Fate / 「さぁ、プリズマ☆イリヤを始めよう」   作:必殺遊び人

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かなり遅くなりすみません。
学校がいそがしく・・・・・・ってこれじゃ言い訳ななりそうなので素直に謝罪します

さて、今回はとうとう士郎の力が明らかになります。
クロス先がマイナーかも知らないので少し説明っぽくなってしまいましたが、その分詳しく書きました!
楽しんでもらえたら幸いです! それではどうぞ!

あっタイトルか得ましたもう一つのプリズマイリヤからFate/「さぁプリズマイリヤを始めように変更です。

勝手に変えてしまいすみません、重ねて謝罪いたします。


11話とかとか~♪ バーサーカー編 新しい力

 

 

 イリヤが美遊達のもとへ向かう少し前。

 

 士郎は時間になると、自分の部屋をでて、真っすぐ玄関へ向かう。

 先ほどの凜からの連絡で、イリヤが今日来ないことは知っている。いや、最初から知っていた。士郎はあの夢以降、忘れていた原作知識の一部を思い出すことに成功した。

 なぜかは分からない。あえて理由をあげるなら、偶然と言うほかないだろう。 

 本当は自分がイリヤの力になりたい、士郎はそう思っている。

 それでも今回は。今回だけは。事情を知っている自分より、何も知らないアイリのほうがイリヤの力になれると判断したのだ。

 

 家を出て、凜たちとの待ち合わせ場所へ向かおうとしている途中、見覚えのある女性が歩いている。その女性は、年齢にしては若すぎて、どこか子供っぽさを残しつつ、家族思いのような人だった。なぜ士郎が年齢など、初対面では知らないであろう情報を知っているか。だってその人は、アイリスフィール・フォン・アインツベルン。衛宮士郎の母親のだから。

 

「あっ! シロー! 久しぶりー、あなたの愛する母親のご帰還ですよー」

 

 目が合うとすぐに、手を振りながら士郎方へと走ってくるアイリ。男子高校生にはきついセリフを吐く母親に、士郎は思わず目を反らす。

 士郎は憑依、転生としているが、しっかりとした大人の年齢まで生きていないため、精神新年齢は幾分か低い。しかも、今の士郎として生きているのはこの世界が初めてであるため、ほとんど現在の年齢と大差ないのだ。

「か、母さん、お帰り」

 恥ずかしさを押し殺し、苦笑いを浮かべつつも何とか返事を返す。

 今の時間帯が夜で、周りに知り合いがいないことを心から喜こんだことだろう。

 このようなところを見られたら一発でマザコン認定される。ただでさえシスコンの士郎にはきつい話だ。

「ただいまー!」

 そんな士郎の感情など知らないというように、アイリは士郎に抱きついてくる。

「――!! かかかか母さん!?」

 一瞬思考が停止し、困惑を隠せない士郎。いくら英霊と戦えるからと言って、それが母親より強い事にはならない。母という生き物は、士郎にとって世界の誰よりも強い生物なのだ。

 そんなたじたじになっている士郎にアイリは耳元でそっと囁いた。

「もう大丈夫なの? 辛くない?」

 その言葉に士郎は動きを止める。抱き着かれているためアイリの顔は見えない。

 それでも士郎は、アイリの心配そうな声にうれしさを感じている。

 

 ――恵まれてるな、俺は。

 

 士郎はゆっくりとアイリを引き離すと、アイリの顔を見て笑顔で答える。

「大丈夫だよ母さん、”俺もこれから頑張っていくから”」

 それは必然か否か、アーチャーが凜に残した言葉と同じものだった。

 この言葉は出るべくして出たのだろう。心の重荷はとれ、自分が何をしたいかも見つけられた。今までの衛宮士郎じゃない、これからは”衛宮士郎”として頑張っていこうと、そう思えた士郎だからこそだ。

