Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」   作:必殺遊び人

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学校が忙しくなり少しづつ遅くなるれません! なるべく早く書き上げます!

無理やり原作に戻した感じのオリジナル展開ですが、楽しんでもらえると嬉しいですm(__)m

それではどうぞ!!


5話目とかとか〜 ♪佐々木小次郎編

 

 

 

 先ほどの戦闘が嘘のように、そこには静寂に満ちていた。

 士郎は周りを確認する。激しい衝突があったのだ、被害がイリヤ達にも及んでいる可能性もある。

「・・・・・・・・・・・・」

 士郎の見渡した先には誰もいなかった。冷たい汗が流れる。

(えー?? ちょっと待て、なんで誰もいないんだ? エクスカリバーの余波で消し飛んだとかないよな!?)

 頭の中で叫び声をあげるも、それで何かが変わるわけではない。

 困惑し続ける士郎はそこで、地面から頭の上だけ出しているルビーを見つけた。

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 再び訪れる静寂。

 それを先に破ったのはルビーだった。

 ドカーン! という爆発音とともに、地面から飛び出してくる。それに続くように美遊とサファイア、イリヤが這い上がるように出てくる。

 地面に隠れていたであろうイリヤ達を見て、安堵の表情を浮かべる士郎。

 声をかけようとイリヤ達に近づくと、士郎が口を開く前にイリヤと美遊が突っ込んできた。

「ぐっはっ!?!??」

 間抜けな声とともに背中から倒れこんだ士郎は、自分に抱きつき、泣きながら自分の名前を呼ぶ二人に目を向ける。

「よかったです・・・・・・怖かった、また・・・・・・また・・・・・・・・・・・・」

 美遊の小さな声が士郎に届く。普段の美遊からは考えられないほど感情が溢れている。

 士郎はその心の内を理解する。こちらの世界にやってきてから初めてできた心を開けた人。兄になると言われた美遊にとっての士郎の死は、再び自分が一人になることを意味する。

 だからこそ安堵する。目の前に兄がいることを、士郎がいることを。

「・・・・・・っ、ぐすっ・・・・・・」

 イリヤの方は士郎の胸に頭を押さえつけながら涙を流していた。

 数こそ少ないが、イリヤも戦闘を行なっている。だが先ほどの戦闘はその比ではなかった。絶対に自分が入れない世界。

 そんなところにいた兄を心配しないなんて無理だろう。それは戦争・・・・・・いや、もっとひどい何かに、家族を送り出すようなものだ。

 そんな二人の頭に手をおいて士郎は優しく声を出す。

「大丈夫だよ。言っただろう? お前達を守ると、俺は"死んでも守る"なんて腑抜けたことは言わない。必ずお前達のところに"帰ってくる"。心配するなとは言わない、でも信じていてくれ。今も、そしてこれからも」

 士郎の言葉に二人はようやく頭を上げると、三人はお互いに笑顔を見せながら手をとる。

「ところでなんで地面の中なんかにいたんだ? それに遠坂とルヴィアはどこだ?」

 それに答えたのはルビーだ。

「何言っちゃってるんですか、士郎さん! あんな馬鹿みたいな余波のそばに、まともにいられるわけないしょー! このルビーちゃんの機転がなければやばかったんですよ! まーおかげで良いものは見れましたけどねー」

