ソードアート・オンライン ~時を越えた青薔薇の剣士~ 作:クロス・アラベル
お久し振りです、クロス・アラベルです。
現在、スランプ状態で四苦八苦しております。ちょっと投稿スピードが遅くなるとは思いますが、お許し下さい。
今回でようやくアルン到着です。次は早速キリト達と合流出来るかと思います。
では、どうぞ〜
谷を抜け、世界樹を遠くから拝んだその約3時間後。
二人は世界樹の麓にある中立域の街、アルンへと辿り着いた。
道中フィールドボスと遭遇したのもあって、当初の時間より大幅に遅れてしまったが、二人共に死ぬことなく来れた。
「うわぁ………凄い人集りだね…!」
「世界樹は基本的に色んな種族がいるから、色とりどりで面白いでしょ?私も来た時はそう思ったよ」
「……お祭りをやってる訳じゃないよね?」
「祭りはやってないけど______あ、でもそれに近いのが今やってるね。そういえば」
かなりの人集りだった。それこそ祭りでもやっているのでは無いのかと思ってしまう程に。
しかし、普通はここまで人が極端には集まらない。
今日は特別な日だった。種族関係無しに、プレイヤーがわんさか集まるくらいには。
「似たようなって…?」
「ライブだよ。今日は、七い………じゃなかった。
ドームは無いが、野外ステージでのライブなので、音楽や歌声、ファンの歓声がもう既にアルン中に響いている。ファンの盛り上がりが凄まじい。
「そう、だね……それって、チケットとかあるの?」
「チケットは売ってないよ。今回のはリアルでのスケジュールが1時間ちょっと空いたからライブをするって急遽決まったヤツだから」
「本人から教えて貰ったんだね」
「そうそう、なんならライブの特等席も用意してくれるまさにVIP待遇!そこまでしなくたって、あの子の頑張りは私が1番わかってるって言うのに」
そう言ってレインは街中をすいすいと歩いていく。やはり彼女もSAO生還者、ちょっとした細かい動きや流れるような歩き方も相まって人集りを縫って進むのもお手の物だ。
ユージオも遅れないようについて行く。
「ライブ見てく?」
「うーん、僕はいいかな」
ユージオ自身、ライブはあまり得意ではなかった。なんと言うか、空間が揺れるような大音量の音楽に圧倒されてしまう。祭りなどの催し物は好きではあるが、音が溢れ過ぎる場所は苦手らしい。
「じゃぁ、行きたいところあるんだけど…どう?」
「どこに?」
「道中で説明したお使いクエストの届け先。渡すだけだし、すぐ済むよ」
「分かった、僕もついて行くよ」
2人はそのまま人集りを抜けて、路地裏のとあるNPC鍛冶師がいるという鍛冶屋へ向かった。
「ありがとう、ついてきてくれて」
数分後、クエストNPCに渡されていたアイテムの入った麻袋を渡し、クエストを無事クリアしたレイン。渡した麻袋の中身の一部を報酬として貰ってホカホカ顔で鍛冶屋から出てきた。
「鍛冶屋みたいだったし、武器とか防具の調達もしようと思ってたから丁度良かったんだ。まぁ、君に止められたけどね」
「防具だったらもっといい店がメインストリートにあるし、そっちに行った方が得なの。さて……クエスト報酬のチェックと行こっか!」
「いいのがあるといいね」
「うん。私的には武器云々より、素材狙いだったから……あ、それなりに良さそうな素材発見!」
裏路地の塀に腰を下ろしてアイテムストレージを確認するレイン。それなりに収穫はあったらしい。
時折小さく声を上げながら一覧を入手順にして見ていく。と、その時。
「あ」
1つのアイテム名を指差して止まった。
「……どうかした?」
「うーん…噂って、本当だったんだ…」
そう言いながらレインはメニューのアイテム一覧をユージオに見えるように可視化し指で回して見せた。
「当たっちゃった…みたい」
そこを見ると、いくつかのアイテム欄の中に一つだけ、紫色の文字で表示されているアイテムがあった。
《Tempest》というらしい。
「テンペスト…?」
「うん。そのアイテム、表示が紫色になってるでしょ?それ、
「凄いね!良かったね、レイン!」
「…うーん……私としては複雑なんだけどなぁ」
かなり低確率で報酬として手に入れることが出来る、という事を聞いていたユージオも手放しで祝うが、レインはそれほど嬉しくないのか、頭を掻きながらあはは、と笑う。
「私、鍛冶師でしょ?だから、クエスト報酬の武器よりも自分で打った武器を使いたいと言いますか…」
