というわけで連続投稿part28です。
「そういや、この間の奈緒の時ってどんな感じで振ったの?」
いつもの倉庫の陰。
長い夏休みが明け、自転車を止め康多と喋る日常が戻ってきた。
「あぁ。あのときか。もう、簡単に言ったよ。『俺は心に決めた人がいるし、誰かに告白されて付き合うのは俺の性に合わない』ってな」
「おぉ。なんかカッコいい!」
「何がだよ」
「ところでさ……」
僕は本題に入る。
「香里が今度の休み明けお前に告白するらしいぞ」
「……」
康多は黙り込む。
「色々と大変だな……」
「まったくやれやれだぜ」
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週明け
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「──で、私思ったの。やっぱり私が好きなのは康多だって。だから……」
中学校の自転車小屋の康多の自転車の前で香里が話している。僕は小屋の裏側に潜んで聞いている。
「だから付き合って欲しいの」
康多はしばらく考え込む。
「……気持ちは分かった。じゃあ聞くぞ」
「何?」
「仮に付き合うとしよう。で、付き合ったからと言ってどうなるんだ?」
「えっ……」
香里が黙り込む。
「えっと、それは……一緒にいる時間が長くなる……とか」
苦し紛れに答えているのが分かる。
「それは両思いの場合はそれで両方とも納得するさ。でも俺には好きな人がいるんだ。もっとも俺の場合付き合うとかどうとかじゃなくてただ単純に好きなんだ。」
「……」
香里が黙り込んだ。
「いや、香里が嫌いなわけじゃない。それどころか頭もいいしドジだし面白いし俺からすると結構好きだよ。でもお前に恋愛感情は抱いていない。というわけで友達としてこれからも遊ぼうな」
「……ドジだし、って私そんなにドジかなぁ」
「あぁ。ドッジビーやるだけで転けたり歩いただけで滑ったり──」
「もうそれ以上言わないでよぉ」
香里が頬を膨らませる。そして言った。
「友達として、よろしくね」
「えっと……。どういうことかな?」
「だから、私か花歩かどっちかを選んで」
ここは放課後になり誰もいなくなった廊下。
「廊下に放課後呼び出された」というマッスーの言葉で僕と康多は下駄箱の陰で一部始終を見ることにした。
「と言われても……」
マッスーは困ったように目を伏せる。
「二人ともに恋愛感情は抱いていない。言葉にするとそれだけなんだけどね……」
その言葉に二人が静まる。構わず続けるマッスー。
「でも、僕にも好きな人がいたから分かるんだ。初恋ってのは儚く淋しいってことは。でも初恋は、叶わないから初恋なんじゃないかな。失敗をするからこそ次に生かせる。そういうものだと思うよ。だからごめんね」
僕と康多はそっと場を離れた。
「というわけで伝言役よろしく」
「おぅ了解。で、詳細は?」
「まず日時は文化発表会の日の放課後。場所は西階段の踊り場で。」
「ぉし。行ってくるぜ」
早速三組へ行こうとした僕を康多が止める。
「待て。図書室で偶然会ったふりをして切り出してほしい」
「ラジャー!!」
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図書室
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「あ、春歌」
「ん?どうかした?」
「文化発表会あるじゃん。その日の放課後に西側の……音楽室がある方の階段の踊り場に来てほしいだって」
「えっ?誰が?」
「そこは内緒ってことで」
「えぇ〜」
春歌が思いっきり不満げな顔になる。
「まあ後一週間もすれば分かることだから」
そう言ってなだめる。そして……
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文化発表会放課後
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「別にだから何とかいうわけじゃないんだ。ただ俺は春歌のことが好きだっていうこと。それだけを伝えたかったんだ」
西日が差し込む階段で春歌の顔が赤く染まる。その赤さは西日のせい半分、康多のせい半分だろう。
「そっか……。でもごめん私にも好きな人はいるから」
「だと思ったよ」
康多はため息をつく。
「じゃ春歌、時間とらせてごめんな」
「いや、いいの。あと康多君の友達ではあるからね」
そう言うと階段を降りていった。
「まぁ、お疲れさん」
僕は非常扉の陰から飛び出す。
「おわ!いたのか」
「もちろん!!」
僕は笑う。
「まぁ、これで何もかもが終わったな」
「あぁ」
康多は小さく頷いた。
どうも、音槌です!!
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ついに告白編が終了!!
というわけでダラダラと書いていきます。
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◇明日の投稿◆
[こちら私立警察事務所です!!〔学校の七不思議(事件の幕開け)〕]