ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~   作:クロス・アラベル

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はい、大変遅くなりました。
クロス・アラベルです。
今回は前回出てきたレイラさんとの共同クエストです。
オリジナルなので、「色々矛盾してる!」「なんか変」と言われるかもしれませんが、御容赦ください(´・ω・`)
それでは、どうぞ〜


彼女(レイラ)の愛剣は何処へ

 

 

 

「僕はユージオで、彼女がティーゼ。君は?」

『レイラと呼んでください、ユージオさん、ティーゼさん』

「で、1番初めに聞いておきたいんだけど、いいかな?」

50層のとあるカフェで、ユージオ達はまずクエストNPCである娘に話を聞くことにした。

「どこで無くしたか、覚えてる?」

『55層の、どこかだと思うんですけど…』

「55層か……確か、あそこって氷雪地帯だよね?」

「ええ。毎日のように雪が降ってるところね…さほど攻略に時間がかかった覚えはなかったけれど…」

『行ったことがおありなんですね』

「うん、じゃあ…55層に行ってみよう。まずはそこから情報収集を始めようか」

『はい、お願いします!』

55層は氷雪地帯。ユージオは分厚いコートでも準備しようかと、思いながら転移門へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「……」

情報収集の結果、それらしい場所は聞き出すことが出来た。だが、何か引っかかる点がある。

「……なんで、こんなにNPCとはいえ彼女の事を知ってるんだろう?」

情報収集にと55層のNPCの村人に30人程度聞いて回ったが、その誰もが彼女のことを知っていた。クエストの補助の為だから、と言ってしまえばそれまでだが…

 

『ああ、レイラかい?あの子ならよくうちにも来てたもんさ』

 

『レイラちゃん?懐かしいねぇ、うちの食堂にもよく顔を出してたよ!明るい性格でね、あの娘が来たら大賑わいだったわ』

 

『笑いの絶えない娘だったよ。評判が良くってね。うちへ嫁に来て欲しいって思ってたもんさ』

 

『レイラお姉ちゃん?知ってるよ、僕も遊んでもらったこといっぱいあったからね。でも、最近顔見なくなったなぁ…』

 

『レイラ?ああ、ここらで1番強い剣士なんだよ。もうあの子の剣技は、神の領域だね。あたし達じゃ、剣筋が見えやしない。剣を離せば可愛い村娘、1度剣を持てば最強の女剣士!もうそこらの男なんか可愛いもんさ。』

 

『ああ、レイラか。アイツ、すごい強かったんだぜ。確かに何年か前に強い人と戦いたいから…とか言って東の村の裏山に篭ったらしい。最初の方は剣の腕に自信があるやつが挑戦しようとレイラの元に向かってったけど…誰一人あいつには会えなかったらしいぜ。何せあそこには古代龍が居たんだ。その道中のモンスターだって数も多いしやたら滅多ら強かったしな。誰もたどり着けるわけなかったんだよ。レイラだけのテリトリーさ。そういや、あれからあいつどうなったか聞かねぇな…会ってもいねぇし。なんだったらあんた、行ってみたらどうだい?現実を知るいい機会になるぜ?』

 

「……彼女、かなり有名人なのかな?」

《最強の女剣士》。そう村の人達からは呼ばれていたそうだが…

剣の直接的在り処は見つからなかったものの、いくつか気になる情報を手に入れることが出来た。

「ティーゼと合流しよう。確か、東の村の裏山……に彼女は最後に行ったらしいから、そこに行けば何か分かるかも」

ユージオはティーゼにメッセージを送りながらふと思った。

「……あれ?でも、レイラはその裏山も探したのかな?50層にいた時点でもう探し終えていた…とか?」

 

 

 

 

「ユージオ、どうだった?」

「有力そうな情報は得たよ。でも、ちょっと引っかかることがあってね…」

「?」

数分後ユージオとティーゼが合流し、ユージオの気になる事を説明しようとした時、

『ユージオさん、ティーゼさん。どうでしたか?』

レイラも来た。本当なら自分たちで探すべきなのだが、向こうから来てくれたようだ。

「ああ、レイラ。それらしい情報があったよ。東の村の裏山らしい。」

『東の村の裏山ですか…早速行ってみましょう!』

「うん…そうだね」

何故だろうか、違和感を感じざるを得ない。よく行っていた筈の場所が怪しいと聞いて、何か反応を示すかと思ったがそうでも無い。

「……」

ユージオはとりあえず東の村の裏山へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い……コートを買ってきて正解だったね」

