Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」   作:必殺遊び人

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た、大変でした。
少し無理矢理な感があるかもですが、なるべく頑張ったつもりです。
参考にしてる作品があるのですがわかる人いたら嬉しいです・・・・・・有名な作品なんですが。
そんなわけでどうぞ!


7話目とかとか〜 ♪ stay night編 セイバー

 

 

 

 第四次聖杯戦争.

その終わりとともに流れ出た聖杯の泥によって,冬木の街は『地獄』と化していた。

 そこを歩く一人の少年。

 彼は自分の体から発せられる痛みに顔を歪めながらも、何とか前へと足を進める。

 ここがどこだかわからない、自分が誰だかわからない、なぜここにいるのかわからない。

 何もわからないな状態で、それでも前へと進んでいた。

 ここで止まったら死んでしまう。そんなことを思ってたのかもしれない・・・・・・。

 少年はとうとう力尽きた。瓦礫を枕に仰向けに転がる。

 死にたくない。その願を受けるようにに伸ばす右手。だが、周りにあるのは死体のみ、つかむ者などいるわけがない。

 右手を上げる力すら無くなりその腕が重力に従いながら倒れていく。

 そもそもすでに死に体。ここまで生きていることが奇跡なようなものだ。

 しかし、その手が地面に着くことはなっかた。

「よかった・・・・・・本当に良かった・・・・・・・・・・・・」

 泣きながら自分の手をにぎる男を見ながら・・・・・・少年は目を閉じた。

 

 

 気がつくと少年はベットの上いた。自分の体を確認するように動かすが、先程までの痛みはない。

 先程と明言したが、実際にどのぐらい眠っていたのかもわからない。

 だが、少し思い出したことがある。

 それは自分の事。

 まずはじめに、自分の名前を思い出した。名字が三文字、名前も三文字、どこにでもある名前だ。

 次に自分が何者だったかを思い出した、どこにでもいる普通の学生で、義務教育も終わってなかっただろう。

 しかしそれでは明らかにおかしいことがある、まず容姿が違う、年齢も違う。

 普通ならありえないことに、少年の頭ではすでに限界だ。

 

 

 そんな少年の心をよそに、病室の扉が開いた。

 入ってきたのは自分を助けてくれたであろう一人の男。それを見て少年は驚いた。なぜなら少年はその人物を知っていたのだ。

 自分が好んで見ていた作品、Fateに出てくる衛宮切嗣。

 なんとなくだが、少年の直感がそう告げていた。

 いや、そんな曖昧なものではない。

 確実に、ここがFateの世界だと、理解している自分がいる。

 混乱を極めた少年は、考えるのを放棄した。

 もしこの状況で冷戦な判断をできるものがいるのなら、是非とも変わってもらいたい。

 

 

 男が少年に話しかける。

「一つ聞くけど、知らないおじさんに引き取られるか、養護施設に行くのとどっちがいいかな?」

 

 少年は黙って男を指差した。確認するべきことがある。自分がどこの誰になってどこへ来たのか。

 男は満足したようにうなずくと、少年へそれを言った。

「――――うん。はじめに言っておくとね、僕は魔法使いなんだ」

 少年は確信した。ここはFateの世界で自分は衛宮士郎なんだと。

 切嗣が少年に名前を聞いてきた。少年は迷うことなくこう答えた。

 

 ―――士郎、と。

 

 

 

 少年、衛宮士郎は屋敷の縁側で座っていた。隣には切嗣がいる。

「僕はね『正義の味方』になりたかったんだ」

 少年はそのことを知っていた。

「なりたかったって・・・・・・諦めたのかよ」

「あぁ、『正義の味方』はね、期間限定なんだ。大人になったらなれないんだよ。・・・・・・もっと早くに気づけばよかったのにね」

「だったら俺がなってやるよ、親父の夢は俺が叶える」

「そうか、安心した」

 そう言って切嗣は目をとじると、そのまま眠るように息を引き取った。

 

 

 ****************

 

 

