part1 諦めきれない想いと現実の儚さ
パン!!パン!!
文字通り雲一つない空に号砲が響く。体育大会の始まりだ。
我が二分団は練習では負け続き。リレーでは四分団が全て勝利していた。一年生の学級対抗リレーでも序盤ダントツの一位だったが中盤で次々と抜かれトップと半周の差をつけられ安定のビリ。やはり本番でもそれは一緒で、練習で三回中三回もビリだったのになんと、一位……なはずはなく安定のビリだった。
他の学年に勝ってもらうためクラス全員が声を張り上げるも午前中の時点でやはりビリ。というより午前中に二分団が一位になった競技はあったのかどうなのかだ。
僕は康多に笑いながら話しかける。
「もう二分団終わったな。悪い意味で」
「それは言えてるわ。午後の競技も勝てる気がせんもんな」
果たしてこの体育大会、どうなることか。
今日は外部受験したクラスメイト達もやってきているようだ。
県で一番の成績を誇る中学に行っている奈緒も例外ではない。昼休み、時間が余っていた僕は奈緒の所へ行くことにした。
「やっほー奈緒」
声をかけると「あ、広樹!」と叫ぶと僕をすぐに近くに建物の陰まで引きずり込む。
「あのさ……」
「ほえ?」
「絶対にあんたと香里ちゃん結ばれなさいよ!!」
──へっ?いきなりなんだ?
「えっと……、なにゆえ?」
「あのね、ここだけの秘密で康多のことが好きなんだよね」
「奈緒が?」
奈緒は顔を赤らめながら頷く。
「で……香里ちゃんも康多のことが好きなの」
一瞬時が止まる。
奈緒はそんな様子に気づかず話を進め、また時間が動き出す。
「で広樹は香里ちゃんのことを好き。ってことはあんたと香里ちゃんが結ばれれば私にとってもいいし、広樹にとってもいいでしょ?」
僕にとって奈緒の声は聞こえてこそいるものの頭の中に入ってこない。
さっきの「香里ちゃんも康多のことが好きなの」という声が何度も頭の中で反芻する。
確かに背も高いし猫も飼っている。さらに面白いしそれでいてけじめもつく。香里がこの間言っていた条件に当てはまる。
そして前に康多と話していた「なぜ香里は僕らを誘ったのか」ももう解けた。つまりは香里にとって本命は康多であり僕はそのおまけ……ということなのだろう。
奈緒と別れ応援席に戻っても沈んだ気持ちは戻らなかった。ここにきてネガティブな性格が。
それに気づいたのか康多は帰るときいつもの場所で聞いてきた
「なんか昼休みの後から暗い顔してるぞ?ひょっとして香里関係か?」
くっ……鋭い。
「いやまあそんなところかな……」
「そうか……。頑張れよ」
あまり深くは聞いてくれない康多に僕は心から感謝した。
「うん。ありがと」
家に帰った僕は紙を出して僕、康多、香里、奈緒の関係を書き出してみる。
……。
なんだこの三角関係を通り越した四角関係は。
「でも……」
僕は小さく呟く。
康多になぞ勝てるはずもない。
僕の胸の中の想いは儚く砕け散るのだった……。
どうも音槌です。
いやぁなんだか大変な関係になってきましたね。
あ、ちなみにこの四角関係の方は完全オリジナルです!!
(よくもこんな恐ろしい舞台にしてくれたな、と広樹が怒っていますが……)
体育大会の結果はノンフィクション。
絶対クラス替え間違ってますよ。
☆
さて、ここから広樹がどうするのかは神のみそ汁!!
では!