 その言葉にアイリは「格好つけちゃって」と軽く笑いながらも、どこか安心そうな顔を浮かべている。

「士郎、あなたが何を見つけられて何と出会ったのか、詳しくは聞かないわ。だけど一言だけ、”頑張ってきなさい”それをあなたが望むなら」

「任せてよ、母さん」

 『ありがとう』じゃなくて『任せて』と士郎は言った。

 感謝ではなく決意を口にしたのだ。

 その言葉に、満足したのか、アイリは可愛らしい笑みを浮かべている、綺麗と言い換えてもいいかもしれない。そんなアイリを見て、数年後のイリヤはこのようになるのかもなと、オートでシスコンを発動させている。

 そんな士郎の心でも読んだのか「何かいろいろ台無しね」とアイリはが苦笑を浮かべている。

「とっところで母さん、家には帰るのか?」

 何とか話をそらそうと、士郎は知っていることをわざわざ質問する。やはり士郎は、母親相手だと逃げるしか手はないようだ。

「帰るわよ。士郎のことは切嗣たちに任せてたからね。今日のは私が会いたかった来ただけなのよ、もちろんイリヤちゃんにもね」

「そうか、ならイリヤのこと頼む。それから少し伝言を頼みたい、『俺はお前を信じてる』言うべき時にそう言ってほしい」

 アイリは最初は何を言っているのかわからないように首を傾けたが、少しして、「わかったわ」と、言葉の意味を察したようにそう言ってくれた。

 

 

 その後、アイリと別れた士郎は、時間の少し前に美優や凜達と合流した。今いる場所はすでにカードがある境界面。

「今回はやたらと狭いな」

 移動先は高層ビル一つ分の広さしかなく、その状況に士郎は呟く。

「カードの歪みがなくなってきてるのよ。今回で終わりなわけだし、しかたないわ」

 凜が答えるが、問題はそこじゃない。

 この場所で戦うのがバーサーカー『へラクレス』が相手である。それが問題なのだ。

 アーサー王に並ぶ、いや、確実にそれ以上の大英雄。生前十二の偉業を成し遂げたという伝承がそのまま昇華された宝具。十一回の自動蘇生能力。さらには、Bランク以下の攻撃のシャットアウト。自分を殺した武具には耐性がつくという鬼畜仕様。

 どこの誰が考えたのか。そいつは確実に頭がおかしいはずだ。

 士郎の戦った聖杯戦争では、アインツベルン家の「バーサーカーこそ最強!」という思い込みにより、バーサーカークラスで召喚されたが、本来ならば魔術師以外のすべてのクラスで召喚可能なほどに武芸百般を極めた武人である。

 狂化しているため人格はわからない。それでも、こと戦闘においては狂化に飲み込まれなお理性を保てるほどの英雄。

 

「気抜いたら死ぬからな」

 

 いつも以上に真剣な士郎の忠告。

 今回、士郎はバーサーカーの能力を美遊にしか教えていない。もちろん考え合ってのことだが、それで凜たちを危険にさらすつもりなどない。

 誰もが口を噤む。

 

 そして。

「■■■■■!!!」

 唐突に目の前に現れた大英雄の咆哮と共に、最後の戦いが幕を開けた。

 

 ”巨人”そう称してしまうほどの巨漢な男。その姿は黒霊化により黒く染り、まっ直ぐこちらに突進してくる。

 振り上げる拳がルヴィアに迫る。

(――ッ! 速い!!)

 しかし、速い程度の攻撃を避けられないほどルヴィア・エーデルフェルトは甘くない。

Anfang(セット)

 避けると同時に、ルヴィアはバーサーカーへと宝石魔術を放つ。

 魔術師は本来戦うものではない。キャスターが自身の工房へと敵を誘うように、直接的な戦闘は不得手であるのが通例だ。が、何事にも例外はある。

 士郎では理解できない幾重にも重なる魔術を全身にかけ、ルヴィアはバーサーカーと対峙する。

「さらにもう一発!!」

 置き土産。バーサーカーの視界に宝石が光る。直後。

 スドーン!! と、バーサーカーが紅蓮に包まれる。

 

「美遊ッ!!」

 

