ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
さて、アニメがもうクライマックスです。涙が止まらぬ(´;ω;`)
アリブレの方では水着ロニエさんを33連の後、単発でお迎え出来ました。
か"わ"い"い"
そして、アンケートのご回答、ありがとうございました!
結果として92人の方に回答頂き、原作通りが51票、ゲーム版ルートが34票、( 'ω')シラネ が、7票でした。多数決に則り、原作通りに進めていく方針です。
んで、今回はあの名シーンへの繋ぎです。やはり戦闘描写は難しいですね。書いて消して書いて消して……の繰り返しです(白目)
では今回もどうぞお楽しみ頂ければと思います。
どうぞ〜
○
迷宮区8階。
キリト達はボスを覗いて一目散に逃げて来た。
「はあっ、はあっ、はあっ………!」
「はっ、はっ、はっ……!あれが、74層の、ボスモンスター…」
「みんな、いる…?はぐれてないわよね?」
「点呼とるぞー…1…」
「…2」
「えっと……3…?」
「4、です…」
「5……一応誰もはぐれてないわね」
迷宮区の安全エリアに無事逃げ込めた5人は息絶えだえとしている。
「やー…逃げた逃げた…」
「ここまで全力疾走するのも久しぶりだね」
「途中でモンスターにターゲットされそうにはなりましたけど…」
「キリト君が1番凄かったね」
「なっ…心外な。アスナだって…!」
「そうだね、私も人のこと言えないかも」
74層のボスモンスター《グリームアイズ》。どう見ても___
「…苦労しそうね」
「大体いつもそうだよ。でも今回のは特別強そうだった」
「…どんな感じで攻略します?」
「武器は、あのでっかい剣1本…ぽいけど、特殊攻撃ありそうだな。ブレスとか」
「盾装備の
「あと2日くらいかけてあのボスにちょっかいかけて攻撃方法とか傾向とか探って対策するしかなさそうだな」
「……盾、ねぇ…」
「なんだよ」
「…ホント君って、盾持たないよね。初めて会った頃からそうだけど、なにか理由あるの?ユージオ君も」
「あー…僕は元々このスタイルで頑張ってきたからね。もうあの頃からこのスタイル一択だったんだ。盾を持ったって、調子狂うだけだからね」
「…俺も、同じだな。盾を持つのは、俺には合わないし」
「確かに、2人ともザ・
アスナに笑われたキリトがムッとしていると
「ふふふっ……あ、もう2時ですね。遅いですけど、お昼にしませんか?」
ロニエがメインメニューから時間を確認し、お昼をかなり過ぎていることに気づいた。
「お、いいな。攻略に必死で気づかなかった」
「そうだね。ここは安全エリアだし、そうしよう」
「では……はい、先輩!」
早速ロニエがアイテムストレージから小ぶりなバスケットを出してキリトにサンドイッチを手渡した。
「お。ありがとな、ロニエ」
「アスナさんもどうぞ!」
「ありがと、ロニエちゃん、ティーゼちゃん」
アスナもてあからサンドイッチを手渡され、頂きます、と手を合わせてからかぶりついた。
キリトやユージオもサンドイッチにかぶりつく。
「んんっ……うんまいなぁ…毎度毎度よくこんな料理作れるよホント。スキル熟練度が高いのはもちろん、このテリヤキソースが美味すぎる。マジでこのレシピを見つけたのは、控えめに言って神だぜ。な、ユージオ」
「神って……確かに、このテリヤキソースは僕も好きだな。他にも色々ソースのレシピを編み出してるし、2人ともすごいよね」
「「え、えへへ…」」
「私も料理スキル持ってるけど、ここまでに達したことは無かったわ。マヨネーズとか、醤油とか、色んなものを作るんだもの。ホントに2人とも凄いわ。醤油の再現が成功した時は女子会の皆で泣いて喜んだもの」
「泣くのも無理ないな、これなら」
「でも、ここまで大変だったんじゃない?」
「まあ、かなりかかりましたね。何せこのアインクラッドにある約百種類の調味料が私達プレイヤーの……えっと、味覚再生エンジン、でしたっけ…?それに与えるパラメータを全て解析して、何度も混ぜて作ってたんです。」
「多分、試行回数1万は軽く超えてましたよね?」
「ええ。休暇を3日貰ってずっと徹夜でやってたわ」
「…確か、1年前くらいに珍しくアスナたちが3日も休暇とってた時があったけど、その時に…?」
「あー…なんか、皆げっそりしてたよな。そんなことしてたのかよ…」
「料理っていうのは女子の武器よ。磨き上げるのが当然」
「…俺達には分からない世界か」
