暫く入院しておりまして中々更新は出来ませんでしたが
ほかの作品も結構溜まってますので更新していきたいも思います。
波をかき分け進むフランソワの協商連合支援艦隊…。
旗艦『プリモゲ』の艦橋でペリーヌはほくそ笑みながらこう言った。
「もうすぐだぞ…。あの諸島を抜ければ、オスロフィヨルドだ!」
そんなペリーヌの元に慌てた様子で海兵がやって来た。
「どうした?そんなに慌てて」
「そ、それが!」
海兵はペリーヌにある紙を見せるとペリーヌは勿体ぶりながらこう言った。
「タダの敵の通信記録では無いか!こんなものを私の所に持ってくるな!」
ペリーヌはその紙を突き返すとさらにこう続けた。
「最早、我々はオスロフィヨルドに到着するというのに!帝国艦隊などおそるるに足らずだ!」
「しっ…!しかし!先程までの通信が嘘のように止んだのです!代わりに…こんな文が…!」
通信兵はペリーヌに電信文を見ると、彼は少し見ながらこう言った。
「H-4 ルーク?B-2 ピジョップ?まるでチェスの駒を動かす様だな?」
ペリーヌは笑いながらそういうとこう続けた。
「こんな文を送る所を見ると…余程暇なのだろうな?帝国通信兵は!ハハハ…!」
ペリーヌは嘲笑うと心配する部下を無視して視線の先を見つめる。
「見たまえ!あの小島を!あれを抜けてしまえば…!オスロなど目と鼻の先だ!」
ペリーヌはニンマリと笑みを浮かべそう言った
しかし、この通信兵の忠告をペリーヌがしっかり聞いていれば…
フランソワ海軍史に残る失態は残らなかったのかもしれないー
統一西暦1967年~連邦共和国~首都・ベン~
アンドリューはメモをチラチラと見ながら、古びたアパートの立ち並ぶ通りを歩いていた。そして、あるアパートの前で歩みを止めると、階段をのぼりベルを鳴らす。
暫くすると…アパートのドアが音を立ててゆっくりと開けられ、その間からアンドリューを見る目が向けられた。アンドリューは帽子を取るとお辞儀をしながらこういった。
「ワールド・トゥディ・ニュースのアンドリューと申します。あなたがマイクル・ゼーバッハさんですか?」
アンドリューが微笑むと、ドアは完全に開け放たれた。
そこには包帯で顔をぐるぐる巻きにした怪しい男が立っていた。
男はしわがれた声でこう言った。
「よく来てくれた!Mr.アンドリュー!私があの手紙を送ったマイクルだ!よろしく!」
ゼーバッハはアンドリューに握手をしながらハグをすると、なんとも言えない消毒液の匂いが鼻についた。
「おっと!済まない。ハグは余計だったかね?さぁ、中に入ってくれ。話は中でしよう!」
ゼーバッハの促されるままに、アンドリューはアパートの中へと入っていった。
通された部屋の中には沢山の紙の山が出来ており、足の踏み場がない様に思えた。ゼーバッハは机に乗っていた書類をどかすと、古びたポットからコーヒーを入れながらアンドリューにこう言った。
「少し散らかっているが我慢してくれたまえ!そこのソファーなら座れるだろう」
ゼーバッハの指す先には紙の山に埋もれたソファーがあった。アンドリューは少し紙の山をどかすと座った。
ゼーバッハはコーヒーの入ったマグカップを、アンドリューに手渡すと
前のソファーに腰掛けた。
「お手紙ありがとうございます。ゼーバッハさん、貴方がお作りになった物は幾つか拝見させていただきましたが…どれも素晴らしい物でした!」
「辞めてくれまえ!お世辞は!私はただ『真実』を元帝国民である連邦共和国民に知らせてやりたいだけだ!」
興奮気味に喋るゼーバッハは、コーヒーを少し啜ると息を吐きながらこう言った。
「Mr.アンドリューは…あのライン戦線で従軍記者をしてたそうだね?」
「ええ…貴方は?」
「私は…従軍記者では無かったが!一兵士としてはあの戦場に居たよ。そのお陰でナパームにやられてね?このザマだ!」
ゼーバッハはそう言うと、顔の包帯を少し外して見せると、ケロイド状になった皮膚が顔の大半を占めていた。
アンドリューはそれを見て、眉を顰めながらもこう言った。
「そうでしたか…。それよりもあの大戦を調べれば…調べる程に…。我々の知らなかった事が沢山出てくる。一体…あの大戦の裏で何があったんでしょうか?」
アンドリューの質問にゼーバッハは少し黙りながらもこう答える。
