ダンジョンで魔法チートするのは間違ってない   作:みゃー

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シャワーを浴びても血の匂いが落ちることは無く。

 

アイズさんもファミリアの用事があるからとどこかへと行ってしまった。ここまで送ってもらうまで色々と話を聞いたが(無口で静かな人だったのでそこまでしゃべった訳じゃない)、大手のファミリアに所属している様で、大手も大手なりに色々と苦労があるっぽかった。

 

零細なうちと比べるのも失礼かとは思うが、零細は零細なりに自由に動けたりするのが利点ではあるのかなぁと俺は思った。

 

「…それじゃあ、ばいばい」

 

そういって去っていったアイズさん。俺はその後姿を見送って、また服の匂いを嗅いでみた。まだくさい。いやになるぜ。

 

そういえばベルの奴はどこにいっちまったんだろう、もしかして本当に恐慌を起こしてどっかへ行っちまったんじゃなかろうかと探す事に。

 

とりあえずギルドに行ったんじゃないかと予想を立てて、他の場所もちらちらと見つつギルドへと向かった。結局たどり着くまでベルらしき人影は見なかったのだが…。

 

 

 

 

 

 

「ふーん、アイズ・ヴァレンシュタイン氏ねえ…」

「はいぃっ!」

 

ベル、ギルドにいやがった。

 

そして顔を真っ赤にしてアイズさんの情報収集をしていやがった。

 

しかも話を聞いた限りによるとアイズさんに完全に惚れちまったらしく、見悶えさせながらエイナさんに話を聞いてもらっていた。

 

と、ここでエイナさんが俺に気づいた。そして俺の表情を見て苦笑いを浮かべる。おっと、どうやら俺はものすごい顔をしていたようだ。

 

エイナさんは恐る恐るといった感じでベルに話しかける。

 

「…所でベル君、ルイス君は?」

「…へっ?」

 

ベルの顔がさーっと青くなっていく。今気付いたところでもう遅い。俺はベルの首の左右に挟むようにチョップを食らわせた。

 

「あぶっ!」

「べぇるぅくーん?お前かよわい魔法職を一人残して何一人でギルドまで帰って、挙句の果てに恋バナにうつつを抜かしていやがるんですかぁ…?」

「る、ルイス!?ご、ごめん、本当にごめんってあだだだだだだ!」

 

許さん。くらえじいちゃん直伝脳天直撃ごりごり光線。その痛みは神をも悶えさせたという話だ。

 

「ごめん、ごめんってばー!」

「ゆ る ざ ん !!」

 

魔力すっからかんの俺を置いていったベルは完全にギルティである。逆に言うならば手足をふんじばった状態でダンジョンに置いていくようなもんである。改めて一緒についてきてくれたアイズさんに感謝しかない。

 

…まあ、色々とショックな出来事の連続だったしな。情状酌量の余地はあるか。

 

「はあ…次からは気を付けろよ」

「う、うん…って、それだけ…?」

「まあ、うだうだ言ってもしゃあなしだ」

 

というかあんま怒ってないしな。ただ許してはいけないと思っただけで。

 

「それよりも、お前さっきお礼も言わずに逃げやがったな。お陰で色々と大変だったんだぞ」

「えっ…?」

「いや、助けてくれた女の人…アイズさんだっけ?が気にしてたぞ。なんか色々と…」

「そそそそそれは一体どういう事ですかっ!?」

「うおっ!」

 

ぐいっと来やがるな。そんなに惚れやがったのか?

 

「ああ…とりあえずお前、次アイズさんに会うような機会があれば謝っとけ。それとお礼程度は言っとけよ」

「え、ええええ?で、できるかなぁ…」

「やるんだよバカ野郎」

 

にしてもあのベルがねえ…出会ってまだ数週間の間柄だが、こいつの奥手さ加減はすでに知っている。そんなベルが一目惚れか。男は成長するときはするもんだぜ。

 

「る、ルイス…その、もしかしてアイズさんとお話ししたり…」

「したぞ。どっかの誰かさんが俺を置いて下に行ってしまったもんだから、護衛として少し一緒にいてもらった」

「え、ええええええええ!?」

「自業自得だな」

 

ベルは今もまだ唸っている。耳まで真っ赤だ。

 

「…それよりも、ルイス君にも丁度お話があったんだけど…」

「ん?何エイナさん」

 

