Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」   作:必殺遊び人

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敵との会話ができないと能力の説明がすべて地の文になってしまいますね・・・・・・はい、文才がないだけです。

能力が複雑で『とある魔術の禁書目録』を知らない方にはつらいかもしれませんが、なるべく詳しく書いたつもりです。
それでもよくわからないという方は言ってくださればそこを後書きで説明したり、修正したりするので、ぜひコメントください。

とりあえずバーサーカーを強くしすぎて、勝てるかどうかわからなくなりました。
「(どうしよう・・・・・・)」
そっそれではどうぞ!


12話めとかとか~♪ バーサーカー編 英雄×英雄×聖人

 

 

 

 士郎は美遊と並び立ち、バーサーカーを正面に構える。

 バーサーカーの手には二メートル強の斧剣が握られており、先ほどのようなむき出しの敵意ではない。それは武人。内からくるような静かな敵意。

 合図はない。世界を敵に回せる三人の人外は、ほぼ同時。世界からその姿を消した。

 

 目には負えないだけ。三人の戦闘はすでに行われていた。

 認識すらできない。だがそれも当然だ。

 方やギリシャ神話の大英雄。方やブリテンの騎士王。方や聖人。全員がただの人間の枠をはるかに超えた存在。真豪事なき化け物たち。 

 そんな中、振り下ろされる剣がバーサーカーの視界に映る。仕掛けていたのは士郎。200キロ以上ある大剣を小枝でも振る感覚で振り下ろす。

 直後。ガギンッ!! と、世界を揺らす衝撃が響く。

 ただ愚直にバーサーカー命を狩るように。

 

 士郎はアスカロンを振り下ろした。

 

 

 ****************

 

 

 士郎の剣から情報を得ている人物は『後方のアックア』その力の根源は聖人。

 『天使の力(テレズマ)』を肉体に内包し、天使の力。その一端を振りかざす人間兵器。自身の肉体すら崩壊させるその力を、士郎は借りた知識。魔術の英知で制御する。

 それだけでも、人間を超えた存在であるのは明白。だが――

 

 『後方のアックア』の力はただの聖人の器には収まらない。

 

 それは『神の右席』としての力。

 『とある』の世界で恐らく最も単純で凶悪な魔術。四人の魔術師のその一人。

 Fateの世界にも神はいる。目の前にいるヘラクレスも半神とは言えその一人。

 なら。ならば。ただの魔術師が神の力を振るうことは可能か? 答えるまでもなく否だ。

 だが、その不可能を。その理不尽を。『神の右席』は突破する。

 人間ならば誰しもが持っているであろう罪――『原罪』が存在する。『神の右席』はそれを限りなく薄めることによってそれを行う。

 人間の限界を超えた存在。 

 ――神・天使クラス『ウリエル』『ラファエル』『ガブリエル』『ミカエル』の四天使の性質いずれかの魔術を行使することすら可能にする怪物。 

 言葉だけなら簡単だが。それを行うことは不可能に近い。先ほども言ったはずだ。ただの魔術師が神の力を振るうことは可能か? それと同義。

 彼らは人間をやめた。普通の魔術師が行う魔術を使用できなくなると言う欠点を持ってなお。余りある力をその身に宿し。

 人間を超えたことで人間の魔術を使えなくなる。それが『神の右席』と言う存在。

 そしてアックアもその一翼。

 行使する力は『神の力(ガブリエル)』四大天使の中で『後方』を司る大天使。

 