「ええ。普段着のままだったら凍えてたかも…」

30分後。ユージオ達は東の村の裏山へとやって来た。

「…すごい大雪だね。ここら辺はあまり来た事がなかったから、知らなかったよ」

大雪の中ユージオは少し大きめの声で言う。

「レイラ!じゃあ一応1番奥……山頂まで行ってみよう!あまり人は行かないって話だけど、まだ分からないからね」

『………』

「…レイラ?」

ユージオの声に反応を示さないレイラ。聞こえていないのかと思い、もう一度声をかけようとした時、ようやくレイラが返事を返した。

『……あ、いえ、なんでもありません!山頂ですよね?分かりました!』

レイラはそう言って先に山へと入って行った。

「…ユージオ、何が気になってるの?」

「レイラなんだけどさ、彼女、自分の剣を無くしたって言ってたけどちょっと信用出来ないというか…」

「嘘をついてるってこと?」

「うん。剣を無くすって……普通はありえないでしょ?だって、彼女は結構村じゃ有名な剣士だったらしいし、そんな人が剣を無くすとは思えないんだよね」

「確かに…」

「それに、何故彼女は55層ではなく、それより下の50層で僕らに声を……ううん、何故あんな所にいたのか、分からないから…」

「可能性として、彼女がモンスターかもしれないって事もあるし…」

「気を引き締めていこう」

そして、ユージオが引っかかる点はもうひとつある。それは、今現在では証明しきれないのでまだ言うに値しない。

然るべき時になれば…

 

 

 

 

『はあッ』

掛け声とともに繰り出される剣技。ユージオはそれを見て驚いた。

彼女の剣技はNPCのそれを超越している。今まで色んなNPCと共に戦い、そして、何度も戦ったが、ここまで洗練された動きは見たことがない。

たった一閃でモンスター三体が一気に砕け散って行った。

因みに剣を持っていなかったのでストレージにあったあまりの剣を渡した。

『楽勝楽勝!』

「…レイラ、何か思い出す事とかはあるかい?」

『思い出す事、ですか?』

「ええ。剣の在り処よ。やっぱり、剣士として、剣を忘れるのはありえないって思っちゃって…」

『うーん……全然思い出せなくて…』

「そっか…ごめん、変な事聞いちゃったね。頂上までもうちょっとあるし、頑張ろう」

『はい!』

吹雪の中、ユージオ達は言い表せぬ違和感を胸に、山頂を目指した。

 

 

 

 

 

 

「着いたね」

「ええ。まさか洞窟まで入っていくなんて…」

その後、山頂まで山を普通に歩くだけではたどり着けないことに気づいた3人は近くにあった洞窟へと進んだ。そして、ついに山頂へと辿り着いた。

先程までの吹雪は止み、かなり見通しが良くなっている。

「…あ、あれ!」

と、その時、ユージオは少し先に何かが雪面に突き刺さっているのを見つけた。

「あれって…」

「多分、レイラの剣……じゃ、ないかな」

『________』

するとレイラもそれを見つけたのか一人、剣の元へと歩いていく。

『…』

雪に埋もれた何か。雪を手で払い、冷たくなったその剣の柄に触れて目を閉じる。

『_____ぁ』

レイラの口から零れる声。2人は静かに見守った。

それから五分ほどだろうか、レイラはその剣を引き抜くこと無くユージオ達の方へと振り返った。

『___ありがとうございます、ユージオさん、ティーゼさん。ようやく、思い出せました』

「……思い出せたって言うのは、剣を無くした理由?それとも____君の生前の思い出かな?」

『…気付いてたんですか?』

ユージオの口から告げられるその推理にレイラは驚いた表情を見せた。

「村の人達に話を聞いてるうちに、何となく察しがついた…ただそれだけさ」

「あなたは……数年前、もう既に死んでいたのね?この山頂で」

 