エイナさんが俺に笑顔を向けてきた。

 

「ベル君と一緒に5階層まで行ったんだってね…?どういうことか、少し教えてもらってもいいかなー…?」

「あ」

 

 

 

 

 

 

エイナさんからみっちり絞られたりして、俺はベルと一緒にホームまで帰っていた。神様が出迎えてくれたけど、ベルと俺が死にかけたという事を知ったら少し怒られた。まあ仕方なし。

 

「…それにしても、あのベル君がねえ…」

「か、神様…」

「あのベルがねぇ…」

「る、ルイスうう!」

 

当然ベルが一目ぼれしたっていう話も神様の耳に入る運びとなり、神様がジト目でベルを茶化した。

 

いや、茶化したというか、なんというか…神様のベルに対する気持ちは結構周りから見てもバレバレなので、一番近くにいる俺はかなり怖いというかなんというか。

 

「ふんっ、じゃあ早速ステイタスの更新をしようか!ルイス君、まずは君からだ!」

「…か、神様、なんか怒ってません…?」

「おいやめろ」

「怒ってないよ!」

 

ベルの奴が火に油を注ぐ。はあ、ベルのやつ変にモテるからなぁ…いずれ修羅場に巻き込まれそうで恐ろしいんだが…。

 

それからステイタスが更新されたわけだが、内容はこのようになっていた。

 

 

ルイス・フォレス

LV1

 

力:I63

耐久:I72

器用:I98

敏捷:I59

魔力:H159

 

《魔法》

【魔本召喚】

・魔法の記された魔本を召喚する

・呪文により魔本の種類が変化

・魔本は総じてページ数250ページ

・ページは魔力の量に応じて回復する

【魔本操作】

・魔本を操作する

・1ページに一つの魔法を記すことが出来る

・一度記した魔法は消すことが出来ない

・一度使った魔法に該当するページは消える

・許容量以上の魔法を行使した場合、暴発する

 

《スキル》

無し

 

 

うーん、相変わらず魔力が上がっていくなぁ。まあ魔法しか使ってないから当然といえば当然なのだが。

 

敏捷が結構上がってるのは、やっぱりミノタウロスから逃げたのが影響してるっぽい?まあそれでもめっちゃ低い訳だけど。

 

身体能力では完全にベルに置いて行かれてるな。敏捷に至っては倍以上に差つけられてるし。

 

まあ、魔法に関しては絶対に負けないからいいんだけどな。

 

「ベル君、君はもっと近くの幸せを大切にするべきだよ。そう、君はすでに運命の女性ときっともう出会ってる!」

「ええ…そうかなぁ…」

 

ベルもステイタスの更新を終えて、紙に視線を下ろしている。

 

「あ、敏捷結構上がってる…」

「俺もだ。ミノタウロスから逃げたのが結構影響してるな」

「あはは…あんまり思い出したくないね…」

「まあな…」

 

俺はステイタスの紙から目を外した。すると神様と目が合った。

 

「…」

「…神様…?」

 

神様はいつもの元気な感じとは一転、様子がおかしい。表情に影を落としながら、俺に何か目配せしてくる。

 

「…何か?」

「ベル君の事なんだけど…これからもちゃんと良く見ていておくれよ、ルイス君」

「はあ…そら仲間っすからもちろんですけど…でも、ベルの方が先輩なんだから、普通逆じゃないですか?」

「ベル君とルイス君を比べたら、やっぱりまだルイス君の方が頼りになるんだよッ!ベル君は放っておくとすぐにほいほい怪しい人についていって大変な目に合いそうだし」

「まあ、否定はしませんけど」

「ルイス君の場合は怪しい人だと分かっていながら突っ込んでいきそうな感じだけど、分かってる時点でまだマシだしね」

「神様は一体俺の事をどう思ってるんですかねぇ…?」

「分かってる分性質が悪いともいう」

「…」

 

神様が意地悪そうに俺に笑顔を浮かべてくる。俺はその額にデコピンをかました。

 

「いたっ…ちょ、女神のおでこに何て事をー!」

「いや、ちょっとイラついて」

「ちょっとイラついて神様に手を出すなんて、ルイスらしいや…」

 

ベルが呆れたようにそうつぶやいた。

 

神の愛に気づかないお前もよっぽどだよ。

 

 




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のんびり書いていきますので、どうぞ生暖かい目で見守ってください。


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