と、何気無い会話をしながら食事をし終え、さて、これからどうするか…とキリトが考え始めた、その時。
「お、キリトとユージオじゃねえか!」
キリト達のよく知る男の声がした。
悪趣味な赤いバンダナにつんつんと逆だった赤い髪。ぎょろりとした金壺眼にむさ苦しい無精髭。鎧は戦国時代の武士を彷彿とさせる和式鎧。左腰に刺してあるのは、一振の無骨な刀。
そう、
「まだ生きてたか、クライン」
「ったく、愛想のねぇ奴だなぁ」
キリトとユージオの古い付き合いであるクラインだった。現在は攻略組に参加し、ギルド《風林火山》のリーダーを務めている。
「やあ、クライン。レベリング?」
「よお、ユージオ。今回は本格的に攻略だよ。ボス部屋までは行かずともちょっとずつ進めていかねぇとな」
クラインの後ろにはギルドメンバーである他の5人のプレイヤー達も挨拶に来た。
彼らはクラインのSAO以前からの知り合いで、キリトやユージオ達とも面識がある。悪い人間ではない…というか、すごく仲間思いだ。リーダーがリーダーなら、そのギルドメンバーもギルドメンバーということか。
「ん?そっちは…」
「ああ、そういや、ボス戦で顔合わせることがあっても、こうやって面向かって話すのは初めてだったか?紹介するよ。血盟騎士団の副団長、アスナだ」
「アスナです。よろしく!」
「んで、こいつがギルド《風林火山》のリーダーのクラインだ。顔はアレだけど、悪くない奴だから」
「なっ、てめぇキリト!ンな言い方はねぇだろうがよ!」
「初めて見た時は山賊かなんかだと思ったぜ?」
「ンにゃろう…!!」
「痛てっ!痛いって!!」
クラインとアスナに紹介を済ませ、早速クラインに首を絞められるキリト。それを笑う皆。
それに釣られてその他のメンバーたちも自己紹介をしだした。
クラインはキリトやユージオと同じく、仲間を守りながらも鍛え、遅れながらも攻略組になるまでに登りつめた。
そして_____攻略組ではなく、その他の中層、低層プレイヤー達への基本的操作方法やソードスキルのコツ、戦い方など、様々な情報をばらまいたのは彼だ。このアインクラッドで死者数がキリトの過去の半分以下にまで抑えられているのは彼の功績が大きい。
そんな彼は、キリトとユージオの友達。キリの字、ユーの字と呼ぶ彼はSAOの中でも2人の良き理解者だ。
さて、そろそろ攻略に戻ろうかと、キリトがクラインに言おうとした、その時。
索敵スキルに反応があった。
「ユージオ」
「分かってる。この反応の数、さっきの…」
索敵スキルによる反応の数は12。
「みんな、軍よ!」
アスナも咄嗟に気づいたのか、身構える。クライン達も先程の和気あいあいとしたあの雰囲気がガラリと変わり、鋭くなる。
キリト達がいるセーフエリアにたどり着いた彼らは疲弊した様子で、先頭にいた男の、休め、という言葉と同時に倒れるように座り込んだ。息が上がっている者もおり、迷宮区前にあった時より疲れているように見える。
先頭にいた、パーティのリーダーらしきプレイヤーがキリトたちに近付いてくる。
彼らに関してはあまりいい噂は無い。攻略組とも何度もぶつかったことのあるギルドだ。裏で何をしているか、それもまだ全容は明らかになっていない。そんな怪しい彼らがこちらに話しかけようとしているのを見たキリトは少し驚いた。
「私は雷帝直属解放軍所属、コーバッツ中佐だ」
「…キリトだ。何か用か?」
「君たちはこの先も攻略しているのか?」
「ああ。ボス部屋の手前まではマッピングしてある」
バイザーを外してキリトに話しかけてきた、コーバッツと名乗る男____あのギルドは中佐などと位をつけているのか、とキリトは辟易したが____はキリト達がボス部屋までマッピングしたことを聞いて、何とも横柄な……キリト達の今までの努力を踏みにじる発言をした。
「ふむ。では、
「……は?」
流石のキリトも呆気に取られた。
それはそうだ。ダンジョンのマップデータと言うのは高値で取引される。それもここは最前線の迷宮区。その分、重宝されるしそれがどれだけ価値のあるものかは誰だってわかる。危険を冒してまで手に入れたそのデータを、
「な、何言ってんだテメェ…!提供しろ、だと!?マッピングする苦労をわかって言ってんのかァ!?」
「我々は一般プレイヤーの解放のために戦ってやっているのだ。諸君が協力するのは当然の義務であろう」
「…
その言葉にキレかけるキリトだが、ここは冷静に対処せねば。
「貴方ねぇ…!」
「テメェ…!」