「あの大戦…いや、世界を巻き込んだ大戦争にはまだまだ我々が知りえない『真実』がある。しかし、それは!東西分断で全て闇へと葬られてしまった!」
「確かに…東西分断によって殆どの資料が失われてしまいました。しかし、それだけではないと思えてきて」
「あぁ…その通りだ!Mr.アンドリュー!明らか意図的に抹消された『真実』があるのだよ!その内の一つが君の調べている『十一番目の女神』という訳だ!」
「ええ…貴方は何を調べておられるのですか?」
アンドリューの言葉にゼーバッハは、またコーヒーを飲むとこう言った。
「君は戦中のUボート艦隊の恐ろしさぐらいは耳にした事はあるだろう?」
「ええ…連合王国を未だに震え上がらせるデーニッツ提督が率いたUボート艦隊…」
「その通りだ!未だに連合王国はUボート恐怖症から抜けきれていない!その証拠に新造艦の殆どには対潜装備をつけるほどにな!」
ゼーバッハはグイッとコーヒーを飲み干すと、服の袖で口を拭った。
「その中でも…!Uボートによる群狼戦術は今までの潜水艦運用論をガラリと変えた!あの頃じゃ…潜水艦など予備艦程度だと思われていたのにだ!」
「ええ、その通りです」
「だが、Mr.アンドリュー?この戦術を考えたのが一人の士官候補生だった…としたらどうするね?」
ゼーバッハはチラリとアンドリューを見つめながらそう聞いた。
「群狼戦術をですか!?あれはデーニッツ提督が考案したのでは?」
「いいや…違うとも!彼はただの名目上の指揮官に過ぎないのさ!」
ゼーバッハはそう言うと、紙の山から古びた書類を取り出した。
「これはその原本だ…群狼戦術となる前のな?」
ゼーバッハの言葉に、一瞬…呆気に取られたアンドリューも慌てて書類を受け取ると読み始めた。
「それはかつてベルンにあった旧海軍士官学校の資料室に隠されていたものだ!」
「た…確かに!インクのかすれ具合といい、紙の経年劣化も当時のものですね!一体これをどこで?」
「何処だと思う?Mr.アンドリュー?」
「元海軍軍人…それも階級が上の…?」
「その通りだ!これはあの
「それって!あのヒュパンダウ戦犯刑務所ですか!」
ゼーバッハの言葉に前のめりになりながら、アンドリューはそう言った。
「そうさ!戦勝国が開いた政治ショーの殉教者達が入れられた墓場さ!」
そう言うとゼーバッハはある一枚の写真を取り出す。
「これは…?」
「これはベルハニア号事件の時にとられた写真だが…」
「ベルハニア号事件…!」
アンドリューはベルハニア号事件を思い出す。
(協商連合の避難民を乗せたベルハニア号が帝国海軍に強制臨検を受け、そこから連合王国に亡命しようとしていた十人評議会の1人を逮捕した事件か…)
「この写真を撮ったご婦人は、帝国海軍にも臆さず勇気を出してその様子を撮ったそうだが…」
その写真は船の縁から撮られたのだろう…。
下を見下ろすように取られた写真にはUボートが接舷して、こちらへと乗り込んで来ているようだった。
「ここをよく見たまえ」
ゼーバッハが指さした所を、アンドリューは見つめると目を大きく開きながらこう言った。
「これは…子供…?」
人混みの多いUボートの艦橋に立っている軍服を着た子供だった。写真には背を向けているので、顔はわからないが明らかに子供だった。
「そうだよ…その子供こそが…君の追っている『十一番目の女神』と同じく…あの大戦の裏にいたひとりだ!」
ゼーバッハは愉快そうに笑みを浮かべるとまた写真を取り出す。
「その子供は何故か色々な事件の裏に現れる…!あの大戦で起きた出来事の裏には必ずね!」
「これは…!」
色々な角度から取られているが明らかに軍服を着た子供の姿が写っていた。
「しかし、彼の記録は旧海軍省には何も残っていない!まるで、消されたようにね!まるで
ゼーバッハはまたある文書を見せてきた。
「これは一体?」
「これは元皇宮関係者から手に入れたものだ」
「皇宮ですか…!」
「元メイドの1人からね…。これはある冬宮で行われたパーティーの招待客名簿だよ」
その名簿の中には名前ではなく、『サラマンダー旅団団長』と『セイレーン艦隊司令』と書かれた項目があった。
「サラマンダーにセイレーン…」
アンドリューが興味深く呟くとゼーバッハはこう答えた。