 何やら途中からニヤニヤしながら話すルビーは「あっ遠坂さん達なら瓦礫によって気絶中でーす。困ったもんですよー」と追加した。

 そこで士郎は冷や汗をかきながら、イリヤ達に質問する。

「・・・・・・いつから隠れてたんだ?」

  アルトリアとの会話を思い出した士郎は、イリヤ達に見られたかもしれない。というか忘れていた、と本格的に汗を流しながら焦りはじめた。

「聖剣がぶつかりあった時です。ルビーとイリヤスフィールが地面に穴を開けたのでそこに隠れてました」

 美遊が返答し、「もー怖かったんだからね!」とイリヤが抗議の声をあげる。

 とりあえず、美遊とイリヤには見られていないことを確認し、先程から士郎の周りでニヤニヤし続けているルビーに顔を向ける。

「どこから見た?」

 イリヤと美遊には聞こえないように話す。

「えー、言っちゃって良いんですかー? いやー士郎さんかっこよかったですよー。安心してください! 言葉で語れないあの感動は、バッチリ録画させていただきました!」

 全く何も安心できないルビーの物言いに士郎は頭を抱える。

 てか録画機能とかいらんだろ! と、カレイドステッキを作った人間へ恨みを向ける。

「ルビー、わかってると思うが・・・・・・」

「わかってますよー。なぜ士郎さんとあのセイバーがあんな関係なのかはわかりませんが、今は誰にも見せる気はありませんよー。でも、いずれ教えてくださいね!」

 イリヤ達に聞こえないように小声で、話してくる。

「・・・・・・助かる――? ルビー、俺への呼び方変わってないか? 前は確か"お兄さん"だったと思うんだが?」

「だって今日からなのでしょう? 衛宮士郎として生きるのは」

 その言葉に思わず体が揺れる。

 自分で先ほど言ったこととは言え、その意味を理解している者がいるとは思ってかったのだ。

 士郎はなるべく同様を抑えながら会話を続けた。

「気づいてたのか?」

「私達カレイドステッキは、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグに作られた魔術礼装です。第二魔法にも詳しいんですよー。と言っても、半信半疑だったんですがねー、今日までは・・・・・・」

「なるほどな、あの魔法使いの魔術礼装なら当然か。・・・・・・俺のことについてはいずれ話す。今は黙っていてくれ」

 いずれ気づかれるとは思っていた士郎だが、まだ話す時ではないとルビーに釘をさす。

「了解しましたー。熱く語りあった中ですからねー、頼みぐらいは聞きますとも!」

 助かる、一言だけそう言うと士郎はイリヤ達へ呼びかける。

「今日はもう帰ろう、みんな疲れてるだろうからな」

「「うん(はい)」」

 二人と遠坂達のところへ歩き出した。

 その瞬間。

 ズサリッ、と・・・・・・後ろからその音が聞こえ来た。

「――!?」

 いるはずのない足音、士郎はイリヤ達をかばうべく前に出ると、そこにいたのは長刀を肩に抱え、着物を着た男だった。

 

「佐々木・・・・・・小次郎・・・・・・だと?」

 

 士郎の呟きに、その男は面白そうな笑みを浮かべる。

「む? お主私を知っているのか? しかしちと違うな。私はただの亡霊、佐々木小次郎にされただけのものだ。それよりお主、先ほどの戦い見事だったぞ。何、剣士の決闘に入るのは無粋と思った故な、ここまで待っていたと言うわけだ。それにしてもキャスターめ、こんなところへ呼び出して何をしろと言うのかと思えば、なかなか面白いものがあるではないか」

 流れるように話しはじめた佐々木小次郎・・・・・・いや、ここではアサシンと言うべきか。

 突如現れたその佐々木小次郎の亡霊アサシンは、黒英霊と違い自我がある。

 それを聞いた士郎は確認するように次の言葉を口にする。

「アサシンのクラスカードなのか? だけど何故自我がある?」

 アサシンのクラスカードと言う言葉に、戦闘態勢に入るイリヤ美遊。

「いや、これは・・・・・・クラスカードじゃない、のか?」

 クラスカードから現界している英霊が黒英化しているのには理由がある。そしてそれは、クラスカードからの現界ならばその影響は例外なく受けるはずだ。 

 そこまで思考した士郎は、ある可能性に気付く。

(理由は分からないが、クラスカードで現界する英霊は俺がいた聖杯戦争をもとに存在している。だとすると・・・・・・。それにさっきの言葉・・・・・・ッ! まさか!!)

「キャスターがあらかじめ召喚していたのか!? ならなぜ今まで・・・・・もしかてクラスカードで現界できる英霊は一騎が限界なのか?」

 つまるところ、キャスターを倒したことにより、クラスカードに存在する魔力によって儀式が完成したということ。そもそもキャスターは士郎たちが来ることがわかっていたように準備していた。意識があったわけではないだろう。そうじゃない。ただ、無意識に士郎がいた聖杯戦争を再現しようとしていた。

(飛躍しすぎか? しかし、それ以外に考えられないか・・・・・・)

 仮にそれが本当だとすれば、これは想定以上に厄介な状況だ。

 士郎はアサシンの強さを知っている。しかも倒してもカードはないときた。思わず笑みがこぼれるほどに最悪な状況だ。

「さて、双剣の使い手よ。一手交えてもらおうか。できれば全開のお主ともやってみたかったのだが、日を開けられるほど魔力が持ちそうにないのでな。もちろん逃げようとするなら、斬り捨てる。失望させてくれるなよ?」

