3倍に膨れ上がってるし、別にユージオは魔法を使った訳ではなくスキルによるデバフだっただけだし、魔法の要素など皆無なのだが。

誇張して書くのにも程がある。まぁ、情報屋___新聞など、そういうのは十八番なのだろう。

 

キリトは怒りのあまり新聞を机に叩きつける。

「おいおい乱暴すんなよ?他人の家の家具によ」

「はー…絶対引っ越してやる、誰も知らないド田舎に…」

「うーん……ホームを都会に選ばなくてよかったよ。今すぐ家に帰りたいけど、今出たら追跡されかねない…」

「ははっ、1回ぐらい有名人になるのも悪くは無いだろ。なんならいっそ講習会でも開いたらどうだ?会場とチケットの手筈は俺が」

「してたまるかっ!」

エギルの本気か冗談、どっちとも取れるセリフにキリトがブチ切れて飲んでいた紅茶のカップをエギルに向けてぶん投げる。

「おわっ!?こ、殺す気かよ…!」

「……別に圏内だから死にはしない、だろ」

壁に激突して破砕音を撒き散らし、粉々に割れた。一応、こんな動作にも投擲スキルが反映されてしまったらしい。

「お、2人が帰ってきたみたいだな、ちょっと行ってくる」

下の階からノックする音が聞こえた。エギルが下へと降りていった。

「ただいま戻りました〜!」

「お邪魔しますね、エギルさん」

「まったく、2人とも大変だろう?」

「いえ、そんな事はないですよ」

「あれは仕方が無いもの。2人を責める理由にならないし…」

買い物から帰ってきたロニエとティーゼ。

「はい、キリト先輩。テリヤキハンバーガーです」

「ありがとな……ぁむ_____」

「うーん…やっぱり、落ち着くなぁ…」

「そりゃ、愛しの人に作ってもらったもんを食べれば落ち着くだろうよ。」

「んで、どうすんのよ。いつまでもここにいちゃ攻略行けないじゃない」

「…この騒動が早く落ち着くといいんだけどな」

ユニークスキル保持者が2人も出たことを受けて、二人のことを何も知らない低層、中層のプレイヤー達はそのレアスキルを我先にと、さまよっているだろう(白目)

が、攻略組の反応は薄かった。と言うよりかは「何となくあの二人ならユニークスキルの一つや二つあってもおかしくない」という考えがあったらしい。キバオウ曰く「流石ワシらのキリトはんとユージオはんや!やっぱりやることがちゃうで!!」、との事。