「そう!そのふたつの名は大戦後半に沢山の機密文書などに出てくる!君の求める答えも多分この名前の中に隠されてるような気がするのだよ!」
「これは何かの秘匿名でしょうか?」
「多分そうだろう…!さらに、もう1つキーワードがある『白銀』と『黒金』だ…!これらは大戦初期によく出てきている!特に!私が目星をつけている『黒金』の始まりはこれだ!」
ゼーバッハが見せてきた文書に、またアンドリューは目を丸くするのだった!
統一西暦1923年
カール軍港〜最高司令部〜
ひとつの机に広げられた海図をデーニッツ達は囲みながら、無線機の連絡を待っていた。
「Hー4 ビジョップ…」
無線機から聞こえてくる連絡を聞くと、デーニッツは海図にピンをさした。
「作戦開始の諸島まであと少しです!」
横にいる副官はデーニッツにそう言うとまた海図に目を写す。
海図には縦や横に線が引かれ、線の交差しているところには赤や青のピンが刺されていた。
(クレッチマー…。この様なものまで考えていたとは…流石はあのカナリスが推薦してきた子だ…。普通では考えのつかんことをする。彼の様な人間を天才と呼ぶのかもしれんな…)
デーニッツは海図を見つめながら、心の中でつぶやくのだった。
一時間前…
Sボートの出撃を急がせようとする港の端にある建物…
そこに集められたSボートの船長達は怪訝な表情を浮かべながら、クレッチマーを見ていた。
「先程…!デーニッツ閣下よりSボート特別隊司令に任命されたクレッチマー少尉である!君達の中には私よりも位の高いものも中にはいるかもしれない!しかし!そんな事は今はどうでもいい!今はカエル共をこの海から追い出す事が先決だ!」
クレッチマーは机を力強く叩きながらそう言う。
「もしも…!連中を取り逃がせば…!我が帝国海軍は諸国からの笑いものになることだろう!我が領海に入ったハエを追い払えない間抜け共とな!それは何がなんでも阻止せねばならない!連中を!オスロフィヨルドに入らせてはならんのであります!」
クレッチマーは興奮した口振りでそういうとタムエフスキーに合図を出し、各船長達に海図を渡し始めた
「しかし…!奴らはオスロフィヨルドに向かっているとはいえ、奴らを探し出すのは砂漠の中から針を見つけるほど難しい…!なので、今から配る海図は私の秘策だ!これを使えば連中を必ずや補足し叩くことが出来る!」
クレッチマーがそう言うと、ヨセフは例の海図を手渡し始めた。
「我々はそれを使い、暗号無線で連携をしながら…カエル共を追い詰める!この中にチェスを嗜む者はどれ程いる?」
クレッチマーがそう聞くとチラホラ手が上がった。それを見たクレッチマーは溜息をつきながらこう言った。
「よろしい…。その海図に引かれた縦や横の線が引かれてるだろう?その海図はチェスの盤面と同じだと、思ってくれればいい!縦線の上に書かれた文字と横線に書かれた数字を使い、敵を補足することが出来る!理解したかな?」
クレッチマーの言葉に不服ながらも、頷くSボートの隊長達…。しかし、1人の士官は進みでるとこういった。
「吾輩は少尉風情の貴様に指示されるなぞ!我慢ならん!吾輩は由緒正しきゲーレン男爵家の出だぞ!臨時司令になったかは知らんが!貴様の様な少尉くずれのお子ちゃまに従う義理はない!」
クレッチマーは面倒そうに溜息をつきながら、相手の階級を確認するとこう言った。
「Mr.ゲーレン〜大尉?そんなに不満かね?」
「ああ!不満だとも!戦場は貴様の様な子供が来るようなところではない!さっさとさりたまえ!」
ゲーレンの言葉にクレッチマーは、眉をピクリと動かすと近づいて行った。
「ゲーレン大尉…。貴官の出撃回数をお教え頂きたい。無論…実戦ですが…」
「ふん!貴様の様な輩よりは出撃しておるわ!」
「おや?その言葉通りなら…。その胸に何故、出撃勲章が無いのでしょう?私でさえ、Uボート戦闘章が有るというのに…」
クレッチマーは、ワナワナと震えるゲーレン大尉の目の前に立つと…。目を細めてこう言った。
「もしや…訓練しかしておられんのですかな?階級が上がったのもただ…時間と共に上がっただけの物ですね?」
ゲーレンはその言葉に顔を真っ赤にさせると、クレッチマーを睨みつけるとこう叫んだ!