 やるしかない、そう考え干将・莫耶を手に構える士郎。魔力はとうに尽きている。 投影できてもせいぜい後数回だろう。

 イリヤ達の攻撃は基本遠距離だ、接近戦は得意ではない。あの剣の達人を相手には部が悪すぎる。

「イリヤ、美遊、援護を頼む。間違っても隙を見せるな、見せた瞬間斬られるぞ」

 その言葉にイリヤと美遊は一層気を引き締める。

「行くぞ、アサシン」

 その言葉とともにアサシンに向かって駆け出す士郎。それに答えるようにアサシンも構える。

 振り下ろされる二本の夫婦剣。アサシンはそれを難なく受け止める。

 怒涛の攻めともいえる士郎の攻撃を、技量のみで躱し、流し、受け止める。2人の剣がぶつかるたびに火花が飛ぶが、構わず2人は斬りあっている。

(やばいな・・・・・・これ)

 士郎の感じた僅かなそれは、隙となってアサシンの攻撃を身にうける。圧倒的な技量の前に、「強すぎるだろ」と言う言葉が口から出てくる。

 この10年間剣術を学んできた士郎だからわかる。あれには勝てないと。

 勝負するなら、間合いの外。さらに言えば遠距離からの不意打ちのみ。しかし、今の士郎に弓用の剣を投影するほどの魔力は残っていない。

 さらに言うならば、接近戦・・・・・・さらには剣の打ち合いにおいてアサシンは第五次聖杯戦争において最高のサーヴァントと言われていたのだ。勝てる確率はないに等しい。

 それでも士郎は剣を振るう。

「投影_・・・・・・、――!?」

 

 投影できない。

 

 士郎の魔力が尽きたのだ。必然的に一本の剣のみで応戦するしかない。

 そんな、士郎の援護にと、イリヤ達が魔力弾を放つ。

「「放射(シュート)!!」」

 それに気づき士郎が避けると、2人の攻撃は真っ直ぐにアサシンへ向かう。

 ただの魔力弾。しかし、”ただの”と称するには魔術師が放つそれとは威力が桁違いだ。

 二人のそれは直撃すれば英霊にダメージを与えることも簡単だ。

 しかし。

 

 二つに割れる。

 

 アサシンを対称に、イリヤたちが放った魔力弾は二方向に進み、そのはるか後方で爆発した。

 そこにいたのは長刀『物干し竿』を振り下ろしたアサシン。その光景に言葉が出ないイリヤ、美遊も同様を隠せない。

「無粋な真似はするな少女らよ。修行が足りんぞ、出直してくるがよい」

 イリヤ達には見向きもせず、再び士郎と向かい合う。

「それにしても、その首七度は落としたつもりだったが・・・・・・流石と言うべきかだろうな。だがそろそろ限界のようだ。ならば最後に此方も死力を尽くして答えよう、我が秘剣うけてみるか、少年よ」

 その言葉に本気でやばいと感じ始める士郎。

 アサシン・・・・・・佐々木小次郎の秘剣。一本の長刀で空のツバメを切るために習得したそれは、剣技のみで多重次元屈折現象すらおこす、全く同時三つ剣を相手に放つ秘剣である。円弧を描く三つの軌跡は、その時実際に刀が増えており、一の太刀筋を止めたとしても、二の太刀、三の太刀により四散される。

 ただでさえ邪道の剣と言われたアサシンの剣技は、一太刀振るえば首が落ちる。

(どうする・・・・・・!!!)

 体力の限界か思考がまとまらない。

 視界がぼやけ焦点がずれたそのわずかな瞬間。

 認識できた時にはすでにそれは目の前にあった。

 

 アサシンの剣が士郎へと迫る。

 

 防御も回避も間に合わない。

 

 しかし、それは青白い火花を塵ながら弾かれる。

 それを行ったのは、赤い姿、二つの剣、『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』を手にした一人の少女。

 

 ――イリヤだった。

 

 

 

 

 ほんの少し前のこと、魔力弾を切り捨てられ戦力外通告を受けたイリヤ達は、そこにただ立っていた。

 目の前にいる兄はすでに限界だ、どうにかしなければいけない、だけどやり方がわからない。二人は、ただその場にいることしかできない。

 イリヤは口にする、

「・・・・・・助けなきゃ」

(どうやって)

 何かが答える。

「助けなきゃ」

(ドウやって)

 イリヤの中にいる何かが。

「タスけなキゃ」

(ドウヤッテ)

 

「――力なら、ここにある」

 イリヤの中で何かが壊れる。それと同時に溢れ出す膨大な魔力。

 それは、聖杯として、その存在の証明。

 その魔力に美遊は驚きを隠せない。

(イリヤスフィールはこの前まで普通の女の子だったはず。魔術師でもない彼女がなぜこれほどの魔力を!?)