 士郎は叫ぶ。それは知っているから。

 この程度ではバーサーカーには傷一つつけられない、そのことを。

放射(シュート)!!」

 士郎の声に反応した美遊が攻撃を仕掛ける。威力は上々。

 

 だが。それでも・・・・・・足りない。

 

 だから士郎は待っていた。先ほどの攻防には参加せず。確実にバーサーカーを殺せるその時を。

 士郎はすでに構えていた。先ほどから。あるいは最初から。

 手の持つそれは『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』Aランク宝具。

 何故最初にそれを放たなかったのか。考えるまでもなく簡単な話。

 いくらAランク宝具とはいえ、あからさまに狙えばバーサーカーは回避する。だが、今のバーサーカーはどうだ。周りは紅蓮の帆脳に包まれ、美遊の攻撃がそれを助長させている。視界確保は不可能。

 もちろん。これは偶然ではなく作られた状況だ。とは言え、攻撃そのものが効かなければバーサーカーは止まらない。今の状況もルヴィアが攻撃してから数秒もたっていない。足止めにすらならないだろう。

 それでも『一瞬』がそこにあるのなら。

 

 今の士郎は外さない。

 

 以前、煙幕の流れのみでキャスターを打ち取った士郎からすれば、今回のそれはイージーすぎるものだった。

「とりあえずまあ・・・・・・一回だ」

 何気ない言葉と放たれたそれは。揺れる炎を左右に分け、必然。バーサーカーの心臓に当たる寸前だけを映像として残し。――ズガーン!! と、それは爆発した。

 

 『壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)』によって起こったそれは、バーサーカーの上半分を吹き飛ばす。 

「やったの?」

 イレギュラーに備え、準備をしていた凜が口にする。

 ルヴィアも安堵の表情を浮かべる。

 しかし、士郎と美遊。二人だけは死体となるはずのそれから目を離さない。

 静かに。バーサーカーは動き出す。

 回復など生易しい。明らかに時間が巻き戻されたように、体を少しずつもとへと『戻す』。

「「なっ・・・・・・!!」」

 凜とルヴィアの驚きの声、しかし当然だ。これほどまでに破格な宝具はそうない。

 『十二の試練(ゴッド・ハンド)』それは『ヘラクレス』だからこそ許される宝具。真豪事なき英雄の証。

 再び放たれる咆哮。

 

 それと同時、士郎と美遊は動き出す。

 

 士郎の手には黒と白の双剣『干将・莫耶(かんしょう・ばくや)』が握られている。

 二本の剣を携えながら。士郎は迫る。

 バーサーカーはすでに目の前。

 死を目の前に見ながら。士郎はそれと対峙する。

(まずは二本・・・・・・)

 『干将・莫耶』は士郎にとって最も使いやすい宝具ではあるがそのランクはC。それではバーサーカーにダメージは与えられない。だから士郎が狙ったのはその足元。

(四本・・・・・・五本)

 士郎は踊るようにバーサーカーの攻撃をかいくぐる。

(六本、よしこれで最後。――ッ!!)

 虫でも払うかのようにバーサーカーがうでをふるう。

 避けれたのは奇跡だったかもしれない。目の前まで迫っていたその腕を、士郎は間一髪でしゃがんで避けた。

 しかし。

「・・・・・・ぐぶぅ・・・・・・かぁッ!?」

 士郎が避けたと認識するほぼ同時に、バーサーカーの足が士郎の体を蹴り上げる。

(目で追ったとかいう速さじゃないぞ!! ・・・・・・けどな!)

 宙へうかぶ体を何とか立て直しながら。

「――ッ! 弾けろ!」

 直後。バーサーカーの周り。より正確には足元に刺さった数本の剣が。同時に爆弾へと姿を変える。

 投影魔術だからこそ行える士郎だけの特別。

 それでも、バーサーカーには効果はない。だが、その足元なら話は別だった。

 崩壊する足場。それによって僅かにバーサーカーの足が止まる。

 士郎の作り出したこの隙は、そのままバーサーカーの二度目の死へと直結した。

 

 