 それから数年、士郎は魔術の訓練を行っていた。

 本来の衛宮士郎同様、魔術回路のオン、オフを行わず毎回一から作り上げるという、命知らずな行為を・・・・・・。

 魔術を知っているものならば行うことはない。それでも士郎はやるしかなかった。

 もちろん理由はある。

 聖杯戦争において、宝具を投影するには普通ではありえない、強固な魔術回路が必要だ。

 なぜ、そのようなことをしているのか。それは・・・・・・。

 

 衛宮士郎に宿った少年は、この世界で生きるために衛宮士郎の模倣。それを選んだからだ。

 

 ・・・・・・いや、それしか道がなかった。

 

 少年は、衛宮士郎になるしかなかった。

 自分の意志での行動。それは歴史を、未来を、世界そのものを、それら変えることになる。

 

 仮に、一つでも運命が崩れればどうなるか。

 

 例えば、衛宮士郎のように生きず、間桐桜と合わなければ、ランサーに殺された際、遠坂は士郎を救わないだろう。もしかしたら助けるかもしれないが、可能性は低くなる。自分の妹の心を開いてくれた人、助けた理由の大半がこれのはずだ。

 なら、ランサーとアーチャーの戦いを見なければ・・・・・・そうすれば、遠坂との協定関係は難しくなり、その後の聖杯戦争を生き抜くのは至難の技だろう。遠坂たちの助けをなしにバーサーカーの相手など、無謀にも程がある。

 アーチャーとの戦いもそうだ、それから逃げれば固有結界を見ることができないし、その戦闘で得るはずのアーチャーの戦闘技術を得られず、にギルガメッシュと敵対などできるわけない。

 聖杯戦争自体に挑まなければ、ギルガメッシュが聖杯を手にし、世界は滅び、どこにいようと関係ない。

 

 全ての歯車が噛み合ってこそ完成するFateの世界。その中心にいるのが衛宮士郎なのだ。

 

 原作知識などほとんど役に立たないだろう。いや、変えることができないと言ったほうが正しい。

 『衛宮士郎として生きる』それが――――少年の唯一できることなのだ。

 

 だからこそ自分を捨てた。自分の心をなくした。不必要な意思をなくした。衛宮士郎を演じるために。

 『正義の味方』に憧れ、自分を顧みず、他人のために生き、その生き方を後悔しない。

 そんな衛宮士郎になるために。

 

 

 ――そして運命の夜がおとずれる。

 

 

 部活の備品の整理で遅くまで残り、学校から帰宅最中、士郎の耳に、激しい金属音が聞こえてくる。

 始まったのだ。

 士郎は迷うことなく校庭に向かう。

 そこには、知識通り、アーチャーとランサーの戦闘が行われていた。

 

 士郎の聖杯戦争、その序章が幕を開けたのだ。

 

 二人の戦闘を見ながら慎重に時を待つ、アーチャーの宝具は確認した。これで『干将・莫邪』は投影できる。

 流れを変えることはできないが、力はいくら持っていても問題はない。

 士郎は今日、ここで一回目の死を迎える。生き返れるかわからない、しかし士郎は迷わない。ここで死ぬことは必要なことだ。何より、これから進む自分の未来を考えるなら、はじめに(地獄)をくぐった方がいい。士郎はそう考えたのだ。 

 ランサーが宝具『刺し穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)』を打つ前にわざと注意を引き、こちらに意識を向けさせる。

 そのまま逃げるように校舎の中に入ると、思惑通り、予定どおりに士郎はここで死ぬ。

 心臓には一本の槍が刺さり、苦痛に顔を歪めながら、意識をなくす直前、それを聞いた。

 

「なんで・・・・・・なんであんたが・・・・・・よりにもよってこんな時に・・・・・・いえ、まだたすk――」 

 

 数分後、士郎は目を覚ますと、自分が賭けに勝ったことを確信した。そのまま迷うことなく家へ向かうとセイバーの召喚準備を行う。

 おそらくランサーが現れるだろうが、来ると分かっていればなんとかなる。

 