激発寸前のクライン達《風林火山》のメンバーとアスナ。が、それを右手で止めてキリトは答えた。
「別にいいさ。このマップデータはディアベル達攻略組に渡して全プレイヤーに公開するつもりだったからな」
「キリト、確かにそうだがよ……今のコイツらに渡すのはおかしいだろうがよ…!」
「クライン。揉め事をこんな所で起こしても誰も得することなんて無いよ。ここは落ち着こう」
「ユージオ…」
納得いかないクラインはキリトに抗議するが、ユージオがそれをなだめた。こんな危険な迷宮区で揉め事を起こしたらそれこそ誰も止める者はいない。最悪の結果になった場合、目も当てられない。
キリトはマップデータをコーバッツに送り、メインメニューを閉じた。
受け取ったコーバッツは何も言うこと無く踵を返した。感謝の言葉さえないとは、見上げたボランティア精神だ。
「____ボスにちょっかい出すのは止めておいた方がいいぜ。あれはそんな人数でどうにかなるようなものじゃない」
「それに、仲間もかなり疲弊してるみたいだし、やめときなよ」
キリトとユージオは背を向けたコーバッツにそう忠告する。もう、これは最後の言葉になるだろう。
「私の部下はそのような軟弱者ではない。そんな心配は杞憂に過ぎん…………立て!!まだこんな所でへこたれるものなど、我らが解放軍ではない!!立てッ!!」
そのキリトとユージオの心配を彼は無視し、部下を引き連れて迷宮区の奥へと向かって行った。
「……ったく、キリトとユージオが心配して言ってやってるっつうのに……アイツときたら…!!」
「まあまあ、ちょっと無鉄砲なところがありそうだけど、ボス戦を挑むほど無謀じゃない………そう信じたい、ね」
そう信じたいが、前例がある。絶対にないとは言いきれない。キリトの記憶上では彼らは無謀な特攻を敢行し、数人が無惨に散っていった。そのひとりが彼だ。
「……どうするんですか?やっぱり、私心配です」
ロニエの心配そうな声がこぼれる。キリトも同じようだ。
「有り得そうで怖いな。一応、後を追ってみよう」
「賛成。クラインたちも来てくれるかな?やっぱり人数は多いに越したことはないから…」
「おう、あたぼうよ。レベリングも兼ねてついて行くぜ。お前らもいいよな?」
クラインがギルドメンバーに確認を取り、全員から許可を貰った。
「ユージオ、やっぱり記憶通りよね?なら、急いだ方が…」
「うん。その通りになりそうな気がする」
ティーゼにはそのことは話してある。なのでティーゼも内心焦っているようだ。
「…いこう」
キリトとユージオを先頭に全員で雷帝直属解放軍の後を追った。
○
「もうそろそろボス部屋だな」
「今のところ彼らとすれ違ってないし、やっぱり、もしかするよ…!」
「アイツら馬鹿なのかよ…!キリト、ユージオ!急ごうぜ!」
「…ああ!」
最後の戦闘を終えて走り出す面々。
その時
_________ああぁぁぁぁぁ_____
叫び声が、聞こえた。
「っ!!」
「まさか本当にやってるのか…!?」
「急ぎましょう!!」
走る。
走る。
あと、20メートル。そこで気がついた。
「…!扉は閉まってる…ってことはまだ中に入ってるのかよ!!」
「早いとこ開けるぞ!」
焦りを隠せないキリトとクラインはそのボス部屋への扉を力いっぱい押し開ける。
開け放たれたそのボス部屋に広がっていた光景は____
まさに、地獄絵図だった。
キリト達に背を向けて陣取るボス《グリームアイズ》。その向こう側には、12人のプレイヤーが居た。
が、その全員がイエローゾーンまでHPバーを減らしており、3人はレッドゾーンだ。そのレッドゾーンになってしまったプレイヤーのうち二人はは倒れていてピクリとも動く気配がない。およそ、恐怖のあまり気絶したのだろう。
何とか戦線に立っているプレイヤー達は各々に武器を構えているが、そのうち何人かの鎧は一部無くなっており、耐久値が全損し、消えてしまっているようだ。
「何やってんだ!!早く結晶を使って飛べ!!」
キリトは咄嗟にそう叫んだが、一人のプレイヤーが恐怖に染った声で叫ぶ。
「駄目だ……ダメなんだ!結晶が…使えないっ!!」
「____」
それは最近発見された訳では無いが、前からあると言われているダンジョンギミックの一つだ。その名の通り、そのエリアでの結晶アイテムの使用が出来なくなるもの。結晶アイテムは一瞬で体力を回復したり、街まで移動したりなど、このアインクラッドでは珍しいものの、持っていればダンジョン探索、しいては迷宮区探索において非常に役に立つアイテムだ。このアインクラッドでは回復するにもポーションだと時間経過によって回復がなされるため、どちらにせよ時間がかかる。移動など瞬間移動は出来ない為、全て徒歩での移動となる。故に、ストレージに一つか二つは入れておきたいアイテムだ。