 イリヤは目の前に落ちていたアーチャーのクラスカードを手に取り、それを地面に置く。

「・・・・・・『無幻召喚(インストール)』」

 それと同時に現れたイリヤを囲う魔法陣、そこから複数の白い光の魔力がイリヤへと注がれていく。

 光が収まり現れたは、先ほどの戦った英霊と同じく赤い格好をしたイリヤだった。

 そのまま、イリヤはその手に二本の剣を作り出すと、士郎の元へ駆け出して行く。

 

 

 士郎の前に現れたイリヤ、その姿は魔法少女ではなくアーチャーのそれだった。

 驚いたようにする士郎だが、その格好は知っている。

「(封印が一つ解けたのか!? 知識として知ってはいたが、まさか本当に自身の体を媒介に英霊の力を召喚させるなんてな)」

 そんな中、アサシンはしらけたように構えを崩すとイリヤに向かって問いだした。

「無粋な真似をするなと言ったはずだぞ少女よ。それとも何か? その剣、お主が戦うと言うのか? それも良かろう、だが覚悟は持て、此方とて手加減できぬ故な」

「・・・・・・・・・・・」

 アサシンに対してイリヤは無言。

 一瞬士郎の方を一瞥するとアサシンの方へ走り出す。

 お互いの剣がぶつかり合う。美しくもあるその剣技による戦いは、見ているものをも魅了する。

 方や、長い年月をかけ洗練させ、技量ののみで第二魔法さえ引き起こす男。方や、才能はなくとも技量を磨き、己より強い相手と斬り交えていた男の剣。

 イリヤは二刀により変幻自在の剣戟を繰り出すが、アサシンはそれを円の軌道で打ち落す。

 イリヤはすでに守りの形で戦っていた。押されているわけではないが、攻めへ転じる事ができていない。その光景に士郎は苦い表情を浮かべている。

 確かにわたり合えてはいる。しかしイリヤの『無幻召喚(インストール)』したのはアーチャー。本領は遠距離からの攻撃だ。

 士郎の思考と同時。イリヤは、剣に弾かれるように後ろへ飛び、黒と白、二つの剣を投擲する。すぐさまに投影。瞬きの様なわずかな時間。その数は10。

 休むことなく、イリヤはすでに次の攻撃へと移っていた。それは弓。放たれたのはAランク宝具『偽・螺旋剣《カラドボルグⅡ》』。

 矢の形をしたその剣は、音速でアサシンへと迫る。しかし、

 

 ――それをいなす。

 

 音はなかった。静かな動き。剣技の最高とまでとれるそれによって、アサシンはイリヤ渾身の一撃を回避する。

 化け物じみていた。

 これが英霊同士の戦い。

 突然。アサシンは愉快そうに、笑みを浮かべる。

「いやはや、剣を使うかと思えばアーチャーだったとは恐れ入る。クラスカードとやらから離れられぬ私では、いささか部が悪い。一気に終わらせてもらうぞアーチャー、我が秘剣その身をもってうけてみよ」

 それに対してイリヤも一つの剣を投影した。

「『投影_開始(トレース_オン)』」

 手に現れたのは一つのの刀。アサシンが使う全く同じ刀『物干し竿』。

 それに対して何も言わずに秘剣の形に入るアサシン。それと同時にイリヤも同じ形をする。

「――――秘剣」アサシンが口にする、

「――――秘剣」それと同じようにイリヤも口にした。

 

「「『燕返し(つばめがえし)』」」

 

 二つの剣が次元をゆがめた。

 

 イリヤの行動は単純明快。三つの剣が襲うのなら、三つの剣で防げばいいと言うもの。

 普通なら不可能。だがアーチャーの投影魔術はそれすらも可能にする。

 基本的に投影魔術には工程が存在する。

 創造理念、基本骨子、構成材質、製作技術、憑依経験、蓄積年月。

 具体的に言えば創造の理念を鑑定し、基本となる骨子を想定し、構成された材質を複製し、製作に及ぶ技術を模倣し、成長に至る経験に共感し、蓄積された年月を再現する。

 その中の憑依経験によって、その投影品に宿った経験や技量を模倣することができるのだ。

 多重次元屈折現象すら起こし三つに増えた刀は、お互いにぶつかり合い、全ての剣が弾き合う。

 お互い無傷で向かい合う。口を開いたのはアサシンだった。

「よもや我が秘剣を我が秘剣で破られようとはな。もう少し楽しんでいたいが、どうやら時間のようだ。秘剣を出しても殺しきれなかったのだ、ここでごねるのは無粋というもの。・・・・・・楽しかったぞ少女よ。そして少年、今度は全力で戦って見たいものだ。・・・・・・小さき小鳥と思ってみれば、まさか獅子の類だったな。女性を見る目には自信があったのだが・・・・・・どちらも修行不足であったな・・・・・・」