 家へ戻り、蔵へと向かうと、後ろからの殺気を感じ思わず避ける。

「ほぉう、いまのを躱すか。しかし解せねぇな、ならなんでさっきのを避けなかったんだ。心臓を穿たれて生きてるのも何かからくりがあるんだろうが・・・・・・」

「随分な言いようだな、人一人を殺しておいて。流石に死んで間もない身なんでね、少しぐらいは生きていたいさ」

 予想より早いランサーの登場に、思わず挑発めいた行動をとってしまう。

 話しながらも蔵へと後ずさる。

「なるほどな、まぁあれだ運がなかったと思って諦めてくれや、苦しまないように殺してやるからよっ!」

 ランサーは士郎の心臓めがけて槍を振るう。

 それを士郎は、とっさに投影させた『干将・莫邪』をクロスさせ受け止める。しかし勢いまでは殺すことができず、そのまま蔵の中へと吹き飛ばされた。

 初めての宝具の投影故か、それとも基本格子が甘かったのか、剣はすでに壊れている。

 それよりも驚愕すべきは英霊の力。

 知識と実際に経験するには、何もかもが違いすぎる。

 ふと顔を上げると、先ほどとは違い警戒心をあらわにしたランサーがこちらに問いかける。

「小僧、お前一体何者だ。さっきの剣、アーチャーと同じものだろ。・・・・・・まぁどっちにしろここで終りだがな」

 士郎は思った。

 こんな奴らと戦えるのか、と。

 それでも。

 士郎はその恐怖を断ち切った。なぜなら、士郎は演じるだけでいい。まねるだけでいい。

 

 ――今まで通り、衛宮士郎を。

 

 ランサーは槍を向ける。士郎はそれを見て怒ったように声を上げた。

 先ほどとはまるで別人のようにも見える。

「ふざけるな、助けてもらったんだ・・・・・・だから俺は生きなきゃいけない」

 ”トレース”しろ衛宮士郎を、本人だったら何を言って、何をするか、

「――生きなきゃいけないのに・・・・・・人を平気で殺すお前のようなやつに!」

 今までどおり自分を殺してなりきれ、俺は衛宮士郎、それ以外の何物でもない。

 

「――簡単に殺されてたまるか!」

 

 士郎の叫びとともに蔵が光りに包まれる。現れたのは青い騎士。

「サーヴァントセイバー、召喚に応じ参上した。問おう、あなたが私のマスターか」

 ランサーを吹き飛ばし佇む姿に、士郎は知っていたはずなのに声が出ない。

(なんて・・・・・・きれいなんだ)

 それは一目ぼれだった。

 何を暢気なと言われればその通りなのだが、士郎にとってそれは本来ありえない感情なのだ。

 

「今その話は後にしましょう。まずは敵を倒します」

 そう言ってセイバーはランサーとの戦闘を開始した。

 

 ――そしてようやく、衛宮士郎の聖杯戦争が幕を開ける。

「どうしたランサー、足を止めては槍兵の名が泣くぞ」

「卑怯ものめ! 己の武器を隠すとは何事か!」

 

 ――物語は進んでいく。

 

「そっか、そういうことか・・・・・・はじめまして、素人なマスターさん」

 

 ――遠坂との会合を終え。

 

「衛宮士郎、これより君の世界は一変する。君は殺し、殺される側の人間になった。その身はすでにマスターなのだから」

「戦うさ・・・・・・聖杯戦争なんて馬鹿げた争いを終わらせるためにな」

「喜べ少年、君の願いはようやく叶う、取り繕う必要はない、君の葛藤は人間としてとても正しい」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 ――協会にて言峰綺礼との問答をし。

 

「久しぶりだねお兄ちゃん、じゃあ殺すね。・・・・・・やっちゃえバーサーカー」

「やるじゃない凛のサーヴァント、まさか一回殺されるなんてね。帰りましょうバーサーカー、またね・・・・・・お兄ちゃん」

 

 ――イリヤスフィールとの戦闘を終える。

 

 