 扱う術式は『聖母の慈悲』その力の根源は『罪を打ち消す』というもの。

 神から与えられるの『罰』。人間による『呪い』。自分で起こした『殺人罪』に至るまで罪と言う罪を払拭する。

 それが神の天罰であろうと。宝具の呪いであろうと。黄金級の魔眼であろうと。

 すべてを無に帰す。

 ただ、それすら力の一端。本来の力、その真価。それは。

 ――聖母崇拝の秘儀の行使。それこそが最高の魔術。

 信じる者は救われる。その言葉の再現通り、規律を守らない者には罰を与える、と言う「神の子」の特性すらも軽減する。

 それを魔術的に言い換える。――いいや、置き換える。 

 それは、あらゆる魔術の「約束・束縛・条件」、つまりは規律の軽減。

 魔術の行使に必要な条件を消し去り。絶対に必要な約束事を破棄し。自身にかかる負担束縛を受け入れない。

 魔術的に『厳罰に対する減少』と称されるそれは『神の右席』には本来使うことができない、”普通の魔術”の行使すら可能にする。 

 まさに天使らしい不可逆すら可能にする神の力。奇跡の存在の確率。

 

 そしてそれが何を意味するか。つまるところ。

 『神の右席』には人間の扱う魔術は使えないという『約束』を軽減、つまりは打ち消すことすら可能にする。そして。

 

 それはもちろん士郎にも当てはまる。

 

 

 ****************

 

 

 アックアが得意としていた”水”の魔術。

 それにより地面との間に薄い水の幕を張り、『滑るような』高速移動。

 その魔術は『神の力(ガブリエル)』が司る属性。つまり、アックアの『神の右席』としての力と相性がいい。さらに言えば、その魔術は実際にアックア使っていたものでもある。

 水を操ることで、自分の意志では避けられない攻撃にも自動回避。

 前動作すら起こさないそれは、自身の初動を読ませず、相手に『いつの間にか移動していた』という認識を植え付ける。

 初めて扱う魔術と言う存在。だが、今の士郎はそれを赤子の手をひねるように簡単に扱う。

 バーサーカーの背後、剣を振り下ろしていた士郎は目の前のそれを見て硬直する。

 速度は自身の出せる全力だった。普通に移動しても音速を超える今の士郎の最高速度。もちろん魔術での移動も使っていた。

 それを。

(ありえない)

 バーサーカーは振り向き際。士郎の剣を防御するどころか。

(カウンターだと!!?)

 士郎の振り下ろすそれよりも早く大剣を振るう。後出ししてなお。その剣を士郎に届かせる。

「――くっ!! ぐおぉぉおお!!!」

 体の重心さえ無視した全力の回避。自身の体とバーサーカーの大剣を分断するようにアスカロンを潜り込ませる。 

 瞬間。大型車が衝突ほどの音を響かせ。二人の剣は対峙する。  

 二人のそれを中心に破壊力と言う振動が世界を揺らす。

 そこだけ見るなら互角。だが、攻防自体は完全に士郎が負けていた。

「やばいな。明らかに第五次聖杯戦争よりも強いだろ」

 英霊は、自分本来の力を必ず使えるわけではない。その英霊を召喚した魔術師の技量次第でそのステータスは大きく変わる。過去最高のマスターと言われたイリヤですら、ヘラクレスの本来の力を引き出せていなかった。それの証明。上限が、見えない。

 予想外の強さ。その身を聖人に押し上げてなお、勝てないと理解する。

 それでも、士郎はその剣をヘラクレスに向ける。

「別に自己犠牲なんて考えてないさ」

 再び。二人の剣は激突する。

美遊(いもうと)の前では格好つけたいからな」

 秒で認識することすら間違っていた。それはコンマの世界の戦い。二人の剣の音だけがその場に響く。響き続ける。

 

 

 

 美遊は、この中で最も実力が劣っていることを誰よりも自覚していた。カードの本来の使い方により英霊の力を好身に宿しているとはいえ、その力を完全に引き出せているわけではない。

 経験や覚悟。単純な技量に至るまで、足りないものが多すぎる。・・・・・・それでもこの戦いから美遊が引くという選択肢はない。

 士郎は「イリヤは戻ってくる」と、そう言っていた。

 ・・・・・・そうかもしれない。それでも、イリヤをこんな戦いに巻き込みたくはないと、これが美遊の思いなのだ。

 美遊が宿した英霊はセイバー・アーサー王。

 その力の一端、根源と言い換えたもしれないそれは、セイバーの持つ膨大な魔力だ。

 竜の因子を体の中に持ち、その恩恵によって、魔術回路がなくても魔術の生成を可能にしているのだ。魔力を体、剣に帯びさせることにより、自身の強化を行い、本来なら普通の少女と変わらない身体能力を魔力によって向上させてるのだ。いうなればジェット噴射、並みの武器では打ち合うことすら叶わない。