「貴様ァァァァ!少尉風情がァァァ!この我輩に向かってぇぇ!」
拳を振り下ろしてきたゲーレンを面倒くさそうに見ながら、振り下ろしてきた腕を絡めとるとクレッチマーは背負い投げた!
ゲーレンはそのまま勢いづき、机を破壊した!
「ぐあぁぁぁ!」
ゲーレンの悲痛な悲鳴が響くと、周りの隊長達は呆然としながら見ていた。クレッチマーは倒れているゲーレンの背中を勢いよく踏みつけると、頭にピストルを突きつけ冷たくこう言い放った。
「おい…。いいか?クソ野郎…実戦も何も経験してないヤツが。でしゃばって来るんじゃねぇよ。由緒もクソもねぇんだよ!今は戦争中だ…。由緒だ!何だとほざくのなら、今ここで殺してやるよ…。ゲーレン大尉…」
「き…貴様!吾輩をここで殺せば…貴様は軍法会議にかけられ死刑だぞ!」
「命令を無視され、私を襲ってきたので、危うく発砲したとでも言うさ…。貴様が最初に手を出したんだからな…。それに安心しろ。貴様の家には、ちゃんと戦闘で死んだ事にしてやるさ…。お前の死体はそうだな…Uボートで深海にでも捨ててやろうか?お前は1回も浮いてくることなく、深海のおぞましい蟲共に骨の髄まで食われて、無くなっていくのさ!」
ゲーレンの後頭部にさらに力強く銃口を押し付けると、ゲーレンは絞り出すようにこういった。
「よ…よせ!やめろ!だ…誰か!このキチガイを止めてくれ!」
「さようなら…大尉。
「い…嫌だ!し…死にたくないぃぃぃ!」
その言葉を叫ぶとゲーレンは気を失った。クレッチマーはまるで汚物を見るかの様にゲーレンから目を離すとこう呟いた。
「ヨセフ君…。このゴミを懲罰房にでも入れておけ…。さて、諸君!」
クレッチマーはSボートの艦長達を見回すとこう言った。
「さぁ!出撃だ!共和国のカエル共を北海の荒波の藻屑にしてやれ!」
『はっ!』
艦長達は敬礼をすると足早にSボートへ向かっていくのだった。
~フランソワ・協商支援艦隊side~
「ペリーヌ閣下!あの島を通過すれば!予定より早くオスロに到着致します!」
「そうか!もはや帝国海軍は追いつけんだろう!オスロに着いたら、美味い酒を飲もうじゃないか!ウハハハハ!」
水平の報告に艦橋は沸き立ち、ペリーヌはそれを見て上機嫌に笑う。
しかし、その瞬間!
ズドーーン!
プリモゲの左舷から水飛沫が上がると艦橋は大きく揺れた!
「ぬあああ!?」
ペリーヌ達はあまりの事にもんどり打って倒れるとこう叫んだ!