 屋敷に戻り、遠坂たちとの協定関係を終えた士郎たちは、セイバーと今後の方針を話し合っていた。

「士郎、マスターとしてあのような行動をとられては困ります」

 先程のバーサーカーの時、セイバーをかばって前に出たことを言っているのだろう。

「わっ・・・・・・悪い、あれは必要なことで・・・・・・」

 セイバーを前にすると少なからず衛宮士郎がくずれてしまっている。さきほどのことも、遠坂たちと協定を結ぶのに必要なことだった。

「士郎、何か私に隠していることはありませんか?」

 突然のセイバーの質問に微かに士郎の方が揺れる。

「・・・・・・どうして、そう思ったんだ・・・・・・?」

「いえ、どうも私といると、必要以上に何かを警戒しているようで・・・・・・私は信頼におけませんか?」

 どこか悲しそうにするセイバー。その表情に思わず「あっ」と情けない声が漏れる

 もう無理だ。士郎は自分の心がこんなにも弱いことを知らなかった。

 セイバーのその表情をこれ以上見ていられない。

 仕方がない、だって――これがこの世界にきてやっと見つけたもの・・・・・。

「セイバー聞いてほしいことがある」

 こんなつもりじゃなっかた、話す必要なんてない。でも――。

「俺は、この世界の人間じゃないんだ・・・・・・別の世界から来て衛宮士郎になったものそれが俺の正体だ」

 ――それでも。セイバーには話さずにはいられない。

 

「今から話すことは全て事実だ。信じろとは言わない、それでも最後まで聞いてほしい」

 理由なんて分かっている。でもそれは、殺してきた自分の心だ、認める訳にはいかない。

 それでも認めるしかないのだ・・・・・・それは、この世界で初めて感じた・・・・・・。

 

 ”自分本来の感情”なのだから。

 

 

 ****************

 

 

「そ、それは本当のことなのですか・・・・・・」

 士郎は話したのだ、自分がどういったものなのか、これから何が起こるのか、そして・・・・・・聖杯の現状すらも。

「事実だ。俺は、本来衛宮士郎が通るべき道と同じ道を歩くしかない。セイバーが信じようが疑おうが結果は変わらない」

 セイバーは未だ整理がつかないようで、何か考え込んでいるようだ。

「・・・・・・いえ、信じましょう。ですが一つおかしな点がある、もしあなたが言った通りに進むつもりなら、私にこの話はするべきではないでしょう。なぜ話したのですか?」 

 

 ――お前に惚れたから。

 

 そんなことを言おうとした自分を気合で押さえ込み、適当な理由をでっち上げる。

「俺がお前のマスターで、お前が俺のサーヴァントだからだ・・・・・・それじゃだめかな?」

 セイバーは俺の言葉に軽く笑う。

「いえ、それで十分です。それだけあれば私はあなたの為に剣を振るえる。・・・・・・しかしそれでも信じがたいです。・・・・・・聖杯が汚染されていたなど・・・・・・」

 『王の選定やり直し』そんな願いを持っていたセイバーにとっては、信じたくないことだろう。

 その姿を士郎は見てられなかった。セイバーを助けたいと思ってしまった。おこがましいにも程がある。自分すらない人間に、誰かを助けたいという心など・・・・・・。

 それでも、士郎は言うしかなかった。言うべきだと思った。

「セイバーお前は間違ってなかったよ・・・・・・ブリテンは滅んだかもしれないけどお前は間違ってなかったよ」

 その言葉にセイバーは先ほどとは雰囲気を変え、怒気をまぜた声を上げる。

「士郎、いくらあなたでもその言葉は聞き捨てなりません。あなたが何を知っている!」

 過去、王の問答で否定された願い。そして今度もその願いは否定された。

「滅んでいい国などあっていいわけない!! 何が間違っているというのですか! な・・・・・・なぜ、みんな私を責めないのですか・・・・・・!」

 それはセイバーの後悔。

「ましてやそうしてしまった王など・・・・・・変えてしまったほうが良いに決まってます・・・・・・」

 セイバーは泣きそうな声で言った。それでも、だからこそ士郎は止まれなかった。

「確かに、お前が何を守りたくて、どんなふうに傷ついたかなんて詳しくは知らない。俺なんかの言葉が届くかなんてわからない。それでも国を・・・・・・それを守るために全力を尽くしたなら、そのことに胸を張れよ! お前は王の選定をやり直せればそれでいいと思っているのかもしれない。――けどな、本当にそれで良いのかよ。大して知りもしない人間を勝手に持ち上げて、そいつに自分の一番大切なものを預けて、それで全部満足できんのかよ!」