 そのスキルステータスは魔力放出A。それは、ただの棒切れでも絶大な威力を引き出すほど。

 美遊はこの戦いで自分の思考による攻撃をなるべくせず『自分のとっての最適の行動』を瞬時にさとる能力『直感』に身を任せていた。未来予知の領域にすら足を踏み入れたそれを、最大限に行使する。

 美遊は初めの攻撃を『直感』に従い、あえて正面から攻める。それによって背後から攻めた士郎を”囮”とし、バーサーカーの裏をかく。

 自身が出せる全力移動を持って今の美遊は一度たりともバーサーカーの視界にすら入っていない。完全に背後をとった。士郎の相手で今の美遊に意識を割く余裕などないはず。この時のためのすべて。

 ただ。真っすぐに突きだすだけでいい。

 しかし、あと一歩で剣が届くその瞬間。バーサーカーが振り向いたことで失敗に終わる。

「なっ・・・・・・!」

 驚きの声を上げるのは美遊。

 完全に不意を突いたはずだった。戦闘の合間にこちら気を回せるほど、今の士郎は甘くない。

 つまりは警戒。

 あらかじめこの事態を想定しており、”来るかもしれない”というタイミングでたまたま振り向いただけ。言ってしまえば偶然。

 しかし生前、戦士として最上を極めていた『ヘラクレス』の経験は、美遊の思考に容易に追いついた。

(だったら・・・・・・真正面から切り伏せる!)

 宝具『風王結界(インビジブル・エア)』それは、剣に”空気”を幾層にも纏わせることにより自身の剣を不可視とする。風の鞘と称されるその使い方は、本来セイバーな宝具を隠すためのものである。聖杯戦争において真名を知られることはデメリットしかないため、剣のみで自身を知られてしまうアーサー王こそだろう。

 その不可視の剣で、バーサーカーへ攻撃しようとした勢いのまま剣を振り下ろす。刀身がわからなければ回避の仕方は決まってっくる。それを先読みし、それを封じるように攻撃する。

 いくら『ヘラクレス』とはいえ回避しつづけるのは容易ではない・・・・・・――はずだった。

「えっ・・・・・・?」

 美遊の攻撃はバーサーカー首を狙いそのまま横に切り飛ばすというものだった。本来ならば剣の直進上には入らずによけるのが最適だ。しかしバーサーカーは不可視の剣が見えているのか、少し上半身をずらすことにより、紙一重でよけて見せた。

 予想とは違うありない状況に、一瞬、美遊の思考が停止する。

 その隙を待っていた、というようにバーサーカーの斧剣が美遊に振り下ろす。

「――ッ! (しまっ!!)」

 回避が間に合わない。そんな美遊の前に、その背中は現れた。

 

「誰の妹にに手出してんだ。ぶっ飛ばすぞ、ヘラクレス」

 

 その少年は、たった一人の妹のために。

 神様に向かって喧嘩を打った。

 

 

 