 士郎の後方、魔術を足場に空中へと移動していた美遊は、戦闘前に士郎からあることを教えられていた。

 それは『ゲイ・ボルグ』本来の使い方。

 『刺し穿つ死棘の槍(ゲイボルグ)』ではなく『突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルグ)』。

 その真価は、命中させる事ではなく一撃の破壊力の重視。その威力は、投擲武器に対して絶対とまで言われているほどの『熾天覆う七つの円環(ローアイアス)』を貫通するほど。そして当然、”因果逆転の呪い”も存在する。

 一度標的を定めれば、相手が地球の裏側だろうが確実に仕留めるそれは、敵意をもてば確実に相手を仕留める必殺の槍。

 美遊は士郎が作るであろう隙を逃さない。たった一発。それだけのために美遊は全神経をバーサーカーへと向ける。そして。

 その時は来た。

 美遊の手で一本の槍が赤く染まる。注げるだけの魔力を。

 真命――解放。

 

「『突き穿つ――死翔の槍(ゲイ・ボルグ)』!!」

 

 その槍は上下左右、敵の匂いを嗅ぎつけるようにランダムに赤い軌跡を生みながら進み。バーサーカーの心臓を貫くと同時。圧倒的な熱量をまき散らす。

 

 ビルの屋上での巨大な爆発。士郎は、凜とルヴィアを背に『熾天覆う七つの円環(ローアイアス)』でその身を守っていた。

 今度こそ倒した。そう思わせるほどの攻撃。

 それでも。

 

 『十二の試練(ゴッド・ハンド)』は越えられない。

 

 爆炎の中、黒い影が起き上がる。

 それを見て真っ先に声を張り上げたのが凜だった。

「撤退よ! あんな化け物対策なしじゃ勝ち目がないわ!」

 その選択はさすがというべきだろう。相手の能力を少ない時間で見極め、さらにはそこから最悪の可能性すらを導き、決断から実行までの対応の速さ。

 魔術だけじゃない、戦闘においても一流だ。

 その言葉に士郎と美遊も素直に従い、バーサーカーの蘇生が終わる前にビルの中へと入っていく。

 

「サファイヤ、ここでいい」

 美遊の言葉でサファイヤは離界(ジャンプ)の準備を始める。

「かしこまりました。【限定次元反射路形成、境界回路一部反転、3,2、1、(ジャン)・・・・・・】」

 その瞬間、美遊と士郎は形成されていた魔法陣から抜け出す。

「・・・・・・なにをッ!」

「美遊・・・・・・!?」

 言い終わる前に、凜とルヴィアの二人のみが元の世界へ戻される。

 それによって二人となった士郎と美遊。

 

「美遊、無理して残らなくても良かったんだぞ?」

「無理してないもん」

 

 少しからかいながら言う士郎に対し、美遊は少し頬を膨らませながらそれに答える。

 昨夜以降、美遊は士郎によりなつくようになった。わかりやすく言うと可愛いくなりすぎた。そんな美遊を士郎が断るわけもなく、普通に受け入れ、美遊もそれに甘えていたのだ。

 二人の雰囲気こそあれだが、この状況こそが士郎が望んだ展開だった。

 いくら凜達でもバーサーカーの相手はさすがに難しい。

 士郎もすべてのイレギュラーに対応できるわけではない、もしもがあっては困る。

 だからここは先に逃がしたのだ。

 ビルのどこからか、破壊音が響いてくる。恐らくバーサーカーがこちらへ向かって来ているのだろう。

 その音を聞きながら二人は準備を始める。

 今までの攻撃は、言ってしまえば”手始め”だ。Aランク宝具『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』による奇襲、『ゲイ・ボルグ』真名解放の『刺し穿つ死翔の槍(ゲイボルグ)』それをしたなお。

 

 物語の序章。本番はこれからだ。

 

 

「サファイヤ準備は良い?」

「問題ありません美遊様、しかしもしもの時は・・・・・・」

 サファイヤはバーサーカーの話を聞いた時からこの作戦に猛烈に反対の声を上げていた。

 それは一概に美遊を思っての言動だ。美遊はそんなサファイヤに感謝している。だからこそここで負けるつもりなどなかった。

 恐怖は確かにある。『ゲイ・ボルグ』を放った時、倒したという手ごたえが確かにあった。今までにないほどの一撃だという感触も、まだ倒せていない。本当に倒せるのかという不安もあるだろう。

 でもなぜか、美遊は負けるとは微塵にも思っていなかった。

(これが・・・・・・誰かと一緒に戦うってこと?)