「そう言えば、アスナはどうしたのよ。昨日は一緒だったんでしょ?」

「うん。確か……」

「休暇届けを出すって言ってましたね。やっぱり、クラディールさんの一件でしょうか」

「……休暇届けってなんだよ。会社か」

「まぁ、血盟騎士団って、休む時は連絡を絶対に入れなきゃ行けないらしいから…」

「でもさ、ティーゼ。そんなものを書いて出したって、その書いた紙は捨てるわけだろ?なら必要ないだろ…」

「それは気持ちの問題でしょ…アスナってホント真面目だから」

アスナはロニエとティーゼと一緒だったが、途中で休暇届けを出すために血盟騎士団の本部へ戻っていった。

アスナ曰く、『あまり時間はかからないと思うから、先にキリト君達の所へ行っておいて』

との事。

キリトのあきれ声に同じく呆れるリズ。

すると、下の階からノックする音が聞こえる。

「噂をすればってとこか」

エギルが迎えていった後、不安そうな表情のアスナが階段を上がってきた。

「…どうしたんだよ、アスナ」

「何か、あったんですか?」

「…えっと、その…ちょっと困ったことになって、ね」

「どうしたのよ、言ってくれないと分からないでしょ?」

「り、リズ…」

「…もしかして、休暇届けが受け付けられなかったのかい?」

「結果的に違う、のかも」

「アスナさん、何があったんですか?」

「…休暇届けに関しては団長は受け入れるつもりをしてるって返答をくれたのはくれたんだけど、条件を出されて…」

「へぇ。あの聖騎士ヒースクリフが、条件付きね。その条件って?」

「………一応、説得しようとしたのよ?でも、これだけは下げられないって、断られて…」

「言わないと分からないよ、アスナ。で、どんな条件を出されたの?」

「立ち会い、なの」

「えっ?」

「……キリト君とユージオ君との決闘(デュエル)をすることが条件だって…」

「「え」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アスナです。失礼します」

『入りたまえ』

55層の主街区、《グランザム》にある血盟騎士団の本部へとやってきたキリト、ユージオ、ロニエ、ティーゼ、アスナは直接ヒースクリフに直談判する事にした。何せいつも自らの欲、というかギルドの直接的な指示さえしない彼がなぜここまで食い下がるのか。キリト達も不思議ではあったが、とにかく決闘を辞めさせるべく、本部の最奥にある団長の個室へやってきた。

アスナがノックして扉を開いた。

広々とした部屋に大きめのデスクと椅子。そこに座っているのが____

 

「やぁ、待っていたよ。血盟騎士団本部へようこそ。キリト君、ユージオ君。そして、ロニエ君、ティーゼ君。アスナ君も済まないね、私の為に……いや、まあこれに関していえば私事でもないがね」

 

血盟騎士団団長、ヒースクリフだ。武装を解除しているが、その存在感は変わらない。彼こそがこの攻略組きっての防御力を誇るユニークスキル《神聖剣》の持ち主。フィールドにてHPゲージを半分まで減らしたことがないと言われる生ける伝説とまで言われるプレイヤーだ。

「…で、アンタがここまで言うなんて初めてだな。俺を連れてきてまで説得したいと?」

「いや、どちらかというと説得しに来たのは君達ではないかね?」

「言えてる」

 

当たり障りのない会話。アスナはヒースクリフに対するキリトの態度に少し冷や冷やしているが。

「…ヒースクリフさん、単刀直入に聞かせてもらいます」

ユージオはキリトのように気さくに話しかける事はせず、ここに来た理由でもある、決闘についての話をしだした。

 

「何故、アスナの休暇に僕らの決闘が条件になるのか…アスナはギルドを辞める訳じゃ____」

「…私達血盟騎士団は、常に戦力不足に陥っていてね」

「…?」

ヒースクリフの口から出た、意外な言葉にユージオは首を傾げる。

「覚えているかな?層でのボス戦を」

「ああ、確かかなりやばかった時だな。ボスが予想外の攻撃を仕掛けてきて壁役(ウォール)がてんてこ舞いだった。アンタも一役二役買ってたな。何せ、10分もタゲを任せてたんだ。忘れるわけないだろ」

 

ヒースクリフが言った層のボス攻略戦。今まででも例を見ないほど特殊な攻撃やその行動パターンから攻略組も苦戦した戦いで、死者は出なかったが壁役のプレイヤー達の根気強いタゲ取りや防御がそれはもうてんやわんやだった。因みに攻略にかかった時間は小一時間程度だったが、壁役はいつもにも増して疲弊していた。

 

「その通りだ、キリト君。特に君達のような高レベルプレイヤー達は血盟騎士団でも限られてくる。アスナ君もその1人だ」

「戦力不足なのは分かります。アスナ自身も承知の上でしょう。ですが、クラディールさんの件もあって彼女は血盟騎士団に不信感を持っています。そんな状態でギルドの元で動いてもアスナも周りの人もいい気分じゃありませんよね?」

「確かに、私も理解は出来る。だが、アスナ君がこの血盟騎士団において唯一無二の存在なのは君もわかる筈だ」

 

血盟騎士団団長としての言葉____自身の事だけでない。彼は血盟騎士団全体への影響を考えている。

「…ですが___!」

「では、君がアスナ君の代わりをしてくれるかね?」

「___!」

トドメに一言に、ユージオも戸惑ってしまった。

 

「アスナ君の休暇は認めても良いと考えている。だが、その代わり…いや、アスナ君が休暇を終えてからもこの血盟騎士団で活躍してくれる人間が欲しい。私はね、キリト君、ユージオ君。君達にこのギルドに入って欲しいんだよ」