 美遊に斧剣が振り下ろされようとしている。その瞬間、士郎は自身の身体能力をフルに使い、美遊と斧剣の間に自分を潜り込ませた。

 今度は先ほどとは逆、士郎がバーサーカーの攻撃を受け止める。

 テレズマを宿すその体を振るに使い、バーサーカーを押し返す。

「無事か美遊? ・・・・・・さすがはギリシャ神話の大英雄だ。簡単にはいかないな」

「大丈夫。まだ戦える」

 美遊は崩れていた体制を立て直し、士郎の横に立つ。

「力や速度はほぼ互角、だが経験と技術は向こうがはるかに上だ」

 二人でも攻めきれない。

 それでも、おそらく自身の力のすべてを使えば互角以上に戦える。だが、それはすることが二人ともできない。

 士郎も美遊も行ってしまえば借り物。

 士郎の場合は聖人という特性故、力の使い方を間違えれば内側から自滅する。美遊も、クラスカードの力を引き出すのにかなりの精神力を使っているだろう。

「美遊、お前がトドメをさせ。隙は俺が作る。できるか?」

 士郎の考えは連携ではなく、はっきりとした役割分担。

 連携と言っても所詮付け焼刃。士郎に余裕はない。キャスターの時の二人の連携をして、バーサーカー相手には付け焼刃と称するぐらいには。

 圧倒的な力の持ち主に勝つ方法で、最も有効なのは不意打ち。しかも、ただの不意打ちではだめだ。だからこそ士郎が隙を作る。聖人の力を一瞬の不意を作るために使う。それしかない。

「できる。信じて、お兄さん」

 美遊は断言する。必ず成功させると。

「信じてるさ、頼んだぞ」

 士郎は軽く、美遊へ微笑みを向けると、バーサーカーへ剣を向けた。

 

 世界が揺れた。

 

 二人の戦闘の余波は、ただの衝撃波におさまらない。それは世界の悲鳴。

 世界の苦痛が、泣き声が、余波となって戻ってくる。

 大剣と斧剣、二つの武器が何度も合わさり、そのたびにお互いの無数の駆け引きを繰り出す。目線で攻撃を推測し、筋肉の初動で動きを読む。

 見た目の状況だけなら互角。

 しかし、その中身は士郎に苦しいものだった。

 アスカロン、士郎が扱ってる大剣はその一本に複数の切り方が存在し、場所によってすべて”違う武器の攻撃”として成立している。

 士郎は、それらを駆使しながら戦っている。

 だが、その攻撃にバーサーカーは完璧に対応をしていた。

 刀の種類で、その対応は変わってくる。例えば、切れ味の良い細い剣を受け流すのと同じように、叩き割るという性質をもった斧を受け流すことはできない。

 その武器を把握していない士郎以外には、その攻撃が何であるかなどわかるはずがない。

 それを直感か経験かあるいはそのどちらもか・・・・・・つまるところ、バーサーカーはその攻撃に対して完璧な回避方法を行っていた。

 

 ――光の色は赤――悪竜の筋肉を切るための斧のような分厚い刃。

 ――光の色は青――悪竜の鱗を捲るための剣身中ほどにある缶切り上のスパイク。

 ――光の色は緑――悪竜の内装を取り出すための剣身に寄り添うワイヤー。

 ――光の色は紫――悪竜の骨格を切断するための背側にある巨大なノコギリ。

 ――光の色は桜――悪竜の歯牙を抜くためにある柄尻に取り付けられたフック状のスパイク。

 ――光の色は白――悪竜の神経を抉り出すためにある背側根本近くにある接近戦用のスパイク。

 

 一撃ごとに姿を変えるその攻撃を、バーサーカーは所見ですべてを受け流す。

 このままでは士郎に勝ち目はない。攻撃に慣れを感じ始めているバーサーカーは徐々に余裕ができている。

 これが士郎のすべてならば、士郎の敗北は時間の問題だろう。まあ・・・・・あくまでもそれがすべてならの話だが。

(まだか・・・・・・)

 ここにバーサーカーに知らない事実が存在する。

 勘違い、そして情報の有無。

 それは戦闘、あるいは読み合いが高度であればあるほどに、最後の詰めを誤ることになる。

 こと情報戦において、士郎はバーサーカーを圧倒していた。

 相手の力を把握しているかそうでないかでは、その結末は大いに変わる。

 

 バーサーカーの動きがまるで変わる。受け身に回っていたバーサーカーが攻撃に転じたのだ。

 つまり士郎の攻撃を完璧に把握したということだろう。だが――

 

「やっとだな。バーサーカー・・・・・・一つ、お前の勘違いを正してやる」

 