「わっ私は・・・・・・」

「俺は知ってるぞ・・・・・・第四次聖杯戦争になんでランスロットが出てきたのかを。あいつはお前に捌いてほしかったんだよ。それが何を意味するか分かるか? あいつは、英霊になってなお、お前の事を王だって思ってたってことだ。ランスロットだけなはずがない、お前の民は、お前が王でそれでよかったって・・・・・・そう思ってたはずだ」

 セイバーは言葉を出せない。

 

「お前が選べよ――」

 

 士郎の言葉は止まらない。

「――自分に仕えてきた者たちの気持ちに答えるのか、他人に全部預けて逃げるのか、傲慢だろうがなんだろうが、お前が胸を張れることを選んでみろよ!!! 勘違いするなよ。俺はセイバーが何を見てきて何を思ったのかなんてわからない。それでも、自分の後悔だけしか耳を傾けず、国民の感情を理解しようとしないそれを、本当に正しいと思えるのかよ」

 

 ――アーサー王は人のこころが分からない。

 

「本当にいいのか? 確かに聖杯なら過去すら変えられるかもしれない。でも、それはこの世界のじゃないはずだ。別の世界、並行世界で、セイバーが王ではない。もう一つのブリテンができるだけなんだぞ? 意味がないとは言わない。でも、それでほんとにお前は救われるのかよ」

 一瞬。静寂がこの場を支配した。

 

 そこで、

「・・・・・・それでも国は幸福になるはずです」

 ぽつりと、セイバーは口にした。

 

「みんなが幸福になるならそれでいいではないですか・・・・・・たとえそれが、聖杯によって作られた世界だったとしても・・・・・・! 私だけが罪を覚えて、ブリテンが救われる世界があるのなら!!!」

 素直にすごいと思った。

 それでも。

 衛宮士郎は否定する。

「・・・・・・違うよセイバー。世界を一から作って、誰にも区別がつかないから大丈夫? 他の誰にもわからなくたって、世界中が笑顔になったからそれで幸福? そうじゃないだろ? そうじゃないはずだ。他でもない、お前が違いを知っていたら――それはきっと悲劇なんだよ・・・・・・」

「・・・・・・ッ」

 崩れそうなセイバーを、士郎は無意識に抱きしめる。

「大丈夫だ。お前と共に戦った守るべきブリテンの人々は、お前を恨んでなんかいない。確かに滅びの運命は辛かったかもしれない、それでも、お前と一緒に戦えたことを、きっとみんな感謝してる。だからお前は泣かなくて良いんだよ。お前と共に生きたブリテンの人たちは、お前が一人で不幸になることなんて、誰も望んでないんだから」

 セイバーはその言葉に目を見開き、ついにその目には涙が出ている。

「なら、なら私はどうすればよかったんですか! ・・・・・・いままで私は、何のために聖杯を・・・・・・」

「だったらここで世界を救ってくれ。過去を変えることなんてできない。ここはお前が築いた国じゃないかもしれない。けど、聖杯を壊し世界を救えるのはお前だけだ。自分に罪があるというのなら、今ここで洗い流せ。過去は背負うもので、未来は作るものだ。なら今のおまえにできることは一つ。ここにいる六十億人、その生命の未来のために戦ってみろ。お前に仕える騎士はいないが一人じゃない、俺が一緒に戦う。俺がお前の隣に立つ。ここで戦うか今決めろ・・・・・・・・・・・・此処から先は地獄だぞ・・・・・・」

 士郎はセイバーに手を差し出す。

 セイバーは、立ち上がって士郎の手を取った。

「私は士郎のサーヴァント、ならば答えは決まってます。ですが、この戦いには私自身の願いもある。・・・・・・その先が地獄というのなら、私はそこから士郎を引き上げる、それが私の願いです」

 セイバーの言葉に驚くが、驚きは次第に笑みへと変わり――

「――ああ、俺達の聖杯戦争を始めよう」

 

 衛宮士郎の聖杯戦争はここで終わり、

 

 二人の聖杯戦争が始まった。

 

 

 

 

 

 

 




最初のstay nightのセイバーが"いつの間にか好きになっていた"というんのがあまり好きではないので、落とす話にして見ました。
これでセイバーが落ちてくれると嬉しいなーとか思ってます。
次回は少し長めになると思うのでよろしくお願いします!

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