 その言葉を最後にアサシンは消えていく。

 イリヤはその場に倒れこむと、力を使いすぎたのかアーチャーの姿が解けている。

 すぐに駆け寄って見ると気絶しているだけのようで、小さく呼吸もしている。

「イリヤスフィールは大丈夫、ですか? それとあれは・・・・・・」

「ああ、あれが本来のカードの使い方だろうな。自身の体を媒介に英霊の力の擬似召喚、イリヤもただ疲れて寝てるだけだから大丈夫だ」

「いやーびっくりしましたよー。まさかステッキの私ごと融合するなんて・・・・・・それにイリヤさんのあの雰囲気、おそらく何かあるんでしょうが・・・・・・」

「詮索はするなよ、いずれ分かることだ。今のイリヤは普通の女の子だ、まだその時じゃ無い」

 士郎の寂しそうな物言いに、美遊とルビー、サファイヤは思わずに押し黙る。

 ぼふっ、と地面から飛び出してくる人の腕、

「死ぬかと思ったわー!」「なぜわたくしがこのような・・・・・・」

 ゾンビのように地面からはあがってきたのは、遠坂とルヴィアだ。

「遠坂たちも無事だったか。セイバーとキャスターのカードは手に入れた。だけどイリヤが倒れたんだ、今日はもう帰らないか?」

 口に喋り出す士郎のそれに、

「ちょっと衛宮くん? あんなわけのわからないことを散々しといて、素直に返すわけないでしょ?」

 満面の笑みで笑いかけてくる遠坂。

 女性の笑顔は攻撃など言われることもあるが、遠坂のそれは明らかに凶器を超えている。

 思わずたじろいでしまった士郎は、逃げるが勝ちと、その場からの逃亡を選択する。

「ルビー、ジャンプだ!」

「そんなことだろうと用意してましたよー。三秒前、に、いち、ジャンプ!」

 空間転移前に遠坂たちが何か言っていたが、全て無視した。直前に美遊に後は頼むと伝えている。

 転移するにはルビーかサファイヤ、どちらかのステッキが必要だ。

 すでにルビーはここにいるため、こちらにくるにはサファイヤを使う必要がある。

 士郎の言葉の意味を理解した美遊なら少しの間時間を稼いでくれるだろう。そのわずかな時間を利用して、士郎とそれに抱えられたイリヤは家へと帰って行った。

 

 自宅へと帰った士郎は、イリヤをベットへ寝かすと、その体へと手を触れる。決して邪な気持ちがあるわけでは無い。・・・・・・と思うが、今回は大丈夫だろう。「そんなこと言ってー、実はイリヤさんの体が目当てのくせにー」と、途中からかいを入れてくるルビーを物理的に黙らして、本来の目的を行う。

 イリヤに対して解析魔術を行うためだ。

「『解析_開始(トレース_オン)』」

 読み取られたイリヤの情報からは、やはり聖杯を押さえつけていた封印が一つ取れていた。

 それが意味するのはこれまで封印されていたもう一人のイリヤ・・・・・・いや、本来のイリヤが目覚めたことを意味する。

(違うな最初から眠ってなんていない、ただ見ていることしかできなかっただけだ)

 この世界へ士郎が来て、イリヤと出会った時にはすでに封印が施され、士郎にはどうすることもできなかった。

 しかしそれは言い訳だ。そんな事実、イリヤにとってはどうでもいいことだ。

 そのことを知れば、本来のイリヤは士郎に対して怒りを思うだろう、恨みを感じるだろう。

 それでも士郎はイリヤの味方になろうと決めていた。

 『助けたいと思ったから助ける』そのために戦う士郎にとって、自分を恨んでいようが殺そうとしようが関係ない。

 相手は自分を恨んでいるかもしれない。

 

 ――かまわない、それでも助けたいと思ったんだ。

 

 生きたいと泣いている女の子がいる。

 

 ――だったら、その子が見つける幸せの道まで、側に寄り添い歩いて行こう。

 

 衛宮士郎のそれは正義ではない、もっと別の何かだ。

 しかし士郎は気づかない、自分のそれがなんなのかを。

 それを知るのは近い未来、誰かが口にしたその言葉によって、士郎はそれを理解する。

 長い一日が終わり、時はすでに進んでいる。衛宮士郎のその道は、まだ始まったばかりだ。

 

 ――――清算すべき事柄は、

        まだ残っているのだから――――

 

 

 

 

 

 




みんな大好き『燕返し』の登場です。
アニメ全話まだ見てないので、早く全話みたいです!

何か気づいた事があれば教えてください(><)

今回も読んでくださった方ありがとうございます!!

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