休日になった途端投稿する、という分かりやすいパターン……。
「ちょっと、トイレにでも行ったふりしといて」
入ったとたん、奈緒から言われる。
いきなり、あの作戦をするつもりなのか……。
とりあえず奈緒の言う通り康多に、トイレ行ってくるわ、と言ってあの二人を離れる。
トイレ方面に行く足を止め、棚の影に隠れる。
人が多い日なら怪しまれるが今日は人が少ない。
「前、ああやって言われたけど──」
あの、勉強会の時か。
奈緒が続ける。
「やっぱり、諦めきれなくて……」
そんな短期間でまた告白をしているのか……。
さらに続けようとする奈緒をさえぎって、言う。
「前も言ったじゃないか。心に決めている人がいるって。それに誰かと付き合うってのは自分から言いたいんだ」
相変わらず、さらっとかっこよく言うよなぁ。
「ごめん……」
奈緒が、謝る。
「お前が謝ることじゃないさ」
さてと、僕も戻るかな。
「ただいま〜。あ、待っててくれたんだ。さんきゅう」
そして、無事、あれやこれをゲットし、帰路についた。
そういえば、康多が心に決めた人って、奈緒は知っているんだろうか。
康多に聞いてみると「教えたはずはない」と言っていた。
「じゃあ、僕が教えちゃおっかな」
康多は自分の自転車を僕の自転車にぶつけてくる。
「あと、高城が知っているのとは別だぜ?」
えええ!?そうなの〜!?
「えっ、だ、だだだだ誰!?」
自分でも動揺しすぎだと思う。
「香里。……って言ったら?」
「発狂する」
うん。発狂しそうだ。
発狂しなくとも性格が暗くなるであろう。
「まあ、もちろん嘘だよ。絶対に教えないってなら教える」
もちろんだよ、という思いを込めて頷く。
「えっとなぁ……。磯田椰子乃」
あぁ、椰子乃かぁ。
「お前の元カノだったなぁ。そう言えば」
ぐさりと康多に言ってみる。
「もう、4年のころの話はいい」
一度、別れたはずだが、また好きになったんだな。
しかも4年のころは椰子乃からだったのに今回は康多から。
日常生活でも仲がいい二人はきっとお似合いだろう。
「え、じゃあ春歌は?」
しばらく考え込む康多。
「そこは俺も迷ったよ。でも春歌にも好きな人はいるんだろ。だったらそっちを優先すべきじゃないか?」
くそ〜。置いていくんじゃないよ。
僕も康多みたいに割りきれたらいいのになぁ。
「それがお前の性格なんだろうな」
康多の言葉に少し苦笑いをする。
「ずっと追いかけてればいつかは振り向いてもらえるんじゃないか?」
現実はそう甘くないんだよ……。
「ま、前も言ったけど自分磨きだな」
そう言ってどこから持ってきたのか紙ヤスリを取り出す。
「ちょ!そう言う意味の、磨き、なのか!?」
何事もなかったかのようにポケットに紙ヤスリを戻すと平然と言う。
「紙ヤスリで磨くはずがないだろ」
じゃあ、なぜに紙ヤスリを……。
はい。多分明日も初恋です。
新たな展開ですね〜。
康多に元カノがいたとは驚きです。
次回は康多と椰子乃の日常でも書きますか。