 美遊はまだ断言できない。それでもこの感情は隣にいる士郎のおかげだと、心のどこかで分かっていた。

「大丈夫。ありがとうサファイヤ」

 美遊はサファイヤに優しくそれでいて力強く答えると、一枚のカードを地面へ置く。

「『告げる――汝の身は我に 汝の剣は我が手に』

 何を言うべきか。

「『聖杯のよるべに従い この意この理に従うのならば答えよ』」

 何故か分かる。

「『誓いを此処に 我は常世総ての善と成る者――我は常世総ての悪を敷く者』」

 一度聞いた。

「『汝三大の言霊を纏う七天 抑止の輪より来たれ』」

 これは確信だ。

「『天秤の守り手よ!! 『夢幻召喚(インストール)』!!』」

 瞬間。魔力の光に美遊は包まれ、そのの姿が変わる。存在の上書き。新たなる力を手にして、美遊は姿を現した。

 

 青い甲冑を身に着け、世界最高の聖剣を携えてながら。

 

 そして、その力に答えるように・・・・・・バーサーカーが姿を現した。

 

 

 『事実は小説より奇なり(バビロン・オブ・ワード)』今の士郎に許されたもう一つの力。

 衛宮士郎に憑依したからか得た力なのか、この力があったから士郎に憑依したのか・・・・・・始まりはわからない。

 それでもこの力の使い方は知っている。

 一つ、それが剣であること。一つ、この世界(Fate)にその剣が存在しないこと。一つ、その剣の知識・使い方を知っていること。

 あとは投影魔術とほとんど変わらない。

 しかし、本来投影魔術とはその剣を解析して初めて複製できる。その前提を。士郎の新たな力は放棄する。

 魔術とは言えない何か。

 今思えば、セイバーとの戦いで投影した二つの剣『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』もその一つだったのだろう。

 本来ならありえない。衛宮士郎にできるはずのない力。

 『この世界(Fate)があるのならば、この世界(Fate)以外にも創作物の世界が存在するはず』という仮定を作ることによって、それを行う。他世界の剣の投影。

 投影可能なものは剣のみと言ってはいるが、普段の投影魔術同様、剣以外にも可能だ。ただし同じように効率は悪く、劣化が伴うのだが。

 士郎のそれは、その創作物の世界の知識を有し、さらには投影すべき武器の詳しい知識が必要だ。

 士郎は思わず笑みがこぼれる。

 

 ――そんなの転生した自分にピッタリな力ではないかと。

 

「『異界同調_開始(トレースクロス・オン)』」

 

 士郎の詠唱と共に、手の中で無数の電気が飛び交うように、魔力の余波が弾け合う。

 そして・・・・・・その剣は現れた。

 『とある魔術の禁書目録』その世界に存在する一本の剣。『神の右席。後方のアックア』によって使われた剣『アスカロン』。

 前兆三・五メートル、重量二〇〇キロオーバーにもなるこの剣は、Fateの世界に会存在するアスカロンとは存在そのもの違う。

 一六世紀末の作家が、実在する伝承をもとに紡いだ、"物語の登場する聖剣と同じ効果"を持つ剣。

 それを『とある』の世界に実際に存在する魔術師が、必要な数値を算出し作り出した(・・・・・)『理論上では前兆五〇フィート級の悪竜を殺すための性能を持つ』剣。

 

 特徴を上げるなら、一般的な両刃の剣のように切れ味は均一ではなく、各々の部位によって厚みや角度が調整されている。 

 斧のように。剃刀のように。ノコギリのように。中には缶切りのようなスパイクや、糸鋸のように剣身に寄り添うワイヤーまでも備えられてあることから、いかにこの剣を作った魔術師が酔狂だったかがうかがえる。なぜなら。