 ――この時を待っていた。

 おそらくこれ以上ないほどのバーサーカーの隙。

「俺の力は、あくまで魔術師。理解できない理不尽を振りかざす者なんだよ」

 士郎の攻撃を把握したからこそバーサーカーは攻撃へ転じる。それは言ってしまえば心の余裕。

 そこに付け入る隙がある。

 この結末は、士郎が自分の武器の最大の長所を囮に使ってまで作り上げた・・・・・・読み合いの勝利だった。

 

 『後方のアックア』彼は確かに聖人だ。だがどうやってその力を制御していた? 答えは明白。『魔術』。それこそがアックアの本領なのだ。

 攻撃を防御した士郎の剣を弾くと同時ともとれる速度で、バーサーカーの斧剣が士郎に振り下ろされる。

 士郎は剣を後ろに弾かれ、体も宙に浮いている。

 今の体制では、この攻撃に対応するすべはない。が、士郎は口元を笑みで染める。

 瞬間。バーサーカーの肩を何かが貫いた。

「認識がいの理不尽はどうだ。存在チート」

 よく見ると、バーサーカーの肩を貫いたのは水。

 水とは、高圧で噴射させることで、鉄すら切断する威力がある。

 アックアが得意としていたのは水の魔術。さらに、テレズマで補強されたその魔術は、悠々とAランクを突破する。

 それを合図に、士郎の後ろから無数の水の槍が姿を現す。

 それは生き物のように動き出すと、バーサーカーへ向かって攻撃を開始した。 

 

 

 今まで接近戦を続けていた二人が初めて距離をおく。下がったのはバーサーカー。

 自分を貫いた攻撃が優先だとでも言うように、水の槍にのみに注意を向ける。

 後ろから、左右から、多方向から、時には一本の槍が目の前で分裂して、水の槍がバーサーカーを襲う。

 それでもやはり、と言うべきだろう。最初の一回目の攻撃以来、水の槍はバーサーカーを傷つけることはできない。

(無理か・・・・・・さすがに凹むが、知っているかバーサーカー。獅子は獲物を狩る時、静かに獲物を見てるんだぜ)

 唐突に、バーサーカーが動きを止めた、いや止めさせられた。

 攻撃が通ったわけではない。本当に、急に動きを止めたのだ。

 士郎との人間が魔術や魔法を思い描くとしたら何を思い描くか。恐らくほとんどのものが幾何学的な魔法陣を思い受けべるだろう。

 そしてそれはおおむね正しい。

 ただ。魔法陣とは必ずしも円で描かれるものではないし。皆がイメージするようなものがすべてではない。

 例えば、それを体に刻むことによってその魔術を行使する場合もある。ルーン魔術として使うこともあるだろう。物や礼装で疑似的に作り出すことも考えられる。

 表現するならそう。魔術を行う上で必要不可欠な知識の結晶。それこそが魔法陣と言う概念。

 礼装や詠唱などの力を借りて儀式を行うためと思われがちだが、それ単体でも魔術を行うことができる。

 そして、今回も目では見えないそれを士郎は使った。三次元配置。バーサーカーの周りで規則的に動いているのそれが。先ほど、バーサーカーを襲っていた水の槍が魔術の術式として機能する。

 『とある』の世界の魔術に精通した、士郎だけが読み取れる”水の槍で描いた”三次元の魔法陣。

 その効果は、水の状態変化それぞれの性質の融合。気体のように広範囲に広がる性質を持ち、そのまま個体のように停止し、その空間にいる者の動きを止める。

 バーサーカーの周りにある無数の水の分子がそのままバーサーカーを固定する。

 魔法陣の中にだけ可能な水による『人体掌握術式』。液体の性質を使えば、固定したままその相手を好きなように動かすことも可能だが、バーサーカー相手にはそこまでできない。

 だがそれでいい、その瞬間を待っていた獅子が動き出すのだから。

 

 

 美遊は士郎とバーサーカーの戦いから決して目を離さずその戦いを見ていた。

 士郎は美遊に対して信じていると言った。だからこそ自分も信じる。必ずその瞬間を作ってくれるということを。

 美遊の”確信”どおり、その時はやってきた。

 なんの前触れもないバーサーカーの停止。なぜ? そう思うよりも早く美遊は動いた。考える必要なんてない。それは紛れもなく士郎が作った隙なのだから。

 根拠? そんなの信頼で事足りる。

 