「なんだ!何が起きた!」
「ペリーヌ閣下!敵の魚雷です!左舷に雷撃を受けました!」
「何だと!帝国海軍は我々に追いつけんはずだ!何処からだ!」
「分かりません!敵影は見えませんでした!」
ペリーヌの絶叫がこだまする中、通信兵が何かを聞き取った
「ペ!ペリーヌ閣下!これをお聞きください!」
「なんだ!」
ペリーヌは無線機を強引に奪い取ると、ヘッドフォンからは声が響いてきた。
(よ~こそ、共和国のカエル諸君…困りますなぁ。協商連合に行きたいのなら、まずは我々を通して頂かないと…)
「何者だ!貴様!帝国海軍か!」
(名を名乗る物ではありませんよ…。なぜなら、貴方達はここで沈むんですからねぇ!)
無線機の声が終わる瞬間!水兵が叫んだ!
「さ、左舷より!多数の高速艇が接近中!」
「島影に隠れていた模様!」
「く…駆逐艦に攻撃させよ!」
「はっ!」
2隻の駆逐艦はSボートを狙い撃とうしたが、練度不足と初動が遅れたのもあり、Sボートを撃沈する事はできなかった!その間にSボート部隊は駆逐艦に目掛け迫撃砲を発射した!海面に着弾したが…そこから白い煙が発生し始める。
「クソっ!煙幕だ!」
「連中が消えたぞ!」
駆逐艦の海兵達が慌てていると…2隻の駆逐艦の左舷から大きな水柱が上がった!
「く、駆逐艦が雷撃を受けた模様!」
「何だと!何をしてるのだ!」
ペリーヌがそう怒鳴ると、煙幕の中から4隻のSボートが戦艦『プリモゲ』に向かってきた!ペリーヌは双眼鏡を覗きこみながら指示を出す。
「全砲門をあの魚雷艇共に向けろ!斉射してやるのだ!」
「はっ!」
ペリーヌが艦橋でそう叫んでいると、四隻のSボートはプリモゲ目掛けて迫撃砲を発射し始めた!空中や海上で砲弾は破裂すると、また煙幕を張った。
「小癪な真似を~!副砲を撃ちまくれ!」
ペリーヌはそう憎々しそうに言った瞬間!
煙幕の中から4隻のSボートが直進してくると、プリモゲの艦橋へ向かって高射機関砲を撃ちまくり始めた!
「ぬお!」
艦橋の防弾板を激しく当たる音が響き渡ると、何発かが艦橋のガラスを突き破り中で跳弾し始めた!赤い曳光弾が艦橋内部を血に染め始めた!
『ぎゃあああ!』
「こ…こんな所で!死んでたまるものか!」
ペリーヌは足に銃弾を受けながら、何とか立ち上がると周りを見渡した。周りの水兵はまるで死屍累々の如く、誰一人として無事な物はいなかった。
そんな状況を我関せずとも言わんばかりに、Sボートはさらに距離を詰めると、プリモゲの甲板に向かって迫撃砲を発射した!
弧を描くように放たれた砲弾は甲板に着弾すると炎上し始めた!
「うぎゃあああ!アツいい!」
「早く火を消せ!」
「クソっ!消えねぇ!白リン弾だ!」
「火薬に引火するぞぉ!」
甲板もまるで地獄絵図と化していたが…!それにお構い無しに迫撃砲を撃ちまくるSボート!
プリモゲの左舷に集中して火災が発生し始め、収集がつかない状態になっていた。4隻のSボート達はギリギリまでプリモゲに迫ると反転して煙幕の中へ戻り始めた!しかし、それと同時に煙幕の中から入れ替わりで、6隻のSボートが凄い速さでプリモゲに向かい始めた!
6隻のSボートはある程度まで近づくと、魚雷を投下した!
「さ…左舷より…!魚雷4!」
血塗れの水兵が叫ぶとペリーヌは絶叫する!
「回避だ!取舵いっぱい!」
「ま、間に合いません!」
次の瞬間…ペリーヌが見たのは、主砲砲塔付近から甲板を捲り上げながら起きる。大きな火柱だった…。
ペリーヌはそれを見ると目を瞑りながら、心でこう呟いた。
(おお…神よ…)
プリモゲは誘爆を起こしながら爆沈した
無能なフランソワ海軍のお知らせ~
次の話はクレッチマー目線です
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