 鱗、肉、骨、筋、健、牙、爪、翼、脂肪、内臓、筋肉、血管、神経・・・・・・どうやら、本気で『悪竜のすべてを切断する』ことを志したらしい。

 そしてこの『アスカロン』はバーサーカーと相性がいい。一本に複数の切り方があるこの剣は同時に、複数の殺し方が存在する。

 士郎の知識の中で唯一、一つの武器でバーサーカーを殺しきれる可能性のある剣だろう。

 悪竜を殺しきる剣。その程度でバーサーカーを殺せるのかは疑問だが、それはやってみるしかない。

 さらに言えば、この剣の質量は二〇〇キロオーバーだ。普通ならば人間には扱えない。

 しかし、『事実は小説より奇なり(バビロン・オブ・ワード)』による憑依経験はその理不尽すら突破する。

 本来の投影魔術ではその剣から得られる技術だけならいざ知らず、その英霊の筋力や宝具を使うことはできない。

 例を出すならばバーサーカーがわかりやすいのではないだろうか。『偽・射殺す百頭(ナインライブス)』士郎が投影できるその剣は本来ヘラクレスの武具である。しかし、その剣を投影したとしても『十二の試練(ゴッド・ハンド)』を使うことはできないように。

 だが。今の士郎ならば。『事実は小説より奇なり(バビロン・オブ・ワード)』と言う限定化において、それすらも行うことができる。

 その一つが魔術。『とある』の世界に存在する魔術だ。

 『とある』の魔術は、『才能のないものが才能のあるものに追いつくために作られた技術』だ。その原理とは、異世界の法則をこの世界に適応することによって、通常の物理法則を超越した現象を発生させるというものである。

 つまり、”異世界の法則を行使する世界”がどこであっても問題はない。  

 さらに言えば、Fateの世界とは違い、生命エネルギーを魔力に変換させているその魔術は、”才能のない者”であり、知識さえあれば、誰にでも使うことが可能なのだ。

 もちろん。知識と技術さらには体の使い方まで、素人には本来行使すら不可能だろう。

 

 だが、それはすべて剣が、アックアの知識が、情報として持っている。

 

 そしてさらにその上。

 『神の右席――後方のアックア』は聖人である。『とある』世界では世界に二〇人といない『神の子と似た身体的特徴・魔術的記号を持つ』人間。

 真豪事なき化け物。

 それすらも、体に適用する。

 

 士郎のこの魔術『事実は小説より奇なり(バビロン・オブ・ワード)』の真価は、『存在するであろう矛盾を徹底的に排除する』というもの。

 それはつまり、その剣の投影と憑依経験を行う上で、士郎の体との矛盾を徹底的に取り除いているということ。  

 言ってしまえばその持ち主――本物により近づけるという性質。

 本物に近づけるという部分にのみ着目すれば、それ自体はさほど珍しくない。なぜなら、美遊の行った疑似英霊召喚『夢幻召喚(インストール)』それと何ら変わらない行為なのだから。

 ただ、本物に近づけるといっても線引きはある。

 "出来る"と"出来ない"が明確に分かれてはいるだろう。それでも、それが『できる』のであれば、その使用者の知識から身体のつくりまで問答無用で近づける。それが今の士郎の力なのだ。

 仮にできないの例を挙げるのであるならば『とある』超能力などがそうだろう。なぜならこの世界には超能力を可能にするシステム、引いては、概念すら存在しないからだ。

 ただ。

 本来の持ち主に近づける。それは、メリットだけではなくデメリットも再現してしまう。

 例として、今回で言えば、聖人の力は強大だがそれ故に制御に失敗すれば、その性質通り自分の体が粉々になってしまうなどである。

 このデメリットは思いのほか大きい。英霊の宝具を投影してもその英霊の弱点などは士郎には現れない。

 しかし、『事実は小説より奇なり(バビロン・オブ・ワード)』では、それがすべて士郎にのしかかる。

 そのため、この力を『無限の剣製』と組み合わせることは危険だ。作り出した剣の力、さらに持ち主の力を十二分に使える反面、そこに存在するすべての剣のデメリットを負ってしまう。