村での聞き取り調査、そこで共通して言われてことが『数年前から姿を見ていない』という事。レイラには血の繋がった家族がおらず、一人暮らしだったと言う。村人の証言の元、レイラの家に向かい中を調べてみると、生活感はあるものの、部屋全体がホコリを被り蜘蛛の巣だらけ。長い間人が住んでいたとは思えない有様だった。そして、その部屋に残っていた日記。それを読むと____5年前の日付が最後だった。

 

それからユージオは彼女は生きているのではなく、死んでいるのではないかという推理をしたのだ。彼女が何故ここで死んでしまったのか、その他諸々分からないことが多過ぎるのが欠点だったが_____

 

『はい、私はレイラ。あの村では有名な剣士でした』

そして、レイラは全てを話し始めた。

 

彼女には元々家族はおらず、とある家の養子として育ったらしい。が、彼女が12になった年に養ってくれていた唯一の家族であったおばあさんが亡くなり、彼女はそこからずっと一人だったのだという。剣は幼少期から習っていてその師がおばあちゃんだった。もうそこからは一人修練を積み重ねた。同じく剣を志した村の男達は彼女と何度も勝負したが彼女は1度も負けることは無かった。時にはその剣の腕で村を襲うモンスターを討伐することもあった。本当に彼女は強かった。プレイヤーですらレイドを組まざるを得ない古代龍を単騎で倒してしまうほどに。

誰もが彼女を讃えた。誰もが彼女を愛した。皆が彼女の事を謳った。

______だが

『______誰も、私を越えようとする人は居なかった』

自分も負けてられない、と奮起する者は居なかった。誰もが彼女には追いつけないと決めつけた。

『_____私に教えを乞う人はいても、誰も着いて来れなかった』

彼女と共に肩を並べて強くなろうとする人は誰一人居なかった。

そう

 

共に日々切磋琢磨する友が

絶対に負けない、とお互いに歯を食いしばって鍛錬をする仲間が

時に協力し、更なる頂点を目指そうと声をかけ合う相棒が

 

彼女には居なかった。

 

故に待った。彼女を超える猛者が訪れる事を。

この、裏山で。

 

 

『…でも、キミ(ユージオ君)は違ったの。キミの背中には、私と違う強さがあった』

己と違う何か。

『そして、剣を取り戦うキミを見て圧倒的に違う何かがあったの』

生前の彼女が目指した強さ、それとは何か違う___けれど彼女がそう望んだはずの強さ。

『キミは……肩を並べる相棒が、いるんだよね?』

「_________」

『1番仲が良くて、その人といるとすごく楽しくて、でもその人には絶対負けたくないって思ってる』

「____うん」

『……いいなぁ』

「レイラ…」

『私も、そんな人、欲しかったなぁ…』

零れる彼女の想い。彼女は独りで強くなり過ぎた。孤高の存在出会ったからこその願い。

気付けば彼女の体が薄らと透けて見える。足も目を凝らさなければ見えない程に。

『…限界も近いみたい。私が死んでから5年___ここにいること自体奇跡みたいなものだったの。多分あと10分くらい、かな?』

「「!!」」

『…だから、最後のお願い_____していいかな?』

「何を…?」

レイラはその儚く散ってしまうであろう体を両腕で抱きしめながらユージオにそっと呟く。

『____私と戦ってくれない?』

「…」

そう告げた直後、彼女は己を奮い立たせるように剣を取り、剣でユージオを差す。

『最期にキミ(ユージオ君)と戦いたいの。私が目指した筈の強さ___それを見たい。私がどれだけ頑張れたか、あの日々に意味があったのか』

彼女はもう迷っていない。真っ直ぐにユージオを見ている。

『…お願い』

剣士としての性。己より強い者と戦いたい、もっと強くなりたい。そんな物が彼女を突き動かす。そしてまた、(ユージオ)も同じであった。

「…分かった」

『!』

「手加減は無し、でいいよね?」

『勿論!そうでなくっちゃ!!』

ユージオも真剣な顔で腰の剣を抜き、中断に構える。

『じゃあ……好きに始めちゃっていいよ。いつでも来いっ、てね!』

 

最強のNPC女剣士と、青薔薇の剣士。

クエストを締めくくるであろう、最後の戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。

 


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