 

そして______ようやくこの決闘の主旨を仄めかした。

「…へぇ、ホントの狙いはそっちか?」

「半分は、と言ったところだがね。もう半分は_____純粋に君たちと戦いたいということだ」

「……では、ヒースクリフさん。貴方が言うのはキリト先輩とユージオ先輩にアスナさんの休暇と二人の血盟騎士団加入を賭けた決闘を申し込みたい、そういう事ですか?」

ロニエが不安げな表情で聞くと、

「正解だ、ロニエ君」

理解がある子が居て助かるよ、と頷いた。

「しかし、団長…!」

それに抗議しようとするアスナ。が_____

「いいぜ」

「分かりました」

肝心の二人(キリトとユージオ)が同時に頷いた。

「えっ!?」

「そうなると思いました…」

驚きを隠せないアスナと、何となく予想出来ていたロニエが溜息をつく。ティーゼも驚いているようだった。キリトならやりかねないが、ユージオは意外だった。アスナにとってユージオはキリトのブレーキ役であり、ツッコミ要員なのだが____

 

「…受けてくれて嬉しいよ。では日程に関しては明日の1時に75層の街にあるコロッセオでどうかね?」

「分かった。じゃあ、首洗って待ってろよ?」

「ふむ、期待するとしよう」

勝気に言うキリトに、余裕の笑みで答えるヒースクリフ。相当自信があるらしい。

その表情に少し恐ろしいものを感じながらユージオは勝負の後の事を話す。

 

「…僕らが勝利した暁には___どうするおつもりですか?まさか、アスナの休暇を認めるだけ…なんて言いませんよね?」

ユージオも負けるつもりは無い。だが、彼はこのアインクラッドにて最強のプレイヤーであることは間違いない。あの自信も頷けるが、それでも勝ったあとのこと____こちらの敗北した場合はキリト、ユージオの血盟騎士団の加入だがあちらが負けた場合、アスナの休暇の認可だけではバランスが取れない。ユージオ達にも得するものが欲しい。

 

「…負けることは無いだろうが、万が一がある。どうしたいのかね?」

「自信満々ですね…まぁ、それについては勝ってから、ということで」

ユージオが見たキリトの記憶、その真実を知りたい。記憶からしか見ていないが、彼の最後の速さは異常だった。

「…」

「では、明日。全力を尽くして勝ちます」

ユージオはそう言い放ってヒースクリフの部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユージオ、良かったの?」

アスナに散々怒られた後、ユージオとティーゼは帰路に着く。

「うん。元々キリトは承諾するみたいだったからね」

「…また、記憶を見たの?」

「一応、結果の方も見た」

「えっ?結果も見たの?」

 

「うん、僕もびっくりしたよ。キリトは、負けてた」

 

「キリト先輩が!?」

ユージオは真剣な表情で、真実を述べる。ティーゼも驚いている。何せ2人にとって彼が最強の剣士なのだ。ユージオもそう思っていたが____

 

「ヒースクリフ……彼が強いのは知ってたけど、まさかキリトが負けるなんて思ってなかった」

「ユージオ。勝てる、の?」

ティーゼはユージオを信じている。だが、不安になってユージオに心配そうに聞いた。

「タダで負けるつもりは無いよ。ただ、キリトが負けたとなると、僕にはあまり勝機は無さそうだ」

「どうして?」

「ティーゼ、君も知ってるだろう?僕の《青薔薇》の欠点を」

「…」

 

ユージオは淡々と言う。キリトの《二刀流》は手数を持って彼に挑む。だが、ユージオにはそれがない。しかも、ユージオの《青薔薇》には弱点____決定的な欠点がある。それはPVPにおいて重大な問題だった。

「彼の絶対的防御をどう超えるか、それが鍵だ。キリトの手数の多い二刀流が負けるのなら僕は彼の考えられないような戦い方で勝負しなきゃね」

ユージオは《アルマス》の柄を左手で触りながら呟いた。

 

 


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