 バーサーカーが自分の身体に疑問を覚えるよりも早く、目の前に青い甲冑の少女が現れ、その少女は・・・・・・迷うことなく自身の剣を心臓へ突き刺した。

 

 美遊の剣はバーサーカーの心臓へ刺さっている。安堵、誰もが思わずにいられないその瞬間に、美遊はその剣に力を込めた。

「『風王鉄槌(ストライク・エア)』!!!」

 『風王結界(インビジブル・エア)』によって剣に纏わせていた風を突きと共に解放。風の零距離大砲ともとれるその技によって、バーサーカーの体の中心、心臓に周りが消し飛んだ。

 バーサーカーの宝具『十二の試練(ゴッドハンド)』は”死んでいるときに殺しても殺せない”。

 だが、美遊の『直感』が告げていた。あのまま警戒を解いていれば、自分は死んでいたと。

 英霊とは何かしら偉業を成し遂げたものであり、『ヘラクレス』ともなると、偉業すら他の英霊をはるかに上回る。

 そのようなことを成し遂げたものが、心臓を貫かれたぐらいで即死するだろうか? 答えは否である。

 生きているということはないだろう。それでも、反撃ぐらいなら十分に可能だ。

 それを美遊は直感によってわかっていた。ここで初めてバーサーカーの死を確認、そのまま距離をとる。

 それでも美遊は警戒を解かず、剣を構える。

 バーサーカーの弱点があるとすればこの瞬間だ。死から蘇る瞬間、これほど大きな隙は無い。そもそ一回殺す必要がある時点であってないようなものなのだが・・・・・・。

 時間が巻き戻されるようにバーサーカーの身体が戻る。

 それと同時に美遊は『風王結界(インビジブル・エア)』を解いた。そこから姿を現したのは一つの黄金に輝く聖剣。

「あなたはここで必ず倒す。イリヤに、私を友達って言ってくれた人のために・・・・・・! お兄さんに、私のことを信じてくれてる人のために!」

 バーサーカーが再び動き出す。その瞬間美遊はその聖剣を、その名と共に振り下ろした。

「『約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!!』

 そして、美遊の目の前を勝利の光が包み込んだ。

 

 

 きれいだ。何度見てもそう思う。

 士郎は美遊から放たれる勝利と呼べる光に、心からそう思っていた。

 その光はバーサーカーを覆いつくし、境界面すら破壊する。美遊の心がその強さが具現化したようにその光は未だ消えず。ゆっくりと光を収縮させていく。

 光の道には、何も残されていなかった。

 消失。そう表現して差し支えない光景だ。その光はまさしく美遊にとって勝利の光だっただろう。

 士郎が美遊に近づくと、剣を杖に軽く息を切らしている。当然だ。あれほどの力を一時的だろうとその身で放ったのだ、まだ立てているだけでも十分だ。

「やったよ。私やったよ」

 顔だけを士郎へ向け、息が上がった赤い顔で嬉しそうに微笑む。

「ああ、よく頑張ったな。あとはお兄ちゃんに任せろ」 

 その発言に美遊は「えっ」と声を漏らす。

 先ほどの攻撃は美遊の全力で、つまりはセイバーの全力だ。

 バーサーカーの宝具は、絶大なダメージを与えると一回で複数の命を削ることができる。そう例えば『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』のように。美遊はすべてを終わらせるつもりで放ったのだ。まだ蘇るなんて考えられない。

 だが、今のバーサーカーの命をすべて奪うのは難しい。

 