 さらに言うなら、矛盾点の排除。それこそが最大の特徴と言えるこの力。それは複数の剣を投影することにおいて最悪の相性だ。

 片方の矛盾が排除が、もう片方の剣の矛盾の構築になるそれはつまり。二本同時に使えない。恐らくこれこそが、この力最大のデメリットだろう。 

 しかし。それを抜きにしてもこの力は強大だ。

 士郎に使いこなせるかどうかと言えば恐らく不可能だろう。

 それでも士郎はこの力を使う。

 今までの士郎ではバーサーカーを倒すことはできない。けどそれではだめなのだ・・・・・・。

 このクラスカードは美遊(聖杯)から零れ落ちたものだ。このカードの存在が美遊を苦しめる可能性が少しでもあるのなら、それだけで士郎どんな力でも使って見せる。

 

 隣では美遊が、先日のイリヤのように英霊を自分を媒体に召喚している。

 美遊が召喚したのはアホ毛がよく似合う青い騎士だ。

 士郎はそれに懐かしさを感じながら、目の前にいるバーサーカーへと目を向けた。

 

 

 美遊は士郎の持っている巨大な剣と士郎本人に目を向けていた。

(これがお兄さんの力・・・・・・すごい)

 英霊を宿した今だからわかる。 

 圧倒的な力の波動。

 もし美遊に知識があればそれを天使の力(テレズマ)と称しただろう。

 美遊は再びバーサーカーへと目を向ける。

 

 士郎は口にする。

「いくぞバーサーカー」

 それを聞いて美遊もつなげるように口にした。

 それは自分の兄の自信の象徴を現す言葉。

「「命の貯蔵は十分か」」

 

 

 ――そして本物の戦いが幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んでいただきありがとうございます。
さて第二回目(名前はまだない)は『士郎の転生について話しましょう』

 士郎の転生の種類ですが小説内では明言されてませんが神様転生(憑依)となります。
 まぁほとんどの人がお気づきかと思いますが・・・・・・。
 さて、なせそんな大事なことを此処で書いたのかというと、私小説内で書く予定がないからです(私、神様との会合の下りきらいなんですよね~)
 まっまぁなぜそんな無駄に複雑なものにしたかというと・・・・・・。
 一番に美遊といちゃらぶさせるためです。よくある士郎の並行世界ものは、すべてあくまで「イリヤをまもる!」みたいになっていますが俺は”美遊をメインで”守りたい! とそんな感じです。原作知識があればそれを違和感なく可能だと思いました。

 第二に士郎の力を使いたいけど他の力も使わせたいというものです。だってみんなそろそろ士郎の攻撃手段だけじゃ飽きるでしょ? みたいな感じです。私が考えた力は複雑すぎてあれなんですが(笑)

 なら「士郎に憑依じゃなくてもいいじゃん」と思う方がいるかもしれませんが、違うのです!
 士郎とオリ主どっちで書くって言ったら士郎が良いのです! すみませんカッコつけといてモチベの話です。でもオリジナルキャラより士郎の方が格好良いと思いますもん。

『さてここで一番大事な話をします』
 この転生は神様経由なのになぜルビーが気づけたのか? 
 それはこの世界に送る際に、この世界の法則を使ったからです。つまり、転生を並行世界からの移動と同じ法則をつかうことで、士郎の体をこの世界に適合させるているのです。
 もう少し詳しく話すと、この世界には魔術が存在します。
 その魔術で士郎の体を調べれば第二魔法の痕跡が出てくるでしょう。
 士郎の転生と言う行為を、その世界の法則に当てはめた。
 だからこそ、ルビーは士郎の事をきずづけたのです。


 わからなくても何ら問題ありません! 少し小難しく言ってごまかしているだけなので(笑)
 この後書きを見てよりこの作品を理解してくれることを願っています!

 今回もありがとうございました!!!!
 

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