このような状況なら即座に使うだろう。が、それが出来ない。今までボス部屋にそのギミックがなされたことは無かったので、余計にショックが大きい。しかも、現在の立ち位置からして彼らとキリト達、その間にボスが陣取っている。ので、撤退さえも叶わない。
まさに最悪の状況だ。
キリト達は絶句せざるを得なかった。
ユージオも思わず唇を噛む。
「キリト、行くよ!!」
「くっ……ああ、それしかないみたいだ!」
「「はい!」」
ユージオは躊躇うこと無く走り出す。キリトもその後に続き、ロニエとティーゼはキリトとユージオについて行った。
「おい、あれの中を突っ込むのか!?」
「それしかないわ、クラインさん!今それが出来るのは、
「____チィッ!!どうにでもなりやがれッ!!」
動揺するクラインにアスナの喝が入り、クラインも覚悟を決める。ギルドメンバー達も同じく走り出した。
「クライン、救助を頼んだよ!!」
「おう、任せとけ!!お前ら!気絶してる奴から運び出せ!!」
『『おう!!』』
ユージオの指示でクライン達《風林火山》は救助へ、キリト達はボスへと攻撃を開始した。
「はぁッ!!」
「らぁッ!!」
キリトとユージオの一撃がボスの背中にまともに入り、ボスが呻き声をあげるが______
「____分かってはいたが、全然減らないな!!」
ボスHPゲージはほんの数ドット、すり減っただけだった。ボスのHPゲージは全部で4本、その1本目の3割ほどは解放軍が削っていたようだが、それでも微々たるものだ。
『フグルゥゥゥ_______』
ボスが振り向く。
「___っ!!」
「___うおっ!?」
直後、斬馬刀の如き大剣が翻る。
咄嗟に回避した2人の目の前に斬撃が繰り出された。ひんやりと、死の悪寒がする。
「うぁッ!?」
「ユージオ!?」
ターゲットが、ユージオに移ったようだ。斬撃はユージオへと集中する。
一撃でも受ければこちらのHPゲージが何割削られるかわかったものでは無い。運が悪ければ一撃で半分以上削られることも覚悟しなければならない。
ユージオら斬撃を剣で上手く滑り込ませて軌道をずらし攻撃を捌くが、それでも斬撃の風圧だけで体全体が押される。
「やぁぁぁあッ!!」
『グルァ…!!』
ティーゼの一撃によってボスを妨害しようとするが、それも___
『グルォォォォォオッッ!!』
「キャァァァ!?」
連続攻撃によって後退を余儀なくされる。
「ティーゼ!!」
ティーゼの悲鳴にユージオも眦を吊り上げてソードスキルを繰り出す。
「おおおおッ!!」
四連撃《バーチカルスクエア》。
「ィヤァァア!!」
そして、アスナの細剣ソードスキル五連撃《ニュートロン》がボスへと直撃した。
しかし、依然としてボスのHPはあまり減っておらず、未だ1本目のHPゲージは6割を留めている。
すると、2人の正反対からの攻撃に反応したのか____
『グルァァァァアアッ!!!』
「ぐぁッ___」
「うぅっ___」
「っ____」
全体攻撃を繰り出してきた。
ユージオ以外が吹き飛ぶ。致命傷ではないし、攻撃をモロに受けた訳では無いが、それでもHPを2割消し飛んだ。
「______ッ」
想像以上の化け物だ。ボスと言うのは大抵そうだが、今回のは特に酷い。やはり、この少人数では歯が立たない。
ユージオが応戦するも、防戦一方だ。
このままでは、ジリ貧だ。
ならば_______
アレを使うか。
周りを見るとあの解放軍のプレイヤー達はクライン達に全員運ばれたようで、誰一人いなかった。
「_____今なら」
見ているプレイヤーも少なく、クライン達に限って言えば信頼に足る。アスナも口外はしないだろう。
_____そして、同時にキリトも同じことを考えていた。
この状況をどうにかするには、突破口が必要だ。ボスを打倒できるほどの攻撃力と手数が。
ならば____
「_____今しかない」
キリトはポーションを一気に飲んで瓶を投げ捨てる。
「ロニエ、ティーゼ、アスナ、クライン!!」
ユージオが大声で4人を呼ぶ。
同時にキリトもそれに乗じ、叫んだ。
「30秒稼いで!!」
「10秒稼いでくれ!!」
ユージオが無理矢理隙を作って後退し、ロニエ達に戦線を任せる。
戦いの終わりは近い。