「あ、そうか…」
彼女なりの鍛冶師としてのプライド、『自分の打った武器で戦いたい』という純粋な思いが見え隠れしていたようだった。
流石に序盤からここまで強い武器を持っていても彼女にとっては嬉しくは無いらしい。
うーん、と悩んだ結果、レインはメニューを戻して何やらメニューを操作している。
すると、ユージオのメニューに通知が来た。
フレンド登録はレインとしかしていない為、メッセージが来るなら彼女のみ。
《『レイン』からトレード申請が届きました》
との表示。
「トレード…?」
トレード申請を開いてみると、そこには先程見たはずの剣の名前があった。
「うん、私はその武器使うつもりは無いから、君にあげる」
「え!?」
古代級武具はどれも高値で売れる。耐久、攻撃力の双方において優秀であるソレに代わるレアアイテムはSAO時代にもあった。フィールドボスからのドロップアイテムや、ラストアタックボーナスの
「で、でも流石にこれは…!」
ユージオも流石にこれは受け取れない、とキャンセルを押そうとしてレインに止められる。
「世界樹、攻略するんだよ?それ相応の武器はあった方がいいって!今のところ、
「でも、鍛冶師として素材を買うお金とかいるだろうし、それに充てれば…」
鍛冶師______主に生産職は戦闘職といい勝負をするくらいには資金を使う。初めて1週間の彼女にはそれこそ喉から手が出る程欲しいはずだ。
しかし、レインは人差し指を立てる。
「うーん、頑固だなぁ………ならこうしようよ。君があの時私を助けてくれたお礼の追加報酬ってことで。世界樹に連れてくるだけじゃ、お礼し足りないんだから……ね?」
「_______そこまで言うなら…分かった。確かに、助かるしね」
「決まり!じゃあ受け取って。片手直剣って書いてあったし、君にピッタリだよ!」
「ありがとう、レイン」
「こちらこそありがとう、ユージオ君」
ユージオはレインの説得に根負けする形で、トレード申請の受理ボタンを押して受け取ったのだった。
「_____本当にいいの?」
「うん、そろそろ現実世界じゃ夕方でしょ?1度ログアウトしておきたいんだ。またログインした時は僕もここの戦闘にもっと慣れたいし、ここでいくつかクエストをこなしてみるよ」
アルンのメインストリートで装備をある程度整えて、ユージオはレインと別れることにした。
「あ、もうそんな時間なんだ。やっぱり時間が同期してないと分からなくなっちゃうね」
「うん、色々ありがとう。レイン。すごく助かったよ」
「こちらこそ、君のおかげでここまで来れたし……ユージオ君もALO楽しんでね」
「そうしてみるよ、慣れないことばかりだろうけどね」
そう言った後、ユージオは宿屋のNPC店員に話しかけた。
このALOでは即ログアウトという行為が制限されている。
理由としては色々だが、生理的現象___トイレなどや急な用事を思い出したりした時にログアウトはすぐできるとプレイヤー的に便利だが、それを悪用する輩がいる。
戦闘中、HPゲージがほんの数ドットしか残らない大ピンチ、その時に即ログアウトしてピンチを回避したり、盗みを働いて逃げる時にお手軽な脱出方法として使われてしまう。
それ故に、全てのプレイヤーは自身の種族のテリトリー内でのみその『即ログアウト』が許されているが、それ以外の場所ではログアウト後も数分間プレイヤーアバターがその場に残る。勿論その間のアバターに対して攻撃も通るし盗みなども可能となる。
元よりこの中立域であるアルンでは即ログアウトは出来ない為、全てのプレイヤーがキャンプアイテムなどを使うか宿屋を使うしかない。
そんな事をレインから聞いたユージオは早速宿でログアウトをすることにした。
「____五番の部屋をお願いします」
『五番だね、はいよ』
店員に番号を言って料金であるユルドを手渡す。
NPCの店員がテーブルの下から鍵を取って渡してきた。
「じゃあね、ユージオ君」
「うん、またね。レイン」
ユージオはそのまま五番の部屋へと入ってログアウトをしたのだった。
新たな剣を携えて、前へ。
ALO編に突入致しました。このALO編にて特別ゲストとしてテレビゲーム版のキャラクターを登場させる予定です。もし登場させるなら…?
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