 ビルの一室。破壊されたその穴からバーサーカーが現れる。

 バーサーカーは最初のような理性のないただの怪物のような印象はない。そのたたずまいは、ボクサーの王者が、挑戦者に対するそれとよく似ている。

 ゆっくりと斧剣を構える『ヘラクレス』。その動作まるで戦士のようで、『よくやった。だがこれで終わりじゃないだろう?』そう言っているようだ。

 何とか立ち上がろうとする美遊を手で制し、士郎はバーサーカーと視線を交える。

 そして、士郎も同じように剣を構え、一つの魔法名を口にした。

「『flere210(その涙の理由を変える者)』」

 魔法名、それは魔術師が魔術を手に入れた理由であり、生き方そのものだ。これは『アックア』の魔法名。

 その生き方は士郎が夢見た生き方であり、目指した『主人公(ヒーロー)』そのものだ。

 士郎は、それを静かに口にする。

 魔術師が魔法名を口にすることはほとんどない。

 なぜならそれは決意の証明。自身が魔術と言う未知にてを出した理由そのもの。

 

「『異界同調_開始(トレースクロス・オン)』」

 

 士郎の手に魔力の奔流がが見える。

 現れたのは、アスカロンと変わらない大きさの巨大なメイス。

 それは本来礼装を使わないアックア本来の武器であり、聖人としての力が、”ただの聖人程度”で済まない証明そのもの。

 そのメイスを投影することで、士郎はさらにもう一つの力を上乗せする。

 左手にはアスカロン、右手にはメイス。二つの異なる武器を持つ士郎。

 バーサーカーと士郎二人は同時に姿を消すと、その中央で剣を交える。

 

 次元すら歪む、二人の最後の攻防が、ここに切って落とされた。

 バーサーカーの命は「残り6つ」。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も呼んでくれた方ありがとうございます。
さて、今回の後書き『吾輩は猫である』(名前募集中)では『とあるの世界の魔術』と『軽い疑問(とあるを知っている人用)』につて話したいと思います。
 
まず『とある』の世界の魔術にはFateのように魔術回路は存在しません。使われるのは精神エネルギーであり、それを行う魔力に変換することから始まり、それを行う魔術に添った宗教的な縛りや詠唱などによって魔術に還元するものになります。
 原理としては異世界の法則をこの世界に適用することであり、行なえる魔術に制限はなく、移動、通信、回復、探索など利用方法は多岐に渡ります。ここがFateとは大きな違いになると思います。
 この魔術は、言ってしまえば無数にある神話、や宗教的な歴史を学ぶ学問であり、知識がなければ行うことはできない。しかし、逆に言えば知識さえあればだれでも使うことができるのです。
 もとは”才能のない人間が才能のある人間に追いつくため”に作られた力であり『とある』の世界の魔術師は、魔術を学ぼう理解しようと、知識を有しているのではなく、人の身では行えない、何かのためにその力を手に入れたため、それを成し遂げるための魔術を覚え、そのためなら手段を選ばないこともあるほどなのです。その生き方を『魔法名』として自分に刻みこんでいます。
 その中で聖人とは神の子と身体的特徴が似ていることから、天使の肉体として構成されて、別位相の力を有しており、強大な力をふるうことができ一般的な魔術師とは一線を凌駕し、その力は、移動速度は音速を超え、踏み込みだけで地面を割るほどです。

 もしかしてら少し違う部分もあるかもですが、その時は教えてくだされば嬉しいです!

と、今日はこのくらいにしましょう。長くなりすぎてますしね。より詳しくはぜひ原作を!


続いてはこの小説内の『軽い疑問』を解決します

まず凛とルヴィアが最初から転校しているのは、ウェイバーによる策略です。元から転校させるつもりだったため、いつ転校しても変わらないということで、士郎が混じったことですこし世界が変わったと思てください!(まぁ最初は自分のミスだったのですが・・・・・・)

続いては美遊の兄に対する読み方は「お兄さん」ではなく「お兄ちゃん」だろと思っている方もいると思いますがこれは、仕様です。
できればドライまで書きたいと思っているんのですが、その時「お兄ちゃん」だとどっちを呼んでいるのかわからなくなると思い、このようにしました。
(あーお兄ちゃんって呼ばせたかった・・・・・・何かいい方法はないでかなぁー)
と、今日はここまでにしたいと思います。
質問などありましたら、どんどん言ってください。

今回もありがとうございました!





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