「おはよ〜。久しぶりだね〜。冬休みどっか行った?」
そのような会話がたくさん聞こえてくる。もちろん、僕の周りでもそんな会話が繰り広げられる──はずだった。
「ねぇねぇ、広樹〜。三学期中に告っちゃいなよ」
僕の周りでの話題は冬休みの話ではなくそう、僕の淡い恋心の話だ。奈緒や康多が小声で話しかけてくるのだ。
僕は所々にできた人の輪を見ながらため息を吐く。
「はぁ……。僕なんかに叶う恋はないよきっと」
そして心の中で想う。
(──でも、叶えたい……な)
いつも以上に暗い声を出した僕に突如名言がふってきた。
「広樹、『叶わない』って思って落ち込むか、フラれて落ち込むか、どっちにしろそんな暗い声出すくらいだったら思いを伝えて落ち込む方が私はいいと思うけどな」
「うん、奈緒が言う通り、何もしなかった後悔より、何かを一生懸命やって失敗した後悔の方が経験にもなるしな」
康多と奈緒の言葉がなんだか同い年に言われている言葉とは思えないほど僕の心に響いた。
「……」
僕はしばらくの沈黙を保った後、こう呟いた。
「確かにやってみないと分からないよね。家で充分に考えとく」
ちょうどその時チャイムが鳴った。皆、廊下に並び体育館へと向かう。
いよいよ、三学期のスタートである。
「ねえねえ、広樹〜。香里ちゃんのことが好きなんでしょ〜。知ってるよ〜」
「そんなこと誰が言った?でたらめにも程があるよ」
と、僕は適当に嘘をついて誤魔化す。
(──まさか、奈緒の奴……)
そう考えた僕は奈緒の席へと向かう。学期早々、席替えがあったためかなり離れた。
「あのさ、奈緒。嘘つかないでよ。誰にも言わないって言ったじゃん。それなのに……」
「はぁ!?うそ、私が!?そんなわけないじゃん!康多なんじゃないの?」
それを聞きつけた康多がやってくる。
「奈緒、マジさ〜自分が疑われたくないからって人に罪をなすりつけるとかひどくね?」
奈緒も反論する。
「いや私が教えたりすると思う?」
『思う!!』
僕と康多の声が重なる。
(──ん?ちょっと待てよ?)
「奈緒、この間さ、僕に香里のことをどれくらい好きなの?って聞いてきたじゃん。その時小声だった?」
僕の質問に奈緒は小さく首を振る。
「いや……。」
「しかも周りには人がいたよね。」
「はは〜ん。そういうことか。奈緒、俺のこと疑ったなぁ〜」
康多が笑いながら奈緒を追いかける。奈緒は康多から逃げながら僕に謝る。
……。
でも、謝られたところで現実とは薄情なもので何にも変わらない。僕が香里のことが好きだという噂はきっとすぐに学年中に広まるだろう。
こうなったら思いきるしかないのかも……しれない。
どうも!毎週水曜更新、守れました!
今回は事実要素少なめのほぼオリジナルです!
◇次回予告◆
ついに次回、Season1の山場を迎えます!!!!
もしかすると、更新が遅れるかもしれませんが気長に期待せず待っておいてください!
では!